ヨークシン。クロロは、予定通りにオークションの品物を全て盗み出した。
目的の念能力もゲットである。意外な事に、一切の邪魔は入らなかった。
しかし、一つ問題があった。
「どうしよう、俺、愛ちゃんの漫画が頭に焼きついて離れないんだ……団長……」
「正気に戻るね。気持ち悪いね。私を抱きしめるのやめるよろし」
フェイタンをぎゅうっと抱きしめ、おとめチックに悩むフィンクス。
フェイタンはさっくりフィンクスの手を刺しているのだが、フィンクスは一顧だにしない。
「あの漫画エロかったしな―!」
がははとウボォーギンが笑う。
あからさまに毒されたマチとフィンクスの扱いをどうしようか、パクノダに頑張ってもらって記憶を消す念能力を取得してもらおうか現在相談中である。
もちろん、任意の記憶を消す念能力者も並行して捜索中だ。
皆と一緒に冷たい目を送りながら、ノブナガはこっそり考えていた。
……ノブナガxウボォーギンが無かったのに自分はほっとしているのか? 残念がっているのか? そう考えてしまう自分にノブナガは激しく動揺していた。
一歩間違えれば、ウボォー受けなんぞ書いてあったら、自分はフィンクスのようになっていたかもしれない。ならば、感謝すべきなのであろう。……そう結論付けるノブナガ。しかし、そう考えてしまう時点で疑いの予知も無くアウトォォォォォッ!!である事にノブナガはまだ気付いていなかった。そして、ウボォーギン受けはあるのだが、クロロ・パクノダ・フェイタン・シャルナークが一致してあまりにも酷過ぎると伝えないでいたのもまた知らなかった。
ノブナガは今現在だけ、幸せである。
速やかに蜘蛛が現地解散した後も、パクノダ、シャルナーク、フェイタン、フィンクス、マチは一緒である。彼らは調査を義務付けられていた。後、重病人の介護。……拷問である。主にマチに引っ張られて同人誌ショップに連れて行かれた時や、悶々と狩人物語の同人誌を読んでいるフィンクスを目撃してしまい、失った物の尊さを考える時が。
シャルナークチームが頑張っている間、クラピカは一体何をしていたのか?
「ぎゃー! クラピカ、正気に戻れ―!」
「レオリオ! お前弟子として身代わりになれ!」
「私は蜘蛛を倒さなければならないのだ……どんな手を使っても!」
「そんなんで蜘蛛が倒せるはずが……ぎゃああああぁぁぁああ」
取り込み中のようなので少し時間を進めよう!
ゴンとキルアはバッテラ氏に採用され、大いなる冒険を楽しもうとしていた。
ただし、今回は初めからビスケが一緒である。
ズシが身を守れる位に育ったと判断されたので、改めてウィングに預け、ゴンとキルア、ついでにカナリアを育てようと言うのだ。
幸い、グリードアイランドは外界と隔絶されていた為、スムーズに原作通りの道を歩めた。そして……。
「レオリオ! どうしてここに?」
ゴン達が現実世界に戻ると、レオリオがバッテラ氏と談笑していた。レオリオは鎖を握っており、その鎖にはクラピカが結びつけられている。
「おお! ゴン! 元気か!?」
「レオリオ! どうしてここに!?」
ゴンが聞くと、レオリオは念能力を出して見せた。明らかにそれは医者の格好をしていた。
「いや、ここにいいるバッテラ氏が俺の能力を必要としているって聞いてな。お前ら、クリア報酬が必要なんだろ? それで、な」
「レオリオ、ありがとう」
ゴンが礼を言うと、レオリオもまた照れくさげに笑った。
そして、真剣な顔になる。
「愛ちゃんの事は、うすうす知ってるよな。愛ちゃんってのは未来を男同士のれない物の物語として描き出す力を持った厄介な女でな」
「俺としちゃあんま知りたくないけど……」
キルアが、不満げに言った。
「それで、それによると会長より強い奴とお前らが戦うらしいんだよ。それで、俺じゃなんの助けにも慣れねーと思うけど、カイトさんにゴン達の事を頼むのと、医者として待機する事位はしようと思ってな」
「カイトさんに?」
「お前の考えていた方法だと、カイトの方に飛ばされるんだ」
それに、ゴンは若干がっかりしたようだったが、すぐに気を取り直した。
「わかった。じゃあ、レオリオも一緒に来てくれるんだね?」
「おう!」
「で、クラピカはどうするの?」
「もちろん、私も参加させてもらう。だからレオリオ、この鎖を解いてくれないか」
「危険だから駄目だ」
レオリオは一刀両断にして、ゲームに戻るゴン達を見送った。
そして、ゲームクリアをすると、4人組はカイトの元へと向かったのだった。
「全く、ジンさんはいつもいつも自分勝手すぎないか? 平謝りして来たと思ったら、いきなり、急用を思い出したなんて……」
ぷりぷり怒っているカイト。カイトは、ゴン達を見ると笑顔になった。
ちなみにカイトの周りは宝飾品で埋まっている。宝石の一つを見つめながら呟くカイトは、さながら恋に悩める乙女のようだった(カナリア談)。
「おお、来たか! 愛ちゃんぶっ殺すぞ!」
「愛ちゃんぶっ殺しますか!」
「そうだな、愛ちゃんはぶっ殺さないとな」
カイト、レオリオ、クラピカは意気投合する。
そこでゴンが聞いた。
「カイト、ここってどこなの?」
それにカイトはにやりと笑った。
「キメラアント発生地区だよ。何人かのハンターが既に捜索に入っている。そして……」
カイトがレオリオに目をやると、レオリオは心得たと言う風に、荷物を降ろした。
数々の電子機器。通信機。そしてハンター界最高の爆弾。
「さあ、ハントを開始しようゴン。ご褒美は愛ちゃんを殺せる権利だ」
レオリオが鎖を離した。そして、獣は解き放たれる。
「あ、クラピカ……!」
「クラピカは大丈夫だろ。俺達は固まっていこうぜ」
レオリオが追いかけようとしたゴンを引きとめ、そしてゴン達は積もる話をしながらハントを始めた。
そして、解き放たれたクラピカである。
クラピカは、いかに旅団を効率的に殺せるか考えていた。そして、クラピカが考えた方法とは……王に、なる事である。確率はこの上なく低い。
しかし、クラピカは人間を捨ててでも幻影旅団に復讐がしたかった。
どうせプライドなどとうの昔にどぶに捨てた。
愛ちゃんに正当な復讐方法が潰された今、クラピカにはこれしかなかったのである。
一人で行動できるよう、狂った振りをしていて本当に良かった。
そして、クラピカはレオリオにも見せなかった能力を使う。
「ダウジングチェーン。私を、女王の元へ」