「たまたま会った、青髪ピアスに、昼ごはんをご馳走になったとこなのだよー」
「なんてことですかー!! 今日に限って外で食べるなんて……」
「まぁ、そういうことだー。お兄ちゃんと呼んだら快く奢ってくれたぞ。というわけでじゃあなー。みさかも、毛布の人もじゃあなー」
クルクルと清掃ロボットに乗って舞夏は去っていった。青髪ピアスの話を聞いた、セシリアは、せっかくの外食のチャンスを逃し、大いに落ち込んでいるようだ。外に出かけていた、セシリアが悪いのだが、今日に限って、バイトの休憩中に、わざわざ外食をした青髪ピアスも、タイミングが悪かったということだろう。 その前に、今まさに外食をしようとしている、ところなのだだから、落ち込むこともないはずなのだが……。タイミングという点で人生は、悪いことがほとんどだ、特に今日のセシリアなど、タイミングよく、重要人物にぶつかってばかりなのだから。
セシリア、御坂、チビミサの3人は舞夏と分かれた後、何を食べようか迷った挙句、無難なファミレス風のレストランに入ることになった。3人が3人とも、同じものを食べたいとは限らないので、ある程度種類のあるところにしたのだった。セシリアはギリギリまで、隣の店の、超豪華フランス料理風怪人フルコースを希望していたのだが、そのネーミングセンスに御坂が「昼にそれはちょっと……」と断固拒否したのだ。学園都市では様々な研究が、試作と評して店に並ぶことがある。セシリアが希望した料理もそういった類なのだろう。
3人は席に着きメニューを見る。
「怪人がよかったです~」
「いや。どう考えてもハズレでしょ、あの名前は」
「だって、食べると未知なるパワーが出ます。って書いてあったんですよ~!」
「学園都市で、そんな非科学的なこと言ってる時点で、問題外でしょうが!」
「果たしてどこからが、非科学的なのか……」
「そんなのはいいから……さっさっと決めるわよ。ミサちゃんが困ってるじゃない」
セシリアはの横の席に座っている、頭から毛布を被っているチビミサは、御坂の言葉を聞き、フルフルと首を振っている。困っていないという意思表示のようだ。
(実はミサカも怪人料理に、興味があったなどとは言えない。とミサカはミサカは胸の内で暴露してみたり)
3人はなんだかんだと言いながら(セシリアと御坂が、話しているだけだが)メニューを決める。
「で2人とも何にしたの? 私はこれなんだけど」
「私はこれですよ~!」
「……」
それぞれ、メニューを開いて、指差す。3人が指差したのは、チーズハンバーグセット。全員同じなようだ。
「そろったー!! 3軒ほど前にハンバーグ専門店もあったのに、そろったー!!」
「御坂さん、元気ですね~」
(わくわく・ワクワクと、ミサカはミサカはまだ見ぬ、暖かい、ご飯に期待してみる)
3人は騒ぎながらも、注文する。しばらくして鉄板に乗った、ハンバーグが運ばれてきた。いただきます。も言わずに、速攻で1人だけ食べ始めたセシリアが、舌をやけどしたー!! と暴れるということもあったが、無事に昼食を食べ終えた3人は店を出る。
(おいしかったー!! お腹いっぱい! とミサカはミサカは思いを語る)
「結構量があったわねー」
「舌を火傷したせいで、あまり味がわからなかったです……」
「急ぎすぎるのが悪い!」
「はぁ~……。ともかく御坂さん、ありがとうございました」
セシリアとチビミサは、ペコリと頭を下げて御坂に御礼をする。セシリアは、ずうずうしいが、お礼などはしっかりとする子なのだ。
「いいわよ。それであんたたちは、これからどうすんの?」
「帰ります~。これ以上外にいると危険そうなんで」
チビミサも、セシリアの言葉にコクコク、と頷く。このまま、御坂と一緒にいては、バレてしまうのを危惧しているのだろう。
「そう、私はもうちょっと、見てくから」
そう言って御坂とセシリア、チビミサ組は分かれる。セシリアたちが、デパートの出口へ向かったのを、確認した御坂は、「さーて、何見よっかなー」などと思っていると、急に横から話しかけられる。
「お話は終わりましたか? でしたら、これから映画など、ご一緒にいかがですか?」
「……」
御坂は恐る恐る、声の主へと顔を向ける。そこには、さわやかイケメン少年、海原がいた。
セシリアとチビミサは、デパートから出ると。すぐに分かれる。チビミサは探さないといけない人がいるらしく、時間を食ってしまったけど楽しかった! と言って去っていった。セシリアは、「また遊びましょうね~」と言って青髪ピアスの部屋へと帰る。これ以上、31日に関わる人間と、会ってしまっては、明日が怖いということで、帰宅の道を選んだのだ。いくら偶然といえど、セシリアも流石に不安になっているということなのだろう。
「ただいま~!」
「おうセシリア嬢おかえりー」
「バイト終わったんですか~?」
「午前だけやったからな~」
セシリアはおもむろに、肩に掛けていた、魔導書を振り上げる。青髪ピアスはその様子に、あれ? なにかやったか? 悪いことした? もうとりあえず謝っとく?
などと思考を巡らせていたが。そこにセシリアの衝撃の一言が青髪ピアスを襲う。
「1人だけ外食するなー!!」
「えー!! だってセシリア嬢がいなかったのが……僕も一応は探したんよ!!」
「知りませんよー!!」
「待って! カドは堪忍してー!!」
魔導書が振り下ろされ、青髪ピアスの髪が赤く染まっていく……。
東条歩は、新調したばかりの制服を着、青い大きなゴミ袋を担ぎながら、路地裏を歩いていた。もはや上条たちの間で、トレードマークになりつつあった、セーラー服から一般的な制服のセーラー服に変わっていたのには訳があった。決して上条に服装のことを指摘されたのを、気にしているわけではない。学校へ通うのだ。それも上条と同じ学校に。それについては思惑もいろいろあるのだろうが、今は深く言及しないでおこう。
さっきの能力者はなかなかだった。と歩は、先ほどすれ違った、能力者に感心しながら足を進める。歩は科学を決して、なめているということはないのだが、能力者に関して言えば、どうせ、たかが学生程度にしか思っていなかったのだ。それが先ほどの能力者は、本気でないとはいえ、歩の一撃を避けたのだ。それだけで十分に考えを改める必要がある。歩はそう思っていた。
殺してはだめだというのが面倒くさい限りだ……。
歩きながら、折りたたみ式の携帯を広げ、顔写真と名前の入ったファイルを開く。ここに、載っている人間は、殺してはいけない人間のリストだ。どうしてこんなものを歩が持っているかというと、理由は簡単でもらったのだ。それも学園都市側から。黒魔術には生贄が必要。歩は精霊魔術により、魔女の欠点である近接戦闘を克服している。そのせいか、黒魔術に関しても、戦闘で役立つように改良を重ねた結果。以前セシリアを襲った、魔女ナイルの禁術のような、発動前に決まった手順で、決まった人数を殺し、生贄とする。というのではなく、事前に殺しておいた生贄を、素材として、魔術を行使する黒魔術に特化していったのだ。だが素材には魔術的、消費期限がある。だから定期的に、人間を殺し、素材を手に入れる必要があるわけだ。きっとジラの何らかの圧力もあったのだろう。常識的には考えられないが、殺しの許可を学園都市から歩は貰っていた。その上での、殺してはいけない 人物が携帯のファイルというわけだ。
いいか、悪いかなんて……。上条にはばれない用意しないと……約束したのに破ってるし。
歩は軽くため息をしながら携帯を閉じようとする。だが完全に閉じ切る前に、携帯の着信音が鳴った。
「東条、ちょっとばかり、しごとだにゃー」
変な語尾を付ける、電話の相手は土御門元春、イギリス清教のスパイであり、学園都市側のスパイでもある。多角スパイだ。
「何のようですか? 面倒じゃないだろうな」
「おいおい、学園都市に協力するのも、契約に入ってるはずだぜーい。そんな言い方はないだろう。仕事の内容はシンプルだ。ある不良集団を、適当に何人か、殺して適当に、何人か生かしといて欲しいんだにゃー」
「その程度なら、私でなくとも出来るのでは? 語尾うぜー」
「いくら許可してるって言っても、あんまり一般人を殺されすぎるのも、問題なんにゃー。どうせなら、役に立つ事で生贄確保させるっていう、やさしさだと思ってもらいたいぜい」
それを聞いた歩は、肩に担いでいるゴミ袋に視線を一度やり、答える。
「もう、しばらく分は確保したので必要はないです。 遅かったな」
「そんなこと言うなにゃー。お前の実力を計る意味もあるみたいだから。決定事項だ」
「……しょうがないですね。 にゃー、にゃー、うるさいんだけど」
「詳細はメールで送ったぜい」
歩が学園都市に住む際、ジラが学園都市側、正確にはアレイスターと交渉した結果。契約がなされたわけだが、その中に、歩の学園都市での、戦力的な内部協力が含まれていた。実際に何をするのかは、歩も聞かされてはいないのだが、今回が、そういうことらしい、意図は分からないが、しょうがないから、やるしかなさそうだ。歩はそう思う。
「ところで、前回の一件があってから、魔女について、魔女狩り専門に聞いたんだが。最近の魔女は、近接戦闘も得意らしいな」
「……それは『現代魔女』のことを言っているのではないでしょうか? それと我々魔女を同一視されるのは、少しばかり気に障ります。あなた方、イギリス清教が抱えている、魔女も『現代魔女』でしょう? マジで腹立つんだけど」
「そう言えば、そんなこともいってたような、気がするにゃー。じゃあ切るぞ」
そう言って、唐突に電話を切られる。
なんだったんだ? 『現代魔女』など話に持ち出して、不快にさせたかっただけなのか?
実際はその通りで、魔女狩り専門から、昔ながらの魔女に、『現代魔女』の話をすると、嫌がられるという話を聞いた土御門が試しただけだったりするのだ。
その『現代魔女』というのは、ここ最近出来てきたもので、魔女の欠点を補おうと、していくうちに、生贄や、儀式魔術、悪魔信仰、といった魔女本来の、あり方がなくなり、純粋な魔導師として、魔女を語る。人物たちのことだ。いうなれば、箒や堕天のテレズマ、を使う魔女という名の女魔術師といったところか。形として女だけということからも分かるように、魔女という型から入っている、魔術師という毛色が強い。もちろん、歩や、魔女狩りが、狩っているような、黒魔術を扱い、魔女と呼ばれるようになった者たちと、比べてどちらが上ということもない。どちらも実力のあるものは存在する。だが、歩達のような魔女は、そういう魔女の名を語る、魔術師を毛嫌いする傾向があるようだ。
「生贄のない、魔女などは魔女では、ないでしょう? 死ねばいいのに」
歩はそう、ため息をつきながら言い、携帯のメールを開く。