学園都市の病院、その一室では魔術師ステイル、上条当麻、インデックスそして魔女セシリアが集っていた。
セシリアの傷は腕が切り落とされるといった大きなものだったが、カエルの様な顔をした医者が言うには傷跡も残らずに綺麗に治るそうだ。
それについてセシリアは素直にすごいと思っていた。
ベッドの上に座りながら右腕にギブスをしたセシリアはステイルの話を聞いていた。
上条もその話に耳を傾ける。
インデックスはここで契約を済ませるため魔導書に目を通していた。
「結局ナイル・アウソンは『魔女狩りを生き残った魔女(ロスト・ウィッチ)』に引きとられたそうだ、貴重な戦闘特化型の魔女だ、うまく利用するつもりなんだろうさ。」
上条はナイルが殺されないことに内心ホッとしていた。
ステイルが言うには、魔女は基本姿を見せず、その動きも私利私欲だそうだ。戦闘の出来る魔女は少ないらしく、魔女を見つける=勝った。
というくらいだった。だからナイルのような魔女は貴重らしい。
ステイルは続けて言う。
「魔女側の要求に応じて彼女を渡したのは癪だが、魔女側の始末はこちらでつけると言われれば、しょうがないね。魔術世界も微妙な均衡が大事なのさ。」
セシリアも上条も、へぇ~といった感じだ。
インデックスの方が終わるとステイルは金髪のバカからだと言って封筒をセシリアに渡して、そそくさと帰ってしまった。
「はい、セシリア。」
そう言ってインデックスは漆黒の魔導書をセシリアのベッドに置く。
なんだかインデックスは不満の残る顔をしていた。
「あの~、なにか問題でもありました?」
セシリアは問う。
「本当にこれで全部?」
「はい?」
「どうしたんだインデックス?」
上条も問う。
「おかしい!絶対におかしいかも。大規模な戦略術式に呪術、隠蔽術式どれも黒魔術としてはかなりのものだけど、おかしいよ。
本当にこれが悪魔の力を魔術書にしたっていうなら、変だよ!まず生贄の数がおかしい!こんな使い勝手の悪い術式使えない。黒魔術としては普通だけど悪魔の力程なら生贄をカバーする何かがなきゃおかしいし、なにより対人用の戦闘術式が皆無なのがおかしい!どうなってるの?」
こんなものでは悪魔の力とは呼べない、それがインデックスの答えだった。
それを聞いたセシリアは思う。
(う~ん?知識をみても違いはないし正直わかんないです。ここはギリギリの線ですけど考えに考えた最後の手段を使うしかないです!)
「どうなのセシリア?」
インデックスが詰寄る。
「はい……インデックスさん。上条さん。実は私……記憶喪失なんです!」
そう言った瞬間セシリアはあたりを見回す。自分がセシリアではないとばれたら死、今のはギリギリセーフのようだセシリアは安堵のため息を吐く。
「ほんとに?」
インデックスがさらに詰寄る。
「ほんとなんです!起きたら富士の樹海で知識だけあって、なんとなくこちらに来てステイルさんに会って、分けの分からないうちに契約で……お願いなんでステイルさんには黙っててもらえないですか記憶がないってばれたら契約とか破棄されそうで怖いんです。」
あながち間違っていない説明をする。
それを聞いた上条は言う。
「大変だったんだな……」
(あ~……上条さん、分かるその気持ちって目で見ないでください!心が痛い……)
「わかった。嘘はついてないみたいだしね。学園都市で分からないことがあったらなんでも聞いて!私の方が先輩だから。」
えっへん!と胸を張るインデックス、何か記憶喪失組みの後輩という位置づけらしい。
「それより、あの金髪の神父になに渡されたんだ?今回はアイツがいてくれて助かったしな。」
セシリアは上条たちに自分が気を失った後のことは大体聞いていた。金髪の神父がセシリアのためだと言って戦ったことなど……。
(変態さん……意外といい人なんですか?)
彼の評価を改めようかと思いながら封筒を開け中のものを取り出す。
ザザーと中身を見たセシリアの顔が青ざめていき中身を落とす。
上条は落ちたそれを拾う。
「セシリア……これって……」
「ん?どうしたのとうま?」
それには婚姻届と書かれ片方はしっかりと書き込まれハンコまで押してあった。
「うわぁぁぁ~!やっぱり変態は変態だったです~!気持ち悪いですよ~!」
そう言って黒髪の少女は上条の左手をギブスをしてない手で掴みブンブンと振る。
「あの?セシリアさん?落ち着いて……」
(ちょと可愛いかも……)
上条は不覚にもそう思い少しばかり固まる。
「助けて上条さ~ん!」
そう叫びながら、勢いよくフリ続ける。
「とうま?セシリアになにしたのかな~?」
そこには先ほどまでとは打って変わって、まがまがしいオーラを出す銀髪シスターさんがいた。
「いや!なぜにワタクシ?なにもしてませんとのことよ!てかそんな暇なかっただろ!」
上条は反論するが
「じゃあ何?暇があったらなにかするつもりだったのかな?」
上条は冷や汗を流しながら思う。
( あれ?余計なこと言った?)
その間もセシリアは上条の左手を握り混乱しながら振り回している、今はそれに頭も加わったようだ。
銀髪の少女は大きく口を開けて上条へ詰寄る。
「ちょ!インデックスさん!誤解ですよ~!というかセシリアさんも落ち着いて~!」
ガブッ!上条の右腕に銀髪シスターが噛み付く。
「ぎゃぁぁ~!なんでこんな目に~!」
そして右に銀髪少女、左に黒髪少女の両手に花状態の、男、上条当麻は叫ぶ。
「不幸だ~!!」