碇シンジは現在都内某所の飛天神社に居候の身分である
ちなみに同居の南雲氏はいちおう担任教師でもある
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・・・・・別に言いたい事はそれだけである。
Episode『19』
「ごちそうさまです。」
鬼塚家の夕食である。ちょうどシンジが食べ終えた所だ。
シンジが柱にかけてある時計を流し見る。
「7時か・・・」
緩慢な動作でシンジは自分の食器を片付けるとそのまま厳寒に向かって歩いていく。
「・・・・どこへいくの?」
いつのまにかシンジの後ろについてきていた美雪がシンジに聞いた。それに少しシンジが驚く。美雪は気配や存在感と言った物が不思議と薄いのだ。
「ああ。慣れてきたといってもまだまだこっちには着たばかりだからね。散歩がてらそこら辺を回ってこようかと思って。」
シンジは薄く口元に笑みを浮かべながら美雪に言った。
「私もいく。」
「美雪ちゃんも?でも―――もうすぐ暗くなるし」
シンジが外の景色を見ながら言った。ほとんど夏なのでまだ日は明るいが少したてば暗くなってしまうだろう。
シンジが美雪の顔に視線を戻すといつもの無表情な顔にどこか寂しそうな感じがしてシンジは戸惑った。
「かまわんぞ。」
「鉄斎先生?」
美雪の祖父である鉄斎が歩み寄っていった。やたら威圧感を出しているが威圧感ならばシンジの父親も負けていないので特に動じたりはしない。
「最近、美雪は神社以上外に出ておらん。たまには連れ出してやるのも良いだろう。」
鉄斎の言葉に少し考えるそぶりを見せるシンジだがさっきと比べて期待したような目の色を見せる美雪を見て落ちた。
どうも碇シンジ―――女性には弱い。女運が良いのと女難の相が一緒なのかとは全国の主人公の命題である。
「そうですか。それじゃあ―――行こうか美雪ちゃん?」
コクン、と頭を振りシンジのそばによる美雪。それを見ながらシンジは鉄斎に言う。
「それじゃあ、行ってきます。」
「うむ。」
そして玄関を出るときシンジにその言葉が吐かれた。
「命をかけて美雪を守れ。」
その言葉にやや口元を引きつらせながらもシンジは
“僕の周りってこんな人ばっかり”
などと思いながら美雪と共に神社の石段を降りていった。
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駅前の喫茶店『JOJO』
(見れば見るほど高校生とは思えんな~)
慶一郎は向かいに座る少年を観察しながら思った。
身長155cmの小柄な体格。童顔。愛嬌のある瞳。柔和な笑みを浮かべる口元。短めのサラサラな髪には時折天使の輪すら見える。
全校アンケートの『弟にしたい可愛い男の子』部門でブッチギリの第一位に輝く神矢大作は少女っぽい美少年である。
ちなみに最新版ではシンジが『頼りになりそうな男の子』部門で一位をもらっている。余談だが静馬は非公式で行われた『最近落ち目の男の子』部門で独走状態である。
「悪いな神矢。土曜だってのに着き合わせて・・・・」
「今日は暇だったからかまいませんよ。それで南雲先生折り入って話ってなんですか?」
興味津々と行った大作にやや引いて慶一郎が言う。
「まあ、その話は後だ。夕飯はまだだろう?好きな物を頼んで良いぞ。オレのおごりだ。」
「なんでも?そう言われるとおすしが食べたくなりますね。」
「スマンが神矢・・・ここは喫茶店だ。」
「しょうがないですね。じゃあ、えーっとカルボナーラにスペシャルフルーツパフェ、それとクリームソーダ、お願いします。」
(本当に好きな物を頼んでるなこいつは・・・)
慶一郎は内心呆れつつも、同時に頼もしさを感じた。
大門高校のケンカ番長・草静馬の親友であり、Kファイト実行委員会の主要メンバーとして藤堂校長の陰謀に加担する情報収集係でもあるのだ。外見に反して神経は図太く、無邪気なようでいて計算高い、はっきり言えば『食えないやつ』――それが慶一郎の大作に対する評価だった。
最近は藤堂校長が落ち目と見るや理事長・碇ゲンドウに取り入る努力を全く惜しんでいない。そのかいあってかあまりゲンドウは高校にはいないが常時赴任していた高校の花壇を全て『スイカ畑』に作り変えた男―――大門高校内では通称『スイカの加持』の異名をとる社会教師兼園芸部顧問・加持リョウジとはかなり親しくなっているようだ。
碇シンジとも真っ先に仲がよくなった男でもある。
慶一郎の経験上シンジは根は繊細で傷つきやすそうだが確固たる信念を持つ事でそれを乗り越えた男であると見ていた。ある種、大作とは正反対な性質ともいえるがそれが気の合う理由かもしれない。
「神矢の事を少し調べさせてもらった。成績優秀だそうだな。」
「そうですよ?」
「実家は北区の王子・・・以前はかなりレベルの高い進学校に通っていたようだが、なんでわざわざ隣の区から来たんだ?」
「理由ですか?面白そうだったからですよ。」
「つまり・・・あっちはつまらなかったって事か。」
「まあ・・・縁があったから、とでも言っておきましょうか」
「草か?」
「そう考えてもらっても結構ですよ。説明すると長くなりますし・・・今はとても楽しいですよ。今まで場を引っかき回してくれるのが静馬さんと涼子さんだけでしたが今は先生とシンジさんがいますからね・・・・話って静馬さんのことですか?」
「草の事は関係ない。俺の個人的な用事でな・・・なあ、神矢お前、アルバイトするきないか?」
「アルバイト!?」
予想外だったのだろう大作はきょとんとした顔で聞き返した。
「シンジにも頼んだんだが・・・・少しシンジだけだと問題があってな。仕事は女子中学生の家庭教師だ。」
「中学生って・・・そのこ私立でも狙ってるんですか?それとも授業についていけない落ちこぼれとか?」
「どちらでもない。いわゆる登校拒否児童って言うやつだ。オレが下宿している家の女の子なんだが」
「でも、それってそのこがちゃんと学校に通い始めてからでしょう?大体そういうのは親が・・・」
「彼女の親は旅行中の事故でなくなっている。四年前にな。その自己で彼女も大怪我をして、しばらく入院していたらしい。体はあまり丈夫じゃないというのも長期欠席の理由であるんだろうが精神的なものもあるんだろうな。」
「ふ~ん、そりゃまたヘヴィな話ですねぇ。」
人事なのでかなり能天気な口調である。パフェのサクランボを口に放り込みながら大作は続けた。
「それで?」
「うむ、本人が行きたくない物を行かせるのもなんだからな。行きたくなった時にすぐ戻れるようにしておきたいだけなんだ・・・それにそのこはずっと家にこもり切りなんでね。」
「な~るほど。それでこの僕に及びがかかったわけですが。」
大作がようやく合点が言ったという風に意味ありげな笑みを浮かべ慶一郎の顔を見やる。校長が悪巧みをしている時とそっくりな顔に慶一郎は少し不安になった。
―――余談だが、その校長はそうとう言動に腹が立っていたのかゲンドウⅩ(銅像モード)に蹴りをいれすべからく殲滅され入院を余儀なくされた事も慶一郎の不安の一因である。
「そのこの名前はなんていうんですか?」
「名前?名前は美雪ちゃん・・・鬼塚美雪だ。」
「おにづか・みゆき?・・・ふぅん・・・。僕は霊感って信じてるんですけど、その名前・・・何か心を惹かれる物がありますね。まずは一度本人に会ってから出ないと」
「引き受けてくれるのか!?」
「合ってからだって言ったでしょう?それに、僕のギャラは高いですよ。」
「よ~し分かった。さあ行こう!すぐ行こう!」
席から腰を浮き上がらせる慶一郎に大作は言った。
「まあ待ってください。すぐにはいけませんよ。まだクリームソーダを飲んでませんし・・・」
そういって悪戯っぽく大作が笑うと慶一郎は脱力して席に腰を下ろした。その慶一郎に大作は再び言った。
「そういえばシンジさんにも頼んだんですよね?何が問題だったんですか?」
「ああ、それは・・・」
慶一郎は苦い顔をしてそれを語りだした―――
慶一郎の回想
数学
「だからね・・・この計算はこうで・・・って言う答えが出るんだよ。」
「わからない・・・」
「シンジ・・・一応、公式から教えたほうが良いんじゃないか?いきなり答えを言っても普通分からんぞ。」
「へ?公式って何ですか?」
「・・・・・」
シンジは数式を見たら一瞬で答えを割り出せるため中学生位の公式をほとんど知らなかった。
社会
「え~と、歴史を紐解くと・・・・というわけでこの場合効率の良い敵対勢力の潰し方は」
「なんのはなしだ?」
「ええ、近代の戦争史から地形と敵を以下に殲滅すると効率が良いかをいっぺんに覚えられる画期的な勉強方です。」
「別の勉強法にしてくれ・・・・」
生物
「だから・・・人間はこの点を突くと一時的に仮死状態に・・・」
「今度は何を教えてるんだシンジ?」
「ええ、中国の秘境に伝わる。人体の構造を極めた伝説の暗殺拳、○斗神拳の源流である北○流拳を・・・」
「美雪ちゃんにそんな物を教えるな!!」
etc etc etc
―――とまあ大体は非常に効率よく教えてくれるんだが、偶にとんでもない事を吹き込もうとするんでな」
「う~ん。静馬さんといいシンジさんといいつくづく天才型のヒトってのはどこかずれてますねぇ~」
「人事じゃないぞ。神矢、これからいっしょにやってもらうんだからな」
その一言で大作の心に やっぱり断ろうかな と一瞬考えがよぎったのはここだけの秘密だ。
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「とりゃあああ!!」
「ぐぅはぁ!?」
「ぎゃああ!?」
「や、やめてくれぇ!!!?」
一人の少女がチンピラたちを“狩って”いた。元から赤い木刀なのか血で赤く染まったのかは定かではない凶器を振り回し縦横無尽に暴れ回る。
パン
「其処までにしやがれ!!」
とりあえずキャラ的にはどうでも良いが苗字だけは明確ないわゆるザコキャラA。そんな言葉が割りと似合う登場シーンが省かれた不良バイパーズのリーダー黒木である。
手には拳銃その先は涼子ではない。
「りょ、りょ~こちゃ~ん。」
半泣きの少女は大門高校の図書委員で涼子の親友の結城ひとみである。現在彼氏はいない。
「はっ!!その木刀を捨てろ!!」
「くっ!!」
渋々、涼子が愛刀を捨てる。それを見て黒きは汚い笑いを浮かべる。
「ようし・・・てめえら捕まえろ!」
涼子に木刀で叩きのめされたザコたちがフラフラとした足取りながらも涼子を取り押さえる。
涼子の顔が屈辱に歪むのを見て黒木がいやらしいにやけた顔を浮かべる。
「この凶暴女が・・・ちょっとは可愛い声でもあげて見やがれ!!」
そして黒木の手が涼子の服にかかる
「い、いや・・・」
ぱしゃっ
シャッターを切る音と共に閃光が瞬き、黒木たちは突然の事に驚いて慌てて背後を振り向いた。
「ほいチーズっと!」
再度のフラッシュが黒木たちを照らし出す
「だ、誰だ!?」
「誰やと?ご挨拶やなぁ、黒木!」
ヒトを食った柄の悪い関西弁―――そしてこの瞬間彼は間違いなく涼子とひとみにとってヒーローだった。
「これや!!やっぱりオレはヒーローじゃなきゃアカン!!」
しかしインスタントカメラ片手に感動している草静馬を見た涼子は静馬を見直すことを止めた。
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「ん?」
シンジが唐突に立ち止まる。
「どうしたの、シンジさん?」
美雪がシンジに尋ねる。
「近くに草君と涼子さんがいるな・・・・草くんのオーラが高まってきてる・・・涼子さんのオーラがやや不安定だし。」
シンジがやや思案顔になると美雪に言った。
「少し遠いけど・・・寄り道するよ美雪ちゃん。」
「寄り道?」
ぽけっとした美雪にすばやくシンジは行動を起こす。
「きゃっ!?」
「しっかり捕まってて!!」
いわゆる『お姫様抱っこ』で市街地を飛び回る人影が新聞に載るのは翌朝の事だった。
そして銃声を聞き、大門高校最強の教師も現場に向かっている所である。
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大門高校・某所
『識別番号*****ガ殺傷力15ノ銃器ニヨリ危険ニサラサレテイル。GGG-1ヘ対応ヲタノム。鉄腕ゲンドウヘ。』
『現在、れべるSノ教師一名、れべるAノ生徒ガ救助ニ向カッテイル模様、れべるBノ生徒ガ現場ニ到着。私ハ現状デ十分救出可能ダト判断。万一ノタメニ出動準備ダケヲスル。ゲンドウⅩドウゾ。』
『コチラゲンドウⅩ。了解シタ』
そして夜はふけていく
続く
あとがき
前回からのつながりがあまりないですが本編系進行ということで・・・