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No.42260の一覧
[0] [完結]千雨が狼に犯されながら狼になった後、狼をぶち殺す話。(ネギま)[みきまる](2017/10/24 21:19)
[1] 千雨が狼に犯されながら狼になった後、狼をぶち殺す話(改訂版)[みきまる](2017/10/04 22:43)
[2] 千雨が狼になった後、今後の行動などを考える話[みきまる](2016/12/26 22:49)
[3] タカミチは衝撃を受け、千雨は人と交わる話[みきまる](2016/12/26 22:45)
[4] ハカセは千雨を心配し、エヴァはペットが欲しい話[みきまる](2016/12/26 22:45)
[5] 千雨は追いかけ回された後、エヴァに勧誘される話[みきまる](2016/12/26 22:45)
[6] 千雨は新しい生活を楽しみながらも、性欲に屈する話[みきまる](2016/12/26 22:45)
[7] 千雨と人形と出会い、エヴァは忘れ物をする話[みきまる](2017/03/06 12:49)
[8] 千雨は同級生に出会い、超は要らぬ勘違いを受ける話[みきまる](2017/03/06 12:52)
[9] エヴァは快楽に身を置き、千雨はこの先を考える話[みきまる](2017/03/31 23:41)
[10] 千雨は幽霊と出会い、さよはオオカミと出会う話[みきまる](2017/05/27 15:32)
[11] エヴァと千雨は羞恥を覚え、さよは無意識に犯す話[みきまる](2017/06/28 12:06)
[12] 千雨とエヴァは交わり、エヴァは千雨を染め上げる話[みきまる](2017/07/30 14:23)
[13] 千雨は陣痛の痛みに悶え、超は千雨に提案する話[みきまる](2017/09/01 01:20)
[14] 千雨は数々の苦難の果てに、二人の子供を授かる話[みきまる](2017/10/02 18:31)
[15] 千雨は再び非日常を手に入れ、超は千雨に想いを託す話(終)[みきまる](2017/10/24 21:19)
[16] 千雨とエヴァが互いに身体を重ね合わせるだけの話[みきまる](2020/03/12 01:25)
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[42260] 千雨は陣痛の痛みに悶え、超は千雨に提案する話
Name: みきまる◆6808e8f3 ID:4aece7fb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2017/09/01 01:20

 大きな身体を丸め込み呻き声が薄暗い地下室で微かに漏れる。息が荒く全身から汗が吹き出し、苦しそうに顔を顰める千雨は痛みに悶え倒れ込んだ。

「だ、大丈夫か! どうした、何があった!?」
「うぐううぅ…痛い…生まれる…」
「オオカミ姿なのに痛みに悶えるって大丈夫なのか? 」
「し、知らねえよそんな事…うっ…」

 咄嗟に駆けつけたエヴァは千雨に声を掛けた。
ちうが千雨と発覚した今、身を隠す必要が無くなった千雨はオオカミ姿で痛みに悶えながらも受け答えるがそんな彼女に困惑するエヴァ。まさかこのタイミングで陣痛が始まるとは思いもよらず慌てふためく。
 身体自体は狼であるがなにぶん元人間であり、神様の類である妖怪。特殊な環境である千雨は普通の狼や人間と違う。
 それは出産も同じ。
 狼は過酷な自然界を生き残る為にここまで痛みに悶え、時間を奪われる事はないのだ。今の千雨は何故か人間と同じ、長く苦しい陣痛の痛みを味わっていた。
 規則的に襲いかかる痛みが短い周期を迎えながら次第に強くなり、その痛みを紛らわす千雨はお腹を見せながら身体をくねらせて背中を地面に擦り紛らわす。
 そんな千雨のお腹を摩るエヴァは大声で一階に居る筈である茶々丸を呼び出した。
 
「ど、どうかしましたか!?」
「茶々丸、お湯を湧かせ! 沢山湧かしとけ!!」
「っ!? ちうさんの御産ですか!」 
「そうだタオルや敷もの持ってこい。ちうは動けないからここで産むぞ! どれくらい掛かるか分からないから長丁場になるかも知れん」
「分かりました、準備致します!」

 そう言って台所に戻る茶々丸の背を眺める千雨。そうしてる間にエヴァは地下室に重ねていた段ボールを引っ張りだして組み立てる。

「…イヌ科は遮った空間を好むと聞いたんだが段ボールに入るか…?」
「…絶対入らないだろそれ。地下室だし狭いから大丈夫、落ち着いてる」

 そういいながら折り畳まれた段ボールの山に埋もれ丸くなる千雨。するとエヴァとある事に気付く。

「おい、その右手…」
「右手ってなんだ…ってえぇ!? 人に戻ってる…?」
「人の姿の方が出産はキツいだろ、なにやってるんだ?」
「知らねーよ、制御が聞かないんだよ!」
「はぁ!?」

 千雨の右手は狼のではなく人の手。
 狼の姿で人の右手はアンバランスで滑稽であるがどうにも元の姿に戻せず困惑する千雨。今まで千雨はonとoffの関係と同じで人の姿と狼の姿を自由に切り替え出来ていたが此の様な中途半端な姿は初めてであった。
 陣痛の痛みが襲いかかるたび段々と右手先から右腕とまるで浸食する様に人の右腕に変わりゆく。すると今度は更に大きな痛みが襲いかかった。
 途端に全身の体毛が消え去り、骨はゴキゴキと悲鳴を上げながら四足歩行から二足歩行に適した骨格に、マズルは引っ込み身体の節ふしが痛み悶ながら人の姿に。
 そうして千雨の身体が人の姿に変化するが今度は逆に人の右手が毛深い毛に覆われ肉球が浮き出て狼の手に形作った。

「うぐぅ…痛っ…なにが…」
「な…今度は人の姿に…千雨、何が起きてるんだ!?」
「わ、私にも分からねーよ! さっきも言ったけど訳が分からない」
「と、ともかくこれでも羽織っとけ!」

 そう言って学校帰りに直接ダイオラマ魔法球に入っていたエヴァは制服の上着のブレザーを脱ぐと身体を冷さないように千雨に掛ける。魔法を使う事が出来れば千雨の為にエヴァ一人であらゆる事が出来るが今は年相応の小さな女の子でしかない。真っ裸な千雨の身体を気遣い肩に掛ける。
 そうして暫くすると玄関先の扉が開く音が二人の耳に届いた。
 なんと間が悪いことであろうか。エヴァは千雨の介護に徹しており離れるわけにはいかない。茶々丸が受け答えるしかないが彼女も千雨の事で追われてるのだ。
 なんでこんな時に来客が!
 歯がゆく爪を噛むエヴァ。千雨の事は彼女の意思や魔法協会での今後の扱いなどを考えるとあまり表沙汰にしたくない。
 もし出産前に魔法協会の方で千雨にバレる事があれば学園長達、魔法使いたちは善意で千雨を保護するだろう。彼女のことを考えるのならばその道も悪くはないだろう。しかしそれじゃ意味がない。
 千雨は私のモノ。魔法球で彼女を手篭めた意味がなくなってしまう。
 茶々丸は両手でタオルの山を掴んだまま足先で玄関を開くと尋ね人と言葉を交わす。すると彼女は客人を追い出すのではなくなんとそのまま客人に着いてくるように促すと一緒に早足で地下室に向かい始めた。
 段々と二人の足音が近くなり、エヴァと千雨の顔が険しくなる。今の千雨は人の姿。彼女を知る人だと一発で誰か分かる。今の彼女に誤魔化は効かない。
 そうして地下室の扉が開き階段を降る音が。
 次第に顔色が青くなる千雨。やがてパタパタとスリッパの音を立てながら尋ね人と茶々丸が現れる。

「ちうサンがお産と聞いっ……!」
「超さんが駆けつけて下さ……!」
「「……」」
「「一体どう言う事なのネ(ですか)!!!」」



「ちうが千雨さんで、千雨がネットのちうさんで、ネットのちうさんがちうさんで…」
「おい、ロボットがオーバーヒートを起こしてるぞ」
「おそらく千雨サンの概念が崩れ去ったからネ。仕方ないヨ」
「まったく…誰が来たかと思えば超か。肝を冷やしたぞ」

 千雨のお腹に手を当てながら問診する超。その後ろでは茶々丸が事情を察せずに頭の排気口から煙を出しながら目を回す。
 エヴァは固まってる二人に千雨の事を簡単に説明するが落ち着いて話を聞く超と違い茶々丸は事態が飲み込めずソフトウェア、ハードウェア共に混乱していた。
 そんな中、千雨はさよやエヴァに続き一気に2人にバレる事によって半場諦めの境地に達しており、状況が状況なので取り乱す事なく淡々とエヴァのやけに詳しい千雨のみの上の話を聞き流しながら軽くなった痛みの周期の合間に身体を休めていた。

「超はやけに落ち着いてるじゃねーか。同級生がこんな事になってるのに」
「ハハハ、驚いた事は確かヨ。だけど火星人はこんな事で動揺しないネ」

 エヴァは茶々丸が持ってきた布団やクッションを千雨の下に引き、十数年前に大人姿で参加した夏祭りの浴衣を病院着の代わりに着せる。股を出す事を考えると和服、それもラフな浴衣はこの状況に適した服であろう。
 
「思えば私のペットに狼を勧めたのもお前だったな。全ては手の平の中って訳か」
「ノンノン、それは違うネ。少なくとも『ちうサンが千雨さん』とは知らなかったヨ」
「ほう、どこまで信じれば良いかな」
「火星人は嘘付かない、ピースが埋まっただけヨ。あっ、でも…ネットのちうさんが千雨さんとは知ってたけどネ」

 途端に口に含んでいた飲み物を吹き出す千雨。そのままゴホゴホとむせた胸をドンドンと叩きエヴァが彼女の背中を擦る。
 超はしてやったりの笑顔を浮かべながらカルテに千雨の状況について書き込んだ。

「ワタシが千雨さんの安否を確認したのは一月ぶりにHPが更新されてたのもあるネ。最初はハカセも同級生が行方不明になって動揺してたヨ」
「HPの事は後で聞くとして、留学とかそんな感じで私の事は説明されてたんじゃねーのか?」
「いや、ワタシとハカセは魔法の事を知ってるからネ、ワタシ達と魔法生徒は行方不明と知ってるヨ。流石にちうサンが千雨サンとは誰も気付いてないけど」

 エヴァは何時まで経っても動かず、思考停止した茶々丸の頭を叩く。
 途端に再起動した茶々丸は千雨を横目に見るとそそくさと罰が悪そうに一階へ上がっていった。そんな茶々丸をエヴァは呼び止めず超に顔を向ける。

「普通だったら茶々丸の反応が普通だろうし、さっきの話も『のもあるネ』か…。ホント、お前はどこまで知ってるんだ……」
「言葉尻を取るのは良くないよエヴァンジェリンサン。何でもは知らないネ知ってる事だけヨ」
「エヴァの言う通り十分怪しいぞお前」
「ハハハ、よく言われるヨ」

 そう言いながらパラパラと今まで書き溜めていたデータを見返す超は顔を顰めながら心苦しそうに千雨に話を切り出した。

「私の事は置いといて今は千雨サンの事ヨ。今は痛くないかネ?」
「ああ、さっきと比べてだいぶ痛くなくなった」

 お腹を擦りながら答える千雨の様子は狼の時と違い余裕が見て取れる。
 狼の姿の時はあんなに痛みに悶えていたのだが人の姿をとった今の方が痛みが軽いと言う矛盾。これ一体どういう事なのか。頭を悩ます超。

「そうネ、ふむ…千雨さん、聞き苦しいのだが今までの経緯を説明する事は可能カナ」
「おい、超」
「いやいや、全部話さなくて良いヨ。ワタシの質問に答えてもらえれば良いネ」
「それは…」

 罰の悪そうに訪ねる超に難色を示す千雨。
 言わばトラウマを掘り起こす事に成りかねない話だがわざわざ聞き出そうとする事はよほど大切な話であろう。わざわざこの状況で切り出すところをみるに無責任な話ではないはず。
 千雨はしぶしぶ超の質問に答える事にする。
 それは彼女の問診も含んだ話であり、千雨の現状を把握するため。一つ一つ言葉を選びながら深く切り出していく。その様子をエヴァは心配そうに見つめていた。
 やがて話が一段落し、超は千雨の話を聞き込むと白衣を靡かせながら顎に手を置くと千雨の現状について考え、そして頭の中で一つの仮説を組み立てる。
 そして超はその仮説と一緒に彼女へ一つの真実と思惑を込めて打ち解ける事にした。

「千雨サン、千雨サンはおそらくその様子、狼の姿や人の姿に無意識に変わるところを見るに原因は精神に起因してるかも知れないヨ」
「それはどう言う事だ?」

 超は千雨とエヴァに話し始める。
 千雨の身体のメインが狼なのは変わらない。また人の姿になれるのは高貴な妖怪や魔族、神様の類ではなんらおかしくない普通の事だ。
 しかし話を聞いた限りでは狼の姿の時が痛みが強い。普通に考えると人の姿の時が痛みが強く長引くのだ。しかし実際は逆。
 それは千雨自身が元人間であり、精神が未だに狼として割り切れていないからと言う話であった。なので出産という一種の極限状態に入った所で『千雨』と言う存在が狼か人か、どちら側かに振り切れず2つの合間を彷徨ってると言うのだ。

「千雨サンは種族で言うと完全なる人外ネ。だけど人間だった時と同じ思考が働いてる。精神は身体に引き寄せられるのにヨ。母親としての思考は人でも狼でも同じだがベースとなる思考は人のまま」
「まて、それだと私はどうなる。私も元人間だが元から理性的だと自負してるぞ」
「エヴァンジェリンさんの時とは似てるようで違うヨ。その違いを説明すると長くなるからまた今度ネ」

 妖怪とは何か。それを千雨は理性的な妖と考えた。
 なので狼になった当初は狼、また妖として本能に従い人を襲ったりした事をある。
 その度に千雨は自責の念に囚われ精神を安定させる為に人と交わり精力を養う事によって血肉の代用とした。しかし普通は超が言う通り、13歳のひ弱な精神に耐えられる訳がない。『常識』に考えると千雨は千雨ではなく一匹の狼という名の怪物になるのだ。それが千雨として意識が残り続けた『非常識』

「長谷川千雨、何故君が狼に姿を変えても自意識を保てたカ」
「なっ……」
「何故つがいと成る筈だった全ての元凶を殺す事が出来たのか、何故出産と言う一種の生命の危機になる事によって姿が不安定になるのか。その答えはただ一つネ…」
「…まさか! 超!!」
「長谷川千雨、君が精神干渉系が効かない特異体質であり……人間の頃から自己を確立させているからネ!」

 そう、彼女が『長谷川千雨』として姿を変えても生きていけた理由。それは彼女の精神干渉の類が効かない特異体質が今の彼女を形成してたのである。

「…う、嘘だ…でも…つまり私は…人間だった時から……」
「そう、普通ではなかったネ。思えば心当たりがある筈ヨ」
「超! お前!!」

 咄嗟に超の胸ぐらを掴むエヴァ。しかし超は気に留めず千雨の目を合わせ続ける。

「エヴァ、手を離してやってくれ。やっと納得いった…」
「千雨、お前…」

 思い出すのは教室の裏でさよと話した日の出来事。
 そこで綾瀬夕映は教室の後ろに狼である千雨が居ることを非常識でありながら麻帆良では常識と表現していた。それはつまり彼女自身割り切っていた訳ではない。意識誘導と阻害認知によるもの。その事を思い出し咄嗟に千雨は推測する。
 思えばチャチャゼロやさよが話していた通り、ここ麻帆良は魔法使いの街である。

「超、この麻帆良では意識誘導が常に働いているのか?」
「働いているネ。千雨サンの今まで苦しめていた原因、全ては麻帆良の魔法使いが原因ヨ」
「それじゃもう一つ、この精神干渉は魔法使いが悪用する為の術なのか…?」
「……それは違う。彼らは『立派な魔法使い』を志して動いているからネ。麻帆良で悪人はそこのエヴァンジェリンさんぐらいヨ」
「おい」

 突然話に出てきたエヴァは咄嗟に突っ込むが超は冗談と笑みを浮かべたまま決して千雨から目を話すことはない。
 千雨は頭を伏せながら思い巡らし静かに今までの過去を振り返えり、そして暫くすると口を開いた。

「たぶん私が人間のままだったら魔法使いたちを許さなかったと思う。今まで積もり積もった悩みや苦しみの原因だし」
「なら千雨サン…!」
「でも今なら麻帆良の魔法使いたちの考えも分かるんだ。今の私やエヴァ、さよみたいな人外もここには居るんだろ?」
「あぁ、居るぞ。私みたいな人外の他に魔法世界っていう別世界出身の奴もいる」
「魔法使いや妖怪、魔族や神様ってのは言わば『非常識』。それに一般人を関わらせない為の措置は『常識』だと思う。それは私がこんな姿になってより一層、そう思うんだ」
「その認知で間違ってない。お前が麻帆良に戻ってきた夜みたいに物騒な世界に一般人を巻き込ませない措置だ」

 千雨は大きく膨らんだお腹に目をやると手を当て優しく撫でる。お腹の子は人ではない存在。ふと子どもたちの未来を思い浮かべる。

「『非常識』な存在が『常識』と交わる街。今の私だとユートピアかもな」
「千雨サンでも…!」
「そしてもし魔法使い達が私の体質を知ってたとしても何もしないのが一番なのかも知れない。なぜならこの物騒な世界を知ってしまうから。一度知ってしまうと戻れない」
「……それはそうだガ」
「結局の所、何が正しかったのかは分からない。だけどそれはもう過去の出来事。魔法を知るとか以前に狼になって妊娠すると言う非常識で考えられない出来事を体験してる私には些細な事さ」
「千雨、お前…」

 超とエヴァの方を向きながらしんみりとした表情で答える千雨。結局のところ彼女はサッパリとした性格であり過去に固執する事はない。そうじゃなければ今まで生きていけないのだ。
 狼の右手で目に掛かった前髪をかきあげると両方のほっぺたをパチンと叩き思考を変える。この話はおしまい、それより今はこの出産時のトラブルが問題である。

「それで超、話を戻すがその私の特異体質が今の人でも狼でもない独立した精神のせいで矛盾した関係を生み出し、姿が定まらないと言う事で良いのか?」
「…あぁ、そう言う事ヨ。妖怪や魔族が人の姿になっても根本は妖怪や魔族のまま。しかし千雨サンはそちらに完全に堕ちることなく理性を保つことが出来た訳ネ」
「それじゃ千雨はどうしたら良いんだ?」

 超は先程までの思惑が篭った視線から打って変わり、妊婦を見届ける医師と同等の目に変わる。その様子をエヴァは横から疑惑の篭った瞳で見返す。
 超は一体何を考えていた? エヴァは彼女を不審がるが今の彼女には先ほどの不穏な空気は感じられない。これは後で彼女を問い詰めるべきと考えながら、エヴァも超と千雨の会話に割り込んだ。

「今の千雨サンは狼の身でありながら精神は長谷川千雨と独立した、どちらかと言うと人間寄りの思考をしている。しかし出産という極限状態で身体と精神で隔離をお越してる現状、狼と人の姿が定まらない宙ぶらりんの状態。これは今から生まれてくる赤子にどう影響するのか想像出来るものではないネ」
「狼の姿の時に生まれてきた子は狼として、人の姿で生まれてきた子は人として思考が生まれる訳か」
「恐らくネ、問題は生まれて来た姿ではなく子供の精神。今の独立した長谷川千雨としての精神を持ち合わせてる千雨サンにとって生まれてくる子二人が別々の思考を持って生まれてくると子育てが大変ヨ」
「待って、どう大変なんだ?」
「極端な例だガ……一人は人の姿で幼稚園に通い、もう一人は狼の姿で野山を駆け巡ぐる。それは互いの知識レベルに大きな差を生むかも知れないネ。同じ種族でも思考が違うと行動パターンは全然変わってくるヨ」

 生まれてくる子供について、千雨は誰にもバレていない時はエヴァのペットの狼として細々と暮らしていくつもりであったが出産前に正体がバレてしまうハプニングに遭遇する。しかしこの結果、彼女と子供の生き方に新しい道筋が生み出された訳である。それは人の姿を取りながら人の世に交わり生活する事。
 しかしそうなった場合、親と子の精神構造体が別になると千雨自身の子育てに多大な負担になる事は容易に想像できた。

「じゃあどうしたら良いんだ? 私は精神干渉系が効きづらいんだろ。一方の精神に傾けるのは難しいと思うんだが…」
「千雨サン、普段千雨サンが人の姿を取る時その姿は完全に人間の姿かネ?」
「完全って…まぁ耳と尻尾以外は」
「…! そう言う事か!」
「エヴァンジェリンさんは分かったみたいネ」

 はっとするエヴァを横目に未だピンとこない千雨は首を傾げる。そんな千雨を前に超は確信に触れた答えを開示した。

「人の姿を取った時に耳と尻尾がそのままなのはつまり人と狼の中間、どちらかと言うと人間寄りネ。それは無意識に人間寄りである長谷川千雨の精神を表してる。つまり千雨サン…どちらか傾ける必要はないヨ。狼と人間の中間の姿で産むのはどうかネ」
「それってつまり…?」
  
 人の姿で出産すると人間寄り、狼の姿で出産すると狼寄り。しかしどちらかに寄せることは千雨自身の力では出来ない。それならばどちらかに振り切らなくても良い。中間の姿で良いのだ。それはつまり…

「超はfurryの姿になれって言ってるんだよ。ようはケモノ、獣人だ」
「……は、はぁあぁぁぁ!?」



《後書き》
出産回前編。だけど説明回なのでエロくない

出産時で色々悩んだ結果こうなりました。産まれてくる子供の姿は次回のお楽しみ。

超が不穏な空気を醸し出してますが伏線です。
なんで超はこんなに詳しいんだろうか…。ちなみに彼女は嘘は付かない。

この作品はアンチ・ヘイトにはなりません。原作千雨が納得したならこっちの千雨も納得する筈

furryは海外でのケモノやケモ耳少女など示す言葉。エヴァは外国人だからそっちが先に思い付いた訳でした。
ちなみに向こうではtransfurじゃなくてtransformationなので検索する際は要チェック!

感想、評価宜しくお願いします。
次回は出産回後編。お楽しみに!


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