色は匂えど散りぬるを。
『24話・50の音取り遊び』
「アバンチュールは良いものだ」
「いきなりどうしたんですか?」
「うむ、相も変わらず意味不明じゃな」
僕の言葉は、どうやらメアとジジに理解されなかったらしい。
「えっとね、アバンチュールは良いものだと思うんだよ!」
「お主はつまり何が云いたいんじゃ」
「カッコイイことを云いたいです」
「気持ち悪いほど意味が分からないですね」
メアが最近僕に対して酷くなってきている気がする。これはどうしたことか。
「くっ、メアのツン具合が強すぎる……っ!」
「結構なことじゃな」
ジジまで最近……いや、ジジは前から酷いか。そんなに変わってないな。いつまでも変わらないジジで居て欲しいものだ。
それはそうと。
「ここまで二人にキツイ言葉を浴びせられると、興奮が止まらない」
「流石は変態じゃな」
「紳士だよ! 僕は変態じゃないよ! 紳士だよ!」
「凄く無理のある言葉ですね。明らかに紳士じゃありませんし」
「誠意ある行動しかしてないんだから、紳士だよ!」
「そんな訳あるか。誠意という言葉を履き違えるな」
一方的に二人に責められる僕。
嗚呼! 快感の波が止まらないっ!
「たまらねぇ……」
「畜生以下じゃな、お主。いや本当に」
「追随を許さない変態っぷりですね」
本格的にメアはツン期に入ったのかもしれない。容赦がないです。
しかしながら、ツンデレでのツン期とは世間一般で云う所の。
「照れ隠しだものね。流石はメア、可愛い! ……あ、そういえば女体盛りはいつするの?」
「唐突にセクハラ発言をかますな」
「なんというか本当に、アレ、ですよね……」
メアが何とも云えない表情で僕を見る。
どうしてそんな表情をするのかしら、さっぱり分からないわね。
「ニーズがあるなら僕が男体盛りをしてもいいけどね!」
「ぬるぬるしそうじゃな。変な液体とか出して。どちらにせよ、喰えた物じゃないが」
「寧日な日々にほんのりとしたスパイス男体盛り。……ヤバいな、流行るぞこれはっ!」
「ノイローゼになりそうなので絶対に実行しないで下さいね」
仮に実行したとしても、そこまで酷くないと思う。僕の肉体美は中々の物だよ!
……たぶん、きっと、おそらく。うん。だ、大丈夫だ。自身を持つんだ僕っ! 僕が男体盛りを広めれば、料理界を代表するグルメ料理になる筈だっ!!
「廃棄物にしかならんから止めておけ」
「酷い妄想です。現実を見ましょう、ね?」
メアに優しく諭された。その慈愛に満ちた目が僕の胸を抉るぜ!
「婦女子には受けると思うんだけどなぁ。……腐った方々には特に」
大人気になりそうだ。いや、既に大人気かもしれない。
「変態的な発想じゃな」
「本当ですね」
「またもや変態って云われた!? 紳士だって云ってるのにっ!」
仮に変態だったしても、変態と云う名の紳士だってクマ吉師匠が云ってたもん!
「身から出た錆じゃ。変態と云われても仕方なかろう」
「むぅ……」
納得いかない。
「滅多に見れない紳士の中の紳士だと云うのに……」
「妄言甚だしいですね」
先程の慈愛が無くなった目で僕を見るメア。
嗚呼、みなぎってくるっ、何かがみなぎってくるっ! もっと、もっと見てぇ!! その冷めた目でぇ!!
身体を抱いてビクンビクンとする僕。そんな僕を、より一層冷めた目で見るジジとメア。
「やはり変態じゃな」
「有害無益な変態ですね」
「よしんば変態だったとしても、それはきっと良い変態だよ!」
それにしても、メアとジジの言葉が辛辣すぎる。
「落魄した者でもお主ほどに酷くはないじゃろうなぁ」
「慄然ものの不快さですからね」
そこまで云うか!?
「ルンペン以下の扱いには、流石の僕も泣きそうです!」
ドイツ語を混ぜたお洒落な言葉で主張して見る。
優しい言葉だって僕は嬉しいよ!
「冷眼視されるのは、浮浪者よりも多分お主の方が多かろうから仕方ない。理解出来たら絶望して泣け、泣いてしまえ」
まさかドイツ語が通じるとは思わなかった。びっくり。
あと、ジジの弩Sっぷりに惚れそうだ。ニヤニヤしているジジ可愛いです。子猫のニヤケ顔とか初めて見たよ。
「牢乎なサドっぷりだねジジ。魚料理で可愛らしく『やったぁ!』と叫んだ姿からは想像もつかないサディスティックぶりだ」
「わざわざ堅苦しい言葉で云う程のサディズムでもないじゃろうが」
ごもっともであります。
まぁ、どんなジジでも僕はあれですよ。
「ヲーアイニーは変わらない訳だがね! ……あれ? なんか発音が若干違う気がする」
正しくは「ウォーアイニー」だっけ? よく覚えてないや。
……まぁ、どっちも同じ発音だし良いかっ!
「ん。知っとる」
僕の告白が軽くジジに返された。……いや、まぁ確かに、普段から好意を隠してないから知ってるのは当然だろうけど、なんだ。
こうも軽く、しかも真顔で返されると、ね。
……流石に、ちょっと気恥ずかしい。
*****
「そういえば、今日はいつにも増してほのぼのしていますね」
「ねー。……と、メアが云う事には全て無条件で同意したいのは山々だけれど、基本的に普段の日常と変わらないと思う」
「うむ、そうじゃな。日常生活はいつもグダグダしとるからのぅ。……原因はいつもお主じゃが」
「頑張ってるんだけどね、僕なりに。毎日毎日これ全力なり!」
「理解出来ない行動ばかりしますけどね」
……メアのツンデレ具合って、今どの程度まで進行しているのだろうか。僕と出逢った頃のメアが懐かしい。
まぁ、今のメアも魅力的なんだけどさ。
「ねぇねぇ、ふと思ったんだけど」
「どうしたんじゃ?」
「や、そのさ。えっと、あれ? ……何を云おうとしたんだっけ?」
「……結局グダグダですね、今日も」
「もう少しシャキシャキした態度ならば、少しはマシじゃろうに」
なんだか、げんなりしている二人。
仕方ないじゃない。云いたい事を忘れるのって、よくあることだと思う。
「苦々しく云わなくてもいいじゃない。僕だって話題を探すのに必死なんだよ?」
「よくもまぁ、そんな下らない事に必死になれるの。必死ついでに夭折してしまえ」
「……え、なに? それは必死と夭折を掛けてるの? ねぇねぇ?」
「ええいっ、ウザい! そのニヤケ顔を止めい!」
「云っておくけど、それ程上手く掛かってないからね?」
プルプルと震えて顔を赤く染めるジジ。いっつきゅーと。
まぁ、流石に必死と若死に、つまりは早死にを掛けるには無理があり過ぎるからね。恥ずかしがるのも仕方ない。
しかし、あれだな。
「猫が恥ずかしがる姿も珍しい。それが子猫ならば尚更に。これは萌えだね。いや、むしろ蕩れだ」
うんうんと偉そうに頷く僕。実に眼福である。
ニヤニヤとジジを眺める。うんうん、子猫の恥ずかしがる姿は実にいいものだ。
「……黙って聞いておれば、お主には常識を叩きこむ必要がありそうだなぁ?」
「……あれ?」
ゴゴゴッ、という効果音が鳴りそうな感じで、ジジがドスを効かせた声を出す。
あれれ? もしかして、怒っ、た?
「レクイエムは何が聴きたい。3秒で選ぶがいい」
「いやいや!? え! そこまで怒り心頭ですかっ!?」
まさかの鎮魂歌。僕の命が危険域に達している!?
くくくっ、と俯いて笑うジジが怖いっ!
「……積み重ねてきた我慢が、ついに爆発しちゃったんだね、ジジ」
目元を拭う仕草をしてメアが云う。
いやいや、そんな「可哀相なジジ、ほろり」みたいな状況じゃないよ!? 現在進行形で可哀相な目にあいそうなんですけど僕っ!!
「じゃあ、覚悟は出来ているな?」
「無いよ!? 覚悟なんて無いよ!? かつてない命の危機に流石の僕も冷や汗が止まらないよ!?」
「容赦はせんぞ!」
僕の言葉を無視するジジ。これは本気だ。
そしてジジから立ち昇る謎の漆黒のオーラ! ええ、何それ!? あれかい、闘気ってやつかい!? なんと漫画チックなっ!
というか、漆黒のオーラってなんかアレじゃね?
「憎悪とか怨恨とかがあるキャラが出すべきものじゃない、それ!?」
「冷静に突っ込みますね。割と余裕あるんですか?」
メアそんなことよりも、先ずはジジを止めようよ!
「介錯人は務めるので、安心して下さい」
にっこりと素敵な笑顔でメアがブラックな事を云います。
戻って! あの純真なメアに戻って! でも今のメアも素敵だよ!
そんな風に若干テンパっている僕に向かい、いつの間にか煉獄を思わせる炎を従えていたジジが、綺麗な微笑みを僕に向けて。
「逝け」
その言葉と共に炎が僕に放たれた。
てか、ジジって魔法使えたんだね、初めて知ったよ!
「ぎゃあああああ!!!」
獄炎が僕の身を焼いた。
*****
「お主の負けじゃな」
プスプスと黒い煙を上げて横たわる僕に、ジジが言葉を投げかける。
「それにしても、最初から凄く無理のある会話でしたね」
「うむ、無理矢理感が凄かったな」
痛みに苦しむ僕を放置して、会話を続ける二人。手当てしてくれてもいいと思うんだが、そこのところどうだろうか。
「まぁ、どの道お主の負けじゃから今月は掃除を全部一人でやるんじゃぞ」
ジジが僕に死刑申告を下す。
くそぅ、こんなことになるなら賭けなんてしなきゃ良かった。
「あの、本当に大変なら私も手伝いますから……」
嗚呼、メアが優しい。惚れた、抱いて! むしろ抱きたい!
しかし、軽く重体な僕は動くのが辛い訳であります。
「今は休んでおけ。放っておいても一時間位したら復活するじゃろうけど、明日から重労働じゃからな。万が一にも動けないのでは困る」
ジジはジジで、気遣っているのかいないのか分からない態度を取る。
メアよりもジジの方がツンデレ度は高いのかもしれない。
「取り敢えず、こいつを部屋に運ぶとするか」
「そうですね」
そんな会話の後に、僕の身体がふわりと宙に浮く。どうやら魔法を使った様だ。
そして、そのまま僕を宙に浮かせて運んで行く。ありがたいことだ。
でも、治療はしてくれないんだね!
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あとがき
思いつきでやった。反省はしていないが後悔はしている。
すんごい無理矢理な会話になってしまいました。2つもするんじゃなかったぜ!2個目とか無茶な繋がりが目立つ。
普段よりもグダグダ感が増していることを否めない。
もう二度としない。