前回のあらすじ:スーパークロノタイム⇒スーパー爺タイム スーパー的なデュランダルの作成という、かなり良い仕事を終えたので、今の気分はかなり爽快。 ……だったのだが、スーパークロノタイムが無くなってて、思わず飲んでいた紅茶を噴いた。 どうにもこの世界、渋いオヤジたちに補正が掛かることが多いらしい。今更ながら、その事実に気が付いた。 だからと言って、やることを変更するようなことはしない。 良く言うじゃないか。どんなことでも、最後までやり抜いたモノが勝ちだって。 似たようなことを、某【ドリル持ちの巨大顔型ロボット】のパイロットも言ってたしね。 まぁソレより今の課題は、リボルバーナックルの作成。 割り込みの急ぎの仕事が入ったからって、納期が延びてくれるワケではない。 現在クイントが使っているとされるデバイスのデータを参考に、新たな設計図を作成していく。「ふ~ん。このデバイスには、タービンとカートリッジシステムが付いてないのか……」 ということは、まずコレらの追加が最優先事項だ。 そういえば、クイントは両手にナックルを付けていたハズ。 ところがこの資料では、彼女は片手のみ使っているとある。 ……両手に追加しよう。多い分には問題ないだろう。 今度はもう一度彼女のデータを詳細にチェックし、戦闘スタイルの確認をする。 STS本編でのスバル・ギンガとは違い、彼女は足技も多用するとあった。 もしかすると娘たち(というかギンガ)には、教え切れなかったのかもしれない。 だから彼女の遺伝子を使ったノーヴェが、足技を使っていたのか……納得。 だったらこの際、【両手両足】用のデバイスに仕上げるのも悪くない。 ――コマ○ド、インストール!! 何か今、変なビジョンが脳裏を掠めたような気がするが、気にしてはいけない。 多分寝不足が引き起こす、幻聴や幻視の一種だろう。 とりあえずこの設計図を描き終えたら、今日はもう寝よう。うん、そうした方が良いに決まっている。「ちーす、ゲンヤ。今、大丈夫?」 やはり資料だけでは分からない部分もある。 なので生じた疑問を、依頼主に確認することにした。 折りしも今日は日曜日。ゲンヤの空き時間に合わせて通信できる。「オゥ。シズカじゃないか?あぁ、今は昼飯中だから、時間は大丈夫だが……」 突然の通信に、用件が分からないご様子。 彼にしては珍しく、戸惑いのようなモノが見て取れた。 レアショットだね。記録して、あとでクイントさんの端末に送ってやる。「いやね?データだけじゃ分からないトコロがあってさ……」「あぁ、そういうことか。良いぜ?オレが分かる範囲で良いんなら、教えてやる」「そりゃあ、助かるね」 正直、シューティングアーツという特別な格闘技を、ゲンヤが何処まで理解しているかは不明だ。 でもこの作成は、クイントには秘密にしなければならない。 だからダメ元でゲンヤに聞いてみたのだが……。「ソレはウイングロードからの――つまり上空からのアタック方法の一つだ。他にも……」 予想外にも程がある。 このオッサン、S・Aを技術面で解き明かす程、大変良くご存知でした。 何で?一体何で、そんなに知ってるんですか。アンタって人は?「……実はよぉ?アイツと付き合う条件っていうのが……『私に勝てる漢よ!私と付き合いたいのなら、私を倒せる技量の持ち主じゃないと!!』って感じでな……」 何ソレ? メッチャ体育会系のノリじゃないですか。 てーことは何か?ゲンヤはクイントに勝ったってことなのか?「最初の頃は全然ダメでよぉ。なっちゃいないからって、呆れたクイントが稽古をつけてくれてさ……」 テンプレですね。 最近はあまりに古典的過ぎて使わなくなった、古よりのテンプレなんですね? 何かクイントさんの印象が、若干変わってきたような気が……。「色々あって……まぁ、結局は一緒になれた……ってトコなんだが」 色々の部分が一番気になるけど、突っ込んだら一年枠のドラマでも収まらなそうだ。 加えて、桃色タイフーンが吹き荒れそう。 惜しい気もするが、話を先に進めよう。「……アレ?ってことは、ゲンヤもシューティングアーツが使えるの?」「……言ってなかったか?」 ウソォォォォォ!? 何で?どうしてこの世界のオヤジたちは、こうまでも強いんだよ!? ヤバ過ぎるでしょうに!?「まぁ、ウイングロードとかリボルバーシュートみたいな、魔法併用の技は使えないがな……」 充分過ぎる。 そんじょそこらの犯罪者なんか、素手で一撃。 ハイ、終~了♪みたいなノリじゃないか。 ……ん? 何か閃いたぞ。ゲンヤもS・Aが使えるってことは……。 脳裏に浮かんだ青写真を、実行可能かシュミレート。結果は……承ぉ認!!「ねぇ、ゲンヤ。リボルバーナックルなんだけどさぁ……両手両足型のデバイスにしない?」「そいつは……そうか。S・Aの特性を活かすためか……」「うん。良いアイディアがあるんだけどさぁ」「……あの予算内で可能なのか?足の出具合にもよるんだが……」「心配ない、心配ない♪その辺のことは問題ないから……」「……そんじゃあ、頼むわ。正直、オレには思い付かなかったから、助かったぜ?」 ゲンヤはデバイスマスターではない。 だから、何処までが実現可能なモノかは分からない。 故に控えめの注文になってしまったのだろう。 さて。通信を終了させて、早速新たな設計図を引くとしよう。 両手はSTSに出てきたリボルバーナックルを参考にし、両足はジェットエッジの膝の突起をなくして……と。 タービンの色は紅で統一し、オプションで銀色の角突き仮面を……は、やめよう。 さぁ、楽しくなってきたぞ。 中将日記アサルト in 聖王教会 明日はいよいよゲンヤの結婚式。結婚式は教会式で行い、披露宴もちゃんとある。 正直、聖王教会の人間が良い顔をするとは思えなかったが、騎士カリム自身が司祭役を引き受ける始末。 事前にシズカが頼み込んでいたとはいえ、予想も出来ない事態となった。 今自分は、明日の披露宴用のウェディングケーキを焼いている。 本来のウェディングケーキは、全く食べられないか一部しか食べられないモノである。 ……が。クイントと娘二人が、どうしても食べられるモノが良いと言い出し、ならばとその作成を引き受けたのだ。 自分が土台を焼いていき、シズカがソレを盛り付ける。 洋菓子屋で修行をしたことがあると、言っていただけのことはある。 コレなら、安心して焼きに専念出来そうだ。 ……ふぅ。コレで二十段目。 ビルの高さに直すと五階分に相当するこのケーキは、作るのも一仕事だ。 消化出来ていなかった有給。ソレを使わなかったら、完成は難しかっただろう。 騎士カリムが紅茶の差し入れをしてくれた。 ありがたい。 シズカと共に一時休憩にして、夜の景色を堪能した。 補論:明日の結婚式に参加するため、今日は美容院に行ったオーリス。 ドレスも用意し、準備は万端……と思われたが、一つだけ見落としがあった。 それは明日の起床のこと。自慢ではないが、彼女の寝起きは非常に悪い。 いつもは幾つモノ目覚ましで半覚醒になったところで、レジアスが起こしてくれるのだが……。 生憎彼は、今日は聖王教会に泊まりこみである。 半分公式行事のようなモノなので、遅刻は許されない。 仕方無しに、帰宅途中で更に目覚まし時計を購入。 合計二十個の目覚ましによる合唱は、オーリスを覚醒させられるのだろうか? あとがき >誤字訂正 常葉さん。ご指摘いただき、ありがとうございました。