戸惑う言葉を与えられても、僕の心は上の空さ。ぼけー。
『6話・スイーツ』
ついに僕はやり遂げた。
眼前に広がる光景に満足気に頷く。
そこには、これでもかと云わんばかりの耕された畑がある。
見よ! これが僕の全力だ!!
心の中で喝采が飛ぶ。脳内会議では賛辞の嵐が巻き起こる。
心の中に居る僕のファンは、総立ちでのスタンディングオベーションである。当然僕は手を振って応える。どーもどーも。
自画自賛に酔いしれる僕、カッコイイ!
「それはない」
そんな僕に冷や水を浴びせる子猫が一匹。
三色の色合いを持つ子猫、ジジである。今日も可愛いね!
呆れたように僕を見るジジ。
なんだろうね、そんな目で見られると胸の奥から熱い何かが湧き出してくるよ。これは、恋かな?
「魚は好きじゃ」
まさかのコイ違い。
「それで、ジジは何しに来たの?」
「ん? ああ、そうじゃった。じつはな……」
「僕に告白しに来たんだね。分かります」
「違う。ワシはお主の事がさっぱり分からん」
「さっぱり妖精が大活躍するね」
「……なんじゃ、それは?」
しまった。ネタが通じない。
今時、さっぱり妖精知ってる人って居るのかな?
「まぁ、良いわ。じつはな、これから少し用事があってな」
「ふむふむ、それで?」
「ワシとメアは所用で出掛けるから、留守番しておれ」
「了解。丁度畑も耕し終わったことだしね」
「………あと、半分も残っておるがな」
それを云っちゃらめぇぇ。
*****
留守番に飽きた。出掛けよう。
いそいそと出掛ける準備をする。
メアにお土産を頼み、昼食も用意してもらった。
ジジには大人しく留守番をしておけと云われた。
でも、やっぱり飽きる。
テレビもパソコンもゲームも漫画も小説もないのだ。この城。
飽きるのも当然じゃないか。
「今日の僕は可愛いのよ!」
服を着替え、姿見を覗いてポーズをとりながら云ってみる。
ポーズは女豹である。
ピシリッ。
鏡に亀裂が入った。
どうやら、僕のあまりの美貌に姿を映すことが出来なかったらしい。
「ふふ、美しいとは罪だなぁ」
ガシャアアアアアン。
呟いた直後、鏡が粉々に砕けた。
おやおや、この鏡はどうやら随分と古いものだった様だな。耐久年数を越えていたから砕け散ったのだろう。
鏡の飛び散った破片を片付ける。
「こんなもんかな」
あらかた片付け終わって、鏡の破片をどうしようかと悩む。
悩んだ末、近くの窓から破片を落とした。
なんだか下で「ぎゃあああ!!」という叫び声がしたが、きっと気のせいだろう。きっとそうだ。
「さぁ、行くわよ!!」
某月の戦士の様なポーズで宣言する。
室内は僕以外誰もいないので、シーンとしていた。
僕の行為にツッコミを入れる人は、今この場に存在しない。
「なんでやねん」
仕方なく、合っているのかいないのか分からないツッコミを自分で入れてみた。
なにこれ、寂しくて死んじゃう。
*****
出掛けると云っても、僕はここらの地理に明るくないので、どうしたものかと思い悩んでいた。
悩みながら歩いたり、時には走ったりした。
迷子になった。
迷子になったのは、何もこれが初めてではない。迷子になったことなど今迄で50は超える。
迷子マイスターな僕は、突発的な迷子ごときで泣いたりしないのだ。流石は僕。かっこいい。
「ふえ~ん! メア~、どこ~?」
……強がったっていいじゃない。
意地があるんだよ、男の子だから。
そんなこんなで泣きながら彷徨った。
「む?」
当て所無くふらふらと彷徨っていると、先の方から人の騒ぎ声が聞こえた。
気になって、そちらへと向かう。
ちょっとした崖に着き、崖下で喧騒が聴こえるので覗きこむ。
そこには、十数人のムサイ男集団と、それに対峙する様に立っている見覚えのある顔。その周囲にも数人の男が倒れている。
ぎゃーぎゃーと男集団が喚いている。その矛先に居る見覚えのある顔の、要はメアとジジが平然と立っている。
なにしてるんだろ? 祭りかなぁ……?
そんなことを考えていたら、数人の男がメア達に向かって行く。
メアが、腕を振るって炎を生み出し、男達を炎の瀑布が飲み込んでいく。
そんな中、それを避けた男がメアに突進しようとしてジジにぶん殴られて吹っ飛んだ。尻尾ってあんなに強いんだね。
ふと視線を動かせば、いつの間にかメア達の後方に回り込んでいた男がゆっくりと近づいていた。
メアもジジも気付いていない。
男は、大振りの剣を握りしめていた。
瞬間。
僕は飛び出した。
高低差10mなんて怖くない。
あ、やっぱ嘘。これ怖い。泣きそう。
「えぇぇぇええんだぁぁぁぁああぁぁああ!! いぃぃやぁああぁぁあああああ!!」
絶叫を上げながら落下する僕に、その場に居た全員が振り向く。
ゴシャア!
メア達のすぐ傍まで接近していた男に見事な着地を決める。
そして胸を押さえる僕。し、死ぬかと思った……!?
息を呑む音がした。恐らく、この男の接近に今初めて気付いたのだろう。
「お、お主……」
「……あ」
驚愕の呟きを洩らす一人と一匹。驚いた顔はどちらも可愛いね!
「な、なんだ!?」
「何者だっ!?」
誰かが叫ぶ。
「僕──」
すうっ、と腕を広げて脚も開く。
微かに前傾姿勢を取り、告げる。
「──参上」
登場の仕方は、最初からクライマックスでした。
*****
「状況が分かんないので、ギブミー現状」
メアとジジの前に立ち、相手を見据えながら訊く。
「お主は、留守番しておれと……」
「今、それは置いておこう」
脇に置いて、さらに箱詰めで密閉して二度と開けてくれなければ、僕は狂喜の舞を踊る。
「……向こうは、山賊です」
「……山賊」
「平和な世にも、悪党は尽きぬが道理よ」
要は悪者だな。
その悪者のなんかボスっぽい奴が、雰囲気からして中ボスっぽい奴が声を荒げた。
「おい! てめぇ、なめた真似しやがって!!」
「失敬な。僕は舐める時は徹底的にむしゃぶり尽くすぞ!!」
飴とかキャンディーとか。
「いや、あれは比喩表現じゃから……」
ジジが疲れたように声を出す。
どうしたんだろうね。
「小僧! てめぇ、云い残したい事があったら今のうちに云っとくんだな!!」
激昂している中ボス。
カルシウムが足りていないな。牛乳を飲め。
しかし、折角の申し出なので、一度は云ってみたかった言葉を口に出す。
「スイーツ(笑)」
これって云う時大変そうだよね。
いちいちカッコ笑いカッコ閉じって云わなきゃならないなんて。
「なっ……!? て、てめぇ、なんてことを……っ!?」
「お、親分! あいつヤバいっすよ!!」
「なんてことを云いやがるっ……!?」
なんだか騒然とする山賊の皆さん。
「お主。いまのは、流石にないぞぃ……」
「……そんなことを云っちゃ、めっ! です」
ジジとメアも僕も非難する。
一体、こちらの世界ではスイーツはどんな意味なのだろうか。
「ちっ! この変態がっ!!」
「おいおい、知らないのか? 変態はいつだって紳士なんだぜ?」
悪態を吐く山賊Aに言葉を返す。
「……変態じゃと、認めおった」
「……自覚、あったんですね」
ジジとメアが何か呟いているが僕には聞こえない。
相手も突然の僕の登場に戸惑っている。
ここは先手必殺っ!!
僕は一番近くにいた山賊に接近する。
ガシ! ボカ! 山賊は死ななかった。
あるぇ~?
おかしいな、これは最強の必殺技だと思っていたのだが。
「て、てめぇ! やりやがっ」
「そぉい!!」
仕方ないので地獄突きをしてみた。
山賊Gはゴロゴロと悶え苦しんでいる。
「小僧、本気で死にたいようだなぁ」
中ボスが睨んでくる。
なんという気迫。若干怖い。
僕を鶏と云ってはいけない。
「そこの気味の悪い魔女と化け物と一緒に殺してやる!!」
「……なに?」
いま、なんと云った?
メアが気味悪い? ジジが化け物? あまつさえ、殺す……だと……?
オーケー。良く分かった。
貴様は万死に値する!!
「このクソ野郎!! 死ぬのは貴様だ!!」
「なんだとぉ!!」
既に貴様の死は決定事項だ。
なぜならば。
「テメーは僕が怒らせたっ!!」
「ああそうだよ!!」
云い間違えた!?
「リテイク!!」
「……格好付かんのぅ」
お黙れ!
……噛んだ。
お黙り!
「テメーは僕を怒らせた!!」
「あんだとぉ!?」
怒髪天な中ボス。
しかし、怒りは僕の方が有頂天だ!
「……意味が分からないです」
何かを呟いたメアを置き去りに、一瞬で中ボスとの間合いを詰める。
「なっ!?」
中ボスが驚愕の声を上げる。
喰らえ! これが僕の怒りだぁぁあああ!!
「ダイイチダアアアアアア!!」
「ごほっ!?」
「ダイニダアアアアアアア!!」
「ごぇっ!?」
「ダイサンダアアアアアア!!」
「がはぁっ!?」
「ダイヨンダアアアアアア!!」
「げはぁあっ!?」
殴る殴る。徹底的に殴る。
皮膚を打ち、肉を討ち、骨を撃つ音が連続する。
「喰らえ! 必殺ぅううう!!」
フラフラな中ボスに、僕の最高の連撃を叩きこむ。
「グゥオォレェェンダアアアアアアアア!!!」
同時に繰り出される五発の拳が中ボスを穿つ。
秘儀・牛頭鬼。
紳士たるもの、必殺技の一つや二つ持っているものだ。
見た目は、まるで何処かの魔法使いみたいな技だ。オリンピック的な技名の。
僕の連撃技を喰らい、口から血を噴き出して中ボスが倒れる。
それを見て、残りの山賊に動揺が走る。
「ふははははっ!! 山賊狩りじゃあああああ!!」
ハイテンションな状態で山賊に襲い掛かる僕であった。
「……どっちが悪者か分からんのぅ」
「……そうですね」
お黙れ。
*****
山賊を壊滅させて、メア達と一緒に帰宅した。
山賊を壊滅させた時、警邏隊にいたお姉さんにハァハァしていたらジジにブッ飛ばされた。尻尾の恐ろしさを知った。
城に帰り着いた時、白翼の美青年スティーノが倒れていた。
ガラス片が突き刺さっている。
あー、あの時の悲鳴こいつかー。
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まえがき あとがき
お話書くのって大変ですね。疲れます。
勢いだけで書いちゃいけませんよ。骨身に染みました。
あと、感想の返信ですが、感想欄に書くのメンドイのでこっちで返しますね?
……一回目の返信で懲りたよ。
▼ 名前を消しているのはプライバシー保護とかそんなん。べ、別に感想欄に自分の名前が出ているのが思いのほか恥ずかしかった訳じゃないんだからねっ!勘違いしないでよね!
>このしゅじんこうはひじょうにかんじょういにゅうができます。ぼくはもうだめだとおもいました。
ちょっとまって、今・・・何て言った?今何ていった!?『もうだめ!?』
諦めんなよ…
諦めんなよ!!
どうしてそこでやめるんだ、そこで!!
もう少し頑張ってみろよ!
ダメダメダメダメ、諦めたら
周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって。
あともうちょっとのところなんだから。
もっと熱くなれよ…
熱い血燃やしてけよ…
人間熱くなったときがホントの自分に出会えるんだ!
だからこそ、もっと!熱くなれよおおおおおおおおおおお!!!
とまぁ、そんな訳で。
主人公に感情移入が出来るのなら、貴方も立派な紳士の素質があります。頑張ってください。
>猫に指をなめられた時興奮してしまった俺が通りぬけますよ
おや?いま誰かすぐそこを通ったような?気のせいかな?
>面白い
>猫と少女がかわいくて仕方が無い
>もっとやってしまえ
お褒めの言葉ありがとうございます。
なにをやればいいのか作者にはさっぱり分からないのですが、頑張りたいと思います。
>なんだこの狂った世界はwww
>とにかく主人公が変態すぎるw
>猫もおkとかどんだけストライクゾーンが広いんだと小一時間(ry
>しかも常時テンション高いな。
変態じゃないよ!紳士だよ!
>正直メアが手をつなごうとしたことが理解できない。
>だって・・・あれだぜ?
>変態ってレベルを斜め右後方、さらには半ひねりに光速で時にはワープしながらぶっちぎってるような存在だよ?
>もうニコポとかナデポとかオリーシュとかいうレベルでは理解できない。
>俺には何がなんだか全く分からなかった。
>普通は半径1光年に進入禁止にしてもおかしくないと俺は思うねw
(′・ω・)<世の中理解できないことで溢れているのさ。どうして自分はカッコよく生まれなかったのかとか、どうして女性はイケメンに好意を抱くのかとか、1時間の遅刻ですっごく怒る友人とか。ほら、世の中は理解できない不思議で満ち溢れているでしょう?ぶっちゃけ、作者にもメアが手を繋ごうとした理由なんて分からないのです。これもまた理解できない不思議の一例ですね。
>ところで
>ソロモンよ! 貴方は帰って来たっ!!
>は
>ソロモンよ! 私は帰って来たっ!!
>ではないかと思ったのだが、もしかしてネタだったのかな。
>だったらKYでごめんなさい
一応ネタのつもりですが、やはり分かり難いですね。すいません。
作者の力量はこの程度しかないので、大目に見てやってください。
>>「マスター、カミュをロックで頼む」
>小銭形! 小銭形の旦那じゃないか!
あの人はダンディーだと作者は思うのです。
>なんという変態主人公。
>羨ましいと思っている俺はもう駄目かもわからんね。
変態じゃないよ!紳士だよ!(2度目
羨ましく思う気持ちは大事です。その気持ちを大事にしてください。
>メアに好かれているっぽいのは、本能を即行動に移す裏表の無さが理由だろうか。
……さぁ?どうなのでしょうねぇ?
きっと、それなりの理由が存在するのだと思いますよ。
決して作者にも分からない訳ではありません。作者は決してメアの行動を不思議に思ってなどおりません。……ホントだよ?