シャルナークは悩んでいた。とても……悩んでいた。
目の前にあるのは団長の一八禁小説サイトである。もはやどうしていいかわからない。
そうだんするのは簡単だ。でも、シャルナークはこの一言が怖かった。
「……ところで、どーやってこれを発見したの?」
言えない。言えるわけがないのだ。検索で偶然飛んでしまったエロサイト。
ここまではいい。まだいい訳が聞く。しかし。
団長にどことなく似た青年が受けである漫画に、つい……そう、つい出来ごころで覗いてみたら団長本人の事でした、などと言えるわけがないのだ。
ましてや全部読んでしまった事など、口が裂けても言えるはずがない。
最初は気のせいかと思った。次に我が目を疑った。次に旅団のメンバーの顔が過ぎった。
誰がこれを描いたんだと。
仲間を疑わなければならない事にむかむかする。
日本語と言う事はまさかノブナガ……!? いや、まさか!
クロロへの愛は十二分に感じ取れたが、これはジョークにしてはあまりにもたちが悪すぎる。
黙っている罪悪感と事の大きさに、さすがのシャルナークも食欲を失った。
団長と仕事で会った時、顔がまともに見れなかった。
……自分一人でこれを解決するしかない。
そして、さりげなく旅団を探るシャルナーク。
シャルナークとしては、ここまで旅団に詳しいのは仲間としか思い浮かばなかったのだ。
いや、メインキャラでもう一人出てくるクラピカと言う男か?
馬鹿な。復讐にしては阿呆過ぎる。
悩むあまりシャルナークは気付かなかったが、そんなシャルナークの様子を気付かない旅団ではなかった。
クロロの顔が見れない。旅団の皆にそれとなく探りを入れてくる。これは裏切りの予兆に受け取られてしまったのだ。
シャルナークは、パクノダとフェイタンに呼び出される。
「シャルナーク……何も言わずに貴方の記憶を読ませてちょうだい。貴方が旅団を裏切っていないというならね」
パクノダがついに口火を切った。
「え……!? い、いや、いいよ。僕一人で解決する」
シャルナークは思わず口走った言葉に、舌打ちした。
「解決すべき案件があるのね? それは本当に貴方一人で解決できるものなの?」
シャルナークは瞳を逸らした。正直、いろんな意味で解決策が思い浮かばない。
「シャルナーク……私に相談出来ない事なの? しない事なの?」
「あはは、両方、かな……。とにかく、僕一人で何とかするからさ」
「大人しくお縄につくね。団長の顔が見れないなんてよぽどね」
フェイタンが殺気を出す。
シャルナークは悩んだ。いっそのこと、パクノダに協力してもらった方がいいのかもしれない。
「読んでもいい……けど、その代り秘密は守ってよ?」
「ええ、秘密は守るわ」
そしてパクノダは鼻血を吹いた。
「パク!? どしたね? しかりするよ!」
「ひひひひひひひ、秘密は守るわ。恋愛は個人の自由……」
「何読んだの!? ねぇ、何をどういう風に読んだの!? それは誤解だよ! ああもう、実物を見てもらった方が早いか……。フェイタン、ちょっと見張りしていてもらえないかな」
シャルナークはパクノダを部屋へと呼び、深刻な顔でパソコンをつけた。
パクノダはそのサイトを見て、信じられないような眼でシャルナークを見る。
「シャル、これは……」
「うん、この事について悩んでいるんだ」
「こんなものを作っていたの!? フェイタン! シャルが旅団を裏切ったわ!」
シャルナークは吹いた。フェイタンが素早く入ってきて、パソコンの画面を見て固まる。
数瞬後に、物凄い表情でシャルを見つめ、刀を構えた。しかし、じりじりと後退している。
「そんなわけないじゃないか! 僕がやっていたのは犯人探し! これを描いた作者が誰なのか探っていたんだ」
「え……ええー……」
パクノダとフェイタンは不審げにシャルを見つめた。その腰を見ればわかる。明らかにドン引いている。
「深刻なんだよ! 僕らの能力も載っているし……でも、内容が内容だけに誰にも相談できなくて……」
パクノダは頭を押さえた。フェイタンは、ちらちらとパソコンの画面を見る。
「本当にこれを作ったのはシャルじゃないのね? ……訳してもらえないかしら? 私も一緒に調査するわ。日記とかプロフィールがいいかもしれないわね」
「旅団相手に、凄い喧嘩の売り方ね。シャル、なんとしても犯人を捕まえるね」
シャルナークは頷いた。
訳してみると、話は簡単だった。ホームページで、自分が発刊していた本を紹介していたのだ。それに、自分をモデルにしたろう、という頭のおかしい人間が現れて困っている、という記述から、本人か近しい物が予知・遠視系統の念能力者だという事も想像がついた。
「よっぽど錯乱していたのね。シャルがこんな事も調べられなかったなんて」
「う、うん……助かったよ、パク」
「ところで、シャル……どーやってこれを発見したの?」
フェイタンが振りかえった。
ハンター試験会場で、サトツは予知と比べ、何か変わった事はないか周囲を見回した。
ありまくりだった。
ジャポンの者らしき着物姿の御婦人達が……いや、愛によると御腐人達が、戸惑った顔でおしゃべりをしていた。
「私達、ハンター試験会場にきちゃったのかしら」
「申込してないし、大丈夫じゃない?」
受付の男が、そんな御腐人にさりげなく近寄る。
「間違っていらした方は、こちらから外に出られるようになっております。危ないですから、どうかこちらの方へ」
「あら、御親切にありがとう。でも、こうなったらクラピカ達が現れるか……」
「こちらにはヒソカも来ていますよ」
その言葉に、御腐人達は渋々と頷いて移動する。
サトツもまた、間違って来たらしい御腐人を探して外へと連れ出した。
ひとまず時系列通りに進む、というのは無理なのかもしれない。
せめて、合言葉は変えるべきだった。
それでも、愛の予知に主人公としてゴンが登場するのは、何か意味があるのかもしれないという事で、ギリギリまで時系列にそって進む努力はしよう、という話になっていた。
問題はゴンに手を出すと勘違いされてジンに袋叩きにされたあげく傷心の旅に出たカイトの力を借りられないという事だ。代わりのハンターはノヴかモラウ、難しい所である。ノヴの能力が最上だが、ノヴがピトーの円に触れると心が折れて使い物にならなくなる事も確定事項だからだ。
それに、ポックルを救うか、あえて蟻の餌食にして、能力を予測できるものにするか、という選択肢もある。
難しい選択肢にため息をつき、サトツはまた一人、御腐人を連れ出した。
損しないタイトル案募集中です。よろしくお願いします。