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No.27521の一覧
[0] 【H×H】【オリ主】魔女の眼のコレクター[爆弾男](2011/05/30 02:23)
[1] 01話 美術商・1[爆弾男](2011/05/02 01:48)
[2] 02話 美術商・2[爆弾男](2011/05/04 15:56)
[3] 03話 美術商・3[爆弾男](2011/05/08 14:23)
[4] 04話 偽りの愛情・1[爆弾男](2011/05/16 02:35)
[5] 05話 偽りの愛情・2[爆弾男](2011/05/30 02:19)
[6] 06話 偽りの愛情・3[爆弾男](2011/05/30 02:20)
[7] 07話 鍼灸師[爆弾男](2011/07/06 02:46)
[8] 08話 約束・1[爆弾男](2011/07/06 02:46)
[9] 09話 非情な現実・1[爆弾男](2011/07/11 01:15)
[10] 10話 非情な現実・2[爆弾男](2011/07/21 21:32)
[11] 11話 約束・2[爆弾男](2011/07/21 21:32)
[12] 12話 蝙蝠・1[爆弾男](2011/07/26 02:05)
[13] 13話 蝙蝠・2[爆弾男](2011/08/03 01:22)
[14] 14話 約束・3[爆弾男](2011/08/11 01:10)
[15] 15話 一人[爆弾男](2011/09/07 00:27)
[16] 16話 開始[爆弾男](2011/09/14 00:08)
[17] 17話 試験[爆弾男](2011/09/21 01:32)
[18] 18話 解体屋・1[爆弾男](2011/09/24 01:46)
[19] 19話 解体屋・2[爆弾男](2011/10/03 00:08)
[20] 20話 解体屋・3[爆弾男](2011/10/31 02:03)
[21] 21話 解体屋・4[爆弾男](2011/11/15 01:50)
[22] 22話 解体屋・5[爆弾男](2011/12/24 03:01)
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[27521] 16話 開始
Name: 爆弾男◆90fedc9c ID:8aa83e82 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/14 00:08
ふと、ユナは目を覚ました。自分がいるのは、小さな一室のベッドの上。アニッサに案内された部屋だ。
使ってない部屋だからと、軽く掃除をして案内してもらった。そこまでしてもらい、正直頭が上がらない。
ましてや、あんな失態を見せた後だ。思い出すだけで、どうにも恥ずかしさがこみ上げてしまった。
正直、それ以降のことははっきりとは覚えていない。

時計を見ると、まだ五時前であった。夏とはいえ、まだ日は昇っておらず、部屋の中は暗い。
しかし、どうにも目が冴えて寝付けなかった。

――明日には、見せしめとして死体が公開されるはずだ

蝙蝠こうもりの言葉が脳裏に浮かぶ。
見たくなど無い。けれど、見なければいけない。
そんな自分でもよく分からない気持ちを抱えながら、ユナはゆっくりと階段を下りていった。
一階にパソコンがあったことは確認している。

正直な話、泊めてもらっておいて勝手に他人のパソコンを使うということに後ろめたさがないわけではない。
かといって待ってなどいられないし、まさか寝ているアニッサを起こすわけにもいかないだろう。
そう思った結果、こっそり調べてすぐにパソコンを消すという行動に出たのだった。

部屋の電気をつけ、パソコンを立ち上げる。しばらく待って、ネットが繋げられることを確認しはじめ――



「なあにー?そんなにお姉さんのプライベートが気になるのー?」
「ひあっ!!」
不意に後ろから掛けられた声に驚きの声を上げてしまった。
後ろを振り返るといつの間にいたのか、アニッサがすぐ側まで来ていた。

「ご、ごめんなさい。勝手に使っちゃって。ちょっと、ネットで調べ物したくて……」
「あらあら、朝っぱらからムラムラしちゃって、えっちぃサイトでも見にきたの?」
「違いますって!!」
全力で否定するが、まさか「死体の写真が投稿されているサイトを見にきた」などとは言えない。

続きが言えないでいるユナを見て、アニッサはニヤニヤしながら、
「終わったらちゃんと消しといてねー」と言って二階へ上がっていってしまった。

ああもう、絶対勘違いされてるよ……。
つい頭を抱えてしまったが、気を取り直してパソコンへと向かった。




サイトの検索エンジンに「死体 写真」と打ち込み、出てきたサイトを一つ一つ見ていく。
その中には、思わず目を背けたくなるような写真が多く上がっていた。
それでも、吐き気をこらえながら一つ一つ見ていく。


――ない


やっぱり、あの言葉は嘘だったのだろうか?
頭のどこかで安堵しながら、ふと、目の端についたサイトを開く。
そして、そこに上がっていた写真を見て絶句した。

そこに上がっていたのは、見知った人の首から上の写真。
ある程度傷だらけになっていたものの、それが誰かはユナにはすぐに分かった。

「ファルグさん……」
そこまで言って、それ以上見ていられなくなって、そのままサイトを閉じた。

――ごめんね……さよなら……




    第16話 開始




「ユナちゃん、朝ご飯できたわよ」
アニッサがドアをノックする音でユナは目を覚ました。時刻は八時を回っている。

あの後、逃げ帰るように部屋に戻り、すぐにベッドの中に逃げ込んだ。
とはいえ、ほとんど寝付くことは出来なかった。体は重く、全身汗だくだ。
「……すみません、ちょっと食欲なくって」
嘘ではない。今でも死体の写真が目にこびりついているし、それでなくとも体力的にも精神的にも疲れきっていた。

「ぐすっ……。お姉さんが作ったご飯……いらないの……?」
……だが、扉の向こうの相手には関係なかったようだ。
また嘘泣きかどうかは分からないが、断ったらどうにも面倒なことになりそうだ。
仕方なく、「顔を洗ってから行きます」と伝え、重い体を起こしカーテンを開けた。
透き通るような青空。差し込む日の光が眩しい。
自分の心境をまるで無視したかのような明るい天気に、ユナは若干腹立たしさを覚えた。




顔を洗い終わり、借りたタオルで顔を拭いていると、ふとちくり、と両膝に刺激がきた。
ふとみると、しゃがみこんだアニッサが、後ろから両手を回して鍼を二本、両膝に刺していた。
「な、何やってるんですか」
「そろそろ、刺されるのが気持ちよくなってくる頃かなあって思って」
「なりませんって!!」
あの時の会話は本気だったのだろうか。そんな疑問が頭を掠める。

と、アニッサは刺した鍼を器用に抜いて立ち上がった。
その瞬間、少し体が軽くなったような感覚をユナは覚えた。

「今のは……?」
足三里あしさんりって言ってね、胃腸と足の疲れに効くツボ。
 ユナちゃん、本当にお疲れだったみたいだったから」
その気遣いに感謝すると共に、随分疲れが吹き飛んだことにより改めてユナはアニッサの技術に感嘆した。
もちろん、普通の鍼灸師ではこんなまねは出来ない。(そもそも両手に鍼を持って、立った相手に刺すものではない。)
アニッサの並外れた鍼技術と治癒の念能力。それらの存在によりこのような治療が可能なのだ。




アニッサに連れられてダイニングに着いたユナは絶句した。
その感情は、驚愕が七割、困惑が三割と言ったところか。

所狭しとテーブルに並べられた朝食。それらはどれも空腹を呼び起こすような匂いを出していた。
よく焼けたトースト、ハムとゆで卵が乗せられたサラダ、コンソメのスープ、チキンに焼き魚。
料理が好きなのだろう。盛り付けも凝っており、食べるのがもったいないほどだ。

ここまではいい。問題はその量だ。どう見ても女性二人が食べきれる量ではない。
大の男四人がかりでどうにかなるだろう。それほどの量だ。

「ほらほら、早く食べて食べて」
アニッサに促されて席に着こうとする。ひょっとしたら、彼女なりに自分を元気付けようとしてくれたのかもしれない。
そう思うとちょっとうれしかったが、反面ちょっと勿体無いかな、とも思った。
しかし、次のアニッサの言葉を聞いて、思わず座る途中で固まってしまった。

「とりあえず、家にあるもの全部出したけど、足りないわよねえ」
「……冗談……ですよね?」
「それが冗談じゃないのよ。本当にこれで全部なの。ごめんねえ」
「いや、そっちじゃなくて」

不思議そうに首を傾げるアニッサを見て、どうやら本気で足りないと思っているらしいと悟った。
そういえば、前に来たときも結構な量のお菓子があったが、帰るときには全てなくなっていた。
自分はそこまで食べていない。……つまり、ほとんどアニッサが食べたということだ。

「どうしたの?早く座って座って」
「あ、はい……」これ以上言っても無駄だろう。そう思って腰を下ろす。
一口、スープを含む。ほんのりとした塩味が口の中に広がる。美味しい。
そういえば、人が作った家庭料理を食べるなんて何年ぶりだろう。ふと、そんなことを考えた。




「ユナちゃん、大丈夫?さっきから全然食べてないけど、食欲ない?」
「もうお腹いっぱいですよ……割と本気で」
「じゃあ、これもーらい!」
そう言って、アニッサは最後に残されたチキンを口に運んだ。

一体この体のどこにそんなに入るんだろう。かなり真剣に考え込んだ。
あれほどあった料理も、もう全て空だ。
もちろん、ユナはその四分の一も食べていない。
というか、それ以上は入らない。たとえ、普段どおりの体調であったとしてもだ。
むしろ、大人三人前以上の量を、三十分も立たないうちに食べたアニッサが異常といえる。

ふと、なにやら腕組みをして真剣に考えているアニッサが目に付いた。
「どうかしましたか?」
「まだ食べるものあったかなあって」
割と真剣に悩んでいるアニッサを見て、ユナは胸焼けがしてきた。まだ食べる気なんだ……。

「まあ、いいわ。食後に、お茶でもどう?」
不意に、腕組みを解いてあっけらかんと言うアニッサに、ユナはずっこけそうになった。
自分もマイペースな方だと自覚してはいるが、どうもこの人にはペースを狂わされてしまう。

「お茶くらい淹れますよ。ここまでお世話になりっぱなしだし」
「いいからいいから。お客さんなんだから、座ってて」
そう言うや否や、さっさと立ち上がってポットにお茶を入れ始めた。
言動はのんびりしているが、行動はなかなか早い。……食べるときだけなのかもしれないが。

「それで、これからどうするの?」
お茶を淹れながら、不意に訪ねてきた。
いつもどおりのんびりしている声だが、どことなく真剣味が増している感じがした。
「いつまでもここにいるわけにもいきませんし、昼過ぎには出て行こうかと思ってますけど」
「行くアテはあるの?」
痛いところを突かれ、ユナは黙りこくってしまった。

ユナは根無し草だ。今まで身を寄せていたマフィアは壊滅。
かといって、他のマフィアの世話になる気もないし、実家に戻るという選択肢もなかった。

家を半ば逃げ出す形で飛び出したのが約九年前。母親が生きていれば別だろうが、そうでない今はもう残っていないだろう。
仮にあったとしても、行く気も起こらなかった。

「行くアテがないんだったら、しばらく家にいたら?」
「ありがたいんですけど、ちょっと旅に出ようかと思います。欲しいものがあって」
「お金は?」
「これまでの貯金もあるし、ちょっと短期の仕事をしながら稼ごうかと思ってます」
「若いわねえ。そんなハンターみたいな暮らしで大丈夫?」
「あ……」

「ハンター」という単語で、すっかり忘れていた人物を思い出した。
その人物なら、何かいい情報を持っているかもしれない。
そう思うと、ユナは再び電話を借り、ある人物へ電話をかけた。
陶芸家もかねているあの変わり者のハンターへと。




「――なるほど、君も結構苦労しているのだね。しかし、僕には及ばないかな。
 あれは僕がまだとおにも満たない頃の話なんだが――」
「いや、そういう話はいいですから」
「そうかい?参考になると思うがね」
ユナにばっさりと切り捨てられ、サンベエはやや不満な様子を口調に滲ませながらも話を止めた。
以前に彼が踏みつけられているビデオを手に入れたためか、ユナは異常なまでにサンベエに対して強気である。

「そういえば、ゼパイルさんは元気ですか?」
「知らんよ。ちょっと前に出て行ったからね」
「え!?あの人マフィアに目をつけられているって言いましたよね?出て行ったってどういうことですか!?」
「落ち着きたまえ。彼は骨董品の収集や鑑定に興味があったみたいだからね。知り合いの骨董ハンターに預けたのだ。
 彼は信頼の置ける人物だ。……少しばかり、変わってはいるがね」

あんたが「変わっている」って言うなんて、どんなんだよ。
喉元まで出掛かった言葉を何とか飲み込み、「事前に言って下さい」と伝えた。
なんとなく、ゼパイルに対して悪いことをしてしまったような気がしたが、どうしようもないことも事実である。

「それで、さっき話していた仕事の件なのだが……マフィア時代のつてでは駄目なのかな」
「あれはマフィアの後ろ盾によるものが大きいですし、あんまりそっち方面の仕事だと目をつけられるかもしれないし」
昨日、陰獣の恐ろしさを肌で体験したばかりだ。あまり関わり合いたくはなかった。

「ふむ……」と、受話器の向こうから唸るような声が聞こえた。
さすがにハンターとはいえ、自分の専門外のことは分からないか。
そう諦めかけていたころ、サンベエが意外な言葉を発してきた。
「そういえば、ロスチャルハン氏は知っているかな?」
「あの富豪の?絵画のコレクターとしても有名で、結構な数を集めていると聞いてますが」
「うむ、その人だ。氏はプロアマ問わず常にハンターを募集していてね、自分の望む絵を探させるらしい。
 そういう関係の仕事を探しているのならば、氏にコンタクトを取ってみてはいかがだろうか」
噂には聞いていたか、ユナにとってこれは盲点だった。
礼を言って電話を切り、すぐにコンタクトを取った。





「で、上手く行ったのかしら」
ここまでの話をユナから聞き、アニッサは優雅にカップを口元へと運んだ。
当然、その中に入っている飲み物は黒酢である。
「はい。三日後に、面接をしたいって言ってました。あと、パーティーに参加してもらうからそのつもりで、と」
正直、意図が良く分からないが、ユナとしては頷かざるを得なかった。
「あらあら、じゃあドレス買いに行かないといけないわねえ」
そう言ってアニッサが立ち上がったかと思うと、ユナの頭に何かが当たった感触があった。
「ユナちゃん?なあに、それ?」
アニッサが頭に向かって指差しているのを見て、ユナは自分の頭に手を当てた。そして――
「え……」





「ああ、だりぃ」
男は、思わず呟いていた。彼の仕事は、遺失物の整理だ。
どんなものがあるかを記録し、片付け、たまに掃除を行なう。
これほど、退屈な仕事はない。男はそう思っていた。
窓際族という言葉があるが、男の立場はそれとさほど変わりない。
その事実が余計にそう思わせていた。

ふと、男の目に珊瑚のブレスレットが映った。
今でも思い出す。黒焦げになった腕になぜか無傷で巻きついていた、気持ちの悪いものだ。
さすがに腕は処分されたが、このブレスレットは遺失物扱いということで警察に預けられたのだ。

「ったくよお、死体の腕に巻きつけられたものなんか、誰も取りに来やしねえっての」
そう言いながら、ブレスレットの糸の端を掴む。
死体についていた、というと常人にとっては気持ち悪いはずだが、男は死体を見慣れているのでさほど気にならない。

「おっと」ついうっかり、手を離してしまった。
拾おうとそれを目で追っていた男は、次の瞬間に腰を抜かしてしまった。

「消え……た……?」
夢だろうか。そう思い、男は頬を抓ってみるが痛みはある。
そういえば、これって死体についていたんだよな……。

「うわあああああああああああああ!!」
男は勢いよく飛び出した。その場から逃げ出すように。


余談だが、男の叫び声を偶然聞いた彼の同僚がその場に駆けつけた。
男は彼にブレスレットが消えたと主張したが、そんなことが信じられるはずもない。
ブレスレットが紛失したという事実だけが残り、男は盗難の疑いで解雇されてしまった。





ユナの手に、珊瑚のブレスレットが触れた。
なぜ、これがここにあるのか。答えはでてこない。

事実、この出来事は常識では起こりえないものだった。。
ファルグが腕に念を込めたとき、同時にブレスレットにも転送の念が込められていた。
そして、腕を落としたときにブレスレットは偶然床にぶつからず、転送の念が残ったままになっていた。
マーキングは一回だけ有効なため、転送先は消えていたが、ユナの頭につけられたマーキングとなぜかリンクした。
そのため、警察官が落として衝撃を与えた際に、ユナの頭のマーキング先に転送された。
……強引に理屈で説明すればこうだ。それが起こりうるかはともかく。

「どうしたの、それ」不思議そうに尋ねるアニッサに、答えることはできなかった。
「……がんばれ……ってさ」そう言いながら、俯いた。


死者の念というものがある。念というのは死んでも消えるとは限らない。
逆に、死人の想いがより強力な念となり、現実世界に干渉することがある。
これも、その死者の念によるものなのか。その答えは誰にも分からない。

そして、ユナはこの死者の念の存在を知らない。それでも――。
「私、がんばります。これに誓って」
そう言い、笑って見せた。

ここから、ユナの長いアマチュアハンターとしての生活が始まる。


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