全ての行いに愛があるから大丈夫!
『11話・竜との対談』
「申し訳ありませんが、よろしいでしょうか?」
「ん?」
僕が久々に家庭菜園の様子を見に赴いていた時である。
植物の成長具合を見ている僕の背後から声がかかった。
振り向くと、頭が寂しく若干小太り気味の中年男性が立っていた。
「チェンジ!」
「……は?」
おっと、つい本音を口に出してしまった。
僕の唐突な言葉に呆けた顔を晒す中年男性。
「今の発言は、お気になさらず」
「はぁ……」
訝しげにしていた中年男性だが、すぐに気を取り直した。
状況に対する切り替えが上手い。この人は長生きするだろう。
「それで、何か御用で?」
「はい。それよりも、先ずはご挨拶を。囮様お久しぶりでございます」
「……ん?」
深々と頭を下げる中年男性。
その中年男性の言葉に僕は首を傾げる。
……オトリサマ? あれ? 何だかとっても嫌な思い出を想起させる名称を聞いた気がするんだけど……?
目の前の中年男性を思わず見る。この人、どこでその名称を知ったのだろうか。
中年男性は身体を起こして僕を見る。
「その節はどうもお世話になりました」
「貴様、何者だ!!」
「……覚えておられませんか?」
「……何を?」
僕の言葉に苦笑する中年男性。
むぅ、なんだというのか。
「私は、ドランド村の者です」
「……どらんど村?」
なんだっけ? どこかで聞いたことのある気がするんだが。
うー、と唸る僕を見た中年男性が言葉を続ける。
「その、ドラゴンの被害に遭った村と云えば良いのでしょうか?」
「……あー、はいはい、あの村か」
ドラゴンが暴れていた村か。
そのドラゴンをどうにかしてくれと、メアとジジに依頼に来たんだっけ。懐かしいなー。
「それで、どの様な御用で?」
「ええ、その、なんと云いますか……」
「何と云うか?」
「そのぉ、出来れば、魔女様と聖魔様にもお目通り願いたいのですが……」
「メアとジジに御用で?」
「ええ、その、まぁ、はい」
煮え切らない返事だなぁ。
まぁ、いいか。
「分かりました。それじゃ、案内しますよ」
「すいません。わざわざ囮様にこのような事を……」
「いえいえ。では、行きましょう」
「ああ、はい……って早っ!?」
全速力で駆ける僕。
「ちょ……待って……!?」
中年男性の声が随分と後ろから聞こえる。
そしてあっという間に声が小さくなっていく。
それでも僕は止まらない。
「ラディカルグッドスピードォオオオオオオオオオ!!!」
今の僕は最速だ!
*****
そんなこんなで、僕は無事に城へと帰り着いた。
ジジにお客さんが来たと告げ、そのお客はどうしたと尋ねられ、置いて来たと答えたら、引っ掻かれた。
相変わらずジジの爪は鋭かった。顔がヒリヒリする。
引っ掻かれた後、ジジにバカものがっ! と叱られた。凄く興奮した。
「あ、誰か来たみたいです」
僕がジジに構ってもらっている光景を見ていたメアが、不意にそう云った。
一拍遅れて訪問者を告げるチャイムが鳴る。
そのチャイムを聴き、ジジが僕への攻撃を止めて正門に向かう。メアもジジの後に続く。勿論、僕もメアのすぐ背後に続く。
前を歩くメアの小さな背中を見て、僕の息が荒くなる。
まったく、どうしてメアはこうも可愛いのか。今すぐにでもその背中を舐め回したい衝動に駆られる。実行してやろうかしら。
「あの、前を歩いてくれませんか?」
メアが振り返って僕に云った。
「どうして?」
「いえ、不安なので……」
「何が?」
「……貴方が背後にいるのがです」
「どうして僕が後ろにいると不安なんだい?」
「……なにか、されそうなので……」
「ははは、何もしないよ。僕を信じたまえ」
「無理です」
即答された。
おかしいなぁ。今までの信頼関係からすると、ここは「そうですね」と肯定する場面ではなかろうか。どこで好感度の選択肢を間違えたのかしら。
そんな事を考えつつ、メアの可愛い臀部に手を伸ばすが、ぴしゃりと叩き落とされた。それでも、さらに手を伸ばしたら僕の手が萌えた。違った。僕の手が燃えた。
こう、メラメラって。
「熱い!?」
「変な事をするからです」
「僕の手が物理的に真っ赤に燃えるぅ!?」
「……何気に余裕がありますね」
「きゃー!? 消して消してぇ!?」
「もう、変な事はしませんか?」
「しない! もうしない!」
溜息を吐いて、何かを呟き炎を消すメア。
見れば僕の手は火傷ひとつ負ってない。なんでも、熱さを直に与えるだけで肉体的損傷は負わないとかなんとか。魔法って凄いね。
そんな遣り取りをしていたら、正門に着いた。
コンコンと門を叩く音がする。
「どなたかいっらしゃいませんかー?」
「少し待っておれ」
ジジが外からの声に答える。
「ふぬぅ! むぅ……えいっ!」
一生懸命に門を開こうとするジジ。ぴょんぴょん飛び跳ねている。あの取っ手の位置は、子猫の身には辛いのだろう。後少しという所で届かない。ぴょんぴょんぴょん。
その飛び跳ねるジジを見つめる僕。ジジが可愛いです。胸がほんわかします。
「ジジ、私が開けますから」
「ふにゅう! ……むっ? そうか、すまんな」
見かねたメアが門を開ける。
門を開けると、先程の中年男性が姿を見せた。
「どうぞ」
「おお、これはこれは、魔女様。お久しぶりでございます」
「……どちら様でしょうか?」
親しげに声をかける中年男性。
その中年男性に首を傾げて尋ねるメア。
「申し遅れました。私、ドランド村のトリートと申します」
メアの質問に答える中年男性。
名前が似合わない。トリートメントなんか必要のない頭なのに。
「ドランド村の者が、何の用じゃ?」
「これは聖魔様、その節は御助力有り難く……」
「堅苦しい礼などいらん。何用かを云え」
「ああ、はい。これは失礼を。実は───」
中年男性は一通りの事情を僕達に話した。
「それでは、聖魔様、魔女様、囮様、私めはこれで失礼致します」
事情を話し終えた中年男性は、ほどなくして帰って行った。土産の一つもないのかよ。
長ったるい話だったので、メアに話を要約して貰った。……別に話を聴いていなかった訳じゃないよ? ホントだよ?
取り敢えず中年男性が云うには、再びドラゴンが村に現れたとの事である。
しかし、ドラゴンは暴れる様子もなく村に現れてこう告げた。
『怪描たる聖魔と小さき魔女、それと儚き愚者を我が巣に呼べ』
怪描たる聖魔は、ジジの事だろう。
小さき魔女は、メアしかいない。
そして、儚き愚者はどうやら僕の事らしい。
何故に僕が愚者なのだろうか。僕はその気になれば、10秒で賢者になれると云うのに。本気を出せば7秒で賢者化が可能だし。
「ファーヴニルめ、ワシ等に何用じゃろうか……」
「なんでしょう。先の一件は、双方に後腐れが残らない様にしましたし……」
「どちらにせよ、直接の指名じゃ。行くしかあるまい」
「そうですね。行かなかったら癇癪を起こして、村の人々に被害が出るかもしれませんしね」
「竜族は自尊心が高いから厄介じゃ」
「そうですね」
ジジとメアが溜息を吐く。
「そんなに溜息を吐くと幸せが逃げるよ。どうしても溜息を吐きたいのなら、僕が吸ってあげるからこっちにおいで」
「断る」
「嫌です」
即答だった。
そんなに遠慮しなくても、僕の好意を素直に受け取れば良いのに。
「お主のは好意ではなく悪意じゃ」
「邪気しか感じません」
エライ云われようだ。
*****
現在、竜の巣へとやって来た僕達である。
ここへ到る道中、色んな事があったが無事に辿り着けた。
「よく来たな、歓迎しよう」
竜の巣の最深部。そこに僕達を呼び付けたドラゴンが居た。
その巨躯は見る者に威圧感を与える。迫力が凄い。
巨大な玉座に座るドラゴンはカリスマが溢れている。
しかし、あれだ。ここの部屋に来るまで一切モンスターを見かけなかった。
大量のクマが居て無双状態! とかなかったので残念である。
「ファーヴニル様、御招きありがとうございます」
「……それで、ワシ等に何用じゃ?」
メアとジジがドラゴンに話しかける。
ドラゴン相手に臆した様子がない二人は流石だと思う。
そんな僕は怯えたふりをしてメアの後ろに隠れている。
ふふ、メアってば柔らかーい。いい匂いがするー。
僕がなんだかイケナイ雰囲気になりかけようとした時だった。
「なに、用事があるのはそこの儚き愚者よ」
そう云って僕を指さすドラゴン。爪が鋭いね。
……って、え? 僕がどうしたって?
「えっと、僕ですか?」
「うむ。主に用事がある」
「だったら、先ずは呼び名を改めろ!」
今の呼び名は僕に失礼だろうが。
「くくく、相も変わらず主は中々の胆力を持っておるのぅ」
「……なんというか、時々お主が凄い傑物に見えるわ」
「……よく、竜族にそんな言葉を云えますね……」
なんか知らんが、皆さんに感心された。
照れるなぁ。
「よかろう、どの様な呼び名が所望だ?」
「ジョン・スミスで」
「ほぅ、その呼び名にはどの様な意味があるのだ?」
「過去に行ったり、ギャルゲーの主人公ポジションを確立したり、リアル中二病の当事者だったりする」
僕の憧れる姿の一つだ。
閉鎖空間とか響きが格好よすぎる。
「若しくは、キョンでも可」
「ふむぅ? ぎゃるげーだの、りあるちゅうにびょうだのと、理解できぬ単語があるが過去に行ける存在だと云う事は理解した」
ふむふむと頷くドラゴン。
なんだろうね。ちょっとした罪悪感が胸に湧き上がるよ。嘘だけど。
「それで、じょん・すみすよ」
「のんのん。ジョン・スミスだ」
発音は大事です。
「ふむ、ジョン・スミス。これでよいか?」
「オーケーです」
「あやつ位ではないか? 竜族にあのように接する輩は……」
「何気に凄いですよね……」
ジジとメアがなんかヒソヒソとしていたが僕には聞こえなかった。
「さて、本題に移るぞ」
「どうぞ」
「ジョン・スミス、主に我が王より伝言だ」
「……おう?」
ドラゴンにも野球選手とか居るのだろうか?
「竜族の王と云うと、レヴァンタンか!?」
「神竜様が御言葉を!?」
「然り」
なんだか、ジジとメアが驚いている。
え、なに? そんなに有名な選手? 鈴木さんとかと同レベル?
「えっと、ひとつ良い?」
「なんじゃ」
僕の質問にジジが未だに驚愕の色を残して応える。
「王さんって、誰?」
「王さんじゃない! 王じゃ! 竜族の王様じゃ!」
「ああ! 王様か!!」
なるほど。野球選手ではなかったのか。エーティーエムの方か。
「ん? その王様がなんで僕に?」
「それは我が答えよう」
僕の疑問に目の前のドラゴンことファーヴニルが答える。
「主、この我に一撃喰らわせたであろう?」
「あー、ありましたねー」
「それを聴いた我が王が主に興味を持ってな」
「……えー」
なんでやねん。
捕まったから駄々を捏ねていただけなんだけどなぁ。
腕とか足とかぶんぶん振り回していたら、ファーヴニルの喉元の鱗に当たっただけなんだけどね。一個だけ逆向きに生えてる鱗に5~6発程度。
……あれ? 一撃じゃなくね?
「どちらにせよ、竜族相手に人族が勝利をもぎ取るなど、珍しいことだからな。故に、我が王はジョン・スミス、主に興味を抱かれたのだ」
その後も色々と云っていたが、結論は一つ。
なんか近日、僕が神竜とやらに逢う事になった。
*****
あの後、割と普通の雑談をした。
そしたら、なんかファーヴニルと意気投合するに至った。
最終的には「ファフさん」「キョンの字」と呼び合う仲になった。
それをジジとメアが信じられないと云った目で見ていたのが印象的だったわ。うふん。
ファフさんとの対談を終え村に下ったが、村人の皆さんに「囮様!」と連呼されるのはイジメではないかと思った。
嫌な思い出を想起させるから止めてくれい。
そう云ったら、じゃあどう呼べば良いのかと尋ねられた。
なので、ジョン・スミスでとお願いした。
結果、僕はこの世界でジョン・スミスの地位を築き上げたのであった。
この微妙な達成感が心地よい。
「なんじゃかなぁ……」
「なんでしょうねぇ……」
ジジとメアが何とも云えない表情をしていた。
いやはや、どうしたのだろうね?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
作者は限界だ!
もう、あれよ。中々に文章が出来ないわ。どういうことなの…。そう、これが噂のアラレちゃんなのね…。
ウサギにツノがどうとかで、何気に最近この話を読んでいる人はどれ位いるのだろうと気になるお年頃。PV数とか見てみたい。具体的に言うと、この作品で暇潰せているのかしら?
15話まで投稿できたら本板に進出しようかと画策中。でも、叩かれて終わりかも知れない。その時はその時でいいけどねー。読者に戻るだけだもの。
……それ以前に15話まで続くのかしら?
▼毎回ホントに感想ありがとうございます。作者感激!
>たかが、テストの回答に爆笑する日が来るとは思ってなかったヨwwww。
>更新に期待です!!
>それにしても主人公、素晴らしい紳士だすばらしい。
作者にはこれが限界なので、笑って頂けたようでなによりです。
もっと笑いのセンスが欲しいです。でも、笑いだけで構成されると、ほのぼのでなくなるというジレンマ。
当作品のジャンルは「ほのぼの」で構成されています。
それはそうと、ご感想どうもです。
>かわいい幼女や猫や女装幼児に萌えるのは真理です。
>ハァハァするのも仕方が無いことです。でも迷惑をかけるのはめっ、です。
>最新話ではお腹が痛くなる寸前まで逝きました。
>全体を意訳すると『GJ!もっとやれb』
女装幼児という言葉を初めて見た作者です。新ジャンルの確立ですね!昔からある様な気がするけど気にしない!
感想嬉しいです!ありがとう!何をやればいいのかさっぱりですが。
>あ゛ーしっぱいした・・・
>このSSは会社で読むもんじゃないですね。
>笑いを堪えるのに必死で周りから奇異の眼で・・・
>・・・いやこの主人公にならってコレでかいk・・・
>いやいやいやいやいや
暇潰し程度の作品なので、会社で読むほどの物ではないですよー。
……って、休憩時間とかありますねー。
周囲の視線が気になる貴方へこの言葉を。
『見てぇぇ!もっと見てぇぇぇ!…って、この人が言ってました(近くの人を指しながら)』