前回のあらすじ:ミルク砂糖緑茶の脅威は、キャプテンベラボーによって阻止された。ありがとう、キャプテンベラボー! フェイトそんはあの後、開き直っておチビ二人とお出かけに。 現在彼女らは、デパートで昼食を済ませた後の……【花摘み】タイム。 古来より男子はすぐに終了し、女子は何倍も掛かる。 身体の造りやその施設の個数などが違うため、ソレは仕方の無いこと。 更に言うと、その差は利用する人数に比例して大きくなり、結果として男子は相当待たされることもあるのだ。 今日はその大当たりの日で、エリオ少年は今【スーパー手持ち無沙汰タイム】なのである。「(…………今日は混んでるなぁ……)」 律儀にも、直立不動で待ち続ける少年。 彼の前を様々な人々が通り過ぎ、することのないエリオは、ソレを目で追うようになっていた。 老若男女。本当に色々な人種が歩いているのを目の当たりにし、その中に不思議なモノを見かける。 デパートの中の一つの店舗。 所謂アンティークショップと呼ばれるソレ。 そのショーウィンドゥの前に座り込んで、ずっと眺めている少女が一人。 紫色の長髪に、ボロボロのマント。 凡そ、デパートのような所へ来るような格好ではない。 だが彼女は静かにソコに居た。 見たところ、エリオと同い年くらい。 特にすることもなく、そしてその【変わった】少女のことが気になった少年は、勇気を出して話しかけた。 何を見ているの、と。「…………」 初対面なのに、馴れ馴れしく話しかけてくる少年。 ソレは少女から見たら、ただのナンパ男くらいにしか見えない。 そう思って最初は無視を決め込んでいたが、少年のあまりの落ち込みように、仕方なく答える。「…………アレ」「アレって…………あの【蝶々】の仮面、のこと……?」「…………そう」 少女の指し示す先には、一つの工芸品があった。 いや。ソレはもう、美術品と言い換えた方が良いかもしれない。 豪華な装飾を施されたその仮面は、まさしく華麗な蝶々だった。 黒地に赤紫の紋様。 綺麗というよりは、妖しさを含んだ美しさ。 少年は、自分が思った感想を素直に口にした。「……何ていうか…………スゴク【オシャレ】な仮面だね……?」「……!!そう、思う…………?」「うん。何かカッコ良い気がするんだ…………」「…………そう」 殆ど表情が変化しない少女だったが、その仮面を褒められた時は、感情が大きく動いた。 ソレは喜びを含んだ瞳。 エリオはソレを見た瞬間、心臓を鷲掴みされたような錯覚に陥った。「(な、今のは一体…………?)」 自分でも良く分からない感覚。 少年はソレを振り払うように、別のことを考えるようにする。 ふと目に留まったのは、オシャレ仮面の値札。 芸術品故にある程度は高いが、ソレでも所持金で買えるほど。 六課に来てからの給料が丸々手付かずの身であるため、少年の財布は軽くはなかった。 隣の少女を見る。まだ仮面をジッと見続けている。 その熱心さは、またも少年の心を掴んで離さない。 逡巡。 そして出た結論を持って、エリオは店内に入っていった。 少年から少女に渡される紙袋。 その中には硬い箱が入っており、更に中には…………先程の【蝶々】の姿が。 受け取れないと言う少女。だったら話し相手になってよ、と言う少年。 暫く物欲とプライドの間を行ったり来たりしていた少女だったが、最終的には陥落。 互いの自己紹介から始まり、少女は旅の目的を話す。 彼女の目的は、眠り続けている母親を起こすための、アイテム探し。 治癒力や魔力の高いモノを探し続けているという少女の話に、エリオは感心するばかり。 自分もフェイトがそうなったら、キャロと共にアイテム探しをするかもしれない。 そう思いながら話を聞いていると、徐々に真剣になっていることに気付く。 そして同時に、もの凄い視線を感じてその先を見る。するとソコに居たのは…………金とピンクの夜叉だった。 やぁやぁ。 何か最近、トンと忘れられているような気がする。 ……でも気にしない。 影の薄さは今更なコト。 オヤジーズが居る時点で、アイツら以上に濃くはなれないのだ。 だから気にしてなんかやらない。 ともかく現状を分析しよう。 フェイトそんの介入があったものの、【機動六課の休日】は進行中。 ポンコツ執務官と分かれた後のボクは、その足で陸士一○八部隊に来ています。 久々に会うゲンヤは、以前と全く変わらず。 今日はギンガがトラック横転事故の調査中に、生体ポッドの残骸を発見したらしい。 いよいよヴィヴィっ子が登場する模様。 だが原作と一つ異なる点があり、レリックのケースが【三つ】あるようだ。 その一つは既にエリオたちが、幼女と共に確保。 残りの二つを現在捜索中。コレが今起こっているコトだ。「…………行くぞ」「オイオイ。部隊長がそんなにカンタンに、動くなよ……?」 硬い表情に想いを籠め、スッと立ち上がるゲンヤ。 その手に握られているのは、クイントと色違いのデバイス――――その待機状態。 完全に覚悟完了といった状態だ。「……オレの予想通りなら、今回は【アイツ】らが出てくる……」 【アイツ】。 ソレは、ゲンヤがずっと追い続けている存在。 ソイツを取り戻すために、彼はずっと極秘裏に動き続けていた。「…………ギンガや、スバル。ソレに六課の面子には、【アイツ】の相手は難しい。だから自分が行く、と……?」 アイツ――――即ち【桜花】と名乗るクイント。 S・Aを極めしモノである彼女は、不完全な娘たちの手に負える存在ではない。 ソレは他の隊員でも同じこと。 彼女に対抗出来る存在は、恐らく【提督ズ】とゲンヤだけ。 カリムは戦闘型ではないし、リンディの実力は不明だ。 となると、ボクも含めた野郎隊。ソレしか【桜花】には対抗出来ないのだ。「……ソレもある。だが…………」「……?だが、何だい……?」 力を込めた握り拳。 ソレを顔の前まで持ってくると、ゲンヤはクワッと目を見開く。 ソコには、尋常ならざる決意が籠もっていた。「自分の嫁を迎えに行く。ソレをするのは、夫の務めだ…………!」 熱い。 何か背景に、噴火中の山が見えるような気がする。 身体から薄っすらと、光らしきモノまで出てくる始末。…………今更だけど、何か番組ちがくない……?「……しゃーない。ボクもお手伝いしましょう。ゲンヤにもしもがあったら、娘たちに恨まれそうだしねぇ……?」「…………悪いな。今度何か奢るからよぉ……?」 若干おどけて言うゲンヤ。 いつもの調子が、戻ってきたみたいだ。 熱くなり過ぎるのもいけないから、コレぐらいが丁度良い。「要らない。お礼が欲しくて行くワケじゃないし、ね……?」「そうか。だったら、ウチのギンガかスバルを…………」「大却下。ゲンヤさ、少しでも食費の負担を減らそうとしてないか……?」 あ。脂汗をかいてる。 ナカジマ家のエンゲル係数は、平均の十倍以上。 いや。以上って言うより、【異常】の方が正しいだろうな。 彼は嫁と娘には滅法甘いけど、ソレと同時に娘たちの今後も大層気にしているのだ。 食欲魔人で、スーパー格闘少女な二人。 嫁に行って欲しくない反面、はやく孫の顔も見たい。 そのジレンマを解消出来そうな人間は、残念なことに少ない。 そして何故か彼の中では、ボクがその一人としてカウントされているらしい。 そう考えている反面、仮にボクがそうなったらなったで、クイント・レジアスと共に決闘を挑んでくるつもり。 ……矛盾と思うこと無かれ。 男親とは大概、矛盾を内包した存在なのだよ。 だからと言って、ソレに付き合ってやる義理はないのだがね……? ゲンヤと移動中に、六課の状況を確認する。 そのあたりは人工衛星という目を装備した、カリムがやってくれている。 こういう時用に提督ズには人工衛星の操作を教えたのに、先の彼女のような使い方は想定外だ。 ……もう少し、運用形態を考えた方が良いかもしれないな。 そんなバカなことを考えつつ、入ってきた情報を整理する。 六課新人組は地下に潜り、隊長陣はお空へ。 大量のガジェットⅡ型を掃討するために、はやてが限定解除して現場へ到着。 ロングアーチのサポートを得て広域攻撃。 その際、コレまでの鬱憤を晴らすかのように激しく攻撃し、とても【良い】カオだったらしい。「あははは!見てみぃ、ガジェットがゴミのようや…………!!」 表情と言い台詞と言い、コレではどちらが悪役か分からん。 そんなイメージを払拭するように、フェイトが天使のコスプレ……のような衣装でオンステージ。 「ウェェェェイト!!」とか言ってるトコロを見ると、またメルに乗っ取られた模様。 そんな二人に苦労しつつ、何とかガジェットを仕留めていくなのは。 ……おかしいなぁ。逆の光景ならすぐに想像出来るのだが、この光景は予想出来んかった。 ハッチャケ狸&狐(原形のキャラからイメージ拝借)と、レベル不足の飼い主。 その手に持つのが物騒なデバイスでなければ、どう見てもほのぼの風景だ。 でも悲しいかな、ココは戦場。 つまり敵さんの真打ちが登場、というワケだ。 ナンバーズ。 そのⅢ・Ⅳ・Ⅹを従えて、あの狂気の科学者が降り立った。 いつもと変わらぬ不敵な笑み。だがいつもと違う、白いスーツ。 【Ⅰ】と刻印されたメダル。それを手の甲に着けた黒いグローブを両手に填め、ネクタイではなくスカーフが襟元を飾る。 普段はしていない眼鏡を着用し、ソコには王者の風格があった。 はやてにトーレ、フェイトにディエチ。そしてなのはにクアットロを当てると、彼はその場で観戦モードに移行する。 速さに速さをぶつけるのではなく、速さには大砲。 拡散砲にはスピード。さらに固定砲台には幻術をぶつける。 相手の長所と同じモノで対抗するのではなく、異なったタイプ同士の戦闘。 ソレが彼が選んだ戦術であり、コレならカンタンにはやられないだろう。 敵ながら天晴れだ。良く考えてると思う。 その褒め言葉が聞こえたのか、スカリエッティはカメラ目線で宣言してきた。「……聞いているのだろう、ダイノーズの諸君……?御覧の通り、今回は個人戦だ。よって私は、レジア…………もとい、キャプテンベラボーとの決闘を所望する!!」『…………!?』 明らかにコチラのカメラの位置を把握した宣言。 挑発とすぐに分かる、ヤツの態度。 だが解せない。アイツ程の頭脳の持ち主なら、コチラがそうカンタンには応じないということも、分かっているハズなのに……。「……どうした?今ココで私を倒せば、君の【親友】を助けることだって、出来るのだよ…………?」 そうか。そう言われたら、出て行くしかないよな。 レジアスという【大将】がご指名なら無理だが、相手がご所望なのは【キャプテンベラボー】。 敵さんながら、コチラの憂いを断ってくれるとは…………何て【悪役】なんだよ……? 『…………シズカ。聞こえているか……?』「……あいよ。行くんだろ?気を付けてな。あと、お土産を忘れるなよ……?」『…………あぁ。楽しみにしていろよ……?』 決意を胸に。 ゲンヤと同様、レジアスも探し続けている人物のため、闘いに赴く。 その相手は敵の総大将。どう考えても、一波乱あることは間違いない。 だがアイツなら。 向こうさんの思惑なんぞ、鉄拳一つで粉砕してくれる。 そんな期待があることも確かだ。「……行こう。レジアスにはレジアスの戦場があるように、ゲンヤにはゲンヤの戦場あるんだ……」「…………おう。ところで、頼んであったヤツは、もう出来てるか……?」 ボクはバッグの中から、黒いカタマリを取り出す。 ソレは太目のグリップのようであり、小型の端末にも見える。 中心部のやや上に金のサークルがあり、その中には液晶ディスプレイの姿が。 サークルがダイヤルのように回るのを確認すると、ソレをゲンヤに手渡した。 ソレはゲンヤ・クイントのリボルバーナックル用の、追加武装。 中には数種類のデータが入っており、ソレらは心強い武器となる。「今使えるのは、黒いウィップだけ。どうせ撃てるのは一発分のエネルギーしかないんだ。ソレでガンバってちょうだいな……?」「……ありがとよ。コレなら、魔法が使えない分をカバー出来そうだぜ……」 クイントとゲンヤの差。 力はゲンヤ。スピードはクイント。 それぞれに得意分野があり、ソレ以外は大体同じ。 だがクイントにはもう一つ。もう一つだけアドバンテージがある。 その一つがとても大きな壁であり、ゲンヤの行く手を立ち塞ぐモノでもあるのだ。 ソレは【魔法】。 ウイングロードやリボルバーシュートなど、戦局を一変するような有利なカード。 コレの差を無くすために、ゲンヤはボクに新たな武装の依頼をしてきた。 ソレが腕部や脚部に取り付ける、追加武装。上手く使いこなせれば、魔法の差を縮めることが出来るだろう。 地上ではレジアスが到着し、地下ではギンガが新人たちと合流した。 このままのペースで走っていけば、新人VSガリュー・ルーテシアの開始直後には着くと思う。 レリックの数が一つ多い。ソレだけが気がかりだが…………とにかく今のボクたちは、走ることしか出来なかった。 あとがき >誤字訂正 ななんさん。ご指摘頂き、ありがとうございました! >大将日記とオーリスちゃん。 現在色々と迷走中なので、今回はなしで。 次回以降も、良いネタがある時限定にするかも……。