夢に見たあの景色を今一度。
『31話・定番といえば定番な異世界イベント』
「出席を取る。席に着け」
一限目の授業が始まる前のホームルーム。
我が愛しの担任様が教壇の前に立つ。嗚呼、今日も一段と美しい。こう足を舐め回したくなる程に。
僕の持ち得る技能の限りを尽くした、ねぶりテクニック。このテクニックは既に、前人未到の境地に達しているのである。
ねぶりテクニックの一例として、この学院に中途入学した初日に、意味の分からない派閥みたいなのを作っていた女性がいた。こう、女王様的な。それほど美人と云う訳でもなかったのだけれど、無駄に豪奢な服装をしている女性。学院指定の制服はどうしたのかと尋ねたくなるような装いだった。しかし、女性という一点の事実は不変のものであるからして、紳士的振る舞いをしようと思った矢先に、その女性が「足を舐めろ」と云ってきたのだ。それもホームルームが終わり教室を出た瞬間、公衆が行き交う廊下で。
その女性の取り巻き(これまた煌びやかな服装)や、周囲の野次馬(どいつもこいつも無駄に高そうな服)が見ているさなかのことである。取り巻きの見下すような視線に、野次馬達の馬鹿にしたような視線。何故このような失敬な視線を向けられるのかと自問し、僕の紳士的オーラが足らないからだと自答した。
僕の女性に対する愛情が少ないと思われているからこそ、このような謂れもない視線を受けるのだと判断。こうなったら僕の紳士力を全力全開に解き放つと決意する。やるべきことが決まれば即実行。僕を見下すように見ている女王様っぽい女性が差しだしていた足に舌を這わせる。
そのような僕の姿を見て、周囲からはクスクスとした笑い声。しかし、その笑い声はたった数十秒しか続かなかった。何故か。簡単である。僕が足をねぶりまくっている女性の様子が、急変したからだ。
最初は侮蔑。次いで数秒、驚愕。続けて十数秒、恐怖。そして数十秒後には、泣き崩れた。「やめてやめてごめんなさいごめんなさい」と涙を流しながら云う女性。必死に僕から足を引き離そうとするが、しかし、僕にも紳士的力量を周囲に示さねばならぬので離しはしない。
靴を脱がし足先爪先千差万別舐め尽くすっ! そのような不退転の志を元に、舌を這わせまくる。
野次馬はドン引きしていた。なぜであろうか。不思議である。
ともあれ、快感とも未知の感触とも云い難い様相で悶える女性の表情を見て、取り巻きが僕へと殺到し、引き剥がそうとしてきた。当然ながら、僕はいたく紳士的志を傷付けられた。
どうするか。答えは簡単である。取り巻きの女性たちの足も、ねぶり舐め回す。複数の相手を同時に悶えさせる事が出来れば、僕の紳士力も認められるだろう。故に、男の取り巻きには鉄拳を喰らわせ、女性には奉仕をする。意識を失い地に倒れ伏す男が複数、悶え気絶する女性が複数。まさに阿鼻叫喚。
野次馬は悲鳴を上げて逃げ出した。何故。
しかしながら、取り巻き勢は全員倒れ伏し、残るは女王様風味の首魁たる女性一人のみ。廊下の隅でガタガタ震えている理由は分からないが、どうしたのだろう。されど僕の御奉仕と云う名の、ねぶりテクニックは未だ満了していないのだ。奉仕を途中で放棄するなど紳士の名折れ。続きをするために近づいて行く。
僕が近付くと「ひっ」とした悲鳴を上げ「ごめんなさいごめんなさいゆるしてすみませんゆるして」と涙ながらに訴える女性。
その姿を見て、はてなにがあったのかと首を傾げながらも近付き、彼女のおみ足を手に取り、口へと運ぶ。そして上がる、絶望の嬌声。
翌日に、<変態足舐め事件>と題さることになろうとは思いもしなかった。誰が変態だ。
*****
その後も色々とあったなぁと思いながら、かつての情景を想起して目を細める。あれが原因で、2年1級から2年0級にクラス移動されたのは遺憾であったと今でも思う。
本当ならば今頃、貴族だか富豪だかの高貴なる育ちのクラスで「きゃっきゃうふふ」のハーレムを形成する筈であったのに。異世界に来た主人公としては当然のカリキュラムであるハーレム形成をする筈だったのに。
かような崇高にして高潔なる指標を持つ僕は讃えられても良い筈であるのに、なにゆえ件の女王派閥に敵視されることとなったのか。不思議も不思議、未だに謎である。どうしてこうなった。どうしてこうなった。人生はいつも不平等だ。
「――と、いうことで異論はないな」
などと、過去の事象に現を抜かしている間に、愛しの麗しき担任殿の話が終わってしまった。
しくじった。なにを仰られていたのか、全然拝聴していなかった。なんたる失態。これはもう、職員室にある担任殿の机に僕のプロマイドを飾るしかないではないか。
「おい、なにラリってやがる。てめぇの番だろうが」
不意に、なんとも野性味溢れる声が上方より降りかかる。見上げれば、そこには壁があった。
「なんと、壁が喋った。流石は異世界、ぬりかべも標準装備とは恐れ入る」
「誰がぬりかべだ。くだらねぇこと云ってねーで、早く行け」
「なんだ、良く見れば獣人のレオか。僕のドキドキ感を返せ」
「てめぇの心臓を刳り抜いてか?」
ギラリと光る瞳に寒気。よもや物理的に返されそうになるなんて。
ちょっと身体が大きいからっていい気になりやがって。獅子顔で巨躯で声が渋いからっていい気になりやがって。く、悔しくなんてないんだからっ。ちょっと格好良いな、なんて思ってないんだからっ。
胸中で呟きながら、スゴスゴと教壇の前へと行く。決してレオの雰囲気に呑まれて従った訳ではない。ホントだよっ!
と、思いつつも教壇の前に辿り着く。辿り着くのだが、はて、ここからなにをすればいいのか。担任殿の御言葉を拝聴していなかったので、なにをすればいいのか皆目見当もつかない。
担任殿が僕へ向かって差し出す手には、なにやら細長い紙の束が握られている。なんだろう、一体何をすればいいのだろう。
「早くしなさい」
戸惑っている僕の内心を知ってか知らずか、麗しの担任殿が急かす。
どうしよう、今更なにをするのか訊ける雰囲気ではない。仕方ないので、自分で考えよう。
ヒントは2つ。僕の前の生徒は皆なにかをしていた。担任殿の手に握られる細長い紙束。先の発言からすぐに終わること。この3つである。しまった。ヒントは3つだったか。なんという凡ミス。
それはともかくとして、以上の点から考えられることは、もはやひとつしかない。なにをするのか理解したのなら、即行動。
僕がやるべき事は単純明快。担任殿の美しい手を舐めることっ! 僕のねぶりテクニックの全霊をもってっ!
顔を手に近づけ、舌を出そうとした瞬間。唐突に横から介入した鋏が、口の前でジョキリと音を立てる。怖っ!?
慌てて顔を引っ込めると、いつの間にか教壇の横に立っていた副ティーチャーが「ちっ」と舌打ち。危うく舌切雀になる所で御座った。
「いくら僕の舌が愛おしいからといって、今のは流石にあんまりであります!」
「大丈夫だ。テメェの舌はあれだろ、二枚舌だろ」
「ああ、なるほど。確かにそれなら大丈夫ですね」
「なんだと」
とても失礼な目で見てくる副ティーチャー。そのキ●ガイを見る様な視線を止めて下さい。涎が止まらなくなるので。
「くだらない事をしてるな。とっととくじを引け。後がつかえる」
「御意」
今の遣り取りにすら、ピクリとも表情を変えぬ鉄面皮な担任殿に急かされたので、云う通りにする。結局やることは籤引きだったことが判明した。
担任殿の素敵な御手を味わえなかったのは残念であるが、しかし、メアやジジやユリアさんやその他の女性達を味わってきたこの舌を失うのは惜しいので、諦めて素直に籤を引く。
引いた籤の先は赤色だった。
「ふむ。これで全て埋まったわね」
なにを、と思い視線を籤から離す。そして、黒板に何某かが書かれていることに気付く。
『全学年決闘戦技祭・代表者選抜』
決闘戦技祭って確かあれだ。決められた選抜者が各々の技能を競って戦い合うやつ。K-1みたいなやつだった筈。異世界というかファンタジー世界では定番の奴。バトルトーナメント的な。
そんな説明を入学当初に聴いた覚えがある。これに優勝すると、名誉だか賞金だかが手に入り、更には将来の就職先が武力関係である場合は有利になるとかどうとか。
僕が決闘戦技祭の内容について思い出していると、副ティーチャーが黒板に何かを書き加える。
どうでもいいけど、片手で鋏を持ってクルクル回すのは止めましょう。危ないです。自殺志願じゃないんですから、その鋏。
などと思っていたら、副ティーチャーが書き終わったのかチョークを放した。
なので、黒板へと視線を移す。
『代表者1・アルジーナ=エクト
代表者2・ローレ=ルー=ラート
代表者3・糞莫迦外道のゴミくず』
なんてことだ。代表者3の名称が酷過ぎる。
一体この哀れな人物は誰なのだろう。
「テメェのことだ。糞莫迦外道のゴミくず」
副ティーチャーが僕を見ながら云い放つ。なんてこったい。いつの間にか僕の名前が罵倒語にされている。
「これで代表者は決まりだ」
そしてそれを無視して進行する担任殿。
僕の扱いが哀れ過ぎる。
「異議あり! 代表者には、その3人よりも俺を選抜すべきです!」
「同異議あり! わざわざクラスの変態トップ3を出す事はないと思います! むしろ私を出すべきです!」
「同意です! 他のゴミ共よりも私を選抜すべきです!」
「なにを云ってやがる雑魚共がっ、ここは俺様が行くべきだろう!」
「うるせー! マネキン偏愛者はマネキンの乳でも吸ってろ! ここは俺が出るべきだ!」
「静かにしなさい」
「そういう貴方も黙りなさい。このちりとり嗜好愛者。この場は高貴な私こそが相応しいわ」
「はっ! 薬指至上主義者がナニかほざいてやがる。お嬢ちゃんはいつも通り自分の薬指でも見て悶えてろ! ここは俺が行くっ」
「はははっ、弱い屑程よく吼える。頭頂臭溺愛者は失せろ。ここは僕が出るに相応しい!」
「静かにしなさい」
「おいおい、なにを云ってやがる脱ぎ棄てられたスク水好きが。あんたは黙ってスク水を口説く日課でもしてな。ここは、あたいが出るべきだっ」
「くだらない! 男のブルマ姿に興奮する変態女は退場せよ! ここは私がっ」
「そういう貴様も同性が履いていた靴下が大好きな変態男だろうが。やれやれ、ここは満を持して俺が出るしかないなっ」
「何の冗談だ。文房具にしか恋出来ない恋愛不適合者が出るべきではないな。ここはオイラが!」
「はあ? 飲み水に性的興奮を催す馬鹿が何を云っているのよ。ここは、あたしが行くしかないでしょうに」
「静かにしなさい」
「あらら、なにか云ったかしら? 同性に虐められて興奮して攻撃魔術を乱射するアバズレはお呼びでないの。あたくしが出場すべき大会なのだという事くらい分かるでしょうに」
「おやおやぁ? 涙を流す自分ってば可愛いと勘違いして毎日唐突に泣き始める糞女がなに云ってんだか。ここは勇猛果敢な僕ちゃんが出馬するに決まっているだろう」
「意味もなく眼帯と腕に包帯巻いて来るチビスケは黙ってな。ここはわっちが行くのが当然だろうよ」
「はっはっは、他人を露出させるのが好きな腐れは口を閉じな。あてくしが出るに決まっているだろう」
「常に上下の下着を服の上に着る頭の弱い子はお下がりくだされ。ここは拙者が」
「静かにしなさい」
麗しの担任殿の静止の言葉を無視して「私が」「俺が」「いやいや拙僧が」と次々に口走る級友諸君。互いが互いに性癖を暴露していく様は実に圧巻である。
なんというカオス。ここだけ空間がねじ曲がりそうだ。
「し、静かに……静かにぃ……しなさぁいぃ」
不意に弱々しい静止を促す言葉。唐突な涙声にギョッとして発信源を見遣る。
そこには麗しき担任殿が、いつも通りの無表情でぽろぽろと涙を流していた。
そうだった。雰囲気や普段の態度や無表情の鉄面皮から、クールビューティーと称される担任殿だが、実は酷く打たれ弱いのだ。見た目は美しき麗人佳人でも、その心は正に純真無垢な乙女なのである。
考えても見て欲しい。普段は凛々しい御方が、無表情とはいえ可愛らしい声で泣く愛らしい姿。表情は変わらないが、身体がぷるぷると震えるのを必死で押し留め、毅然とした態度を貫こうとするも、明らかに強がっているのが手に取るように分かる姿。
凛々しさを湛えるのに小動物チックな担任殿の御姿。
――その破壊力は、天元を突破するっ!!
「テメェらあああああ! 今すぐ黙れえええええええ!!」
『イエス、副ティーチャー!』
最初の咆哮は、お姉ちゃん大好きな副ティーチャー。
それに応える、全級友共。男女の区別なく先程の諍いを意にも介さず、一人残らず2年0級生徒は愛しの担任殿を前にひとつとなった。
「黙ったら行儀良くしやがれ! 動いたら殺す! 喋ったら殺す!」
『イエス、副ティーチャー!』
「許可なく口を開くな! 許可なく声を上げるな! 許可なく音を立てるな!」
『イエス、副ティーチャー!』
「お姉ちゃんは絶対だ! お姉ちゃんが絶対だ! お姉ちゃんの言葉に従え! 莫迦みたいに阿呆みたいにお姉ちゃんの言葉をその腐った耳に入れやがれ!」
『イエス、副ティーチャー!』
「分かったな了解したな理解したな把握したな納得したな! いいか! 今からテメェらは人形だ! 無条件に無抵抗に無防備にお姉ちゃんの言葉へ腐った耳を傾けろ!」
『イエス、副ティーチャー!』
なんという一体感。なんという連帯感。
これが同じ指標を目指すべき者達の在るべき姿かっ。
背筋真っ直ぐに直立不動で黙る僕。級友共も皆直立不動。もはや軍隊である。
「ほら、お姉ちゃん。静かになったよ」
「う、うん」
優しい声音で尋ねかける副ティーチャーに対し、こくりと小さく頷きを返す担任殿。
くっ、破壊力がでか過ぎるっ!
担任殿の姿に見惚れ、床に倒れ伏しそうになる身体を叱咤激励。ここで倒れては、またもや担任殿を泣かせてしまう。踏ん張り所である。
ゴシゴシと袖で目元を拭い顔を上げる担任殿。
少しの間、浅い呼吸を繰り返し、いつも通りの美声を紡ぐ。
「先ずは皆、席に着け」
*****
そこからは先は、不満大会の勃発である。主に選抜者に対しての。
「やはりクラスの代表なのですから、ここはクジ引きではなく実力で決めるのが賢明かと」
そう発言するのは、鶏頭の学級委員長。比喩表現では無く、実際に鶏頭なのだ。
学級委員長の提案に追従するように、あちこちで同意の声が上がる。
こいつらそんなに名誉や賞金が欲しいのか。がめつい奴等め。
「まだ、0次元萌えの変態であるアルジーナは理解できます。しかし、糞莫迦外道のゴミくずは納得できません」
「自分も、無機物のカップリングにしか興味を示さないローレ女史は理解できます。ですが、糞莫迦外道のゴミくずには納得できません」
「俺様も、糞莫迦外道のゴミくずには反対だ」
「私も糞莫迦外道のゴミくずには反対です」
「最近来たばかりの糞莫迦外道のゴミくずには荷が勝ち過ぎます」
「糞莫迦外道のゴミくずは流石に外した方が良いと、拙者は愚考します」
「拙僧も、糞莫迦外道のゴミくずに対する意見には賛成です」
「せめて、リーゼリアは入れるべきではないかと。糞莫迦外道のゴミくずを外して」
「それなら、レオもだろう。勿論、糞莫迦外道のゴミくずを外して」
「兎に角、糞莫迦外道のゴミくずを外しましょう」
言葉の暴力が僕を責め立てる。なんて酷い奴等だ。こいつらには遠慮と云う物がないのか。ナチュラルに僕を罵倒しやがって。……あれ、なんだか僕は泣きそうだよ。
取り敢えず、僕を罵倒しまくっている輩を脳内メモ帳に記録。こいつら絶対に闇討ちしてやる。女子は許す。寧ろもっとカマン。
「皆の云い分は分かった。だが、残念ながら今回の決闘戦技祭の出場者はくじで決めることになっている。これは決定事項だ」
淡々とした口調で告げる担任様。先程の可愛らしい姿が、まるで夢幻のようだ。
そんなことを思っていたら、副ティーチャーが言葉を続ける。
「グダグダ云っても埒が明かねえし、お姉ちゃんが云った様に、もうこれは決定事項だ。覆らねぇから、今回の出場は諦めろ」
だるそうに放った副ティーチャーの言葉に、クラスのあちこちでブーイングが上がる。
しかし、先程までのような激しさではない。流石のこやつらも学習したようである。
様々な性癖持ち及び変人及び問題児が集う2年0級だが、我等が担任様に関しては、一人残らず素直に云う事を聴く。男女を問わずに。担任様は2年0級生徒に愛されているのだ。ここまで慕われるのも、担任様の人徳が故。担任様マジ天使。
「さて、一通り不満をぶちまけた様だし、代表者は決闘戦技祭に向けての意思表明をしてもらう」
「あー、んじゃあ、アルジーナからな。起立して宣誓」
その言葉に従い、ガタリと起立するアルジーナ。種族は確か亜人族に分類されるのだったか。
服から出ている肌には、薄い鱗が覆っている。顔は普通に人間なのだが、耳がヒレみたいな、なんだかヒラヒラしたものだ。手には水掻きもある。流石はファンタジー溢れる異世界。いまさらだが。
そんなアルジーナは、ニヒルに笑って宣誓した。
「ふっ、証明してやるさ。3次元は0次元に勝てないと云う事をな」
そう云って着席。拍手はなし。皆「なに云ってんのこいつ」という視線を向けている。きっとアルジーナの嗜好が理解出来ないのだろう。
こいつら、その行為が同族嫌悪になっていると気付いているのだろうか。ちょっとした疑問だ。
「相も変わらず、理解しがたい信念を持っているようだな。私にはいまいち理解出来ないが、信念を持つことは良い事だ。これからも精進しなさい」
「はっ!」
「じゃあ次、ローレ起立。宣誓」
「はーい」
続いて立つのは、猫耳に猫尻尾を持つ獣人の少女ローレ。藍色の髪を有すその姿は、猫耳幼女のノエルちゃんを想起させる。
ノエルちゃんは可愛いから、ローレみたいに育ったら美人になるだろうなと予想する。おっと涎が。うへへっ。
「センセーイ、あたしはぁ、学院のバカ共にぃ、無機物のカップリングは至高の物であるとぉ、思い知らせてやるよ」
えへっと可愛らしく微笑んで着席するローレ。その仕草は可愛いのだが、間延びしない最後の言葉に本性が見え隠れしている。
ノエルちゃんにはこうなって欲しくないなぁ。なったとしても当然、愛でるけれども。
「そうか。お前の目標もよく分からないが、頑張って目標を達成できるように、己を磨く事だ」
「はいっ」
良い声で返事をするローレ。うむ、青春の一コマだ。
それにしても、流石は聖人君子も凌ぐのではないかと0級内で噂される担任様。良いことを仰られる。
うんうんと頷きながら、さて次は僕の番かと身構える。どのようなことを云おうか。
「以下省略」
『異議なし』
副ティーチャーの言葉に対して、異口同音で唱和する級友共。
本格的に僕の扱いが酷くはなかろうか? 僕ってばまだ学院にきて2週間、この世界で20日間しか過ごしていないのに。
「差別をしない」
「分かったよ、もう。お姉ちゃんは優しいなぁ。……んじゃあ、糞莫迦天地冥府外道の腐れゴミくず」
「さらに余分な物が付け足された!?」
「黙って喋れ」
「なんと困難な」
くっ、ここまで僕を貶めに掛かるとは恐るべき存在だ副ティーチャー。僕をこれ以上喜ばせてどうするつもりなのかっ。
副ティーチャーの未だ底を見せない魅力に、胸をときめかせながら起立。さて、どのような抱負を語った物か。悩み所ではあるが、ここは正直に行こう。
「宣言の前に、ひとつよろしいでしょうか?」
「ああ? んだよ」
「僕が優勝したら、なにかご褒美は出るのでしょうか」
「それは、名誉以外でということか?」
担任様の言葉に頷く。
しばし思案していたが、やがて口を開く。
「そうだな。私に出来ることならば、なにかひとつ願い事をきいてやろう」
「お姉ちゃんがそう云うなら、オレもなにかひとつ願い事をきいてやる」
その言葉を待っていたのだ。言質は取った。もはやこのことを口にするのは構うまい。
「宣言します! 僕はこの大会で優勝し、担任様と副ティーチャーのパンティーを拝見賜ると!」
僕は両腕を天に掲げた状態で止まる。困難な物をやっとの思いでやり遂げたというような、そんな感じにも似た達成感がこの身を駆け巡っていた。
そんな僕の宣言を聴いた級友諸君は、しかし誰も喋らない。
シンとした静寂。一拍後に大歓声。
「良く云った! 俺はお前を信じていた!」
「頑張れ! 頑張るんだ! 俺様はお前を力の限り応援しよう!」
「それでこそ、0級代表! 負けは許されないぞ!」
「私は最初から信じていたんです。貴方になら任せられると!」
「ふふっ、僕ともあろうものが、君の言葉に感銘を受けるとはね」
「俺っち、テメェならやれると入学した瞬間に分かっていたぜ!」
「貴様こそが0級の誇り! 胸を張って堂々と優勝してこい!」
口々に僕を褒め称える級友共。こいつらマジで性根が腐ってやがる。こんなにあっさりと掌を返すとは。
だが、まぁいい。存分に僕を讃えるがいいわ!
刮目せよ、そして崇めよ、哀れなヘタレ狼どもよ!
盛り上がりを見せる0級男子。絶対零度の視線を強める0級女子。嗚呼、青春なり青春なり。
「あー、盛り上がっているところ悪いがな」
近年類を見ない盛り上がりを見せる0級男子に、副ティーチャーのバツの悪そうな声。
「なんでしょう。今更『やっぱなし』は駄目ですよ」
「いやー、そのなー」
僕の言葉に「そうだそうだー」と同調する男子勢。エロになると連帯感が生まれるのは、男としてはしょうがないね。しょうもないとも云うが。
そんな僕等に対して、副ティーチャーが爆弾を放りこんできた。
「いやオレさぁ、ノーパン主義だから、履いてない」
『な、なんだってー!』
思わぬ発言に、男子ばかりか女子までもが驚愕の声を上げる。
そんなバカな!? こんな身近に伝説のノーパニストが居るだなんてっ!!
「だから、テメェにパンツは見せれねーわ」
悪ぃなと嘯く副ティーチャーに戦慄を禁じ得ない。そんな、僕が脱がす前に脱いでいるなんて! だからいつもズボンを履いているのかYO! これから視線が下半身に直行してしまうじゃないかぁ!
いやだが待て、慌てるな。もしかしたら、約束を反故にする為の嘘かも知れぬ。孔明の罠なのかどうか、これは確かめねばっ。
「信用できません! 本当だと云うのなら、今此処でノーパンであることを証明するために見せて下さいお願いしますなんでもしますから!」
「テメェは糾弾しているのか懇願しているのかどっちなんだよ」
「そんなことはどうでもいいのです! さあ、もう約束とか関係なしに見せて下さい!」
「テメェらが目玉を抉ったら見せてやるよ」
「のわぁー!? 目がっ目がぁあああっ!?」
「ああ! 委員長が一切躊躇せずに指を目玉に突き立てたぁ!!」
「ぬぐぅっ!?」
「ああ! こっちではレオが目から血の涙を流しているぅ!!」
「野郎ども遅れを取るな! 桃源郷は目の前だぁ!!」
『おうよ!』
莫迦な!? この紳士的最終兵器と自称している僕よりも圧倒的に早く目玉を抉ろうとした猛者が居るのか!?
くっ、流石は0級。油断ならぬ強者共が犇めいていやがるっ。
「遅れてなるものかぁっ!!」
気合一閃。
己が手指を我が黒瞳へと導こうとした瞬間に、それは聴こえた。
「……ぅう。ぜ、絶対に……み、見せなきゃ、だ、駄目か……?」
羞恥が滲んだ言葉を放つのは、愛おしき聖・担任。
涙目涙声で仰る聖・担任のなんと可憐なことか。
相変わらずの無表情であるのに、その顔色は真っ赤である。
嗚呼、これは先程を上回る破壊力。胸キュンなんてものじゃない。
「テメェら、敵は一騎! 己の持つ最高の武力で、叩き潰せぇえええ!」
『応!』
最初の咆哮は、お姉ちゃんフリークな副ティーチャー。
それに応える、全級友共。男女の区別なく先程の喝采喧騒を意にも介さず、一人残らず2年0級生徒は愛しの担任殿を前にひとつとなった。
なんという一体感。なんという連帯感。
これが同一の敵(僕)を打倒すべき者達の在るべき姿かっ。
暴力と云うには、余りにも強力すぎる何かが、僕へと殺到した。
なにこの結果ひどい。
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あとがき
<変態足舐め事件>→<女王派閥逆襲の乱>→<鼻血に塗れた校門の変>→<それでも僕はやってない惨劇>と続きます。
▼そして伝説へ……。
>復活を待っていた!
>自重せず存分に書いてください。
存分に書いていきます。
>おお、復活じゃ~復活じゃ~ww
>しかし今回の主人公は、相変わらず素敵な紳士でしたが比較的おとなしい気がしました。
>つまり、女子更衣室での裸身装甲ダ○ゼンラー的な紳士っぷりをなぜ書か(ry)…炉真様の書きたいものを書いて、読ませて頂ければ幸いです。
>これからもお身体に気をつけて頑張って下さい。
裸身装甲だと装甲部分が皮しかないのです。皮の鎧だなんて言われたら主人公が泣いちゃうっ。
やる気が出た時限定で頑張って行こうと思いまする。
>このオリ主はあくのそしきにかいぞうされる前もこんなせいかくだったのかね
>まあ悪の組織でもここまでひどいHENTAI紳士は作らないか・・・
昨今の悪の組織には紳士が少ないと思うのです。悪と謳っているのだから、もう少し本能を全開にしていいと思うのです。
子供達にとんでもないトラウマを植え付けるかもしれませんが。
>何となしに小説を眺めていると、ふと見つけた「ほのぼの異世界譚」の文字。
>「はて、何処かで…」と思いながら開いてみたら、
>あなた様でしたか!久しぶりの更新お疲れさまです。
>依然と変わらぬ内容と主人公に私も何か興奮しました。
>続きを、出来れば年内にお願いしますww
年内に更新したよ!
へへっ……燃え尽きたぜっ……ネタが真っ白にな……。
>抽象画にまで発情する主人公の相変わらずの紳士っぷりに痺れます
その痺れはきっとクラゲによるものです。
>今日初めてあなたの作品を読みました
>電車内で読んでたのですが、思わず声を出して笑ってしまいました。
>周りの人から変な目で見られちょっと興奮してしまいました。
>とりあえず謝罪と賠償を要求します
>具体的にはメアたんを僕に下さい
されど断り申す。
>うわ、まさかの更新。
>相変わらずのっけから尻assで安心しました。
>最新話を読み終えましたが、作品のあらすじがなんか尻assだったことしか思い出せないので読み直してきます
わざわざ読み直すほどの作品では無いので、もう読み流して行けばいいじゃない!
内容を忘れて困るものでもありませんし。