今の僕なら与作に勝てる。畑が違うけどね。
流石は僕。うまいこと云った!
『2話・新ジャンル』
既に畑を耕すのも熟練してきた次第。
僕は手に出来た肉刺の痛みを気にしつつも、実に誇らしい気持ちになった。
見よ! この耕された広大な畑を!
トウモロコシ畑とか目じゃねぇぜ!
「全体の四分の一じゃがな」
ジジが非情な言葉を僕に浴びせる。
べ 、別に嬉しくなんてないんだから……!!
「……お主はそろそろ医者に行くべきじゃ」
どうやら僕の身体を気遣ってくれるらしい。
大丈夫、肉刺程度で医者に診てもらう程に僕は貧弱ボーイではない。
その旨を伝えた。
ああ、こいつもう本格的に駄目だ、的な眼で見られた。
これまでに43回程その眼を向けられたが、未だにそのような眼を向けられる理由が分からない。
きっと照れ隠しなのだろう。
可愛い奴である。
「……もう、お主については色々と諦めた」
ジジが嘆息する。
一体全ちゃ……!?
…………………………。
一体全体なんだというのか。
「お主、いま噛んだじゃろ?」
……噛んでないよ?
*****
「メアちゃんメアたんメアきちメアにゃんメア様メア嬢メア殿メア御前メア猊下メアっちメアトロイドご飯まだ~?」
一息で云ってみた。
息切れが凄まじい。これは危険だ。
肺活量でも鍛えようか? 鍛え方知らないけどね!
酸素不足の脳味噌でそんなことを考える。実に益体もない。
白味噌でも詰めれば良い考えでも浮かぶだろうか。
「んな訳あるか」
僕と同じく食事を待っている三毛で子猫なジジが、僕の考えを一刀の下に両断する。言葉の暴力此処に在り。
しかし、何故に僕の考えを読めたのだろうか?
「お主の考えなど、手に取るように分かるわ」
ニヤリと不敵に笑うジジ。
なんと。
それは、つまり、あれだ。
僕とジジは以心伝心。ツーと云えばカー。「バルス!」と云えば「目がぁ! 目がぁぁ!!」な仲であると云う事だろうか。
それは、あれだ、若干気恥ずかしいものだ。
これ程の毛並みを持つ子猫と心が通じ合っているとは、とても嬉しいことこの上ない。思わず不埒な想像を絶賛垂れ流ししたくなる。
不埒な想像をする僕。それを読み取る子猫。読み取った想像に顔を赤らめて俯く子猫。「にゃーん」と云う声が力無く、可愛いこと至上の悦楽なりにつき。
その様な情景を思い浮かべて、言葉に出来ない感動が込み上げる。
うへへへへぇ、とニヤケる。是非とも毎日不埒な想像をしよう。
そんな僕を見て、ジジが怯える様に毛を逆立てる。
大丈夫、怖がらなくても大丈夫だよジジ。もう逃がさないから。
万感の思いを込めて、ジジにニヤリと笑いかける。
その場から後方への大跳躍を見せるジジ。流石は子猫。「みゃうん!?」という怯える様な鳴き声も素晴らしい。
これ程の高機動性能を僕に見せてくれたのだ。今日はジジを抱きしめて寝よう。そして、口で云うには憚られる様な行為をしよう。
最初は嫌がるかもしれない。でも大丈夫。なぜなら僕とジジは心が通じ合っているのだから。以心伝心なのだから。お互いに相手のことを想っていなければ出来ないのだ。心が通うと云うのはそれほど難しい。
つまり、僕と以心で伝心なジジは互いに想いあっているということなのだ。ジジは僕に惚れている。僕はニュータイプだから分かる。
だから不埒な行為はオールオッケーだ。行為は好意だ。ジジも理解してくれるだろう。
それでも、懸念はひとつ。
さてはて、愛の結晶は猫なのだろうか、それとも人間だろうか。それとも猫娘だろうか。子猫と人間の夫婦など過去に前例がないから分からない。
でも大丈夫。僕とジジの子だ。きっと可愛いだろう。出来ればジジに似て欲しい。名前も決めなければいけない。これから忙しくなるぞ。
くはははは、と哄笑する僕。
未だに、何故か過度に怯えて涙目の小さな花嫁に近寄る。
ひぃっ! と息を呑む音が聴こえた。きっと、未来への期待が募ったためのしゃくりあげだろう。
満面の笑みを浮かべ 、両手を広げて近寄る。
「こっち来んな!!!」
ジジが咆哮する。
照れ隠しか、可愛いなぁ。
うひゃひゃひゃと笑いながら近寄る。大丈夫。ジジが僕の想っていることを分かるように、僕もジジの想っていることが分かるのだ。
照れ隠しですね。分かります。
「分かっとらん! お主は私のことを分かってないわ!!」
絶叫する。
後半キャラが変わっている気がするが、それもまた良し。
美子猫はカワイイ。カワイイは正義。正義は受け入れる物である。
これが萌えなのだよ。
兎に角、僕がジジの事を分かっていなくても、ジジが僕の事を分かっているのだから、それでいいじゃない。
そんな訳で再度近寄る。
みぎゃああああ!?!? と絶叫。はっはっは、照れ隠しが過剰だなぁ。そこにも萌える。
「私、貴方の考えていることなんか分からないわよぉ!!!」
その言葉に足を止める。
びくびくと怯えているジジを訝しげに見ながら、疑問を口にする。
僕の考え、手に取るように分かるんじゃないの? と。
僕の前進が止まり、多少落ち着いた風なジジ。それでも警戒心はバリバリである。
そんなジジが僕の疑問に答える。
「あな……お主の考えなど、分かる訳ないじゃろうが」
キャラが戻ったジジ。ちょっと残念。
しかし、再びの疑問。
なんで、先程は分かったのかしら。
「だって、お主、全部口に出しておったから」
なんと。
「ちょいとからかうつもりが、物騒な事まで喋りおって。久々に貞操の危機を覚えたわい」
どうやら今までの妄想を全部口に出していたようだ。
その口に出していた僕の独り言に、ジジは恐怖を覚えたらしい。
悪いことをした。
反省はしていないし、後悔など微塵もないが。
「お主の超絶な変態っぷりを舐めておったわ。まさか猫に欲情するなどと……」
ジジが何かを云っていたが、僕の耳には入らなかった。
オゥ! アッー! ル! ゼットォオ! な体勢で落ち込む僕である。オーティーエルでも可。
ジジと僕は、心が通っていないんだと云う事実が、胸を刺す。こう、ぶすり! と。
頬を何かが伝い、地べたに雫が落ちる。
泣いてなんかいないんだから! これは、脳汁なんだから!
得も云われぬ虚脱感に苛まれている僕。
この無気力感を解消するためには、
「ジジを抱きしめるしかない……」
「何故!? それは無くなったんじゃないのか!?」
それとこれとは別物である。
ガソリンと灯油くらいの別物である。
どこがどう違うとか説明できないけど。多分、別物じゃね?
「ご飯出来ましたよ~」
再度の追い駆けっこをしていた僕とジジは、メアの言葉に動きを止める。
行儀良く席につく。ジジは床でお座りしている。
「たくさん食べて下さいね」
メアの言葉に僕とジジは同時に「うん!」と頷く。
なによりも、先ずは食欲が大事なのさ。
*****
食事後、メアに怒られた。
先程の騒動がメアにばれたのだ。
僕だけ正座して説教を喰らった。なんだか興奮した。
幼女風味な少女による説教。
これは新しい時代の先駆けだ!
新ジャンル『幼女(少女)と説教プレイ』
これは流行る!!
「ないです」
「ないな」
「気持ち悪いです」
「脳の病気じゃな」
一人と一匹に駄目出しされた。
僕の日頃の生活態度も含めてぼろくそに云われた。
さて、上を向くだけじゃ駄目だ。涙がこぼれそう。
泣いても……良いですか……?
一方的に責められて、興奮で感極まった涙だけどね。
よし、変態って云った奴。ちょっと表出ようか?