セシリアが今のセシリアになる4日ほど前の話だ。
学園都市のとある一角に上条当麻が住む学生寮はあった。
当然男子寮なのだがこの一室だけは例外で長い銀髪で真っ白な修道服を着た14~15の少女が住んでいた。
「たっだいま~。」
少女が言う。
「お~、久しぶりの我が家ですな~。」
上条はそう言いながらもどこか落ち着かない。
それもそのはず、上条は先の事件で記憶を失っていたので、実際ここに来るのは初めてなようなものだ。
(っても初めてなんだけどな~、さてどこになにがあるのやら。)
「とうま~、帰ってきてなんだけど実は言いづらいことがあったりして~。」
「何ですか~、インデックスさん。実は俺が入院してた間にテレビでも壊したか?」
「そうじゃないんだけど、冷蔵庫にあったプリン2がつとも行方不明になったかも。」
えへへ~、といいながら、インデックスは言う。
「えへへ~、じゃないわ!食べたんですか?俺の分まで?なんの為の2個だと思ってるんですか?」
「ん~!とうまが入院してる間大変だったんだからね!小萌が来てくれなかったら、確実に、餓死してたかも。」
「そんな言い訳、この俺のプリンを食べた罪は重い!そこになおれ、この魔女が!」
(なんか使い方間違った気がするけどいいか。)
魔女、上条のその言葉を聞いて何かスイッチが入ったようにインデックスは口を開く。
「とうま、魔女って言った?それはすごい侮辱かも、それにとうまは魔女がどんなのか知ってていってるわけ?」
「いや……なんとなく言っただけだけ何で……。」
「知ったかぶりするからだめなんだよ。
元々魔女っていうのはね……」
完全に説明モードに入ったようだ。
「あの~、インデックスさん?」
「そもそも魔術師と魔女の違い分かってる?」
インデックスは、学校の先生のような口調で上条に聞く。
(もう止まらないのね……適当に聞いとくか)
「あ~男か女とか?」
「ほんと、とうまは~、魔術師にも女はいるし、魔女にも男はいるし。そんなの常識だよ?」
「魔女って箒に乗った女だけじゃないんだ。」
「根本的な違いは、正か負かってとこなんだけどね、魔術師が主に神様への信仰を元にした、術式を使うのに対して魔女は悪魔崇拝を要にしてるんだよ。
でも魔術師にも悪魔崇拝の術式を使う人はいるし、一番の違いはそこじゃないんだよ。
とうまは魔女が出てくる物語で聞いたことないかな?」
「なこと聞かれても、箒くらいしかな~。」
「魔女の使う魔術は黒魔術って呼ばれててね。ほとんどの場合生贄が必要になる術式のことを言うの。」
『生贄』それを言うインデックスは少し哀しい目をしていた。
「それも、大きな術式になれば、なるほど、生贄の数はそれこそ、虐殺レベルまで上がっていくんだよ。」
「始まりの魔女は悪魔召喚によって、その力を得たというけれど、今までの歴史でそれを行った魔女は片手に数えるほどしかいないの。」
「悪魔って、信じらんね~。」
上条はもう、右から左へといった感じだが、インデックスはかまわず、続ける。
「今の時代で召喚に成功したのは、一人だけ、セシリア・アロウ、っていう魔女なんだけど召喚した悪魔から得た力をすべて、一冊の魔道書、血の聖書(ブラッド・バイブル)にしたって話は有名だよ?」
「そうっすか…」
(なんか眠くなってきたな~)
「とうま~……人がせっかく説明してるのに、その今にも寝てしまいそうな顔は何なのかな?」
上条はインデックスの何かが沸騰するのを、いち早く感じ取って現状の建て直しを図ろうとしたが一足遅かったようだ。
「ちょ……、インデックスさん落ちつ……、イテェ~!」
とある一室からは少女の悲鳴にも似た叫び声が聞こえたとか聞こえたなかったとか……