みんな死ねばいいいのに……死ねば……死ねば、いいのにっ!!
『28話・女王と癒しの魔女-b』
「みんな死ねばいいのに! なにがクリスマスだ、ちくしょう!!」
「いきなりどうした」
「急にテンションが上がりましたね」
謁見の場を辞してからの僕の第一声である。リア充爆ぜろ。滅却してしまえ。ついでにもげろ。これ以上ないってくらいにもげろ。
「爆ぜてもげて振られてしまえ! リア充なんか砕けてしまえ!」
「また、意味の分からぬことを……」
「くりすますってなんでしょう?」
こちらの世界ではクリスマスという物が存在しないから素敵。これだからファンタジーって大好き。
元の世界では、組織の同志諸君と街に繰り出してカップル共をブッコロヌしている時期だ。しかし、こっちの世界ではそういう物がないので実に素晴らしい。
「しかし、それでも僕の嫉妬心が滾るのである。パルいぜ!」
僕が元の世界で設立した嫉妬団は今頃活動をしている頃だろうか。ここの「嫉妬」が「しっと」でない所が重要なのだ。
「……ふぅ、落ち着いた。大丈夫、今は賢者タイムだ」
「何が大丈夫なのか具体的に云ってみろ」
「先程までの真面目な空気が霧散しましたね」
真面目な空気なんて有ったかしら?
そんな疑問を口に出す事はなく、ジジとメアを連れ立って城内を適当に散策する。
何故に僕達が城内を散策しているかと云うと、謁見の場を辞して各自の部屋で休息をとっていても、つまらないからである。城内をうろついていれば何某かのフラグを立てれるかも知れないしね!
そんな訳で一人うろちょろしようと思っていたのだが、どうにも僕を一人で行動させるのが不安らしかったジジとメア。一緒に行動すると申し出てきた。
そんなに僕は信用がないのだろうか。確かに、前回王城に来た際には高価な壺を並べてボーリングしたけれど。そんなの可愛らしい悪戯じゃないか。
「僕に信用がないことも不満である。先程、絵画でフリスビーしようとしたのを止められたのも不満である」
「止めるのが当然です」
「ユリアが近衛騎士になろうかという時じゃ。アホな行動は控えろ。というかするな」
因みにユリアさんは、謁見の終わった後に近衛騎士のお姉さんに連れて行かれたので、ここには居ない。寂しいね!
「そうこうして彷徨っている間に、そろそろ昼食の時間が近付いてきた。くそぅ、何もフラグ立てれなかった。カミジョーさんに顔向けできないっ!」
「カミジョーって誰じゃ」
「カミジョーさんは知りませんけど、フラグが何なのか分かる様になった自分が情けないです」
「情けなくないよ! 素晴らしい事だよ!」
「どこがじゃ」
喧々諤々としながらも食堂に向かって歩みを進める僕達。流石にそろそろお腹が空いて来たので、王宮料理が楽しみでならない。
舌舐めずりをしながら角を曲がる。その少し先が食堂だ。
「む?」
ワクワクしながら角を曲がると、そこに人影。
白翼青年スティーノと、仮面を付けて黒の衣装に身を包む誰か。その二人がなにやら会話をしながらこちらに向かってくる。
仮面を付けた人物は、体格的にどうやら女性の様だ。服の上からでも分かる程の抜群なプロポーション。
この世界にはスタイル抜群な人しかいないのかしら。……ああ、サイネが居たか。貧相なスタイル。御労しや。
「あれは……」
「ふむ。スティーノと、もう一人は……」
こちらに会話しながら向かってくる二人に気付いたジジとメア。
メアの顔が若干の警戒に満ち、ジジが言葉を続けようとして、件の二人が僕達に気付く。
「ああ、これはこれは……」
スティーノが僕達に声をかけようとした瞬間、隣の黒衣仮面の女性が弾丸のように飛び出した。
その軌道上には、僕!
「アンドロメダカっ!?」
腹部に物凄い衝撃を受けて通路に倒れる。倒れた際に後頭部を思いっきり打った。超痛い。
痛みに悶絶する僕に対して、抱きついたままの黒衣仮面の女性が声を発する。
「嗚呼! 貴方様と再び出会える事を、一日千秋の想いで焦がれておりました!」
熱に浮かされたような声色。凄く嬉しそうです。
取り敢えず、僕はどうすればいいのか。今の声でこの黒衣仮面が誰であるかは分かったのだけれど、はて、ここからどうしたものか。
先ずは、挨拶代わりに抱きしめておくとしよう。
そう思い立ち、僕が抱きしめようとした瞬間、黒衣仮面の女性が僕から飛び退いた。そして僕を襲う衝撃。
「グレイトォオオオ!!!」
予想外の攻撃に奇声を上げる僕。一体何があったのか。
胡乱な眼で周囲を確認。そして右手を構えているメアが視界に映る。
もしや先程のはメアか?
「危ないじゃないの、腐滅のお嬢ちゃん」
「先ずは挨拶から始めるのが、大人の礼儀と云う物ではないでしょうか? 治癒のお姉さん」
「突然攻撃する様な子に、礼儀を説かれるとは思ってもみなかったわ」
「私も、まさか大人の方に礼儀を説くとは思っていませんでした」
「あらあら、年端もいかない子供が大人じみた事を云うモノじゃないわよ?」
「背伸びしなければ大人は意見を聞き入れてくれないモノですから」
バチバチと火花が散りそうな空気が充満する。お互いに視線をぶつけ合う二人。黒衣仮面の女性の表情は見えないが、メアは穏やかに微笑んでいる。目が笑ってはいないけど。
怖っ! メア怖っ! その笑顔が怖い!
倒れ伏しながらも、ガクガクブルブルと震える僕。なんだか嫌な汗が出てきた。
黒衣仮面の女性も、仮面で顔が隠れてはいるが、きっと笑っているだろう。そんな予感がする。
なんだろう。凄くお腹が痛い。胃の辺りがキリキリする。ぬおおお。
「二人とも険呑な雰囲気を出しとらんで、魔力を治めい。空気が悪くなる」
「腐滅の魔女殿、治癒の魔女殿、どうぞ気を御鎮め下さい!?」
え、なに。もしや僕の直上で、またもや魔法大戦を繰り広げる気だったの? なにそれ怖い。というか流石に酷い。
「……それも、そうですね。失礼致しました」
「……ごめんなさい」
二人がそう云った後、空気が若干軽くなる。
「申し訳ありません。大丈夫でしたか?」
黒衣仮面の女性が僕を起こす。ううむ、なんだかしっくりこない。普段からこんな扱い受けないしなぁ。背中が痒い。
そんな事を思いながらも、手を借りて起き上がる。
「……デレデレしないで下さい」
メアに笑顔で云われた。超怖い。僕が何をした。
「あらあら、可愛い嫉妬心ね。その辺りは子供よねぇ」
そんなメアにクスクスと笑いながら声をかける黒衣仮面の女性。うん、またギスギスした空気になるので止めてくれ。
そう云いたいけど、云えない僕。チキンなり。七面鳥にして食べられるかも知れない。お姉さまなら大歓迎だけど。
お姉さまに食べられる所まで妄想が進み、「うへへ」と涎を垂らしている僕を置いてけぼりに、黒衣仮面の女性が仮面を取る。
「お久しぶりです、聖魔様、幼い魔女ちゃん」
綺麗な顔を晒す女性。その顔に微笑みを浮かべて挨拶。
「そして、貴方様も、お久しぶりで御座います」
ひと際、綺麗な笑顔を浮かべ僕に言葉をかける。その女性こそ、王城に仕える王宮魔導師の最高峰の一人。
治癒の魔女エリン=アーヤ、その人である。
*****
その後も、なんやかんやと修羅場ったが、割愛。
割愛しなきゃ僕の胃が持たない。マトモに話せる物か。怖かった。
しかし、エリンは、てっきりツンデレかと思っていたのに、まさかのツンヤンデレだったとはね。びっくりだ。
「いや、本気で胃が痛くなった。こんなに痛くなったのは、女子更衣室のロッカーに一人取り残された時以来だ……」
「なにやってるんですか」
スティーノの言葉を無視。
因みに女性陣はみんな食堂に向かった。ここに留まっているのは、僕とスティーノだけである。
何故に、こいつと残ったのか。それはね、女性陣の、主にメアとエリンの出す空気が怖かったからさ。
「……なんだろうね、この遣る瀬無さ」
「……なんでしょうね」
なんだか僕らしくなかったなぁ。
げに怖ろしきは女の確執なりや。いや、本気で怖かった。怖かったよぅ。
「取り敢えず、食堂に行きましょう」
「うむ、だがその前にすることがある」
「は? 一体何があぐほぉっ!?」
「スッキリ!」
胸のもやもや感を解消するために、スティーノを取り敢えず殴った。
うむ、すっきりだ。イケメンは苦しめばいい。
「さて、行くか」
「……待ったれや。貴様は毎度毎度と……くっくっくっ、貴様とは一度話し合う必要があると思っていたんだですよぉおおおおお!!!」
「逆ギレか。これだからドキュンは嫌いなのよ」
「正ギレだろうがぁぁぁあああああああああ!!!」
スティーノと本気の殺し合いを演じることになった。これだからイケメンは嫌いなんだ。これくらい笑って流せ。
壮絶を極めた僕とスティーノの殴り合いは、遅いと様子を見にきたジジに強制的に止められた。まさかのユキダルマン二体である。
僕とスティーノが霜焼けと闘う最中、ジジに1時間説教をされた。
僕が何をしたというのか。全部クリスマスのせいだ。ちくしょう!
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あとがき
語ることなど微塵もない。ちくしょう。
▼ぱるぱるぱるぱるぱる……。
>ベロリンチョから連想される主人公のこれまでの背景……
>あれ?今までと同じ変態の一言で済むというか、それ以外ありえないような。
>つまり主人公は今までもこれからも変態(紳士)だということですね、わかります。
うん、先ずは落ち着いてほしい。単純に作者の力量不足だったということは分かっている。
ぶっちゃけ、背景が全く感じられなかったね。でも、それでも良いと思う。
>なんて尻ass……!!
>ところでassの意味がわからないのでgoogle先生に訊いてくるぜ!
>追記
>調べてみたらロバだった。
信じられるか、それ以外にも意味があるんだぜ?
詳しくは辞書で。
>相変わらず周りはシリアスなのに、紳士のせいでシリアスになれない尻明日なssですね。
>そしてメア達を筆頭に扱い慣れられてきた紳士! このまま倦怠期に突入でしょうか?
バカッパルの倦怠期は好きです。
>自重してほしいって言ったけど自重したら彼は彼じゃなくなる。
>それはイヤだから自重しなくていいですよ。変態は紳士ですから。
なんて根本的な解決法を……っ!!
>面白かったです。
>やはり魔王の娘との紳士的協議が秀逸。
>ノンビリと更新してください。
ありがとうございます。
いっそのこと、2年で1話のペースで更新しようかと思います。