「神よ、おお神よ」
執務室で、ウィリアム・V・プラット海軍作戦部長は目の前の作戦案について、神に問うていた。
これは作戦ではなく、単なる人殺し。道義と真義の元に行われる戦争を行う神聖なる組織である海軍が行うべき行動ではない。これでは、シカゴあたりに蔓延っている非合法活動も厭わない互助団体ではないか。
しかし、大統領の命じた言葉は自分たちにそれを行えと命令していた。
海軍士官を経て、長年海軍と共に歩んできたルーズベルト大統領は評価されるべき人物だ。しかし、それは人柄に対してのものではなく、あくまで有能さに対してのものだった。個人的人格を評価するなら、信頼が置けず、思い通りにならないと気が済まない病んだ皇帝。
日本帝国海軍には、ノムラ海軍大将を始めとして多数の知人が居る。勿論、戦場で出会ったなら軍人の礼儀として砲火を交えることもあろうが、これは違う。裏切りだ。
彼は自身を切り取り、それに神の名を与え、問い続ける。
そして、プラット海軍作戦部長は、一晩悩んだ後、作戦を認めるサインを行った。