前回のあらすじ:シスコン勇者、暁に散る? ミッドのお空の下から、こんにちは。 現在、将来有望な少年少女を、絶賛ストーキング中の月村静香です。 相棒……というか、主犯はご存知【フェイト・T・ハラオウン】……執務官。 本来はそういったコトを取り締まるハズの方が、何故か逆にやってしまうという始末。 ……コレって犯罪だよ? 本当に良いんかねぇ……?「…………オイオイ、フェイトさんよぉ~~?コレって、どう見てもストー…………」「違います!!私は二人が過ちを犯さないよう、見守っているだけです!!」 何かもう、絶対性格反転してるよぉ……。 アレかな?普段良いコちゃんだから、ストレス溜まってたのかねぇ……? その内、【ブラックフェイトちゃん】とかに進化しちゃうのかなぁ。 ……今度、とっておきの発明作ってやろう……。 ターゲットが全部スカリエッティの、ガンシューティングとかそんなの。 …………ソレじゃ、却ってダメか。世の中は難しいねぇ……?「アッ!!」「どうした!?二人がチンピラにでも絡まれたのかっ!?」 突然の大きな声。切迫した声色。 どう聞いても、二人に何かあったとしか思えない。 そう思って、ボクは金髪娘に問い掛ける。「……あの二人…………手を繋いで歩いてるぅぅぅぅっ!!」「…………あのさ、ボク帰って良いかな?今から帰れば、ランチタイムには間に合いそうなんだけど……」「何を言ってるんですか!!良いですか、二等兵?コレは極めて高度かつ、重要度の高いミッションで…………」 ダメだこりゃ。完全に正気を失ってやがりますよ、このヒト。 ……っていうか、いつの間にボクは【二等兵】になったんだ? そんな階級でもないし、そもそもその階級自体が、時空管理局にはないでしょうに……?「オイ、ポンコツ執務官」「…………ソレって、もしかして私のことですか……?」「他に誰が居るって言うのさ……?執務官って言えば、潜入捜査や尾行も任務にあるんだろう……?だったらさぁ…………」 ヨレヨレのトレンチコート。 サングラス。マスク。目深に被った中折れ帽。 ……完全無欠の不審者だな。まるで、【逮捕して下さい】と言わんばかりだ。「コレは管理局から貸与された、正式な変装グッズです!」 …………時空管理局って、ギャグが好きなのか? それとも本気か!? だとしたら、早晩潰れる運命にあるとしか思えないのだが……。「ともかく、その格好はココでは目立つ。だからさ、さっさと変装を解きなさいな……?」「で、でも……」「やっかましい!!元々コレは任務じゃないんだろ!?だったら、任務時の服なんか着るなよ!?」「…………な、なるほど!」 頭痛くなってきた。 コレで敏腕執務官っていうんだから、世の中は恐ろしい。 もしかして、任務中は冷静モードに入るのかなぁ……?ソレだったら、まぁ納得出来なくもないけど。「ところでフェイトさんや。二人が映画館に入っていくみたいだけど……」「…………映画館。暗闇の中で、隣り合う二人…………いつしかその手と手が重なり合って…………!?」 ……フェイトそんは、妄想癖を身に着けたようです。 コレはもう、手の施しようがありません。 例えブラックショックな大先生でも、この病は治せないだろうな。「さぁさぁ!何をしてるんですか!?サッサと追いますよ!?」「…………この切り替えのはやさだけは、執務官向きだな……」 ハラオウン家のオンナは、全員が全員厄介過ぎる。 【あの】メイドを筆頭にこの娘。クロノの嫁。アルフ。 ……ゆくゆくは、双子の片割れもそうなるんだろうなぁ……?クロノ、しっかりイキロ……! その映画館は、ミッドで一番大きなシアターだった。 その中でもメイン作の上映に使われる、この大きな部屋。 今ココには、大勢の老若男女が集い、立ち見の客すら居る状態だ。 そんなにまでして、人々が見にきたい作品。 ジャンルは恋愛モノ……というより、悲恋モノかな? ただし、なるべく分かりやすい構成になっており、子どもでも理解可能。 ヒロインは、管理局の若きエース。 彼女が【とある】ロストロギアに寄生され、ソレを主人公が治すために奔走する……というストーリー。 ……なんだけど…………。「(……何でだよ?どうして、【コレ】がココにあるんだよ!?)」 何処かで見たような話のつくり。 以前に聞いたような話。 ……正直に言おう。この映画の脚本(?)を書いたのは…………ボクだ。 そして撮影(という名の盗撮)をしたのもボク。 …………なのだが、何故ソレが映画化されてるのかは知らない。 というよりも、予想外の事態と言った方が正しいだろう。 ボクの予定としては、ほとぼりが冷めた頃にクロノとなのはをからかうネタ。 そのつもりだったのだが…………謎だ。 一体何処のどいつが、ボクのセキュリティーを突破して盗み出したのやら…………【三人】くらいしか思い付かん。 一人は面白いことに命を燃やす、出番頂戴娘①【八神はやて】。 候補その②。これまた面白いこと大好き。悪戯得意。騎士の才能を無駄に発揮している、【シャマル】どん。 その③。出番欲しさに、アフレコ(という名のアテレコ)すらしてしまった、奥様は魔女。【リンディ・ハラオウン】。 ……どれも同じくらい怪しいなぁ……。 強いて言うのなら、今までの犯罪暦……じゃなかった。経験からすると、ダメ女医っぽいんだけど……。 今ある情報だけでは、判断が付かないな。『…………絶対だよ……?【約束】やぶっちゃ…………いやだからねぇ……?』『……【約束】する。必ず僕は…………【キミ】の【側】にいるから…………』 映画の終盤。脚本書いたのはボクだし、撮影したのもボクだ。 だから話の先は読めてしまうし、感動も比例して薄れる。 ……そう。【ボクは】そうなんだけどねぇ……?「うぅ……。なのはぁ……クロノォォ……。こんなのって、こんなのって、悲しすぎるよぉぉ…………」 号泣者一名確保。 隣に座っている金髪娘が、話の筋を知っているハズなのに号泣していますだ。 前の方に座ってるオチビ二人組や、他の観客が泣いてるのは納得出来る。 元々の【リリカルなトイボックス】の話は、ボクも【心の汗】を流したしね? でもさぁ、【この】執務官殿はないだろう……? 紅い大きな瞳からは、涙ボロボロ。オマケに鼻水まで出掛かってる。……全国のフェイトファンが見たら、卒倒モノだね……?「……ホレ。とりあえず、コレで涙を拭けや……?」 俺の強さに……じゃなくて、ボクの映画にオマエが泣いた。 ……何かバルディッシュ借りて、ひと暴れしたい気分になってきた。 何でだろう?「あ、ありがとうごじゃいましゅぅぅ…………」 オイ。涙は拭けと言ったが、鼻をかめとは言ってないぞ? おかげでハンカチは…………オマエのことは忘れないぞ。 ちゃんと供養はしてやるからな……? 『今はM○Eだけ、MIれば良い~♪SHINじることを、SH○NJIれば良い~♪』 映画のクライマックス。 ソコで突如流れ始めた、聞き覚えのある挿入歌。 ソレはどう聞いても【フェイト】の声だし、横にいるポンコツ執務官の驚きようを見れば、ソレは分かる。 後で分かったことだが、コレは彼女が中学生時に行ったカラオケ。 ソコで歌ったモノだと判明した。 その時は【家族】で行ったらしい。…………コレで容疑者が、【メイド】に絞り込まれたな……。 映画館が出てきても、未だに泣き止まないフェイトそん。 お子様たちは既に移動を開始し始めたというのに、大人がこの体たらく。 ……何か今のおチビたちの方が、よっぽど大人らしくないか?「オイ。さっさと泣き止まないと、オチビたち行っちゃうぜ……?」「ス、スミマセン……!もう、大丈夫です。ありがとうございました……!」 ただでさえ紅い瞳を、さらに紅く染めたフェイトそん。 ……まるでウサギだ。 今度何かの罰ゲームで、ウサギの着ぐるみを着させたろうかなぁ……?「(……そういえば…………)」 ウサギか。 ウサギと言えば、紅の鉄騎や――――【聖王】のイメージがあるんだよね。 そういえば今日は、【機動六課の休日】。ということは…………遂にヴィヴィっ子登場かな?「あ、あの。ハンカチ、ダメにしちゃったから…………コレを使って下さい……!」 差し出されたのは、本日は未使用っぽいハンカチ。 キチンとアイロンが効いていて、交換するには申し分ない。 ただし、【女モノ】じゃあなければね……?「(……何か、前にも同じ展開があったよね?あの時は、確か…………)」 カリムのハンカチで、すずかが暴走した事件。 今となっては良い思い出だが、あの時は本当に死ぬかと思った。 【ヤンデレ】の怖さを、身を以って思い知ったからな。「(まぁあんなことはもう起きないし、ココはフェイトの顔を立てておきますか……?)」 右手を差し出し、ハンカチを受け取ろうとする。 段々ハンカチコレクター(ソレも女性モノ限定)に成りつつあるような気がするが、気にしてはいけない。 多分、気にしたらソコで試合終了だからね。 ――パシュゥゥゥゥッ! ソレは一条の光だった。 天から舞い降りたその光は、ボクが取ろうとしたハンカチの存在を【なかったこと】にした。 軌道から察するに、コレは衛星軌道上の人工衛星からのモノ。 ボクが【ある】目的のために打ち上げた、ソレを使っての攻撃。 アレの操作は、地下の秘密基地からしか出来ない。 当然、ソコに入れるモノは絞られる。 レジアス……ないな。アイツは、そんなことする暇があったら、直に肉弾戦仕掛けてくるし。 ザフィーラ……コレもない。相手がアルフやはやてならやるかもしれないけど、フェイトだったら仕掛ける理由がない。コレも却下。 リンディ……一番可能性が高いけど、却下…………だな?そもそも今回の件は、彼女の発案によるモノだ。ソレをワザワザ妨害はしないだろう。 …… ………… ……………………!? ……マテ。 ちょっとマテ。 すると何か?一番やりそうにない、【あの】御嬢騎士が下手人だっていうのか!? ――パシュッ! ――パシュゥッ! ――パシュゥゥッ! ――パシュゥゥゥゥッ!! ボクがその結論に辿り着いた矢先。 新たな光が四つ、連続して地面に突き刺さった。 その跡は、明らかに【文字】という形態を象っていた。 【ウワキ×】 …………なるほど。 カタチだけとは言え、一応ボクと騎士姫さまは婚約者だ。 つまり、ソレらしい振る舞いを常日頃から心掛けろと。そういうことですね……? ……なんというか、カリムの恋人になるヒトは大変だねぇ? 私生活までも監視されるんだから……。 ボクは未来の彼女の恋人に同情しつつ、傷跡の残る地面の前から立ち去った。 大将日記 龍騎 目の前に居るのは、メイドの格好をしたテロリスト。 人間の三大欲求である【食欲】。 ソレを解消するために人々が訪れる、この【茜屋】。 それなのに出てきたのは、客の要求を満たすモノでなく、むしろ対極の位置にある代物。 一口飲めば、一日の糖分の摂取量を超え、二口飲めば記憶を失う。 三口飲めば糖尿病予備軍になり、最後まで飲めば病院送りは免れない。 一説には、【某作戦部長作成のカレー】と同様のレベルの兵器であるとされ、その存在は【ある意味】ロストロギアにも匹敵するとされる。 その食物兵器……と呼ぶのもおこがましいブツが、大量に生産されている。 もしコレが広まれば、六課だけの話では済まされない。「(…………)」 息を飲み込む。 調理のための自分から、戦闘のための自分にスイッチを切り替えた。 そして、両手をスラックスの両ポケットに突っ込み、六角形のモノの存在を確認する。 ――【無双錬金】!! 光と共に現れるのは、銀色のジャケット。 エリオを鍛える時のみに使用している、レジアスの無双錬金。 ソレをこの場で展開するのには、きちんと理由がある。「……なるほど。ソレが貴方の無双錬金ですか……」「…………リンディ提督。今すぐソレの製造を止めてくれれば、何も無かったことにしよう……」「……申し訳ありませんが、断らせてもらいます。私にはこのお茶の素晴らしさを広めるという、重大な使命があるのです……!」 メイド服のまま立ち上がり、右手を天にかざすリンディ。 すると彼女の精神状態に呼応するように、一つの物体が現れた。 ソレは水色のペンの先に金色の蓋とリングが付いたモノ。リングの中央部には蒼い石が填め込まれているのも、見て取れた。「ハーキュリーパワー、メークアップ!」 蒼い石の中の紋様が回転し始め、ソコから水の奔流が発生する。 その水を纏うようにして現れたのは、セーラー服を模した衣装。 否。コレが彼女の戦闘服なのだ。彼女の現役時代。共に戦場を駆け抜けた相棒が、今蘇った。「水の星、水星を守護に持つ【知の戦士】!!…………【セーラーハーキュリー】参上!」 戦士対戦士。 ジャンルの違う、会うハズのなかったモノたち。 そのモノたちの闘いが、ココに幕を開けた。 ゲイズさんちのオーリスちゃん【弐拾壱】 嵐のような日々が終わりを告げ、オーリスの暮らしにも漸く平和が訪れた。 最近は行くことが出来なかった、ティーダの見舞い。 今日こそはと思い、彼の眠る病室を目指す。 そういえば昨日現れたロボットの気迫は、ティーダのソレを思わせるモノだった。 今朝起きたら無くなっていた、【彼】の亡骸。 自力で動けるとは思えないが、誰かが回収に来たとも考え難い。 だったら一体……? そう考えている内に、目の前にはティーダの病室があった。 久しぶりに入る部屋。 今日持ってきた花は、ユリではない。 だから大丈夫。 もうあんな失敗はしない……!! 決意の炎を胸に秘め、病室の扉を開け放つ。 するとソコにあったのは……リアルタイムなティアナ映像だった。 彼女の格好から察するに、今日は休暇なのだろう。 私服でアイスを食べる姿は、歳相応のモノだった。 傍らにはナカジマ家の末娘の姿もある。 知り合い同士が仲良くなっているというのは、ある意味嬉しいモノだった。 ソレを微笑ましく見つつも、オーリスはあることを思い出す。 今日の花は【色が綺麗だから】という理由で持って来たが、以前のユリのようなオチはないだろうか。 病人の見舞いに、持って来てはいけない花。 ソレを持って来てしまったオーリスは、あの後少し落ち込んだ。 端末を開き、インターネットに接続する。 提示された情報を次々と読んでいき、そして…………持ってきた【菊】の花がパサリと落ちた。 あとがき >誤字訂正? 円冠さん。ご指摘いただき、ありがとうございます。 ただ【フェイトそん】はワザとなんです(苦笑)。 今回のお話を見て頂ければ分かると思いますが、フェイトの呼び方の一つと考えて頂ければ、ありがたいです。 >誤字訂正 俊さん。毎度ご指摘頂き、本当にありがとうございます!! >熱血&オヤジ成分不足気味 ソロソロ禁断症状が出そうです。 熱いオヤジを書きたい!!……でもソレだと、話が進まない!! 一体どうすれば…………。