『ZEELE』・・・かつて世界の三分の二を裏から支配していた『悪』・・・っぽい組織である。
しかし実際のところ20年程前に子飼の下部組織に過ぎなかった『NERV』が離反。
新生『ねるふ』は碇ゲンドウの指揮のもと『ZEELE』と肩を並べる組織にまで成長した。
そして、ついに3年前『ZEELE』は『ファーストインパクト』と呼ばれる事件によってその勢力を実に20分の一まで衰えさせてしまったのである。
現在、『ZEELE』は表面上は沈黙を保ちながらも再び息を吹き返そうとしていた・・・・
Episode『16』
夜、碇シンジは自室で淡く光る『本』を広げ精神を集中させていた。
『・・・・・・第四次適応刻印活性。第五次適応刻印活性。第六次・・・』
パキ パキ パキ
本がシンジの声にあわせて光を増していく
『第十五節理力法発動』
その言葉と共にシンジの体が本から出た光ではなくシンジ自身からでた光によって包まれる。
青と緑の中間のような光はすぐさま優しげな光を放ち30秒ほどで霧散した。
パタン
シンジが持っていた『本』を閉じ手のひらに掲げると『本』は独りでに空中に浮き空間に埋もれるように消えていった。
「ふぅ・・・・やっぱり。この世界だと理力は使いづらいな。ソルバニアなら『本』を使えばもう少し高度な力が使えるかもしれないけど。」
そう言ってシンジは視線を下におろす。そこには酷く巨大な足形が見える。いわゆる『ギブス』というヤツだ。
「う~ん・・・・たしかに骨が突き出してたから結構な治療が必要だったんだろうけど。日本の医者は気功治療法はともかくLCL細胞復元治療も出来ないのか?」
シンジは両手を左足のギブスに添えると呼吸を整えて半眼で注視する。
「はっと」
ボン!
気合の声と共にシンジがギブスを摩ると文字通り『爆散』した。そして破片は細かく砕かれて地理と区別がつかない。
「うん。」
とんとん足をたたいて状態を確認するシンジ。満足が言ったのか満ち足りた顔で足を動かしている。そしてふと思い出したように
「う~ん。僕も割りと強い方だと思うんだけどな。世の中には上には上がいるってやつか・・・・。この『世界』では『前の世界』からの持ち越し含めてざっと6人勝てない人がいるな。『持ち越し組み』2人はドイツだからこっちの慶一郎先生に鉄斎先生・・・あとの二人は行方知れずか・・・そういえば父さんて強いのか?」
微妙に難しい顔をした後、一転して気の抜けた顔になるシンジ。
「ま、いいや。もう寝よ。今日は疲れた。」
そして気だるそうなシンジが就寝したのはこれから20分後の事である。ギブスのゴミをきっちり片付けてから眠る辺りシンジの性格がうかがえる。
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所変わって場所はドイツ
「ふむ・・・それでフラウ・キュービィ?我々『ZEELE』に何を望むのだね?アメリカの若造は今だ寝たきりのはずだと思うのだが。」
見事な庭園の中にポツリと円形のテーブルがある二人の人物が談話している。
しかし、椅子に座っているのはダークブロンドの女性の方だけでもう一人は車椅子にひざ掛けをしている。顔のバイザーが酷く印象的な白髪の老人だ。
「ヘル・ローレンツ、確かにゲイツ様は今だ深い眠りの中に折られます。しかしあの方はわれらの神とも呼べるお方。必ずや意識をお取戻しになられます。」
「ふん。私はそんなことを聞きたいのではないのだよ。ミアン女史。」
バイザーの老人はあざけりを含んだ声で女性を見据える。しかしミアンにおびえた様子はない。
「はい。お目覚めになられるゲイツ様のためにゲイツ様を『退いた』ケイイチロウ・ナグモにアプローチをかけようと思っていますので・・・キール老にはそのために協力して欲しいのです。」
ミアンは淀みなく答える。『倒した』という言葉を使わないのはゲイツを絶対の存在としているからだろう。そのゲイツが負けたという事実が受け入れられていないのだ。
「・・・・・なるほど。『ケイイチロウ・ナグモ』、こちらでも何かと話題になっていた人物ではあるな。」
話を聞いたキールが思案げなかおになる。
「『極東の龍』か・・・イタリア辺りでは幾つか潰されたマフィアがある。『ZEELE』の中では『U13』が全滅といったところか・・・」
ふつとキールの頭の中に慶一郎の情報が浮かび上がる。たかがレストランの下働きに過ぎない肩書きでしかないが圧倒的とも言える戦闘力をもつ。『ZEELE』の実験部隊である『U13』も慶一郎に潰されてしまった。もっとも『U13』自体は『学院』の落第者を集めた部隊に過ぎず真の『エリート』は無傷なのであるが。
「『ZEELE』の方々には『ケイイチロウ・ナグモ』に一切手を出さないでいただきたいのです。」
「何?」
キールの顔がやや歪む。協力を頼みに来て手を出すなとはどういうことであろうか?
「『ケイイチロウ・ナグモ』はゲイツ様が御倒しになられます。そのために我々は何人かの『刺客』を用意していますが・・・・」
「なるほど・・・・あくまで『ゲイツのため』にお膳立てをという事をか。しかし、ならばなぜ私の所へ?我々のこうむった被害などあってないようなものだ。わざわざ『ZEELE』がヤツ二手を出す事はありえないが・・・」
「いえ・・・・彼は『ゲンドウ・イカリ』の縁者だと聞いたものですから・・・・」
その言葉にわずかに眉を動かすキール。しかしそれ以外はまるで動揺が見られない。
「初耳だな・・・・しかし、だからといって今の我々には『ねるふ』と事を構えることはできん。」
「ええ、そうでしょう。ソレを確認するために来たのですから。」
「・・・・・・」
キールは心の中で舌打ちする。外見上は車椅子ながらも威厳すら感じさせるカリスマがあるが内心では目の前のミアンに軽んじられている事を煮えくり返るように思っていた。
そんなキールを尻目にミアンは目の前のテーブルの紅茶に口をつける。
「なかなかいい紅茶ですね・・・・・」
「・・・・・・・」
沈黙するキールに紅茶を飲むミアン。広い庭園の中で二人だけがただ其処にいた。そうそれまでは
「内緒話とは趣味がよくない。お爺様?」
「!?」
「ディオスか・・・・」
何時の間にか其処には一人の青年が立っていた。身長170cm前後、色素の明るい金髪に宝石のような朱に近い色の瞳をしている。
「フラウ・ミアン・・・・でよろしいか?」
「・・・・・・・・ええ」
ミアンはこの人物と正面からまみえると途端に萎縮してしまった。それはどことなくゲイツに近い物を持っているのだと気付いたのは後の話である。
「ではフラウ・ミアン。あなたの要望には応えかねるな。私はこれからことと次第によっては『ねるふ』と一戦しなければならなくなるかもしれないのでね。」
「な!?」
「ディオス・・・・何を考えているのだ?」
ミアンは押され気味だがキールは訝しげに問いただす。
「お爺様こそ。ZEELEは私の物でありもはやお爺様のものではないのですよ?勝手に方針を決められては困ります。」
「・・・・・・」
有無を言わせない物言いに黙りこむキール。ソレを見てミアンが納得げに言う。
「なるほど・・・・あなたが『SatanPrinz』ですか。」
「その名で呼んで欲しくはない。せめてディオスと呼んでほしい。」
「ではヘル・ディオス?先程の言葉はケイイチロウ・ナグモに手を出されるという事ですか?」
ミアンが控えめな顔で本題を切り出す。明らかにキールと放していた時よりあがっているのは間違いなかった。
「正確には違う。」
「では?」
「そこで取引といこう。私が『ナグモ』に手を出さない代わりに・・・」
「変わりに?」
ミアンは言葉上は落ち着いて―――体の方はガチガチという器用な事をしながら聞き返す。その問いにディオスはニコリともせずに返答した。
「『シンジ・イカリ』に手を出さないで欲しい。」
「『シンジ・イカリ』・・・・」
ディオスの言葉を理解しようと内面焦るミアン。ディオスはソレをみても表情を変えずじっと返答を待っている。
「『ゲンドウ・イカリ』の息子ですか・・・そう確か・・・『ケルベロス』の一人で『Evangelion』ですか?」
「そう、その『シンジ・イカリ』だ。」
その言葉でようやくディオスが口元をゆがめる。酷く透明な笑いでどこか夢をみているような瞳である。
「・・・・わかりました。」
「そうか。では我々はナグモには手を出さない。」
「一つよろしいですか?」
ミアンがディオスに問い掛けた。
「なんだ?」
「なぜ『シンジ・イカリ』を?」
「なぜ・・・か、そうだな・・・・シンジは・・・・いややめておこう。あなたにはなすことではない。用件は済んだ。日本に行くのならせいぜい気をつけることだ。」
そう言ってディオスはその場を離れようとする。しかし10mぐらいのところでキールに止められる。
「ディオス、なぜ『リリス』と『ダブリス』を破棄した?」
「愚問。私にはあんな物は必要ない。そして人類にもこの世界にも」
そういってディオスはその場を後にした。そこにいるのは権力から零れ落ちた老人と安堵する女性だけが残った。
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早朝・・・鬼塚家
カチ カチ カチ
神社という比較的広い土地で朝から機械いじりをしているのは碇シンジである。作業着に何故か捻り鉢巻という格好で不自然に似合っていない。
そこに巫女服の少女が歩み寄ってくる。シンジは手を止めて話し掛ける。
「美雪ちゃん?」
「シンジさん?」
「どうしたの?」
「あし・・・」
「あ、心配してくれたんだ。大丈夫あれくらい一晩あれば直せるから。うん現代医学って言うのはずいぶん発展したもんだね。」
大嘘である。はっきりいって表の世界の常識ではそんな事はない。もっともZEELEやねるふの最先端技術なら出来なくもないが最低三日はかかるだろう。
美雪が頭をきょろきょろしながら乱雑な機械を見渡す。
「これは?」
美雪からの疑問である。ある意味当然かもしれない。朝っぱらから機械を神社の境内で広げる人物は中々いない。
「いや、注文してたバイクの部品が届いたからさ。早めに組んじゃおうと思って。」
「・・・・・・」
美雪からみても明らかにバイクのパーツではないと思われる機械類がそこらに散らばっている。中身の抜けたパソコンは良いとしてわけの分からないパーツも多い。
美雪がしゃがんで一つのパーツをいじくってみる。それにシンジが気付く。
「それは常温核融合炉―――パラジウムリアクターってのを実用化して小型化したヤツ。動いてないけど危ないから触らない方が良いよ。」
コクンと頭を下げながら美雪はそのパーツから離れる。そしてシンジに近づいていく・・・・と、そこへ2mの大男が現れた。
「よう。」
「あ、先生。おはようございます。」
「・・・・・」
シンジは慶一郎に挨拶し美雪は無視である。
「み、美雪ちゃん・・・」
負傷したシンジをつれて帰った慶一郎だったが怪我をさせたのが慶一郎だと聞いて美雪の慶一郎への高感度は-50である。
プイ
そんな擬音が聞こえてきそうな感じに顔を反らす美雪。シンジには慶一郎はとても情けなく見えた。苦笑しながらしょんぼりしている慶一郎にシンジが話し掛ける。
「そういえばお腹の傷は大丈夫ですか?」
「ん~?ああ、あれか・・・・確かにお前の技は貫通力もあるし。収束率も呆れるくらい高いがな。鋭すぎて切り口がきれい過ぎる。アレだけきれいだと縫合も簡単だし痛みも少ないからな。ちょっと瞬間接着剤をぬればだいじょうぶだ。」
前半はシンジの技についての感想をいい、後半は人間としてどこか間違っている事を言う慶一郎。
「シンジの足も大丈夫みたいだな。最悪歩けなくなるかと思ったんだが。」
「僕は魔法使いなのでこの程度は朝飯前ですよ。」
「そういえば、そんな事を前に言っていたな。」
とりあえず自分で見たことは受け入れるタイプの慶一郎はソレで納得した。
散らばる機械を見ている美雪に目を移しその下の金属片を手にとる。
「・・・?こいつはなんで出来てるんだ?」
「ああ、それはカーボンナノチューブで。本当はオリハルコンとかダマスクスとか使いたいんですけど、こっちじゃ見かけないですからね。一応ミスリル銀とかはあるみたいですけど希少価値が高いんで」
「?そうか?」
「・・・・」
あまり理解しているようにも思えない慶一郎と理解しようとしているようにも見えない美雪にちょっとがっかりするシンジだったが表面上はそんな様子は見せずに
「先生も車かなんか買ったら改造してあげましょうか?リツコさんほどではないですけど僕もこれは多少心得がありますから。銃弾ぐらいは効かなくなりますよ。」
「ああ、そのときは頼む。」
そう言ってから慶一郎は今思い出したという風に話を切り出した。
「そろそろ飯だ。シンジ。美雪ちゃんも。」
「あ、そうですね。」
「・・・・・」
シンジが雑多な機械のほっておいて慶一郎の後ろについて歩き出す。美雪はその後ろにつく。
「飯を食ったらさっさと着替えておけ。今日から学校なんだからな。」
「??。学校って何の話ですか?」
慶一郎が突然立ち止まる。
むぎゅっ
「きゃ」
「ああっ!?美雪ちゃん大丈夫?」
そうするとシンジも急に止まるわけでそのシンジに美雪は止まりきれずぶつかってしまった。
そんな事は気にはなるがあることに気付いた慶一郎は呆然とした。
「もしかして今日から学校へ行くって聞いてなかったか?」
天気は晴れ。朝から呆然とする大男とあたふたする福音の使者とちょびっと涙目な少女がどたばたしていた。
続く
あとがき
ついにオリキャラだしたって感じです。というか名前があんまり思い浮かばない。そしてさらにしばらく登場しないでしょう。