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No.9582の一覧
[0] ほのぼの異世界譚[炉真](2011/03/27 16:16)
[1] 1話・平和な異世界[炉真](2010/05/06 20:44)
[2] 2話・新ジャンル[炉真](2010/05/06 20:53)
[3] 3話・狩り[炉真](2010/05/06 20:58)
[4] 4話・悪魔[炉真](2010/05/06 21:04)
[5] 5話・マスター[炉真](2010/05/06 21:08)
[6] 6話・スイーツ[炉真](2010/05/06 21:16)
[7] 7話・夜[炉真](2010/05/06 21:22)
[8] 8話・幽霊[炉真](2010/05/06 21:31)
[9] 9話・夢[炉真](2010/05/06 21:37)
[10] 10話・懐かしき友人[炉真](2010/05/06 21:47)
[11] 11話・竜との対談[炉真](2010/05/06 22:44)
[12] 12話・ナデポの修行[炉真](2010/05/06 22:48)
[13] 13話・魔族[炉真](2010/05/06 22:54)
[14] 14話・神竜との邂逅[炉真](2010/05/06 22:59)
[15] 15話・混沌[炉真](2010/05/06 23:07)
[16] 16話・再会した結果が敵[炉真](2010/05/06 23:12)
[17] 17話・漢で乙女[炉真](2010/05/06 23:16)
[18] 18話・白翼美青年[炉真](2010/05/06 23:21)
[19] 19話・藍赤幼女[炉真](2010/05/06 23:45)
[20] 閑話01・穏やかに壊れた世界[炉真](2009/08/02 13:27)
[21] 20話・昔話[炉真](2010/05/07 00:00)
[22] 21話・帰還[炉真](2010/05/07 00:04)
[23] 22話・バハムート[炉真](2010/05/07 00:08)
[24] 閑話02・とある喫茶店の話[炉真](2009/10/31 21:38)
[25] 23話・異質の刀匠と誇りの鍛冶師[炉真](2010/05/07 00:12)
[26] 24話・50の音取り遊び[炉真](2010/05/07 00:18)
[27] 25話・王都の途上[炉真](2010/05/07 00:23)
[28] 26話・闇の妖精-a[炉真](2010/05/07 00:26)
[29] 26話・闇の妖精-b[炉真](2010/05/07 00:29)
[30] 26話・闇の妖精-c[炉真](2010/05/07 00:35)
[31] 26話・闇の妖精-d[炉真](2010/05/07 00:48)
[32] 27話・ユリア[炉真](2010/05/07 00:53)
[33] 28話・女王と癒しの魔女-a[炉真](2010/05/07 00:59)
[34] 28話・女王と癒しの魔女-b[炉真](2010/05/07 01:02)
[35] 29話・学園編でもしようかしら?[炉真](2010/05/07 01:33)
[36] 30話・全3話で終わればいいなぁ学園編[炉真](2011/01/21 19:26)
[37] 31話・定番といえば定番な異世界イベント[炉真](2011/01/21 23:11)
[38] 32話・決闘戦技祭[炉真](2011/03/27 16:15)
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[9582] 3話・狩り
Name: 炉真◆769adf85 ID:195099a3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/06 20:58


 本能が叫ぶ。

 目の前の獲物を狩れと。





『3話・狩り』





 木陰に隠れて息を潜める。
 期は未だ最適に非ず。
 焦りは禁物。焦燥による失態は歴史が物語る。

 故に、焦らず。

 どこまでも気配を殺して身を潜める。
 獲物は未だ僕に背を向けたまま。

 だが、まだ早い。

 この距離では確実に獲物を捕えられない。
 汗が頬を伝う。

 暑い。

 物理的な熱気に加え、精神的高揚感が拍車をかける。

 暑い。

 だが、それでも未だ期は熟さず。
 息苦しい程の熱気が身体を覆う。

 暑い。

 その時、獲物が動いた。

 瞬間的に高まる緊張。
 精神は高位の次元に移行し、この光景を俯瞰的に感知する。
 視線は揺れず動かず真っ直ぐに。
 獲物の一挙一動をつぶさに観察する。
 目を見開き、その姿を焼き付ける。

 こちらまで、あと十歩。

 思わず唇を舐める。
 思いのほか、唇は乾いていた。

 あと、五歩。

 喉がからからに乾く。

 あと、四歩。

 唾を飲み込む。

 あと、三歩。

 舌がひりひりと痺れる。

 二歩。

 眼球が血走る。

 一。

 身体を血流が駆け巡る。


 ゼロ。


 獲物が目の前を通り過ぎる。
 身体中に力を込める。

 獲物は再び僕に背を向けた。

 両脚に、史上最高レベルの力が漲る。
 四つん這いになり、猫のように背を丸める。

 獲物は僕に気付かない。
 はち切れそうな程に漲った力を、一気に解放する。
 されど音は立たず、高速にて獲物へと肉薄する。
 まるで、弾丸の如く。
 成功を確信した僕は、歓喜の叫びを上げる。

「メアちゃ~~~~~ん!!!」

 振り向いた少女エモノが顔を驚愕に染める。
 だが、既に狩猟成功範囲内。
 いまさら気付こうが、余りに遅いっ!!

 瞬間。

 まさに少女を抱きかかえんとした僕の頭上。
 ひとつのちっこい影が視界をよぎった。

「甘いわ」

 一閃。

「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!」

 引っ掻かれた顔から血が噴き出す。
 視界を失った僕は、見当違いの方向へと軌道を変え、着地を仕損じたのだった。

 衝撃。


「ごぶぅ!!」


 僕の意識が暗闇に堕ちる。
 最後に見えたのは。





 呆れた様に僕を見る子猫と、僕を見て心配そうにあたふたしている少女だった。





*****





 現在、正座をして説教を受けている。
 説教をかましているのは、三毛の子猫。
 その名をジジと呼ぶ。
 三毛なのにジジとは是如何これいかに。そう思っていた時期もありました。
 けれど、何気にお腹の中が真っ黒なので似合っていると、最近思うようになりました。
 僕を叱りながらも、ふりふり揺れる2本の尻尾が愛らしいです。

 癒し万歳。

「こりゃ。聴いておるのか?」

 揺れるふかふか尻尾に癒されている僕をジジが咎めます。
 けれど、そこに怒りの感情はありません。
 ジジの眼を見ると、こいつには何を云っても無駄だしなぁ、といった諦観の眼差しをしています。
 最近よくその眼差しを向けられることが多いです。
 あと憐憫の眼差しも。
 とても疑問に思います。何故そのような眼差しを向けられるのか、さっぱりです。はぁ~さっぱりさっぱり。

「ジジ、もう良いよ……」

 横から声がかかる。
 僕とジジと一緒に住んでいる少女。我らがメアちゃんである。
 僕に説教していたジジを止める。

「でもねぇ……」
「大丈夫だから」

 不服そうなジジ。
 そんなジジを宥めるメア。
 実に良い子である。
 まぁ、それだけ僕がメアに信頼されているということだ。
 はっはっは。僕の人徳万歳。

「もう、あたしも諦めたから」

 なんだか凄く疲れた顔でメアが云う。
 十歳児が出してはいけない、全て無駄だと悟りきった雰囲気を発散している。
 どことなく虚ろな瞳が哀愁を誘う。

 なんだろうね。どうしてそんな表情をしているんだろうね。不思議。

「お主が原因じゃろうが」

 ジジが何か云っているが、僕には聞こえない。

「……馬の耳に念仏とは、このことじゃなぁ」

 ジジが悟りきった表情を浮かべて云う。
 失敬な。僕は発狂していないぞ。

「……どうして発狂という言葉が出てくるんですか?」

 メアが不思議そうに尋ねる。
 昔、馬の耳元で念仏を唱えたことがある。昼夜問わずに、一日中ずっと。結果、馬が発狂するに至った。
 いやぁ、あの時は大変だった。暴れ馬の真骨頂を見た気分だった。

 そんな旨を伝えた。

 メアが、もう駄目だなぁ的な、憐憫の視線を向ける。その表情もまた、かわゆす。胸がほんわかする。
 ジジは、こいつは終わってるなぁ的な、諦観の視線を向ける。その表情に言葉に出来ない悦楽が込み上げる。

「駄目ですねぇ……」
「駄目じゃなぁ……」

 一人と一匹の表情が、なんだか慈愛に満ちた物へと変質していた。
 どうやら、複雑な過程を通って精神状態が飽和しているようだ。
 温かい眼差しで、まるで見守る様に僕を見ている。
 何故にそんな風に見てくるのか、今の僕には理解できない。
 きっと、これからも理解できないだろう。



 だって、理解する気ないもんネ☆





 ……なんだろう、僕が凄い駄目人間な気がする。






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