<五月六日―快晴>
僕の名は碇シンジ。
6月6日生まれ、現在16歳でA型。
身長180前後。体重はわからない。
何の因果だか知らないが・・・・・実は知っているが今回の人生は僕にとって“三回目”の人生となる。
ぶっちゃけ“一回目”の人生のときの自分の行為が原因なのであまり文句は言えない所だが、はっきりいって“二回目”に生まれた世界が“一回目”をはるかに超える非常識な世界だったので多少文句をいってもかまわないだろう。
というか二回目の世界が滅びてしまったのは断じて僕のせいではない。と思う。
今回の世界ではせめて30歳まで生きれるといいなと思ってしまう今日この頃。
カオル君・・・・『生と死は等価値』ってこういうことなのかい・・・・・
Episode『1』
『・・・・・ということだ。先方には一応連絡を入れておいた。粗相のないようにな』
「わかってるよ。父さん。」
『ああ、たまには連絡を入れるように。」
「父さんに言われたくないんだけど・・・・・」
『フッ・・・問題ない。』
ブチッ
「あっ・・・・ったく・・“こっち”の父さんも・・・全く・・・こういうところが可愛いのか?」
接続の切れた携帯をしまいながらシンジは大きくため息をついた。
「ふう―・・・・遠縁の親戚か・・・僕に親戚が至ってので驚愕の新事実みたいな気がするよ。」
事実上“一回目”のときの親戚は血縁関係のない形上のものだったし、“二回目”にいたっては生まれて数ヶ月で両親ともに他界してしまったためシンジは両親以外の親族を知らなかった。
故にシンジの中でちょっとしたショックとなっていた。
「話の分かる人だといいんだけど・・・・。」
頭の中で想像を膨らませながら微妙に暗い気分になりながらシンジはその家の方向に歩いていた(家の正確な場所は解らないが大体の地名ならば聞いている)。
祖父母にもあったことのないシンジは遠縁といわれてもしっくりこなかったし親戚の付き合い方というものも良くわかっていなかった。
「カナダの時のホームステイみたいな感じかな・・・・ん、考えても解らないか少し公園で休んでいこうかな・・・・。」
とりあえず身近な問題を後回しにすると近場のコンビニに入りジュースと区内のマップを買う。
「え~と1000円札からお願いします・・・・そういえば『東京』に来たのって初めてだ。」
コンビニを出ると近くにある公園のベンチでやすもうとどんよりとした足取りで歩き出した。
間も無く公園に入ると電灯のついているベンチの近くまで進んだ。いつのまにか日没の近い時間帯になっていたようであたりは薄暗い。
「さてと・・・」
シンジがベンチに座り買ってきた地図を広げジュースのふたを開けようとしたときそれは起こった。
鋭い光が走った。
そしてズシッとした重みのある“着地音”とともにそれは現れた。
それは身の丈二メートルは超える大男でグレーのシャツに革ジャンと薄汚れたアーミーパンツで“なぜか”微妙に焼け焦げていた。
「ふうーーーーー・・・・なんとか生きて帰れたが・・・・さすがにくたびれたぜ。さて、ここは―――――」
その大男は首をコキコキ鳴らしながらあたりの様子を確認しようとしていた。
「あの 「ちょっとそこのあんた!!」 ・・・・」
声をかけようとした矢先に台詞をとられてしまったシンジはばつの悪そうな顔をして声のした方を向いた。ちなみに大男もその声の主に注目している。
(み、見られたー!?)
(僕の台詞が・・・・ふふふ・・・いい度胸してるじゃないか)
しっかりと男に注目しながら声の主を確認する。
一七〇以上あるすらりとした長身で長い黒髪を高い位置でポニーテールにしている。目鼻立ちがはっきりしている。美人というかハンサムで太目の凛々しい眉が意志の強そうな印象を出していた。
「ええ~っと・・・」
男が顔を巡らせて周囲を見回すと運がいいのか悪いのかシンジと目が合った。
「君。彼女が呼んでいるようだ。早く言ったほうがいいぞ。」
「は!?」
いきなり話を振られて絶句するシンジ。対人関係は以前に比べれば格段の進歩をしたといって言いが未だ得意分野ではない。
「なにふざけたこといってんのよ!!そっちのでかいほうに決まってるでしょ!!」
「あ、そうですよね。」
男はうぐ・・とした表情になったが
「そ、それで・・・・・俺に何のようだい?」
「とぼけるじゃないわよ!!今、あんた、その・・・何かピカーッと光って、いきなり出てきたでしょ!?」
「だから、何だ?」
「え?」
少女は男の冷静な半のに面食らったようだった。
(うわ~あの人、なんていうか開き直った?)
もはや傍観者と化したシンジはとりあえずこの二人のやり取りを見てから行動することに決めベンチに腰を落ち着けるとじっくりと観察をはじめる。
「いきなり光とともに現れたから、それがどうしたというんだ?何か問題でもあるのか?日本の法律に触れるのか!?そして君の家はマンションなのか?」
(ああ~、あの娘がひるんだとみて畳み掛けにいったね。)
「え~と、その・・・・うちは一応一戸建てだけど――」
(なんかけんか腰のとことか勢いに飲まれると弱いとことかアスカに似てるな。)
「世の中には訳の分からないことなどいくらでもある!余計なことに首を突っ込んでいる暇があったら、学生らしく家に帰って宿題でもするんだな・・・・では、さらばだ!!」
男は背を向けて歩き出すが、すぐに呼び止められた。
「ちょっと待ちなさいよ!ごまかそうったってそうは問屋が卸さないわよ!!」
(ううっ、やっぱり!?)
(今時の女子高生は問屋って言葉を使うんだ)
妙なところで感心しているシンジだがすでに忘れられているのが悲しいところだった。
しかし、シンジは決定的瞬間を目撃した。男に向かって少女が鋭利な物体を投げつけたのである。
男は動物的勘でそれをキャッチしたようにシンジには見えた。
「こ、これはボールペン!?」
(ボールペンか・・・中に錘でも仕込んであるのか・・・・アスカ以上に危険だ。)
更に、少女はボールペンを次々と投げた。男は次々と受けとめたが
「あ」
「へ!?」
手元が狂ったのかシンジのほうへ飛んできてしまった。
とりあえず不意打ちではあるが飛来するそれを手刀で叩き落すシンジ。
「・・・危ないな。もうちょっと練習したほうがいいよ。」
すっかり傍観者と化して忘れられたシンジが簡単に棒手裏剣と化したボールペンを迎撃した事でようやくシンジは当事者たちの中に加われたようなきがした。
シンジは気づかれないようにさりげなくいつでも攻撃できるように間合いを詰め出す。しかし、男のほうが気づいてしまう。
「いや、そういう問題じゃないと思うが(この殺気は・・プロの暗殺者か!?)・・・それはともかく・・・何をするんだ!?危ないじゃないか!」
「簡単にキャッチするなんて・・・あんた、只者じゃないわね!?そっちの奴もただ通行人Aとみせかけておいてかなりのシノビね!?」
「いや、君も相当なもんだと思うけど・・・・」
「勝手にシノビにされても困るんだけど・・・(まあ・・一通り使えるけど)」
「おだまり!」
少女は無意味にハイテンションで竹刀袋の口を解き赤樫の木刀を構える。
「どう考えても怪しすぎるわ。何がなんでもあんたたちの正体、暴いて見せる!」
「ま、待て・・・話せば分かる」
「僕は知らない間に仲間にされてるし」
「問答無用!!」
言うなり少女はポニーテールを躍らせながら踏み込み、烈風のような突きを放った。
(これは――!)
男は上体をひねって避けたが少女の攻撃は止まらない、一瞬だけシンジと目が合ったがその目は興奮していて殺気だっていた。
「痛あ――っ!!ほ、本気で殴ったな?今のは手加減しなかったろ!?」
「そうよ、本気と書いてマジと読むのよ!これ以上痛い目にあいたくなかったら潔くはなすことね!」
少女はすり足でじりじりと男に間合いを詰め掛ける。シンジから見るにとても“うれしそうに”見えた。
「あんたいったい何者?どっから来たの?まさか歴史を変えるために未来からタイムマシンで―――」
「それじゃターミネーターだよ。」
「じゃあ、宇宙人が地球偵察のために送り込んだアンドロイド?」
「アンドロイドが木刀で殴られて痛がるか!?」
「それだけ性能がいいのよ!」
「無茶苦茶な・・・・」
「それで嫌なら超能力でテレポートしてきたんだわ!」
「ん~・・・じゃあ、それでいいよ。」
「ウソね!絶ぇーっ対、そんなはずないわ!!」
「どっちなんだよ!?自分で言ったくせに・・・」
「ええい、問答無用よ!」
(漫才のようなやり取りだ)
攻撃されながらもまたもや蚊帳の外に出されてしまったシンジは半ば呆れながらこのやり取りを見ていた。しかし、自分もいつでも襲いかかれるように気構えを持っている。問題は男の実力が計り知れないことだった。
(構えを変えた!?)
男は明らかに何かを狙ったような姿勢―爪先立ちになって背中を丸め、逃げ腰に見える奇妙な構え―をとる。
シンジがこれで決着がつくだろうと今までにもまして集中して戦いを見た。
少女が多少の警戒は見せたものの正面から踏み込んでいく。すると、男が滑るような歩き方で間合いを詰めて木刀をふり上げた一瞬の隙に少女の死角に入り込む。
「―<南雲流無刀取り>!!」
パンッ!
(カウンター!!はいった!!)
「あ、しまった―――」
「え、しまった?」
崩れ落ちる少女を抱え、男は青ざめる。そんな男を眺めながらシンジは気配を殺して男の近くに寄っていった。
「まいったなあ・・・・」
「落とす気じゃなかったんですか?完璧に入ってましたけど。」
「しまったもう一人いた!」
すっかりシンジの存在を忘れていたらしい男は、解決した事件をまたぶり返された犯人のような顔をしていた。
「いや、まあ忘れられてもね・・・・」
苦笑いしながらシンジが頬をかき、男が難しい顔をする。
「ん?」
さっきまで乱闘を演じていた場所に落ちているものを発見し、シンジは手に取った。それは生徒手帳でグレーの表紙を開いて中を見ると、少女本人の顔写真が載っている。
「大門高校二年B組、御剣涼子・・・・・」
男にも見えるようにシンジが開いた面を男に掲示する。
「あ~なるほど、な。」
やけに説得力ある名前にシンジも男も腑に落ちた気分になった。
「ふむ、ではこの子は俺が責任もって家まで送り届けよう。手帳を貸してくれ」
「はい。」
「すまない。」
シンジが手帳を渡すと男は少女をおぶりその場を離れようとする―――――――が、
「って、ちょっと待ってください!!」
「う!ま、まだ何かようかな!?」
男の顔が引きつる。
「ベタな誤魔化しにひっかかるところだった。あなたはいったい!?」
「はははは、え~とちょ超能力者ってことにして置いてくれないか?」
「ダメに決まってるでしょう!?」
「やっぱりか・・・?」
「どうしてもごまかすって言うんなら、こちらにも考えがあります!」
「ああっ!!もうわかった!!話す!話すから!」
殺気の乱闘で懲りていたのか、男がうんざりしたような口調で言った。
「ただしコイツの家に行く途中に話しながらだぞ?」
「分かりました。」
そして道中―――
「それで・・・あなたの名前は?」
「人に名前を聞く時は自分の名前から言うもんじゃないのか?」
「ム・・・碇シンジです。」
「俺は南雲慶一郎だ。」
とりあえず自己紹介する二人。シンジは出鼻をくじかれて少々機嫌が悪いが慶一郎は落ち着きを取り戻したらしく人を背負っているのに全く呼吸が乱れていない。
「で・・・その南雲さんは、なんであんな所にいきなり?」
「う~ん」
慶一郎は低くうめいて、面倒くさそうに顔をしかめるがシンジの殺気が再び大きくなるのを感じてしゃべりだした。
「説明してもいいけど・・・たぶん信用しないと思うぞ。」
「それは僕が決めることです。さっさと話してください。」
切れるような殺気が先程とは逆に小さくなっていくが更に鋭く密度の濃いものになっていくのに慶一郎は気づいた。
(コイツは明らかに実際の殺し合いをしたことがあるな。かといって前にあった少年兵の特殊部隊って感じじゃないが・・・ともかく『危険』なことには変わりないか・・・)
「いいだろう。簡単に言うとだ・・・俺は地球上には存在しないソルバニアと呼ばれる異世界へ魔法で召喚されたんだ。さっきのは偶然戻ってきたところに遭遇したわけだ。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・どうやって?」
「え?」
「どうやってですか?」
「信じるのかこんな話!?」
「ウソなんですか?」
「いやウソじゃないが・・・・」
「じゃあどうって行ったんですか?」
「む・・・こいつを媒介に呼び出されるらしいが・・・・」
そういうと慶一郎はTシャツの下から青いペンダントを出し、シンジに見せた。
「ちょっと貸してもらっていいですか?」
「まあ・・・いいが・・・」
あまり気のすすまない慶一郎に対して強奪するような感じでシンジはペンダントを奪い取る。
「見ても分からんと思うぞ。」
「そうでしょうか?」
「なに?おい、何をする気だ!?」
「<書―展開>」
そうシンジがつぶやくとまるで浮き出る様に闇から一冊の本が現れシンジの左手に納まりひとりでに開いた。
「第三分類制限一時解除申請する―――クリア。解析開始―――対象、第二種精神感応物質。」
幾何学的な図形の刻まれた魔方陣がペンダントを飲み込んだと思うと今度は平面だった魔方陣が立体になる。
「お、おい!何してるんだ!?」
「黙ってみててください。ただの立体型魔方陣です。」
「いや魔法陣って・・・」
やがて数秒すると魔方陣は消え元のペンダントに戻る。いつのまにか本も消えていた。
「なんだったんだ?」
「ふむ・・・ありがとうございました。」
「あ、ああ。」
慶一郎はペンダントを返してもらうと同時にシンジの殺気が消えているのに気づいた。
「あなたの言い分はわかりました。」
「わかったのか!?」
これは慶一郎にとって、予想外なことであった魔法で召喚されるなどばかげた話信じられないだろうと思っていたからである。
「はい。」
「信じられん。」
「は?」
「何だいまのは!?」
「魔法でその石から情報を読み取ったんですけど・・・・」
「魔法?」
「はい」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
再び沈黙が訪れる。
「信じてないんですね!?」
「・・・・・いや、信じよう。」
「・・まあ、どっちでもいいですが・・・・」
「しかし、そんな技術どこで覚えたんだ?」
「異世界です。」
「は?」
「ソルバニアじゃないですが・・・僕も異世界やら平行世界やらにはにはどうも縁があるので・・・・」
「本当か!?こういうのは俺だけだと思ったんだが・・・」
「まあ、事情は違いますし・・・」
「そうか・・・ってこっちの事情はわかってるのか!?」
「え~と・・・たしか『ウィラード・ゲイツ』って人を倒してその報復から助けてもらったから異世界に召喚されて怪獣と戦ってるんですよね?」
「まあそうだが・・・すごいな。それが、魔法か。」
「まあ時間をかけなかったのでこのくらいしか分からなかったんですけど、まあ事の真偽を確かめるだけでしたので・・・・」
「じゃあさっきの考えって言うのも・・・」
「はい、ちょっと頭の中をのぞかせてもらおうかと・・・・まあ、結構時間がかかるので実際には拘束でもしないとやりづらい魔法なんですが・・・」
「そうか・・・・それは俺にも 「無理です」 ・・・なんでだ?」
「世界の法則が違うし・・・僕も制約がかけられていて使う時はいちいち<書>を呼ばないと使えませんし・・・・」
「そうか・・・」
慶一郎は残念そうな声をだすも実際はそんなことよりも自分と同じように異世界がらみの人間に初めて会ったことで頭がいっぱいだった。
「あ、そろそろじゃないですか?その涼子さんの家。」
「ああ、そのようだ。」
高台に作られた急な階段が見えてくる。
「では、僕はこの辺で失礼します。下宿先にも挨拶しなければいけないし・・・・」
「下宿?」
「ええ、実は今日ニューヨークから着たばかりなんです。」
「ほう、奇遇だな。俺も昨日ギアナからな。」
「へえ・・・ずいぶん偶然ですね。」
「人の縁ってのはそういうもんさ。好きだろうが嫌いだろうが、縁がある奴は縁があるんだ。」
「なんか、実感こもってますね。」
「まあな・・・」
二人の間に多少の間があく。
「じゃあ・・・これで『縁』があったらまたあうでしょう。」
「ああ・・・また『縁』があったらな・・・」
そうして二人は分かれた。
続く