Episode『2』
南雲慶一郎と別れたあと碇シンジは板橋区にある下宿先を訪れていた。
「ふう、すっかり日が暮れちゃったな・・・・もう8時じゃないか・・・・」
ブツブツと文句をいいながら人気のないとおりを進んでいくこと20分足らずのところで『飛天神社』とかかれた石塔の前に立ち、ため息をつくと上に続く長い石段をゆっくりとあがり始めた。
「・・・そういえば日本の東京って初めてなんだなあ・・・・第三に似た雰囲気がある。第二新東京もこんな感じだったのかなあ・・・」
今は(世界すらも)亡き、第二新東京市と第三新東京市に思いをはせる。
「綾波・・・カオル君・・・父さん・・・ミナト・・・あれ?ミコトさんだっけ?」
実際問題、ほかの世界で20歳強まで生きてきてまた16年間過ごしてきたシンジにとってどうでもいい存在は記憶から薄れてきてしまっていた。
「・・・まあいいや、今度アスカにでも聞いてみよう・・・・」
考えることを放棄したらしいシンジは、古い苔むした石段を上り終わり境内に入った。
「これは・・・」
そこにあったのは当然のごとく『神社』であった。ただし、神社だけではなかった。
「殺気!?」
多少、なりとも使徒との戦闘を経験し異世界で戦い抜いた(結局、戦死した)男であるシンジは自分に吹き付けてくる冷気のような殺気に気づく。
(―――!!)
とっさに腰をかがめ高く跳躍したシンジは赤い鳥居の上に立つ。みれば今までシンジのいた場所には木刀を手にした白い影が立っている。高さにしてざっと4メートルほど跳んだが特にシンジに無理をした感はない。
「・・・・・っ!」
おそらく相手よりも高位置にたったであろうシンジがその相手を確認しようとする。しかし、二の腕がほんのわずかに切られていることにいまさら気づく。
タンッ
白い影が飛翔した。
シンジがそれにあわせて跳躍する。とりあえず鳥居の分だけシンジの方が高く跳躍できたが白い影も4メートルは軽々と飛び越えた。
「喝ァッ!!」
白い影が鋭い気合とともに木刀を振るった。
唸りを上げる木刀から不可視のの波動が放たれ猛獣のような勢いでシンジに襲い掛かった。
「うわっ!!」
それにたいしてシンジは体をに捻るようにしてぎりぎりのところでかわそうとしたが何分、目に見えないためわき腹を切られてしまう。
それでもなんとか体勢を立て直すために側転のような動きを左腕の力だけで実践しそれまでいた位置から5メートルほど離れた場所まで移動した。
「いったいなんなんだよ!!あんたは!!」
迎撃され続けられては面白くないのでシンジも独自の構えを取る。左の掌を天に向けて相手につきだしながらエヴァが暴走した時のような猫背で右の掌を左手の下へ突き出して構える。
(・・・・天狗?)
返答がないのでよくよく観察してみると影は作務衣に似た白い着物のシンジと代々同じくらいの背丈の男だった。男の顔には文字通り天狗の面がかぶられている。
「何者だ?僕の敵か?」
その問いの代わりといわんばかりに<天狗>は無言のまま恐ろしい速さで飛び込んできた。
それに対してシンジは目をつぶり視覚以外の感覚で対抗することにした。
(分かる!!)
<天狗>の斬撃を紙一重でかわす。しかし、天狗の斬撃は連続して叩き込まれるたためすさまじい集中力が必要となった。
「くっ!」
ギシィ
木刀をかわし切れなくなったシンジは右膝で木刀の柄に近い部分を受け止めることで<天狗>の猛攻を防いだ。
(い、痛い・・・・・)
シンジの見たところ<天狗>は先程の涼子と違って間違いなく本物の達人であった。真剣ならばシンジの右足は切断されていただろう。
「しかたない!今度はこっちから行く!」
再び、戦いの構えを取ったシンジはうなり声にも聞こえる息吹きの声を上げた。“この世界”で覚えた特殊な呼吸法により自身の生体エネルギーを戦闘エネルギーとして扱う技術である。シンジはこの技術をATフィールドを自己の性質に合わせて変化させたものだとにらんでいるが詳細は定かではない。
「――――――」
シンジの声にならない気合の言葉が半もれる。左足を弓のように突き出し右手を矢のように引き絞る。そうすることでシンジは右手に高圧に練り上げられたエネルギーを蓄積したのだ。
「―――<鬼哭飛燕>!!」
引き絞ったエネルギーを捻りこむように右手に乗せて突き出す。高圧のエネルギー弾が捻れるような螺旋の尾を引きながら<天狗>に向かって襲い掛かった。
襲い掛かったが
「飛天流・絶刀――<残月閃>!!」
「はあっ!?」
木刀の刀身が<鬼哭飛燕>を叩き割る。そして放たれた洗練された<剣氣>が<鬼哭飛燕>の尾を引き裂いた。
ゴスッ
「くあっ・・・」
「ふ・・・・まあ、合格にしておいてやろう。」
技自体は若干<残月閃>の方が優勢で残りの波動を避けたシンジだったがその隙を突かれて脳天に唐竹割りを食らってしまった。
「な、なんでさ・・・」
薄れ行く意識の中で見た<天狗>の正体は彫りの深い見事な白髪の老人だったがそのギラギラと輝いて見えた二つの目だけが特に印象に残った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!!」
目の覚めたシンジは、一言。
「知らない天井だ。」
「あたりまえだ。」
ビクッっとして声の主を確認するシンジ。
「てってて天狗!?」
「む、寝ぼけておるのか?では一撃・・・・」
「い、いえ。寝ぼけてません。」
本気で切りかかろうとする<天狗>の中身?に慌てて弁解する。それに対して天狗は見定めるようにシンジを見つめた。その貫くような視線に対して冷や汗が出る。
「ふむ、貴様が碇シンジか。今時の若いのにしてはなかなかやるようだ。さすがゲンドウの息子といったところか・・・・」
シンジは突然、父の名が出て戸惑った。
「・・・父のことをご存知なんですか?」
「何をいっておる。あの男が貴様をここに預けると連絡をしてきたのだぞ。」
「・・・ということは、あなたが『鬼塚鉄斎』さん?」
「その通り。さっき襲ったのはゲンドウに煮るなり焼くなり好きにしろといわれていたのでな。小手調べに襲わせてもらったのだ。」
「ははははは・・・そうですか。小手調べですか。(父さん、やっぱり可愛くないよ。あんた悪魔だ)」
密かに?父に対して復讐を誓うシンジだったが、今は先方の前だということで気を取り直す。
「え~と・・・それで小手調べの結果はどうだったんですか?」
「うむ。動きからして結構な修羅場を潜り抜けてきたようだがまだまだだな。最後の一撃はなかなか殺気がこもっていて良かったが。・・・あれは『神威の業』か?」
「え!『神威の拳』を知っているんですか!」
「いや、若いころに少々な・・・・」
その話を聞きたかったが鉄斎が気が進まないようなのでシンジは断念することにした。
「はあ・・・まあそれはいいとして・・・ここは?」
「ここは、神社の裏手にある本邸の二階の部屋だ。今まで使っていなかったが掃除はしてある。ここの部屋を使うが良い。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「それと、この部屋の右隣の階段をはさんだ側にある部屋にはしばらくしたらもう一人居候が増えるのでな。」
「え、もう一人来るんですか?」
「うむ。昔、お前と同じ年頃にそこを使っていた居候がまた帰ってくるらしいのでな。本当はもう来てもいいはずなのだが未だに来ん。もう11年も連絡もせなんだ癖に・・・来たら一撃くれてやらねば・・・」
「はははは・・・・・(もしかして、戦いたいだけなのか?)」
更に冷や汗を出して警戒するシンジ。実際自分ではかなわない事は実を持って分からされたので、下手に逆らうことは許されなかった。
「ところでなんだかもう一人いるような気配がするんですが・・・」
とりあえず、話題を変え気になっていたことを聞いてみる。鉄斎のような気迫はないが他にも人物がいることに気づいていたからだ。もっともその人物は寝ているようだったが・・・・
「孫の美雪がいる。今年で中学二年になったな。もう深夜1時だから寝ているがな。」
淡々とした口調で話される。
「えっと・・・その美雪ちゃんのご両親は?」
「死んだよ。飛行機事故でな。もう四年になる。」
「・・・そうですか。」
「そういえばお前も幼いころに自己で母親をなくしたと聞いたが・・・」
「ええ。5歳か6歳のときだったと思いますが・・・・」
「あのころのゲンドウはひどく荒れていたからな。」
「そうですか・・・僕は葬式のあとすぐにドイツに渡ったので・・・」
「そうか・・・・」
二人の間に重たい沈黙が訪れる。シンジも鉄斎も遠い目をしているが二人とも見ているものは違う。先に鉄斎の方が現実に帰ってきた。
「そういえば荷物の中に刀があったのだが・・」
「見たんですか!?」
「いや、運んだ感覚がな。」
「感覚って・・・・・」
「まあ良い、見せろ。」
「いや、その・・・」
「見せろ。」
「はい・・・・」
ゲンドウ並みのプレッシャーを当てられてシンジはおとなしく刀を出した。
鉄斎はその刀を抜き放つとその鈍く光り輝く刀身に見入った。
「ほう・・・『関の孫六』か・・・しかも、かなり使い込んでおるな?」
「まあ、『身を守るため』には多少の過剰防衛も仕方がないですからね。銃とかと違って使ってもなくならないし。」
「では、そのうち立ち会ってみるか?」
「遠慮します。一応そっちの方もやってますけど・・・」
「・・・・まあ良い。」
そう言って刀を納めてシンジに返すと
「お前の年齢だと高校2年か・・・行く当てはあるのか?」
「いえ、というかアメリカに長期滞在しているときに向こうの大学を卒業しているので無理して行くことないんですけどね。」
「そうか。」
「そうです。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「今日はもう遅い。もう寝るがいい。」
「はあ・・・」
そう言うと鉄斎は部屋から出て行ってしまった。
「はあ・・・」
シンジの部屋からため息が漏れたかと思うと静かに明かりが消えた。
続く
あとがき
なんだか、その他に入れた方がいいのか迷うような感じですかこれはエヴァ小説ということで割り切っています。なんだか毎回中途半端なところで切れそうな感じです。それとシンジ君の属性が決まらずなんだか微妙な感じです。そのうちはっきり決めたいと思います。