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No.9582の一覧
[0] ほのぼの異世界譚[炉真](2011/03/27 16:16)
[1] 1話・平和な異世界[炉真](2010/05/06 20:44)
[2] 2話・新ジャンル[炉真](2010/05/06 20:53)
[3] 3話・狩り[炉真](2010/05/06 20:58)
[4] 4話・悪魔[炉真](2010/05/06 21:04)
[5] 5話・マスター[炉真](2010/05/06 21:08)
[6] 6話・スイーツ[炉真](2010/05/06 21:16)
[7] 7話・夜[炉真](2010/05/06 21:22)
[8] 8話・幽霊[炉真](2010/05/06 21:31)
[9] 9話・夢[炉真](2010/05/06 21:37)
[10] 10話・懐かしき友人[炉真](2010/05/06 21:47)
[11] 11話・竜との対談[炉真](2010/05/06 22:44)
[12] 12話・ナデポの修行[炉真](2010/05/06 22:48)
[13] 13話・魔族[炉真](2010/05/06 22:54)
[14] 14話・神竜との邂逅[炉真](2010/05/06 22:59)
[15] 15話・混沌[炉真](2010/05/06 23:07)
[16] 16話・再会した結果が敵[炉真](2010/05/06 23:12)
[17] 17話・漢で乙女[炉真](2010/05/06 23:16)
[18] 18話・白翼美青年[炉真](2010/05/06 23:21)
[19] 19話・藍赤幼女[炉真](2010/05/06 23:45)
[20] 閑話01・穏やかに壊れた世界[炉真](2009/08/02 13:27)
[21] 20話・昔話[炉真](2010/05/07 00:00)
[22] 21話・帰還[炉真](2010/05/07 00:04)
[23] 22話・バハムート[炉真](2010/05/07 00:08)
[24] 閑話02・とある喫茶店の話[炉真](2009/10/31 21:38)
[25] 23話・異質の刀匠と誇りの鍛冶師[炉真](2010/05/07 00:12)
[26] 24話・50の音取り遊び[炉真](2010/05/07 00:18)
[27] 25話・王都の途上[炉真](2010/05/07 00:23)
[28] 26話・闇の妖精-a[炉真](2010/05/07 00:26)
[29] 26話・闇の妖精-b[炉真](2010/05/07 00:29)
[30] 26話・闇の妖精-c[炉真](2010/05/07 00:35)
[31] 26話・闇の妖精-d[炉真](2010/05/07 00:48)
[32] 27話・ユリア[炉真](2010/05/07 00:53)
[33] 28話・女王と癒しの魔女-a[炉真](2010/05/07 00:59)
[34] 28話・女王と癒しの魔女-b[炉真](2010/05/07 01:02)
[35] 29話・学園編でもしようかしら?[炉真](2010/05/07 01:33)
[36] 30話・全3話で終わればいいなぁ学園編[炉真](2011/01/21 19:26)
[37] 31話・定番といえば定番な異世界イベント[炉真](2011/01/21 23:11)
[38] 32話・決闘戦技祭[炉真](2011/03/27 16:15)
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[9582] 32話・決闘戦技祭
Name: 炉真◆769adf85 ID:ce4fc0d4 前を表示する
Date: 2011/03/27 16:15


 愛世の果てに生まれた自分なんか嫌い。





『32話・決闘戦技祭』





 ギラギラとした熱気が僕を襲う。
 本日は決闘戦技祭の当日。選抜された代表者は、僕を含めた全員が整列し、眼前にいる人物の言葉を耳に入れる。

「――で、ある。しかして――っ!」

 彼の人物――学院副理事長――が話し始めてから、既に十分を回った。正直だれる。早く終わりやがれ。
 キョロキョロと前方に並び立つ選抜者諸君を見る。誰も彼も、この長話に辟易しているのだろう。「まだ終わらねーのかよ……」と今にも云いたげな雰囲気である。
 常々に不思議なのだが、なにゆえ「五分ほど話をさせて頂きます」と云い放つ輩に限って、時間を超過するのだろうか。

 マジうぜぇのですぅ、くたばれですぅ。と、心中で呟きながら視線を彷徨わせる。選抜者の中には当然、我がクラスのローレ嬢を始めとした女性たちも参列している。しているのだが、悲しいかな。選抜者は全員が全員、学院指定の外套を羽織っているので、全然目が楽しくない。
 というのも、僕は選抜者達の一番後方にいるので、似通った姿しか見えないのだ。
 本来であれば、僕が整列する位置は中央よりもやや前方であった筈なのだが、学院指定の外套をムササビごっこをしていたら焼失してしまったのでこの位置にされたのである。

 いやぁ、外套を燃やされたあの時は本気で参った。
 まさかムササビごっこをしていたら、偶然女子更衣室の側まで飛んでしまい、偶然旋風に巻き込まれて女子更衣室付近を旋回せざるを得ず、旋回している最中に偶然女子更衣室の窓とカーテンを開けてしまい、偶然級友から貸して貰ったカメラが誤作動をしてしまい、偶然レンズの向いていた方向が女子更衣室であり、これまた偶然にも女子更衣室で複数人が着替の最中であり、偶然も偶然に「いやっほぅ!」な瞬間を誤作動したカメラが連続撮影してしまい、偶然の極みにもカメラの誤作動が収まった時に突風で女子更衣室から離れることになったのだ。
 いやはや、偶然に偶然が重なった偶然を極めた事故だった。不幸な事故だったね。
 不幸な事故であるのにも関わらず、これまた偶然にも女子更衣室で着替えていらっしゃった副ティーチャー出陣。上半身に下着のみを身に付けた装いで窓際に悠然と立つ副ティーチャー。下半身は見えなかったのでノーパンが真実であったかは確認することは出来なかった。
 出来なかったが、デフォルメされたキャラクターのワンポイントが施された可愛らしい乳バンドをしていることを知れた。萌えた。凄く萌えた。眼福である。
 そんな副ティーチャーをガン見した後、「ふははっ!」と高笑いしながら、悠々と飛んでいるムササビ状態の僕。そんな僕に向かって副ティーチャーが火炎弾を放つ。燃えた。凄く燃えた。ご褒美である。

 そのような経緯があり、僕の外套は焼失したのである。なんという不幸な出来事か。唯一無事であったのが、級友から借りたカメラだというのが、不幸中の幸いである。これだけであと十年戦えると云う物だ。
 そのカメラを巡って、後に<誇り無き漢共(2年0級男子)の愚神礼讃>と名付けられる死闘が勃発したのだが、それは別の御話である。だが敢えてひとつだけ、その死闘の決着を語るのだとしたら、止めを刺したのは担任様であった。
 担任様の猫耳カチューシャ装備の『にゃんこポーズ』及び『全員、いい加減に止めろ……わん』という必滅呪文の前に、全てが血に染まる。争いは醜くも、終幕には笑顔が溢れる決着と相成った。

 閑話休題。脱線回避。

 ともあれ、外套が焼失した上に予備の外套も無かったので、取り敢えずトイレットペーパーを繋ぎ合せ、外套の代わりとしてこの場に臨んだのだが、そもそも学院指定の外套は暗色系統の物。そんな中で一人真っ白な奴がいるのが、どうにも気に食わなかったようで最後尾に回されたのだ。
 などと、前日からの事を想起して時間を潰していたのだが、一向に終わる気配を見せぬ長口上。おい、誰か奴の口を封じろ。
 流石の僕も精神的な疲労がピークである。もう御託はいいから本題に行けよと云いたい。
 胸の奥から湧き上がるイライラとした感情をどう処理したものか。いっそのこと、あの侘しくなった頭頂部に向けて脱毛剤でも投擲してやろうか。
 しかしながら、残念な事に脱毛剤は手持ちにない。あるのは、りっちゃんこと男装美少女リーゼリアの下着だけである。どうしたものか。

 ううむ、と唸りながらりっちゃんの下着をにぎにぎと揉む。
 おや、なんだか気分が落ち着いてきたよ。寧ろ昂って来た。ふむ、やはりこれは良い物だ。
 朗らかとした笑顔を浮かべながら、無心に下着を触り続ける。優しく表面をなぞり、時には摘み、さすり、握り、揉み、つつき、押し、弾き、そしてゆっくりとなぞり上げる。
 無心に、ひたすら無心に下着を玩ぶ。すると、胸が高鳴り息が荒くなる。ハァハァと息を荒げながら、それでも我が手指は繊細さと荒荒しさを両備えつつ、下着を弄繰り回す。

「嗚呼、そうか。これが、恋なのか……」

 そうだ。この胸の高鳴りが、この火照る肉体が、この荒くなった息遣いが、この全てが総て、りっちゃんの下着へと向けられた恋心なのだろう。
 無償の愛を無性に与えたくなるこの感情。これを恋と云わずしてなんというのかっ。


 ――そう僕は、りっちゃんの下着に、恋をしたのだ。


 溢れ出すLibidoを抑えることは、実に難しく。
 Sentimentは白きEmotionとなり、PassionはLustをLoveへと導く。
 Envyは黒きMonopolyから派生したのではなく、BeautyをRespectしたが故にAlluringされたDestinyにしてDoomたるFateなのである。
 嗚呼、恋ハ麻薬ト云ウケレド。ソレサエ下ニ置ク我ガ慕情。
 純白たる乙女の如き柔布を、己の無骨な手が暴く。
 倒錯的で蟲惑的で艶美的で妖艶で魅惑で錯綜で、それは純然たるPathosと呼ぶに相応しく。
 思わず叫びたくなる程の、この激情に抗う事は無粋なのだと。
 然らば、叫ぼう。僕の、心の聲を。世界に宣言するのだ。この愛を。

 ……うん。なにを考えているのか自分でも意味不明だ。そんな自分の思考能力が素晴らしすぎて泣きそう。
 取り敢えずは、この胸の裡にわだかまる情熱を声に乗せて世界に吐き出してみる。
 息を吸い、口腔を開く。

「りっちゃんの下着は最高だっ!!」
「オーケー、分かった。テメェは圧殺して礫殺して絞殺して撲殺して刺殺して鏖殺して頓死させる」
「ひゅいっ!?」

 唐突に湧き上がった膨大な殺意に、思わず素敵な声が漏れた。
 勢いよく振り返れば、そこには我等が副ティーチャー。

「テメェは毎度毎度、静かにしていられねぇようだからなぁ。いっその事永遠に静かにさせてやらぁ」
「そんな、ずっとキスしていようだなんて嬉しすぎるよ」
「誰がンなこと云った!?」
「え? だって、恋人が静かにさせる方法は接吻だって決まっているじゃないですか」
「誰と誰がいつ、恋人になった?」
「僕とりっちゃんの下着が!」

 そう云って、手に持っていた下着を愛おしく抱きしめる。
 そんな僕を見て、副ティーチャーが「極まってやがるっ……!!」と呟いていたが一体どうしたのだろうか。
 頭を手で押さえて、ふるふると動かす副ティーチャーにどうしたものかと悩んでいる時に、不意に視界に入った……副ティーチャーの乳バンド。
 上体を少し前傾させているので、胸元が見える。そして姿を現す乳バンド。今日は黒か。素晴らしい。

 そこで、はっとする。
 そうだ。僕はなにを勘違いしていたのだ。そも下着とは女性が身に付けて初めて、十全な魅力を引き出すのだ。女性が身に着けていない下着など、新品で売られている下着と同じ価値しかないではないか。
 そうだ、そうなのだ。僕はなんと浅はかだったのだろう。
 下着とは、女性が身に付けている時に剥ぎ取るのが礼儀。その時こそ、下着の本領は発揮されるのだ。
 身に着けていない状態の下着など、八全の価値しかないのだ。本領を発揮していない下着に対して恋などと、下着に失礼である。

「副ティーチャー」
「……テメェはもう死ねよ」
「その続きはベッドの上で語る事として、先ずはこれを」

 下着の真価を見極めた。
 故に僕は、りっちゃんの下着を副ティーチャーへと渡す。

「……なんのつもりだ?」
「ふふっ、僕ともあろう者が下着の価値を見誤る所でした。そう、先程までの僕は、僕の脳内は普通ではなかったのです」

 ふっ、と遠い目をして語る。
 普段の僕を知っている副ティーチャーならば、きっと分かってくれるだろう。いつもの僕と様子が違っていたことが。

「つまり、いつも通りだろうが」

 そんな馬鹿な。
 あれ、予想と違う。

「いえ、いえいえいえ。いつもと違っていたでしょう?」
「いや、テメェはいつも通りだったろうが」

 そんな莫迦な。
 おかしい。本来ならばここで、「そうだな、心配したんだぞ? めっ!」と副ティーチャーが優しく叱ってエロゲ展開になる筈なのに。
 どこだ、どこで選択肢を間違えた。

「まぁ、兎にも角にも、だ」

 地面を見つめて懊悩している僕に、副ティーチャーが声をかける。
 その声に顔を上げ、そこで目に入る、光。
 副ティーチャーの両手がギュインギュインと輝いているで御座る。

「変態は、爆発しろ」





 そして、激光が僕を覆った。





*****





 まさかの副ティーチャーによる爆殺魔法によって医務室の廊下に放置された僕。ここまで来たのなら、もう医務室に運んでくれてもいいと思うんだ。
 とまれ、僕が目を覚ました時には既に選手訓戒とかいう意味の分からぬ行事は終わっていたので、まぁラッキーというものである。
 あとは開会式があり、そして決闘戦技祭本番というのが例年の流れらしい。廊下でそのまま死体ごっこして居た時に、そのようなことを一般生徒が話しをしているのを聴いた。
 それはそれとして、廊下を歩く生徒が全員男とかどういうことなの。女子生徒が来ないとか、なんのために死体ごっこをしていたのか。

 失意に塗れつつも教室へと向かう。試合開始には、まだ時間がある。その時間を利用して決闘戦技祭に於けるルールの確認をしなくてはならない。
 なんでも、毎年毎年ルールが変更されるらしい。主に学院理事長の独断と偏見と思いつきと家庭内不和による八つ当たりで。それでいいのか、この学院。そんな奴を学院のトップにしていて良いのか、この学院。
 ウサギにツノがあるのかどうかは置いといて、学院最高権力者による横暴専権による今年の独裁ルールが教室で発表されるので、教室に行かなければならない。会場でやれよという話である。

 とかなんとか考えていたら教室に着いたので扉を開け放つ。
 室内に居るのは、同じ選抜者の二人と担任様マジ天使と副ティーチャーご褒美ありがとうございますと数人の級友である。
 大多数の級友共は既に会場の方に行っているのだろう。蛇足となるが、会場はコロッセウムの様な円環決闘場だ。中央に四角に切られた石で出来たでかい石畳のステージがある。
 というか、施設や設備もそうだが、この学院無駄に広すぎる。どこにそれほどの金があるのか。
 そんな下らない事に思考を飛ばしていると、麗しき担任様の華麗なる唇から艶麗たる言葉によって、今年のルールが発表された。

 1つ、対戦形式はトーナメント戦である。
 1つ、場外は無条件で試合終了となる。
 1つ、武器は籤引きによって決められた物を使用すること。
 1つ、戦い方は籤引きによって提示された方法を遵守すること。
 1つ、降伏宣言後の攻撃は場合によっては反則負けとする。
 1つ、以上の事を原則とし、これに反すると敗北となる。

 武器はともかくとして、戦い方まで決められるとか酷いと思う。あと、『降伏宣言後の攻撃は場合によっては反則負けとする』の“場合”ってどういうことなのだろう。
 とかく、これが今年の主軸となるルールらしい。担任様のパンティーと副ティーチャーの下乳(ノーパニスト発覚後、もめにもめてご褒美がこのようになった)を見る為に頑張ろうと思う。
 立ち塞がる男は悉く殲滅殺し、立ちはだかる女性は全裸に剥いてリングアウトさせることを心に決める。

「説明は以上だ。また、くじの内容は特大魔法掲示板に表記されるので、反則行為は基本無理だと解釈しろ」
『はい』

 担任様の言葉に僕を含めた三人で返事をする。
 それを確認すると、ひとつ頷き、これからの予定を話す。

「今回は開会式及び理事長による選手激励はなしだ。すぐに第一試合が開始となる。己の試合までの時間は基本自由時間となるな。選手控室に居るも良し、会場で他試合を見るも良し、時間まで適当な場所で寛ぐも良しだ」
「ならば担任様と副ティーチャーを囲ったハーレム空間で、きゃっきゃうふふするのもいい訳ですね!」
「アルジーナの試合は第二試合、ローレは第七試合だ。鋭気でも養って精々頑張れや」
『はいっ』

 あれ、僕が色んな意味で無視されている。
 由々しき事態である。

「HEY! メインティーチャー! 僕がサブティーチャーに無視されているYO!」
「……貴様の試合は第九試合、一番最後だ」
「無表情なのに、どことなく呆れられている気がするで御座る」

 そんな担任様の態度に興奮しちゃう。

「兎に角、これで報告は終わりだ。各々、しっかりと準備を済ませておくこと」
「はい」
「はぁい」
「云わずもがな」

 そう言葉を返し、アルジーナとローレ、同席していた級友共が席を立ち教室を出て行く。僕もそれに続こうとした時、愛しの担任様に呼び止められた。ついに告白イベントか。胸が熱くなるな。

「貴様は先ず、服を着ろ」

 そういえば副ティーチャーによる爆殺魔法で服が燃え上がっていたのだった。意識したら、胸が寒くなった。





 嗚呼、通りでスースーすると思ったアルヨ。





*****





 会場に到着なう。

 人々がまるで越冬する虫のように固まっている会場では、熱気が凄いことになっている。体温で暖められた空気も、ここまで暑いと殺人級ではなかろうか。
 さらには、熱気だけでなく、そこはかとない塩っ気を空気から感じる。流石にこれだけ暑ければ、女性たちが流した汗も蒸発して空気に溶けるか。素敵だね。
 そこで、思いっきり空気を吸い込もうと思ったのだが、よくよく考えてみると男衆の汗も混ざっている可能性があったので辞めた。畜生、男共めっ、滅びればいいのに。

 思わず怨嗟の声を上げながら歩く。
 すると、どうした訳か通路上に居る人々が、わざわざ僕に道を開けてくれるようになった。
 どうやら僕の美しさの前に、立ち塞がることが出来ないようだ。美しいって罪ね。皆が皆、「うわこいつやべぇ」的な目つきをしているのが気になるところではあるが。
 ともあれ、通路を歩きながら進んでいると、りっちゃんことリーゼリアと、りっちゃんの武器兼相棒のレリーアちゃんを発見する。そして彼女達から一つ席を空けて、見覚えのある顔が二つ。
 見覚えある二人に、なにゆえこのような場所に居るのかと疑問を抱く。その疑問に直接訊けばいいやと結論し、丁度良く席が空いているので接近して座る。

「死ねばいいのに」

 僕が座った瞬間の、鎌少女の開口一番の言葉である。
 なんと非道い。もっと云ってくれ。

「どうしようリーゼ。あたし、こいつを殺したい」
「気が合うねレミィ。私も死体遺棄には興味があるんだ」

 ハァハァと荒げた息でりっちゃんとレリーアを見ていたら、凄く物騒な事を云われた。どうしてだろうか。不思議。
 二人に「こっち見んな、息をするな、そもそも生きるな」と云った甘美な言葉を頂き、「おいおい、それじゃあツンデレじゃなくてヤンデレだぞぅ☆」と云った返し言葉によるコミュニケーションを応酬させていると、逆側から声が掛かった。

「あらん、お久しぶりなのに挨拶もないのぉ? イケズねぇ」
「……今日は厄日か」

 美顔筋肉クルーノさんはクネクネしながら云い、良くお世話になっていた喫茶店のマスターは遠い目をしながら達観したように呟いた。
 凄い温度差である。

「これはこれは、クルーノさんに喫茶マスター。お久しぶりです」
「そうねぇ」
「……誰が喫茶マスターだ。変な称号を付けるな」
「時に、何故学院関係者ではない御二方が此処に居るのでせう?」
「……貴様は知らなかったのか。決闘戦技祭は、一般市民も見学できるんだよ」
「そうよぉ。決闘戦技祭なんて、云ってみればお祭りみたいなものだもの」

 なんと、そうであったのか。得心がいった。

「……そも、何故に変態野郎が此処に居る」
「それもそうねぇ。貴方、学院生じゃなかったわよね?」
「変態では無く紳士たるワタクシですが、それには聴くも涙語るも涙、笑うものはされこうべな出来事がありまして」
「へぇ、どんな出来事?」
「そもそも僕は女王陛下に呼ばれて王都にやって来た訳ですが」
「変態行動をして城から追い出されたか」
「マスターに話のオチを取られた!?」

 まだ出だししか喋ってないのにっ!?
 ええい、マスターはニュータイプかっ!?
 あと、変態行動とかしてないよ!

「あら、そろそろ始まるわね」

 僕達を尻目に、会場に目を向けているクルーノさんが云う。
 ……この野郎、訊いて来たのはそっちの筈なのに、一切話を聞いていやがらないだと。
 僕に対する愛情が少なすぎる。

「……そうか、彼を相手取る時は無視するのが効果的なのか」
「勉強になるわね」

 後ろで物騒な会話が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
 そう思わなければやってられない。





 果たして、決闘戦技祭の第一試合、開始である。





*****





「とんでもねぇぜ、決闘戦技祭っ……!!」
「いいわねいいわね! 今年の決闘戦技祭はドラマに溢れてるわ!」
「……ドラマチック過ぎるだろう」

 決闘戦技祭の全容を知り慄く僕と、きゃーきゃー喚くクルーノさん。そしてマスターは呆れたように呟く。
 りっちゃんとレリーアは、いつの間にか購入していたお菓子を食べながら、今迄の試合を検証していた。
 現在、第六試合までが終了。その時点で分かった事は、今年のルールが過酷に尽きる上に、様々なドラマが発生すると云う事だ。

 第一試合。選抜者は3年の魔法を得意とする女子生徒vs3年の騎士志願の男子生徒。籤引きの結果、女子生徒の武器は“包丁”で戦闘方法は“武器での攻撃”のみ。一方、男子生徒の武器は“割り箸”で戦闘方法は“魔法での攻撃”のみ。
 この時点でルールの過酷さがモロに出ているが、第一試合で早くもドラマチックな展開となる。
 というのも、この選抜者は元恋人同士であったのだ。女子生徒による「貴方を殺して私も死ぬわ! だって、ふられても貴方の事を愛しているから!」という愛の叫びに、「待て落ち着け話し合おう話せば分かるっ!!」という男子生徒の切羽詰まった絶叫が会場に響いた。まさかの痴話喧嘩勃発に観客が息を飲む。
 結果は女子生徒の勝利。勝因である男子生徒の「生まれてきてすいません」という降伏宣言は会場中の涙を誘った。

 第二試合。我がクラスのアルジーナvs3年の男子生徒。アルジーナの武器は“鉈”で戦闘方法は“攻撃する際に高笑いをする”こと。一方、3年男子生徒の武器は“攻城鎚”で戦闘方法は“攻撃せずに相手を論破する”こと。えげつなさが半端無い。
 必死にアルジーナへと言葉を投げかける3年男子生徒であったが、アルジーナによる0次元萌え哲学による混沌とした内容に、壊滅的なコミュニケーション不全が発生。
 あまりにもあんまりなアルジーナを前に、3年男子生徒敗北。いと哀れ。観客達の哀愁を買った。

 第三試合。2年男子生徒vs2年女子生徒。武器は2年男子が“剣”で2年女子が“弓”。戦闘方法は互いに“自由”を引き、至って普通の地味な試合が開催された。
 そして地味に決着。2年男子が勝利。
 今までの流れでこの結果。あまりにも地味で普通な戦闘に観客全員が戸惑った。

 第四試合。1年男子生徒vs2年男子生徒。武器は互いに“錫杖”。戦闘方法は1年男子が“相手に対して一番云いたいことを最初に云ったら後は自由に戦う”を引き、2年男子が“相手から質問されたことに正直に答えながら自由に戦う”を引くという、籤引き内容の意味不明度では互いにミラクルを達成。
 しかし、1年男子による「先輩、俺、俺どうしても先輩のことが忘れられないッス! もう、俺とはやり直せないんッスか!?」という絶叫でドラマ展開発生。会場中がどよめく中、2年男子の「俺と一緒に居たら、お前を不幸にしちまうんだ! 分かれよ! 俺だって、俺だって本当は……っ!」という返しに会場のどよめきが頂点に達する。
 1年男子と2年男子の薔薇色戦闘。「それでも俺は先輩が好きッス!」「うるせぇ! 俺のことはもう忘れろ!」等と云う言葉の応酬を繰り広げながら戦闘し満身創痍の両者。
 最終的にはステージ中央で熱い接吻を交わすという暴挙を行い、まさかのダブルノックアウト。会場の九部が悲鳴に包まれ、一部が歓声を上げた。腐ってやがる。

 第五試合。3年女子生徒vs1年女子生徒。武器は互いに“素手”で戦闘方法もこれまた互いに“肉弾戦”となる。
 先程と同じ展開を見せるのではと会場中の男共が期待を膨らませ、その期待は二人の女生徒が繰り広げる昼ドラ展開を前に粉々に砕け散った。
 髪を引っ張り合い、張り手を喰らわせ合い、「この泥棒猫がっ!」「うっさいのよババア!」と罵り合うキャットファイト。観客の男衆が目を背けるも、女衆の「いいぞー! もっとやれー!」という姿を視界に収め、ガクガクブルブルと震えた。
 壮絶な試合の結果は、3年女子の勝利。「図に乗るんじゃねーよ小娘がっ」と云い放ち、唾を吐きかける姿に男共戦慄。
 その後、3年女子が観客席に向け、花も恥じらう可憐な笑顔で「たっく~ん! あたし勝ったよ~! えへへ~、やっぱりこんな奴よりあたしの方が好きだよね~?」という可愛い声を出した瞬間に男共の恐怖がクライマックス。件のたっくんとやらが「うわあああああああ!」と悲鳴を上げた。

 第六試合。1年3級女子と1年3級男子の同級対決。1年女子の武器は“剣”で戦闘方法は“自由”を引く。片や1年男子の武器は“盾”で戦闘方法は“相手に降伏を宣言させる”を引く。
 1年女子の怒涛の連檄を見事に盾で受け捌くも攻めあぐねる1年男子。ステージの端まで追いつめられる。十度目の激突後、唐突に1年女子が降伏を宣言。
 あのまま続けていれば勝利を拾えたのに何事かと注目が集まる中、1年女子の「やっぱり私には無理ね。だって、好きな人の勝つ所が見たいんだもの」という、青春発言発動。1年男子の顔が真っ赤に染まり、会場から歓声があがる。
 第五試合とは対照的な結末に、ほっこりとした空気が会場に満ちた。





 そして迎える第七試合。我等がローレ嬢、満を持しての降臨である。





*****





「すげぇぜローレ嬢。ルールを完全に無視してやがる」
「流石ね、ローレ。一撃一撃が実に重い」
「ローレって、魔法専門だとばかり思っていたのだけれど違ったのね」

 上から順に僕、りっちゃん、レリーア。
 ステージ中央では、ローレ嬢が対戦相手にマウントポジションを取って、顔面をぼっこぼっこに殴っている。飛び散る赤い液体がステージに色を付けまくっています。

「あああああっ!? 盾様と槍様に謝罪しろ! 下賤な手で触れた上に乱雑に扱いやがって! 盾様と槍様を重ねて置くとか死ね! 謝罪して死ね!」

 ローレ嬢の怒号が会場に響く。まるで鬼の様な形相で、対戦相手を殴る殴る。一発一発が渾身の一撃。対戦相手の顔面は既に崩壊しているにも関わらず、一向に止む気配を見せない殴打の嵐。えげつねぇ。
 思いっきり反則なのだが、その圧倒的な迫力を前に審判は尻込みをしている。正直、ローレ嬢が本格的に鬼子母神化する前に止めて頂きたい。

 時間を遡ること、およそ1分前。
 ローレ嬢が武器として“メイス”を引き、対戦相手が“槍と盾”を引いた。その際に「やだぁ~。あたしぃ、こんなに重い物持てなぁい」とシナを作るローレ嬢。その姿に観客の幾人かが「がんばれー」と声援を送る。
 そして引かれる戦闘方法。ローレ嬢は“武器のみで攻撃”、対戦相手は“素手”を引き当てる。その後、審判により所定の位置につかされる二人。「えっとぉ、手加減してねぇ」と語尾にハートマークが付きそうな甘ったるい声で、キャピキャピとした態度のローレ嬢に対戦相手――性別は男――は鼻で一笑。ローレ嬢の口元が僅かに引き攣る。

 試合開始の合図が為された直後に悲劇、否、惨劇は起こった。

 対戦相手が「こんなの無くても楽勝だな」と槍と盾を乱暴に投げ捨てる。投げ捨てた直後、ローレ嬢の鉄拳が対戦相手の顔面を捉えた。吹っ飛ぶ対戦相手と云う名の獲物に追い縋り、倒れ伏した獲物からマウントポジションを奪う。
 殴打という名の公開処刑執行。
 一瞬にして間合いを詰めたローレ嬢であったが、戦闘行為が明らかなルール違反。審判がローレ嬢の反則を宣言するも、鉄拳制裁は終わらない。
 殴りに殴って殴る。殴打の乱舞。鉄拳が嵐の様に乱れ舞う。対戦相手は原始的な顔面整形を受ける受ける。観客はあまりにも酷い光景にドン引く。
 この暴挙に審判が止めに入ろうとするも、ローレ嬢の殺人鬼もかくやという眼力及び「あ゛あ゛ぁ?」というドス声を前に、「なんでも御座いません」とヘタレる。

 そんな審判を一切気に留めること無く「有機物如きが無機物様になんてことをしていやがる! 謝れ、謝罪しろ! 命で償え!」と叫びながら殴り続けるローレ嬢。
 メイスを重いと引き摺っていた非力な少女の姿からは想像も出来なかった、一流の武闘家にも劣らない剛力鉄拳が乱舞という光景が展開。なにこれおそろしい。自分の事を棚に上げているところとか特に。
 会場が静謐に満ちる中、冒頭に戻り、現在。

「おや、終わったね」
「重なっていた槍と盾を別々に置いているけど、なにか意味があるのかしら?」
「審判が未だに怯えているで御座る」
「うふふ。今、声を掛けるかどうか迷ってるわね。可愛い」
「……なんなんだ、今年の決闘戦技祭」

 りっちゃんの言葉を筆頭に、レリーア、僕、クルーノさん、マスターという順番で続く。
 ざわざわと、ざわめきを取り戻す観客席。
 オロオロとして一向に声を掛けない審判に、これまた一向に処刑場から降りようとしないローレお嬢様。
 困惑に依るざわめきが高まる中、ぽつりとローレ嬢がなにかを呟く。次第に静寂を取り戻す会場。
 ぶつぶつと何かを呟くローレ嬢の言葉が、次第に聴こえるようなって来た。

「……っ、てかマジで有り得ないんだよクソがっ。盾様を槍様に被せて置くんじゃねーよ。これじゃ、盾様が攻めか誘い受けか誘い攻めみたいじゃねーかってんだよ。それはそれで味があるけどよ、そんなのは有機物がとっくにやってるだろうがっ。なんの為の無機物だと思ってんだよ。攻めとか受けとか擬人化とか無機物には不要だろうがよ。そんなモノを超越しているのが無機物だろうによぉ。無機物は喋らないし意志を持たないからカップリングが萌えるんだろうが。無機物を接触させて萌えるのは三流、離して萌えれてようやく二流、無機物を正しく無機物と捉えて欲情出来ることこそが一流の条件だろうに。そんなの常識の不文律だろうがっ。重ねて置いたら、攻め受け擬人化を示唆しているみたいだろうが。そんなのは四流がすることだってんだ。無機物カップリングマイスターたるこのあたしに、こんな暴挙をするなんて非常識野郎が。そもそも、無機物の盾様や槍様を乱雑に扱いやがって。戦い以外での傷は盾様と槍様に対して不敬じゃねーか、クズがよぉ。もしもこれで傷が付いていたら、このゴミのチ●●をズタズタにしてグチャグチャにして●ツ●●に他の奴から切り取った●●ポを……」

 なんだかすっごい物騒でカオス塗れの言葉が朗々と響く。
 意識して呪い染みた言葉を全てシャットアウト。
 なにも聴こえない。僕はなにも聴こえないよ。聴いてしまったらSAN値をガリガリ削られるか、開拓してはいけない境地を開拓しそうになるから。良い子で紳士な僕は、そうならない為にも聴いてはいけない。いけないのだ。
 ダメ、絶対。僕はノーマルだもの。

 そんなこんなで、ローレ嬢は反則により敗北。
 会場から辞する際に「やぁん。わたしったらちょっと、はしたなかったかもぉ。てへっ☆」という、人格が変わったんじゃないかと思わせるほどの変貌を見せた。

 女性は魔物。女は生まれついての女優。





 これほど彼の格言が身に染みたことはなかった。





*****





 続けて始まった第八試合。
 微妙な空気のまま始まり、微妙な展開を催し、微妙な終幕を遂げた。あな悲し。

 というのも、前試合の濁った空気が滞留するなか、籤で提示された戦闘方法が両者互いに、まさかの“クイズ”であった。
 しかも内容が普通。これがぶっ飛んだ内容であったのならば、きっと、そこそこの盛り上がりを見せただろうに。因みに、武器は“爪切り”と“三味線”だった。
 結果、あまりにも平凡な終わり方に会場はノーリアクション。居心地悪そうに帰って行く選抜者二名。そこに勝者と敗者はいなかった。
 負けた方が「武器を使う試合なら勝てたのに……」と呟いていたが、果たして爪切りでどのように勝利を拾うつもりだったのか。
 なにはともあれ、未だに滞留するは、この何とも形容できぬ空気感。

「ならば、この僕が全てを払拭するしかあるまいよっ。そう、これは紳士を自負する者の義務であろうからっ」
「どうでもいいから早く行きなよ。呼ばれているよ?」
「斬新な登場の仕方をすればいいわよ。身体が千切れ落ちながら半死半生で入場した後、開始早々爆発するとか」

 りっちゃん酷い。レリーアは発想が下衆い。興奮するからもっと云ってくれ。
 だとかなんとか考えている間も、僕を呼ぶ放送が会場内に響く。
 しかし、まさか僕の名前が【糞莫迦外道のゴミくず】で登録されているとは思わなかった。

『糞莫迦外道のゴミくず君、早く会場に来て下さい。繰り返します。糞莫迦外道のゴミくず君、早く会場に来て下さい。時間内に来ない場合は不戦敗となります。糞莫迦外道のゴミくず君、早く会場に来て下さい。繰り返し……』

 繰り返される放送内容に、会場内がどよめく。
 世が世ならば、筆舌に絶すイジメだぜ。というか、放送してる人が淀みなく云ってる辺りにプロ魂を感じる。
 よもや大衆の面前で恥を掻かされるとは思わなんだ。おのれ副ティーチャー、愛してるっ。

『糞莫迦外道のゴミくず君、あと三十秒以内にステージ上に居ない場合は不戦敗とします、早く来て下さい。カウントを始めます』
「ねぇねぇん、本気で行かなくてもいいのぉ? 失格になるわよぉ?」

 なんだかカウンティングを始めた放送。
 クルーノさんが割りかし本気で急かし始める。

「ふふっ、主役はギリギリで登場するから格好良いんですよ」
「そんな発想をするとは、やはり馬鹿か」

 マスターがナチュラルに毒舌です。
 なんだか僕に対して風当たりが強くね?

『十ニ秒、十一秒、残り十秒……』

 むっ、カウントが十秒を切った。そろそろ行くとするか。
 大きく息を吸い込み、観客席の縁に足を掛ける。

「僕はここにいるぞっ!!!」





 叫び、勢いよくステージへと跳び出した。





*****





 負けたで御座る。





 ダイナミック入場を果たそうとした結果、足を滑らせてステージから落下。着地位置がステージ端だったが故の不慮の事故。エンカウンター極まるね。
 少々気恥ずかしくも、ステージへと登ろうとした瞬間に、まさかの『規定時刻を過ぎました。糞莫迦外道のゴミくず君、失格』と云う放送員からの敗北宣言。
 唖然呆然愕然悄然。「え、マジで?」と思わず呟いてしまった。
 いや、いやいや、主人公にして紳士たるこの僕が闘わずして負けるとか。ここ一番の見せ場が潰れるとか。ここは僕がなんやかんやで優勝する流れだろとか。担任様のパンティーを拝見出来ないとか。副ティーチャーの下乳が拝めないとか。

 理不尽極まる結末。不条理に尽きる結果。裏切りの様な終幕。
 第九試合。つまり僕が輝く時。それが、まさかの不戦敗。え、なにこれこわい。意味が分からな過ぎてこわい。
 物語の超展開に自失している僕に対し、会場中からブーイングが巻き起こる。特に、我が男子クラスメイト達の怨嗟の声がひと際大きかった。

 曰く、「俺達の夢を返せー!」「これだからお前ってやつはっー!」「死ねぇ! 死んでしまえぇ!」「返すで御座る! 拙者達の希望を返すで御座る!」等など。俗世に塗れて穢れ切った言葉が飛ぶ飛ぶ。
 だが、僕は一言物申したい。一番ショッキングなのは僕だと。てっきり、この決闘戦技祭で優勝して、ダブルティーチャーズとのオニチクエロゲ展開になると、心底思っていたのに。

 それがどうだ。
 なんだこの結果はっ。
 誰のせいだっ?! ………僕のせいだっ!!

 なんてこったい。申し開きのしようがない。
 あまりにも希望の光が見えぬ展開。こんなことなら、普通に入場しておけば良かった。後悔先に立たず。悔やんでも悔やんでも悔やみきれぬ。なんかもうホントにごめんなさい。僕は紳士失格で御座るよ。

 魂が抜けた状態の僕は、客席に戻った。
 一応、残りの試合も見ようと思っていたので戻ったのだが、ショックのあまり試合内容を一つも記憶出来なかった。
 見ているけど見ていないという不思議な状態。
 まるで表情だけは取り繕って授業を受けているけれど、頭の中では学校にやって来たテロリスト共を格好良く薙ぎ倒し、学校一の美女に惚れられるという妄想を行っている思春期の少年のような状態。
 なので、試合内容とか全然覚えていない。

 取り敢えず、今年の決闘戦技祭の優勝者は、予選第三試合で勝利した2年男子であった。地味だったのに凄いね。
 嗚呼、あとはもう表彰式だけかと、冷め切った頭で思う。
 どうでもいい、至極どうでもいい。ご褒美の無くなった行事などに興味は微塵もない。
 僕が考えることは、ただひとつ。この状況から、どのようにしてダブルティーチャーズ姉妹からご褒美を賜るかという一点。
 考えろ、冷徹な思考能力で。模索しろ、煮えたぎる心の情熱で。諦めずに、極小の可能性を見つけ出せ。パンティー&シタチチと云う名の勝利を呼び込むために、考えることを止めるな。

 そんな僕の思考を切り裂くように、再び放送が流れる。

『これより、最弱選抜者決定戦を開催致します。予選及び決勝戦で無様に敗北した皆様は、ステージ上へお集まりの上、再度くじをお引き下さい。繰り返し……』

 なん……だと……?
 最弱決定戦? マジで? なにそれひどい。寧ろえぐい。それは、もはやイジメだろう。

『尚、この最弱選抜者決定戦で最弱になった御方には、事前にご記入頂いたアンケート用紙の“もっとも屈辱を感じることはなんですか?”という項目に書かれた内容を明日から一週間にかけて、実践してもらいます』
「……うそだろ」

 絶句。
 決闘戦技祭、ここまで下衆いのかっ。
 唐突過ぎる放送内容に、会場内から数人の悲鳴が上がる。

「ま、負けられないっ! 色々な意味で負けられないっ!」

 最初は、この最弱決定戦で勝利し、それをネタに舌先三寸口八丁でダブルティーチャーズ姉妹からご褒美を得ようと考えた。
 しかし、事態は更なる深刻を迎えた。
 負けられぬ、絶対に負けられぬっ。あんなことをする位なら、全裸で王都を徘徊する方がまだマシだっ。だって普通に出来るからっ。

「呼ばれてるわよ、ゴミ虫。早くいきない」
「時に、君はどのような内容を書いたんだい」
「残念だが、りっちゃんにもそれだけは教えられない」

 レリーアの蔑む視線に興奮しながらも、りっちゃんに断りを入れる。
 ごめんね、これだけは口にするのも嫌なんだ。

「逆に気になるわね、云いなさいよ」
「ふむ、君の弱点か。実に興味をそそられるね」

 詰問しようとする二人から逃げるように、僕は再びステージへ向かうために観客席の縁を蹴り、宙を舞った。





 着地時に足を挫いたで御座るよ。痛し。





*****





 試合に敗北した我等負け犬一同。
 ステージ上で次から次へと籤を引く。
 着々と籤を引き進める負け犬仲間の皆様方。これもまたトーナメントだとかで、その順番を決めている。まぁ、変則トーナメントらしいから、油断は出来ないが。
 黙々と籤を引きに行く姿は、まるで死地に赴く殉教者のようである。傍から見たら、これは確実に不審者集団だがね。

 そして僕の番である。
 箱の中に手をぶち込んで中をまさぐる。ちっ、これが箱では無くて女性のあ……いや、流石にそこまで考えるのは止しておこう。
 今、背筋がぶるっときた。ぶるっと。メアやジジが本意気で放つ殺気に似ていた。急所狙いの攻撃を本気で真面目に容赦なく叩きこんでくる場面が脳裏に思い浮かぶ。おや、なんだか昂って来たよ?
 もしや、いま、ここに居ない、よね? ドキドキワクワク。

 若干の恐怖と多大な期待感を携えながら、籤を箱から引き抜く。
 そこに書かれていたのは“やったね、特殊シードだよ!”という文字列である。なんだこれは。たえちゃん的なノリか。家族が増えるよっ!
 ここでいう、たえちゃんという名称を聴いて、子供コミックのお色気漫画ヒロインが浮かぶ人は純粋な輩である。それ以外が浮かぶ奴とかマジ非道魔道極道。

 蛇足消去。さて、これは一体全体どういう意味か。
 頭を捻っていると、審査員である初老の教師が僕の疑問に答える。

「おお、これを引くとは。百数枚の中で、一枚しか入れていなかったものであるのに。なんという悲運」
「待て、悲運ってなんだ悲運って」
「説明するとだ、この籤内容は特殊シード。即ち“チャンスは一度で掴みとれ”という意味を込めて、決勝戦に問答無用で登録されるものだ」
「え」
「よって、お主は、一度の敗北で最弱決定ということだな」
「ええっ」
「頑張るがよいわ」

 そう云い残し、ガハハッと笑って去る初老教師。
 愕然と、僕は特大魔法掲示板に映し出されているトーナメント表を見遣る。どこのハンター2乗で出てきた試験だと云いたくなるようなトーナメント表。
 直通で決勝戦に引かれた線。その最下部に、僕の名前――糞莫迦外道のゴミくずとかマジ勘弁――が記される。





 え、なにこれ意味分かんない。





*****





 あっという間に最弱決定戦最終試合。

 つまりは僕の試合である。ほんとにあっという間だよ。
 次から次へと、その持前の不運によって試合を負け昇って来た僕の対戦相手となる輩と共にステージに並び立つ。
 ちらりと対戦相手の横顔を覗き見ると、凄まじい程の絶望感漂う表情をしている。まぁ、それも無理のないことだ。なにせ、全試合で戦闘方法が“攻撃不可”という、試合として成り立たない籤を引いているのだから。
 うん、もう哀れここに尽きる。不運っぷりが凄い。教育放送アニメの保険委員長並の不運っぷり。

 そんな対戦相手に対し哀れに思う気持ちもあるのだが、正直この不運っぷりならば、僕が負けることはないだろうという安心感の方が強い。
 故に、この試合、悪いがふるぼっこにさせてもらうっ。

 決意を再度心に滾らせ籤を引く。先ずは武器。
 籤には“割り箸の袋”という文字。なんだと。
 思わぬ展開に動揺。いや、だがまぁ落ち着け、僕よ。これはあくまで武器の籤結果だ。戦闘方法が未だに残っている。そちらに賭けよう。
 気持ちを新たに、今度は戦闘方法の籤を引く。さぁ、僕に奇跡をっ!
 籤に書かれていた文字は“武器のみで攻撃”というもの。
 割り箸の袋でどうしろというのだろうか。そもそも割り箸の袋を武器として認めた阿呆はどこのどいつだ。

 まさかの籤引き内容に絶望しそうになるが、相手はここまでの全試合で絶対不運を発揮してきた猛者。大丈夫、まだ望みはある。
 僕の一縷の希望を知ってか知らずか、相手は籤を引く。その内容が、武器は“自分の獲物”で戦闘方法が“自由”であった。

 どうあがいても絶望なり。
 喝采を上げる対戦相手と、悲嘆にくれる僕。納得がいかぬ。何故にここまで来て、こんな展開になるのだ。責任者出て来い。

「それでは、二人とも所定の位置にお着き下さぁい」

 対照的な反応を示す僕等に構わず、審判役の女教師が声を掛ける。
 おっとりした雰囲気(なぜか変換出来る。今更だね!)を醸し出す御仁。嗚呼、この殺伐とした心が癒される。

「早く位置に着いて下さぁい」
「貴女様が、その立派なお乳を揉ませてくれるのならば」
「早く行かないとぉ、この鑢で貴方の●●●をゴリゴリ削ってぇ、削れたカスを食べさせますよぉ?」
「おいこらてめぇ早く着けやぁ! 審判様が御待ちだろうがぁ!」

 純白天使降臨かと思ったら違ったで御座いますよ。
 股間がキュッとなる様な言葉を発する女教師様。あな恐ろしや。流石の僕も、男の誇りを削られるのは耐えられないのですぅ。
 ニコニコと真っ黒な微笑を浮かべる女教師様から視線を外し、もたもたとしている対戦相手を叱り飛ばす。まったく、なにをちんたらとしているんだ。
 ぷんすかと怒り心頭の僕に対して、「な、納得いかねぇ……」と口にし、釈然としない様子で定位置に着く相手。一体なにが納得いかないのか。僕はびっくりするほど納得しているというのに。

 取り敢えず、所定位置に着く僕と相手。
 相手は杖を構え、僕は割り箸の袋を構える。この状況、傍から見るとシュール過ぎるだろう。
 些細な事に気を割いている僕に対し、相手が自信に満ちた言葉を口にする。

「ふふっ、最初に云っておくがね。君が私に勝つことは、万が一にも有り得ない!」
「なんて卑猥なことを大声で。変態めっ」
「なにがだっ!? それと君だけには云われたくない!」

 ぷんぷんと怒り始めた対戦相手。情緒不安定過ぎる。ビタミンを取るがいいわ。
 しかし内容はどうであれ、今の発言で対戦相手が目立ってしまう。このままでは僕の影が薄くなっていけない。
 ここは僕もなにか格好良いことを云っておこう。

「ふっ、ならば僕も貴様に云っておくことがある」
「なにぃ?」
「貴様は、僕に触れることさえ出来ずに敗北するのだ!」
『ギリッ』
「おい、誰だ!? 今の発言のせいで僕の格好良い台詞が、ただの負け惜しみになっているじゃないか! 歯軋り音なんてだすなよ!」
『キリッ』
「おいいいっ! 違うよね、タイミングが違うよね!? 僕が今の台詞を、どや顔して云っているみたいじゃないかっ! ただのバカみたいなっているじゃないかっ!」
『ぶりっ』
「よし、いま云った奴出て来い。久しぶりに切れちまったよ。何故に文句を云いながら漏らしているんだよ僕はっ! どこのどいつか知らないけど出て来い!」
「……なにをしているんだ君は」

 突如として会場から入った茶々に言葉を返していると、対戦相手が呆れたように声をかけてきた。
 おお、こいつのことをすっかり忘れていた。忘れたままでも支障ないけど。僕の人生的な意味で。

「ああもうっ! とにかく行くぞっ!」

 大声を出して、杖を前に出す相手。

「魔法主体かっ」

 見覚えのある動作に、身構える僕。
 しかしながら、一向になにも起きないことに疑問を覚える。
 むぅ、どうしたんだ。

「ふははっ、やはりバカだな! 私の得意技能は魔法ではない!」
「早口言葉かっ!」
「違うわっ!?」

 はぁ、と溜息を洩らす相手。どことなく疲れているように見えるが、一体全体どうしたのであろうか。

「まあいい。私が得意なのはな――」

 瞬間、全身を駆け巡る寒気。
 相手の眼前で、何かが、なにかが、ナニかが、出現しようとしているっ。
 体内を巡る怖気に従い、相手との距離を一瞬で詰める。そして右拳を顔面に突き刺そうとして。

「――召霊術だ」

 人型の、光の塊に、止められた。
 止められたばかりか、腹部に衝撃を受けて吹き飛ぶ。ゴロゴロとステージを転がり、危うく場外寸前という所で止まる。
 ガバリと顔を上げて光の塊を見遣れば、そこに――



「おいおい、坊主。ルールは守らにゃいかんぜ?」



 ――スーツ姿で頭頂部が薄くなったオッサンが、居た。

 いや、いやいやいやいや。何故にオッサン。どうしてオッサン。年の頃が五十代と思わしきオッサンが、なにゆえ。
 普通、こういうのって竜とか妖精とか精霊とか死霊とかじゃないのか。なにゆえ、どこにでも居そうなオッサンなんだ。

「ふむ。どうやら先の一撃は、攻撃にさえなっていないと判断されているようだな。反則扱いがないか。それとも、手に握りこんでいたから、武器としての攻撃と判定されたのか。……どちらにせよ、目が良い様だな」

 なにかを喋っているオッサン。そんなことよりも、びっくり展開のせいで頭が上手く動いていない。
 取り敢えず、くたびれたスーツに哀愁を感じるのですががががが。

「さってと。……準備はいいな、坊主?」

 うわぁ、将来あんな頭になりたくねぇとか考えていたのだが、圧倒的な害意を感じ、即座に迎撃態勢を整える。
 どうやら、見た目とは裏腹に相当な実力者だと認識を――その場から横っ跳びに退避。

 ズドンッ、と轟音ひとつ。
 視線の先。僕が先程まで立っていた場所が粉微塵に砕け散っていた。

「……洒落になんねぇぞ、おい」
「おおう、よく躱したなぁ。並の奴らなら、この一撃で御釈迦様なんだがな」

 冷や汗を流す僕に、獰猛な笑みを浮かべるオッサン。
 見た目は凡庸な中年なのに、その身に宿す実力がとんでもない。
 容姿と実力のギャップがあり過ぎるだろうと、内心で舌打ち。どこのチョーさんだ貴様。





 直後、オッサンが襲いかかるっ!





~~~~~~~~~~~~~~~
あとがき

 大変なご時世にこんな拙い作品を書いていて良いものか。迷い所です。
 しかも無駄に長い。予選の試合内容とか削れば良かったかしら。もしくは冒頭すべて。
 プレビュー機能が使えないので、文章の構成が把握出来なくてつらい。

▼きっと、きっと、僕は辿り着ける。そう、あの児童溢るる路地に飛び込めばっ。

>主人公は本当にどこにたどり着くんだろうかwww

むしろ、この主人公は意味不明な処に到達している可能性が。


>尻ass最高です!w一家に一台是非とも欲し(ry
>ある意味世界団結かもww

嫌な世界団結で御座る。
そして、拙作の評価に尻assが固定されてしまっている。由々しき事態で候。


>上には上がいる。
>紳士道の奥深さに、眩暈がする程の感動を覚えました。
>それはさておき、女王様気取りの娘さんは自分が要求したことをされただけなのに、なぜ許しを乞うたのか謎です。
>さすが俺達の主人公だぜ!と思った自分自身の感情も謎ですが、不思議と悪い気はしませんでした。
>もう自分が何を言っているのか分かりません。
>今回も大変美味しく頂きました、これからも御作を拝読させて頂ければ幸いに存じます。

わざわざご丁寧に感想ありがとうございます。
これからも拙作を御目汚し暇潰し程度に御読み頂ければ幸いです。

>そして私は佐○木希似な女子大生(20歳)ですが、結婚して下さい。
>まぁ嘘ですが、頑張って下さい。

危なかった。佐々木小次郎似の女子大生(20歳)だったら、嘘を嘘と見抜けなかったかも知れない。危なし危なし。


>担任様と副担任様可愛すぎる
>なじられてぇ

作者にはどうすることも出来ないので、せめて貴君の脳内彼女に詰られてくださいませ。


>担任様をお持ち帰りさせていただく!
>妹!? おしとおいたいいたいやめてぶたないでばくさつしないでれきさつしないであっさつしないでいやぁぁぁぁぁぁ!
>主人公・・・世界に一人はいたほうが良いよね。世界が賑やかになる。ただし二人は要らない!

担任様をお持ち帰る権利は未発行で御座いまする。申し訳ありません。
主人公が実際にいたら、確実に一人悶死することでしょう。作者とか。


>うわぁ・・・
>なにこの紳士淑女の集合体・・・

2年0級生徒で御座い。


>おねぇちゃんを嫁に下さい!何なら副ティーチャーも込みで!!

全裸になってタケコプターで空を自由に飛び回る度胸がない輩とは、婚姻を結びたくないと、主人公が代弁しております。


>俺、作者が大好きだ!

作者も、えっちぃお姉さんが大好きです!


>お早い更新に歓喜!
>そして主人公も周りも紳士・淑女しかいないw
>0次元萌えって、どこに萌える要素があるんでしょう?

0次元萌えに萌える要素を見出せた時、孤独と云う名の地獄が待ち構えています。ご注意を。


>うお!更新されてる!
>とりあえず本当にノーパンか気になって夜も寝れないので確認させてください。
>あ、自分が確認するんで。
>一人だけだったらいけるよね?

逝けると思います。



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