学園都市を目の前にセシリアは足を止めていた。
(成功した~。マジで死ぬかと思いましたよ。)
「それが有名な絶対防御か、魔女が忌々しい。」
不良神父は吐き捨てる。
(いや、絶対防御って……これそんなんじゃないみたいなんですけど。
たしかに打ち消すって意味では『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なみだけど、持続時間が30秒、夜で1分、月がでていれば更に30秒、その上次の術式発動までのタイムラグが1分って……1回防いで後はずっと相手のターンですよ!)
「まぁいい、別に戦いに来た分けじゃないからね、僕はイギリス清教ステイル・マグヌスだ、どうしてもってなら僕はかまわないけど。」
紫煙を吐き、やっていられない、という様な表情でステイルは言う。
「え?じゃあ俺に何の用ですか?」
「俺?妙な日本語を使うんだね。」
精神が男とは知られてはいけない、違うと知られてはいけない。もし相手に知られれば死……それが今のセシリアの生きていく上での条件だ。
セシリアは慌てて
「わたしです!私。日本語って難しいですね、ハハ。」
「単刀直入に言うと、君とイギリス清教の間で秘密裏に結ばれていた停戦協定は昨日の大魔術でローマ正教に見つかったのもあって無しにすることが決まった。
まぁ、だが君と戦争となると穏便派の魔女達も動きかねないからね。
それはこっちとしても少々困る。
ここに来たことを察するに学園都市で身を隠すつもりだろうが、そう簡単じゃあない。」
そう学園都市科学側と、魔術側教会は表面的な交流はないものの、裏でのやり取りでお互いの利益に見合った関係を築いている。
その為教会側の絶対的な敵、魔女は学園都市に入ろうが魔術側に知られるのは時間の問題だ。
それをふまえた上でステイルは続ける。
「それで交渉といっては何だが、ちょうど学園都市には10万3000冊の魔道図書館がいる。
あの子に君の持つ魔道書を見せるのを条件に学園都市側に君を匿ってもらうようにイギリス静教は話をつけるってことなんだが「よろしくお願いします!」……」
(これって超ラッキーじゃないですか、匿ってもらえる上に上条さんに会える!)
安全確保のために上条当麻に会いに行くはずだったのだが、いつの間にかセシリアの中で目的が、『上条さんに会う』ことになっているようだ。
あまりの即答に先ほど点けたばかりのタバコを落とし呆けていたステイルだったが新しいタバコに火を点け言う。
「交渉成立だ、実際断るなんことは無いと判断していたからもう話はつけてあるよ。」
そういってステイルはカードのようなものを、セシリアに投げてきた。
「IDだ、それがあれば学園都市に入れるよ。今日は時代に取り残された錬金術師を始末しに行かないといけないから、2、3日中には、あの子と会わせるために迎えに行く、それまでは学園都市の中で大人しくしていてくれたまえ。」
「ステイルの兄貴ありがとうございます!」
黒い髪をなびかせ目をキラキラとさせてセシリアはそう言った。
「おかしな魔女だ……」
そう言い残しステイルは学園都市へと驥尾を返す。
それを暫く見ていたセシリアは突然真剣な顔つきになり呟く。
「2、3日中って……どこに泊まればいいんだろ?」
所持金2270円のセシリアにとっては大きな問題だ……
学園都市へ入るゲートに向けて歩きながらセシリアは考える。
(錬金術師って言ってたよな~原作が始まったばかりのころですね。
ってことは十三騎士団の皆さん今日はハードスケジュールなんですね。)
夏の暑さと魔道書の重さで右へ左へとフラフラになりながらセシリアは言う。
「必然、この暑さは夏だから。」
「当然、飲み物が欲しい~。」
「……なんかバカみたい……」
そうこうしているうちにゲートに着いたセシリアはIDカードを差し出し、難なく学園都市へと入っていく。