坊や、良い子だからお眠りなさい。ここからは大人の時間さ。
『20話・昔話』
ある晴れた日のこと。
魔法以上に愉快な事が降ってくるかなぁと思っていた時分である。
快晴の空に、鳥の囀り。ダイナブレイドの嘶きに、部屋に射しこむ暖かな日差し。
今日も今日とて、実に爽快な目覚めを果たした僕である。
快適素敵な気分で広間へ向かう。基本的にこの城で一番遅く起床するのは僕だから、広間には既にメアとジジが起きているのだ。
快適な目覚めを果たした後は、素敵な朝の挨拶をするのは当然であるからして、僕は広間に入るなり大声で朗らかに、居るであろう二人へと、正確には一人と一匹に声をかける。
「おっはっよー!」
しかし、僕の挨拶に返事が返ってくることはなかった。
不思議に思い広間を見渡すが、そこにはメアもジジも居ない。一応と調理場も覗き、保険の為にトイレをこじ開け、欲望の発露によって風呂場に突入をかけてみたが、メアとジジの姿は影も形も無く、下着の一枚も落ちていなかった。残念。
これはどうしたものか、もしや神隠しか、それともサプライズでも企んでいるのか、ついにジジにも発情期が巡り来てメアとめくるめく官能的な処理を施しているのだろうかと、徒然と頭に浮かんだことを反芻すつつ妄想しながら、取り敢えずはメアとジジの寝室を目指す。
そもそも起きて来ていないなら、まだ寝ているかもしれないという考えが真っ先に浮かぶ筈なのだが、残念ながらそんな普通な思考をする僕ではない。だからと云って変人という訳じゃないよ? 単に常人とは違う思考をすることで、より多彩なアイデアを思いつくようになるかもしれないという考えがあっての思考ゆえに。……ホントだよ?
僕は果たして誰に釈明しているのか。甚《はなは》だ不明だが、そこは華麗に無視する。僕は紳士なので、このような事は日常茶飯事だ。気にしちゃ負けである。
そんなこんなで、まぁ、寝室に着いたわけである。
部屋の扉を開けて、コンコンとノックをする。ノックは紳士の礼儀であるからして、必ずしなければいけない。
扉を開け放ち、部屋の中に入る。そこで、毛布を被りベッドに横たわる小さい少女の姿。その枕元に蹲っている子猫。ちっ、着替え中じゃなかったか。
それにしても、割りかし大きな音を立てて扉を開け、さらにノックまでしたというのにピクリとも動かないメアとジジ。
……おかしい。普段ならばジジ辺りが、扉を開ける順序が逆だ! みたいなことを云ってくる筈なのに、全くそのような事がない。
「おやおや? どうしたんだい、子猫ちゃん達ぃ?」
僕は二人に近づいて行く。
しかし、それでも起き上がろうとしない。
これで本格的に心配になった僕は、二人の顔を覗きこむ。
二人は、正確には一人と一匹は、顔を赤くして息を荒げていた。
*****
「はいはい、お粥を持ってきたよ~」
「……ごめんなさい」
「……すまんのぅ」
「それは云わない約束でしょー」
約束した覚えは皆無だけど。
「なんなら、ふぅふぅして上げるよ?」
「……だいじょうぶです」
「……いらん」
「口移しを御所望か! 喜んで!」
「……ちがいます」
「……望んでおらん」
はっはっはっ、照れ屋さんめ。
そう思いながら、お粥を乗せた盆をベッド脇の机に置く。
「はいはーい、ゆっくりねぇ」
「……はい」
メアの身体を起こす為に背中に手を当てて支える。
ジジは僕が手伝う前に自力で立ち上がり、メア用のお粥と一緒に作ったミルク粥に舌を伸ばしていた。
うむ。ジジがミルク粥を食べる光景は、名作映画を彷彿とさせる画である。惜しむらくは、ジジが黒猫ではなく三毛で子猫というところか。
頷きながら、メアが完全に起き上がったのを確認し、机からお粥を取って手渡す。メアは僕に感謝の言葉を述べて、ふぅふぅと息を吹き掛けながらお粥を口に運ぶ。
うん。僕にも息を吹き掛けてくれないかしら。
そんな事を思いつつ、二人が食事を終えるのを待つ。
パクパクと、普段よりも若干に遅いペースで食べていくメアとジジを眺めながら、ほんわか和む僕。心がぽかぽかします。
緩く流れる時間を感じながら、まったり待っていると、二人が食べ終えた。
その空になった容器を盆に乗せて、調理場に持っていく。早足で。
調理場の洗い所で、容器を水桶に漬けて、駆け足で寝室に向かう。
間に合ってくれ……っ!
逸る気持ちに押されるように、一直線に寝室へ。
再び勢いよく扉を開き、ノックして、部屋へと侵入。いや、進入。
「きゃっ!」
「ぬぅ?」
服を脱ぎかけていたメアが、素早く脱ぎかけの服を着込み可愛い悲鳴を上げ、ジジはダルそうに僕を見てきた。
ちぃ! 早過ぎたかっ!!
先程、メアを支えていた時に汗を掻いていたのが分かったので、おそらく着替えるであろうと当たりを付けていたのだが、どうにも時期尚早だったようだ。
拝見出来たのは、その美しい肩と鎖骨までである。もう少し遅く到着していれば、決定的な瞬間を見れたかも知れないのに。惜しい事をしたものだ。ホントに。
しかし、それを悔やんでも仕方ない。過ぎ去った時間は戻らない物であるからして。悔恨に思いを馳せている暇はないのである。未来をしかと見据えるのが、何よりも重要なことさ。
僕はメアをベッドに押し倒し、メアに跨りながらそんなことを考えていた。ふむ、哲学的な思考をする自分に惚れ惚れする。
「あ、あの? なにを……?」
熱に浮かされているからか、いまいち現状を理解していないメア。ジジも不思議そうに僕を見ている。
風邪は偉大である。まさか僕がいたいけな少女に跨っても、未だに無傷なんて快挙も快挙だ。
「あの……?」
「……なにをしておるんじゃ?」
メアとジジが、怪訝そうに尋ねてくる。正常な判断を行えていないようだ。
「いやぁ、汗を掻いているようなので拭ってあげようかと」
「はぁ……」
「ついでにジジの毛並みも整えてあげようかと」
「確かに、少し寝乱れておるが……」
「安心して、僕に任せたまえ」
どんと胸を叩いて、その衝撃に咽た。
げほっげほっ。
「えっと、でも、手拭いみたいな物が、見当たらないんですけど?」
「見れば、櫛もないな。櫛もないのに、どうやって毛を整える気じゃ?」
メアとジジが疑問の声を上げる。
「無論───」
僕は、それに、断固たる意志の元、告げる。
「───舌で」
即座に逃げ出そうとしたメアとジジは、しかしてその逃走は失敗に終わる。
ガクリと、二人は揃ってベッドの上に倒れ伏す。
「……え?」
「……なっ!?」
困惑の声を上げるメアと、驚愕の声を上げるジジ。
「か、身体が……!」
「お主、なにをした!?」
「いや、病人は絶対安静って云うのは鉄則じゃん?」
なので、先程のお粥に隠し味として筋弛緩剤をちょいと。
「それはともかく、さあ! 身体を濡ら……拭おう!」
取り敢えずは、ジジの首根っこを掴まえて、メアに覆い被さる。
微かな恐怖の色を灯す二人に、優しく微笑みかける僕は、紳士の中の紳士である。ベスト・オブ・ジェントル。
「ひゃあ!?」
「みゅん!?」
メアの白く細い首に舌を這わせて汗を舐め取る。
一舐めしたら、今度はジジの身体に舌を這わせる。
「ひぅっ!?」
「みゃん!?」
甲高い声を上げる二人の声は、どことなくエロイ気がする。
そんな事を想いながら、僕は二人の身体の隅々まで舌を這わせていく。
「やっ、ダメ! ダメです! そこは汚いから───っ!!!」
「にゃ、やめっ! ダメじゃ、そんなとこ舐めたら───っ!!!」
うむ、実に甘露なり。
*****
「よ、汚されちゃったぁ……」
「き、綺麗にされてしまったぁ……」
シクシクとすすり泣く二人。正確には一人と一匹。いい加減にこれ云うのが面倒になってきた。
しかし、メアの台詞は定番だが、ジジの台詞は思いのほか斬新である。綺麗にされてしまった事を嘆くのは新鮮味溢れていると思う。中々に居ないぜ、そんな台詞を吐くやつ。
シクシクと泣く二人を眺めながら、僕は口の中に広がるゴワゴワした感触に至福の笑顔を浮かべる。
子猫でも、毛を繕うと沢山の抜け毛が出る物である。布巾などで猫を拭くとよく分かる。その行為を僕は舌でやったので、口の中に抜け毛が沢山である。
ジジの生毛を口に含む僕は、結構な上機嫌なのです。うん、美味。
「ふん? ふふふ、ふふふふふふふん?」
「……うぅ、なにを云ってるか分かりません」
「……口の中の毛を吐き出せぃ」
「ん、んぐっ、ふぅ。なに? なにを、悲しんでいるんだい?」
「私の毛を食べないでよぉ!」
ジジの口調が激変した。
そこまでショックだったか。
「まぁまぁ、落ち着きたまえ」
「うぅ、余計に容態が悪化した気がします……」
「ひっく……うぅ……ぐすっ……」
ジジがまるで少女の様に咽び泣く。
ジジのキャラが崩壊する程とは思わなかった。恐るべし、風邪。
「ほら、ベッドに横になって、二人とも」
「……はい」
「……うん」
素直に僕の云う事を聴くメアとジジ。
どうでもいいが、いやよくないが、結構重要な事だが、それは今は置いておこう。
云いたい事はひとつ。この状態のジジが異常に可愛いです。本当にありがとうございます。
ベッドに横たわるメアも可愛い。かわゆ過ぎる。押し倒したい程に可愛い。今ならその行為が容易なのだが、そこまでいくのは紳士ではないので自戒する。紳士ならば、弱っている時には襲わない。これは常識である。
そして、そんなメアの横で弱々しく、若干涙目で蹲るジジの破壊力も尋常ではない。普段がキツイ攻撃的な強い性格なので、この突然のひ弱さは、あれだ、ギャップ的な意味でグッと来るものがある。
おお、至福なり。
凄まじい幸福感が僕を包みこむ。僕は真の幸せを知った。この発言が過言でない程の幸福感である。いと幸せなりや。
ニコニコ笑顔な僕は、二人を優しく撫でる。そりゃあ、もうすんごい優しく撫でる。僕の優しい撫で方に二人の顔が弛んでくる。流石は僕の撫で撫で技術。ナデポを極めかけたマイハンド。痺れるぜぇ。
一通りの自画自賛、自己嘆美を胸中で唱えて、朗らかな笑みで二人へと語りかける。
「どうやら僕が体調を悪化させてしまった様なので、僅かばかりの罪滅ぼしに御伽噺をして上げよう」
二人が胡乱な眼で僕を見詰めてくる。
どうしてそんな目で僕を見るのかしら?
なにはともあれ、さあ、御伽噺を噺家の如く語ろうじゃないか。
*****
昔々のあるところ。
一人の青年が居りました。名を浦島太郎と云います。きっと長男だったのでしょう。これで三男とかだったら、両親のネーミングセンスには脱帽です。もう、帽子とか被っていられない。
まあ、そんな事はどうでもいいのです。兎に角、浦島太郎と云う名の青年が居たのです。これが重要。
ある日、浦島太郎は釣りの為に浜辺に行きました。
すると、浜辺では馬鹿餓鬼共が亀を苛めているではありませんか。浦島太郎はその餓鬼共へと近づいて行きました。
それに気付いた餓鬼共が、浦島太郎に云います。
「なんだよ、おっさん」
「何か用かよ、おっさん」
「向こう行けよ、じじい」
浦島太郎は、その餓鬼共の言葉を聞き、ひとつ頷きました。
うんうんと頷いて、おもむろにぶん殴りました。手加減一切なしです。大人気無いです。特に最後の糞餓鬼には容赦の度合いは全くなし。
ぶん殴られた餓鬼共は、泣いて逃げ帰る事も出来ず、死屍累々な感じで浜辺に打ち捨てられました。もうこれは事件です。現代だったら確実に訴えられているレヴェル。
「雑魚が。稚魚如きが漁師たる俺に敵うかよ。身の程を知れ」
若干、芝居がかった口調。浦島太郎は現代では、ちょっとウザい人なのかもしれませんね。
しかし、この浦島太郎は強いです。無駄に強いです。それもその筈、彼は近所に住む友人と頻繁に争うのですから。
友人の名前は金太郎と云います。幼少期に熊を相手に素手で戦闘を臨んだ、頭がちょっと残念な人です。ですが、そんな奴を相手にしていれば、自然と強くなるのがお伽噺の良い所。戦闘の才能だとかそんなの関係ありません。ご都合主義万歳。
そんな訳で、ちょくちょく金太郎と、避暑地は山か海かで揉める浦島太郎は強いのです。文句は受け付けません。あしからず。
さて、兎にも角にも餓鬼共を文字通り蹴散らし薙ぎ倒し血の海に沈めた浦島太郎に、亀が感謝の言葉を述べます。喋る亀。見世物小屋で売れば高く売れそうですね。
「あの、先程は助けていただ……」
「亀ゲットォ! 今晩は亀料理じゃあ!」
感謝の言葉を述べている最中に、人語を喋る不思議亀を捕まえた浦島太郎。お前はその不思議動物を食べる気か。
これに焦ったのは亀です。不思議亀です。龍玉に出てくる武の神様とか謳われたエロ爺さんの乗り物っぽい扱いを受けていた亀のように喋る亀です。まさか、助かったと思ったら実はそっちの方がデンジャラスとか、なんて酷い罠。
「いやぁ! 食べないでぇ!」
「黙れ! 何の見返りも寄越さぬ奴が、簡単に助かると思うなよ!」
浦島太郎は根っからの現代人です。見返りないと助けない。現代人も心が荒んだものです。艶本とか、もう素敵展開のオンパレードだというのに。女性用の艶本なんて男の子を拾うのに。警察に連絡しないなんて、どこの誘拐犯だ。
話が逸れましたが、要は亀がジタバタ悪足掻きをしているのです。頑張れ亀。
「私を助けてくれたら、竜宮城にお連れします!」
「知らん。何処だ其処は?」
「酒池肉林なパラダイスです!」
「横文字は皆目分からないのだよ、俺」
「楽園です! 乙姫様と云う綺麗な方が治める海底の楽園です!」
「海の底など、息が出来ないだろうが。女子高生」
「大丈夫です! 竜宮城には酸素があります!」
「酸素って何だ?」
「ちぃ! これだから学の無い人間は嫌いなんだ!」
「お前もう夜食決定。さあ行こう。我が家を目指せ」
「失言しました! ごめんなさい!」
「謝っても、もう遅いと」
「竜宮城には空気がありますから! 息が出来ますから! 乙姫様はエロイですから! エロイ肉体してますから!」
「よし、さあ連れて行け。今すぐに連れて行け」
「合点承知です!」
なんとか浦島家夜食化計画を防げた亀。平然と乙姫様を売る行為には戦慄ものです。それに喰いつく浦島太郎。所詮は男。バカだね、男って。
そんなこんなで亀の背に乗り、一路竜宮城を目指す浦島太郎と亀。
勢いよく海の中に亀が潜り、浦島太郎は息を吐き出します。がぼがぼ。
「ぐはぁ!?」
「大丈夫ですか?」
「貴様! 息が出来ると云ったろうが!? どういう事だ!」
危うく溺死する所だった浦島太郎。当然、怒りの声を亀にぶつけます。
「いえいえ、私は竜宮城では息が出来ると云いましたが、竜宮城に辿り着くまでの海は息が出来るとは云っておりませんので」
ニヤニヤ笑いながら告げる亀。黒いです。真っ黒です。
こいつ亀の癖に猫を被ってやがったな。誰ださっき亀を応援した奴。
「どうしますか? 引き返しましょうか?」
「………け」
「え?」
「行けと、云っている」
「えー、本当に大丈夫で、うぐっ!?」
「貴様は、ここで死にたいか?」
「よ、喜んで、つ、連れて、行きま、すから、首、首締めないでぇ」
再び潜水する亀。浦島太郎もそれに続きます。
今度は息を止めている浦島太郎。深度がグングン下がります。気圧とかの問題で、普通ならとっくに意識を失うのですが、なんと浦島太郎は根性で意識を繋ぎ留めます。こいつ人間じゃねぇ。
遊泳すること一時間、ついに竜宮城に着きました。一時間も息を止め、あまつさえ意識を持ったままで竜宮城に訪れる者など、後にも先にも浦島太郎だけです。無駄な頑張りを見せた浦島太郎。絶対に人間じゃない。
ぜぇぜぇと息を荒げる浦島太郎と、驚愕の眼差しで浦島太郎を見詰める亀。なんでこいつ生きてんの? そんな感情が顔にべったりと張り付いています。やはりこの亀は黒かった。
そんな青年と亀の許に、一人の美女がやって来ました。
乙姫です。
「あら、どうしたの? そちらの御仁は……」
「ふははは! 早速頂こうかぁ!」
「きゃあ!? な、なにをするのですか!?」
「くくく、俺はわざわざ貴様を目当てに来たんだ。楽しませて貰おうか!!」
「い、いやぁ! だめぇ!!」
浦島太郎は乙姫の服を剥ぎ取ります。露わになった肉体を、乙姫は羞恥に手で隠しますが、浦島太郎がそうはさせません。
「隠すな! さあ、愉しもうか!」
「あ、ああ、だめ、いやぁ!」
「嫌よ嫌よもエロの内ってなぁ!」
「ひぃ! だ、だめ! そんなところは……!? ああん!」
手が乙姫の肉体を這い回ります。程よく乗った肉付きの身体を、浦島太郎は貪ります。凄く貪ります。具体的に云えば、その豊満な双丘を片手で揉みながら、唇でもう片方の胸のとっ……え? いらない? いやでもほら、盛り上がるからさぁ。ここら辺は具体的に……いらない? ……はいはい分かった。省略するよ。
えー、まあ、なんやかんやと浦島太郎は色々な事を致しまして、すっきりしたのか、とっとと帰ると云いました。もうこいつ死ねばいいのに。
乙姫は瞳に光を灯さないまま、部下になにやら指示を出し、ひとつの箱を持って来させました。
「どうぞこれを、亀を助けて頂いたお礼です。是非とも陸に上がったら御開け下さい。是非とも。是非ともに御開け下さい」
ふふふ、と暗い笑顔で笑い声を上げながら、浦島太郎に玉手箱を手渡します。
玉手箱を受け取った浦島太郎は、今度は自力で泳いで帰りました。もうこいつ魚人なんじゃねーの?
そんなこんなで、陸に上がった浦島太郎は周囲の状況に眉を顰めます。なんだか竜宮城に行く前と帰って来た後で、風景が変わっている気がしたのです。
浦島太郎は調べました。原因を調べました。すると、どうにも竜宮城に行く前の、150年後だということが分かりました。どんな捜査をすればその結論に行き着いたのか、皆目見当もつきませんが所詮は御伽噺です。矛盾万歳。ご都合主義最強。
途方にくれる浦島太郎。元我が家は、なんだか大変な事になっていました。あれは家じゃない、廃墟だ。
これから先をどうしようかと悩む浦島太郎。先立つ物がひとつもありません。どうしたものかと思い、取り敢えず、手元の玉手箱を開けました。
玉手箱から、如何にも怪しい煙が出てきたので、浦島太郎は横に飛び退いて煙の届かない位置に逃げました。
煙は空へと昇り、丁度良く飛んでいた雉に当たりました。
すると、なんと云う事でしょう。雉はその身を煙の如く真っ白に染めていました。どう見ても鶴です。この時、雉は種族を超える奇跡を体験したのです。
「なんじゃこりゃー!?」
雉は、いや鶴は絶叫を上げました。そりゃ驚くでしょう。どうでもいいことですが、この雉、いや鶴も不思議動物か。
浦島太郎は雉の有様を見て、安堵しました。自分に被害が来なかったのが嬉しい様です。巻き添えを喰らった雉には罪悪感の欠片もありません。
それからというもの、浦島太郎は適当に大名の娘を口説いて結婚しました。
適当と云う割には、なんだか充実しています。何故に落とせた、そもそも大名の娘にどうやって逢ったんだよ、そんな質問は禁句です。尋ねてはいけません。全ては世界の意志です。
それから先の人生は順風満帆。子宝に恵まれることはありませんでしたが、幸せな人生を謳歌しました。これで不幸だなどと云えば、もう殺すしかありません。
それは脇に置いておくとして、話しはまだまだ続きます。
*****
今日も今日とて平和に生きている爺さん(浦島太郎)と婆さん(大名の娘)です。
さてはて、そんな二人は、そもそも婆さんが金持ちなので働く必要性は皆無なのですが、趣味で仕事をしています。あくせく働く現代人に喧嘩売ってるとしか思えません。ムカつきますね。だから金持ちって嫌いよ。
それは兎も角、爺さんは山に出掛けます。
「ちょいと、山まで金太郎をシバいて来るわ」
そう、実は金太郎は生きていました。今年で既に200歳になったかならないかのご高齢。高齢ってレヴェルではない気もしますが。
そして、最近発覚したことは、金太郎は日本国籍ではありません。金・太郎で海の向こうの人でした。どうでもいいことですが。
「じゃあ、私は川に洗濯にでも行ってきます」
そう云って、婆さんは洗濯物を持ちもせずに川に出掛けます。洗濯自体を使用人がやってくれるので、婆さんは付き添いです。ぶっちゃけ洗濯の邪魔ですね。
そうして二人は別れました。爺さんは山にシバきに、婆さんは川へ洗濯の付き添いに。
そんなこんなで婆さん川に到着。川原から足を水につけて涼みます。もう洗濯とかどうでも良さそうです。
そんな事をして居ると川上から、どんぶらこどんぶらこ、と有り得ない音を発生させながら大きな桃が流れてきました。一抱えもある大きな桃。明らかに妖しいです。怪しいではなく妖しいです。だって普通じゃねぇもん。有り得ないもん。
そんな妖しげオーラを全方位に拡散放射している巨大桃。こんなの、まともな神経している人は無視します。
しかし、婆さんは普通じゃなかった。あろうことか巨大桃を取ろうとしたのです。何考えてんだろうね?
婆さんは着物が濡れるの嫌なので、洗濯している使用人を呼びますが、返事がありません。見渡してみると使用人は影も形もありません。どうやら洗濯終わって帰ったようです。使用人として主人を置いて帰って良いのか。
結果、使用人が居ないので婆さんは巨大桃の捕獲を諦めました。ここら辺無駄に潔いです。妖しげな物に引っ掛かった割には、結構冷めた態度です。婆さんのキャラが定まっていないだけかも知れませんが。
大きな桃はそのまま下流へと流れて行き、そう遠くない内に大海に繰り出すことでしょう。海に出る前に腐ると思うけど。
婆さんは再び涼もうと川に足をつけます。すると、川上からまたもや桃が流れてきました。今度は普通サイズが十数個。
婆さんは大喜びでその桃を拾います。運良く川岸方面に桃が流れて来たので拾います。
婆さんは喜び溢れる顔で帰宅します。何故か洗濯籠は持って来ていたのでその中に桃を入れて。川上の方から「桃が流されたー!?」という悲鳴が聞こえた気がしましたが、あくまで気がしただけなので気のせいと判断して帰宅します。最近の老人は厚かましいのです。いいことですね。若者に負けるな。
そして家に帰った婆さんは桃を剥いて、綺麗に飾り付けて、爺さんを待ちます。因みにこの工程は全て使用人が行いを為しました。
しかして、爺さんが山から帰って来ました。
婆さんが川上から取(盗)って来た桃を食べながら、今日あった出来事を話します。こういうところは普通の老夫婦ですね。
「今日は面白いのを見たぞ」
「どんなものですか?」
「金太郎とシバき合った後に柴刈り対決をしてな。その際に鬼共が二人の爺を躍らせていてな」
「あらまあ」
「そして敗者にコブを付けたんじゃよ。それも2つ」
「まあまあ」
「鬼と云う物は恐ろしいの。儂より強いというのも気に入らん」
「そうですか」
「うむ。いつの日か鬼を駆逐せんとな」
会話の内容は普通ではありませんでしたが、まあ仲は良いのでしょう。
そんな、和気藹々としていた雰囲気の時に、爺さんと婆さんの身体に変化が起きました。
「か、身体が熱い!?」
「ああ、身体の芯から熱が湧き上がる!?」
「ふおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ほああああああああああああああああ!!!!」
奇声を上げる爺さん婆さん。拾い食いなんてしちゃうから。
そして、二人はまばゆい光を撒き散らします。いつ、この二人は発光体にジョブチェンジしたのでしょうね。
光が消えると、そこには、若りし頃の浦島太郎と大名の娘が居ました。どうやら若返ったみたいです。御伽噺でも無茶な展開には限度があると思いますがどうでしょう?
まあ、どちらにせよ二人は若返りました。若返っちゃったもんはしょうがない。人生ままならないもんです。
結果的に若返った二人は、どうするか分かりますね?
そう、若さを手に入れた二人はその身の内に湧き上がった劣情色情欲情を解き放つのです。くんずほぐれつに二人は絡まり合います。接吻は深く、唾液を交換します。くちゅくちゅという音が生々しいです。独り身の男が聴いたら発狂するかもしれません。
そして口を離す二人。つぅ、と糸が引きます。
元爺さんは元婆さんの尻に手を這わせ、捏ね繰り回す様に揉みます。平然と揉みます。羨ましい限りです。
「くくく、お前さんの桃も頂こうかな? この熟れた桃尻を」
「ああん! 旦那様ぁ、どうかご慈悲を……」
元婆さんの瞳に、発情の色を見た元爺さんは、そのまま畳に押し倒して……ええ、ここもいらない? でもほら、御話にはお色気シーンとか必須じゃない。……そんなことない? はぁ、分かったよ。じゃあ端折るよ。
えーと、そうそう。元婆さんは元爺さんに云いました。
「ああ! 太郎さん! いい! すごくいい!」
「ふははは! それはどっちの太郎だ? 俺か、それともこっちかぁ?」
「あああん!!」
ひと際高い矯正を上げた元婆さんに、怒涛の腰使いを……待て、分かった。よーく分かった。この場面は全部飛ばすよ。だからその爪を仕舞うんだジジそしてメアも辛そうな顔をしながら魔術を使おうとしないで大丈夫大丈夫もう云わないからほら安静にね安静に。ふぅ。
えーと、どこまで話したっけ。……ああ、そうそう。
えー、若くなった元爺さんと元婆さんは、それからと云う物いちゃいちゃらぶらぶえろえろな日々を送ります。爛れていますね。死ねよバカップル。
すると、昔は恵まれなかった子宝を元婆さんが身籠ったのです。そりゃあ、猿のように毎日毎晩毎朝毎昼いたしていれば、子宝程度身籠るでしょう。独身貴族を舐め切っていますね。いつか刺されるかも知れませんね、この二人。
さて、なんやかんやありまして子供が生まれました。
二人とも大喜びです。早速名前を考えようと云う元婆さんに、元爺さんが答えます。即ち、既に考えていると。
「俺の太郎とお前の桃尻の愛の果てに生まれたんだ。子供の名前は、桃太郎にしようと思うが、どうだ?」
「ああ! とても素晴らしいです旦那様!」
こうして子供は下ネタ全開の名前を付けられました。
浦島桃太郎の誕生です。
随分と先の事になりますが、桃太郎は鬼退治に出掛けます。元爺さんから爺さんに逆戻りを果たした男に云われたのです。鬼が気に入らないから殲滅して来いと。
桃太郎は旅立ちます。爺さん直伝の剣術に、婆さん製作の媚薬丸薬、通称きび団子を手に旅立ちます。特に悪さをしていない鬼を虐殺するために旅立ちます。
その旅路には様々な出会いもあります。三匹の御供との出会いがあります。雌犬(村娘、16歳、巨乳)に雌猿(貴族娘、13歳、貧乳)に鶴(元は雉だと云い張っている)との出会いが。主にきび団子の力で仲間にしながら、鬼達の理想郷、鬼ヶ島へと向かいます。
しかし、相手は鬼。桃太郎は強いとは云っても所詮人間。果たして生き残れるのか。
そして、桃太郎が負ければ、理不尽な桃太郎の行いに鬼が怒って人間に復讐するかも知れません。そうなった時の原因はきっと浦島太郎でしょう。
なにはともあれ桃太郎の負けは、即ち、人間世界の負けなのです。
こうなったら桃太郎が勝つことを信じるしかありません。若しくは、鬼ヶ島へ赴く前に殺すしかありません。
それはそれとして、桃太郎は鬼ヶ島に突っ込みます。
桃太郎の勝利を祈りましょう。じゃないと人類は破滅だ。基本的に浦島桃太郎と浦島太郎のせいで。
兎にも角にも。
桃太郎の勇気が世界を救うと信じて!
*****
「……と、そんな昔々の物語」
僕は語り終えて、二人の反応を見る。
きっと楽しんでくれたことだろう。
「……すぅ……すぅ」
「……みゅぅ……みゃぁ」
いつの間にか眠りについていたようだ。すやすやと穏やかな寝息を立てている。
ぐっすりと眠りについている二人を見て、僕は微笑む。
「安き眠りを、ご両人」
二人の頭を撫でて、ベッドから離れる。
部屋を出る前にタンスを漁り、メアの下着を入手して、部屋を出る。
「さて、今宵は栄養満点の料理を御馳走しよう」
そう云いながら、僕は調理場に向かう。
材料を確認し、僕の得意料理が作れるかを判断するために。
「良き夢にて、幸せを」
再び二人に祝福の言葉を紡ぎ、僕は廊下を歩く。
今日も今日とて、僕の大事な二人に、幸多からん事を。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そうよ、ここからが───あとがき
祝20話記念にちょいと長めです。疲れました。
ついでに、試験が違う意味で終わりました。もうどうでもいいよ。うははは。
それはどうもいいとして。
この作品に出てくる昔話は、本当はもっと長かったのです。浦島→桃→一寸→かぐや→金さん→etc、etcという具合に。最低でも8作品投入する筈でした。でも凄く長くなるんですよね、それすると。長いと読むのダレルので、削りました。程好い短さがこの作品の長所だと思うんだ!
ぶっちゃけ、書くのが面倒だっただけですが、それは秘密さ★
▼ついこの間pv50000超えだったのに、既にpv60000超え。どういうことなのかしらね?ちょっと怖いのわぁ、うふふ。
>今回の話の一番のポイントはジジが人間形態になれることだと思った
その着眼点はとても大事です。素晴らしいです。これからも、その着眼点をスクスクと育てて下さい。
>聞きたいんですが先生との関係はどうなったんですか?wやったんですか?w
>脅迫で点とるなんてワロたw
>俺的に読んで人化!が素晴らしく感じたよ。
ここは一般投稿板なんだから、やったとか言っちゃ、めっ!
人化が好評のようで、ちょいと安心。ふぃー。
>・・・変態という紳士だと?!
>敵わぬ・・・どこまで逝くのだ?w
無論、紳士道の果てまで……。
>更新期待してるぜw
期待なんかしないでぇ~!
>なかなか、主人公がデムパ的で素敵ですね。
デムパ=デムニパンツの略ですね?
主人公はデムニパンツ的で素敵と評した貴方は、お洒落さんだな!
>>誰かいい病院紹介してください。あ、病院は綺麗で可愛い上にどことなくエロイ女医さんがいるところをお願いします。
>小生、健康診断のたびにお医者様に『頭が良くなる』方法を相談しますが、一番良い答えは以下の通りでした。
>医者:『ごめん。無理。着ける薬が無いわ』
医者様の返しも中々ですが、その質問をする貴方に敬服ものです。
作者は友人に相談したことありますね。
作者「頭を楽に良くする方法って、何かない?」
友人「つける薬を飲んだらいいんじゃね?」
さて、この時の友人は真面目に言ったのか、それとも皮肉で言ったのか、洒落で言ったのか。
謎は未だに深まるばかり。
>幼女だろうが猫だろうが好きに書いたらええ
>だ、だから早く…早くあとがきのみよちゃん先生分を追加するんだっ!!
>じゃないとお、俺のエレクト棒が…!!
(σ・∀・)σ<そのエレクト棒で電流イライラ棒に挑戦して破裂してしまえ。腫れ上がってしまえ。
>貴殿に『先行者』の称号を授けよう。
丁重に頂戴致す。かたじけないっ!
(´・ω・)ところで作者は何を先行しているのかしら?
>え?今回は普通にほのぼのなの?閑話にいたっては微シリアスだと…?
>もっと獣欲と尻assと電波に塗れた、いつもの紳士を、みんなの生きる上での心の支えを返してよ!
>変態を理性ある人間に変態させないで!
>タイトル中二、中身r18なクオリティをもう一度
この作品のテーマは「ほのぼのハートフル」だよ?ほのぼのなのは当然じゃないか。
それと、そんな紳士が心の支えになっている世界は滅ぶと思うが、そこんとこどうよ?
あと、誰が巧い事言えと……。
そして、何故に作者がタイトルを親戚の中学二年生から聞き出した好きな言葉から作っていると気付いた!?そんな訳ないけど!全部自作だけど!
ranking18位=r18ですね?分かります。そんな高いのか低いのかよく分からない地位を目指して、今後も慢心じゃなくて邁進します。
(´・ω・)ところで、そのランキングはどんなランキングかしら?
>まあ、なんだかんだいっても普通におもしろかったんだけどね。
>次回更新も楽しみに待ってます
適度に力を抜いてダルダルで頑張るけど、楽しめる内容じゃなかったらごめんね!
>返せ! 返せよ! 僕らの紳士を返してくれよ!
>自制する紳士なんて紳士じゃないよ!
>マスターの恐怖がなんだよ! それでも愛でるのが紳士じゃないか!
(´◉◞౪◟◉)恐怖は欲望にも勝る。つまりは、そういう事だ。
>そして閑話は過去話なのだろうか。
>つまり何が言いたいのかというと、美女ジジ様ディ・モールト。
残念。美女ではなく、美少女なんだ。
べ、別に作者の趣味で少女にした訳じゃないんだからね!勘違いしないでよね!
>トウヤ……orz
>暗黒史を彷彿とさせる名前につい右手がっ。
何やら作者の意図意識せぬところで心の琴線に触れた模様。
取り敢えず、その右手に幻想を壊す力でも付加すればいいと思います。