事件が終わり、怪我が治った元男、魔女セシリアが今どこにいるかというと、やはりというか、なんというか、結局行くところがなく、青髪ピアスの部屋に戻っていた。
なにも言わずに出て行ったセシリアが何日も帰ってこなかったので、かなり心配されていたらしく、青髪ピアス他、下宿組にかなりのお説教をくらってしまったらしい。
ちなみに青髪ピアスの部屋に泊まった当初の『兄が迎えに来るまで』は、何がどうなったのか、うやむやになっていた。
八月も、もう中盤、時刻は昼過ぎセミの音がうるさい頃だ。
青髪ピアスのいないワンルームで黒髪碧眼の少女セシリアは首を傾げながら胡座をかき、あることについて真剣に考えていた。
「やっぱり何か戦えるようにならないと、いけないですよね~」
先の魔女襲撃事件もあり、自分の身くらいは守れるようにしないと、また誰か襲ってきたら大変だと思ったしだいであった。
しかし彼女の現在使える魔術の全てが彼女の持つ魔導書に記された黒魔術、すなわち生贄を必要とするため、使うわけにもいかず、またインデックスが言うには、対人戦用は皆無らしいので、使えたとしても襲われた時というシィチュエーションでは役にたたないのである。
そのためここ数日セシリアの持つ元セシリアの知識の中から普通の魔術を探していたのだが、殆どが本当の意味で知識だけで使い方などは教科書みたいなものでしかなかった。魔導書のように、自分が使える術式としてではなくてだ。
「これでいいかな~。1番知識の量多いですし」
セシリアはその教科書みたいな知識の中から知識量の最も多い魔術を選び、使えるようにすることを決めた。上条当麻にばかり頼らないためにも……
「自分の無意識を知ることで、これから自分の身に起こることや、未来に起こる出来事を予測するって……ここからどう戦闘に繋がるんでしょう?
戦闘が出来るのは分かるのにどう意味を繋げていいか分からないです…とりあえず道具買って練習の仕方とか意味はインデックスさんに聞けばいいですね!」
そうグッとガッツポーズをして言う……誰かに頼るのは相変わらずのようだ……
魔導書を片手に立ち、玄関へと向かい男の一人暮らしにしては、きれいな部屋を後にする。
セシリアの向かった先は商店街のおもちゃ屋だった。
そんなに広くない店の中にはどこに最新技術が使われてるんだ? と首を傾げたくなるような怪しいものと、どこにでも売っている物が混同して置いてある。
セシリアはその中でも人気がないようなものが置いてある店の隅で商品と睨めっこしていた。
「こんなんでダイジョブなんでしょうか? だっておもちゃ屋ですよ? いやでも、ステイルの兄貴もコピー用紙だし……ここは一旦インデックスさんに相談しましょうか? でもせっかく来たんだから買ってしまいましょうか……う~ん……」
セシリアの所持金はあまりない使いどころはしっかりと選ばないといけないのだ。
「……いや……でも」
商品を持っては返したりと、買い物に悩む人の典型的な行動を繰り返していた。
そうこうしていると、セシリアの後ろから声がかかる。
「セシリア?であってる?」
セシリアは振り返り返事をする。
「はい、そうですけど……あ!巫女服さんですよ!」
セシリアの目の前には黒いながい髪の巫女装束姿の少女が何故かエアガンを手に立っていた。
(たしか姫神さんでしたっけ?吸血鬼殺す能力の人ですよね。どうして名前知ってるんでしょう?)
「なぜ、私の名前を知ってるんですか?」
セシリアが問うと巫女服の少女は答える。
「始めまして。私は姫神秋沙。上条君。インデックス。から聞いたの。魔女の友達。特徴は聞いてたからもしかしたらと思って」
「あ~なるほど、はじめましてセシリア・アロウです。
ところで姫神さんは何か買いに来たんですか?」
「ん?最新の魔法のステッキを買いに来た。」
そう言って姫神は手に持っているエアガンをヒラヒラと見せる。
「それ全然ステッキじゃないですよ! もうステッキの原型留めてないですから! 何か打てますけど確実に魔法じゃないですよ~!」
セシリアは思わず突っ込みを入れてしまう。
「まぁそれはともかく。黒髪の魔女……キャラが被ってる?」
「被ってないです! もう巫女装束に魔法のステッキと称したエアガンを持つ時点で被りようがないですよ! ……はぁはぁ……」
突っ込むのにも結構体力が必要のようだ。
「それでセシリアは何を買いに来たの?」
姫神が問う。
「これです。買おうかどうしようか迷ってるんです。」
そう言ってセシリアは何度棚に戻したか分からない商品を取って姫神に見せる。
「珍しい。占いとか好きなの?」
「そうじゃないんですけど、魔術使うのにいるみたいで、買ったらインデックスさんに練習法とか聞きに行こうかと。」
「上条君のところに行くの?私も丁度行こうと思ってたから。一緒に行きましょう。」
「あ!はい!じゃあ悩んでないでさっさと買ってきます!」
そう言ってセシリアはレジへ行き、商品を購入し姫神と共に、上条当麻とインデックスの住む寮へと向かった。