Side 涼
――力が欲しいか
いつもなら聞こえる声が聞こえなかった。ARMS自体を使う事が出来ないと言うだけなら、オレはここまで動揺はしていなかっただろう。ただ単にこちらの言う事を拒否しているだけならここまで動揺しなかっただろう。
だが、呼び掛けた事で分かってしまった。ジャバウォックがいない(・・・)のだ。
互いに反目し合っていた時でさえも感じていた存在が、今はない。この異常とも言える事実がオレに動揺を与えていた。
いくら考えても分からない。何故いないのだ? いつからいないのか? 戻ってくるのか? どこにいるのか?
疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。自分で堂々巡りだと言う事が分かっているのに、止める事が出来ない。
あいつがいないのに何故使えるのか? 高速移動の弱体化はこれが原因なのか? どうすれば――
「高槻さん!」
朝倉に強く呼ばれ、我に返る。
「悪い、少し考え事してた」
「……何かあったんですか?」
どうやら傍目に見ても分かるぐらい動揺してる様だった。
頭を振る。一応敵を撃退したが、安全になった訳ではないのだ。こんな体たらくでは奇襲を仕掛けられたら対応できない。考え込むのは本山に着いてからだ。
「いや、大丈夫だ。それで、どうした?」
「ネギ先生が見えたからって皆走っていっちゃったけど」
結局シネマ村にいたクラスメイトは振り切る事が出来なかった。魔法を使った反動で失神した木乃香が目を覚ませばまだどうにか出来たんだが……。
そしてもちろんオレがここにいると言う事もバレてしまった。幸い、私服に着替えてからの判明だったから、狐面の男がオレであると言う事はバレずに済んだので、私的な旅行で来たと言い訳する事が出来た。
朝倉が指差す方向に目を向ければ、ネギ君に明日菜に加えて宮崎が道端に座り込んでいた。2人の憔悴具合を見るにこちらにも敵の襲撃はあったみたいだ。
出来れば事の顛末を聞いておきたかったんだが、あの状態じゃ無理か。
クラスメイトに群がられてるネギ君を尻目に、草むらでうつ伏せになってるカモをそっと拾い上げた。話を聞こうと掌に乗せたところで、カモが濡れてるのに気付いた。
「カモ?」
「ウウ……、聞いてくれよ旦那。アニキがグレちまったんだ」
「……どう言う事だ?」
「だってアニキの奴、事もあろうに親友であるはずのオレっちを目隠しに投げたんだぜ!」
石を切った様に捲くし立てるカモ。自分とネギの出会いを涙ながらに語り始め、次第に号泣し始める。全く遠慮なく泣くので慌てて、離れて見ていた朝倉の所にいった。その間にも勢いは強くなり、このままでは聞こえてしまうと、またも大慌てで朝倉と2人でネギ君達に背中を向けしゃがみ、カモの声を遮断した。
なおもおいおいと、悲しみの慣用句と諺の全てに当てはまる程に泣き喚き、最早何を言ってるのか分からない状態にまでなり、終いには吐くんじゃないかと言う程泣き、最終的には泣き疲れて死んだ様に寝てしまった。
「……カモっち生きてますよね?」
「ちゃんと息してるから大丈夫だと思う」
「どうしたんです、これ?」
「ネギ君が敵の目隠しのためにカモを使ったみたいでな、それが相当ショックだったらしい」
「こっちでも戦ってたんですか?」
「あいつらの憔悴具合を見るに間違いないと思う」
「着いてきて大丈夫だったんですか?」
「事情を知っていれば、来ない様に説得できるんだがな。今回みたいに事情を知らないのが多いなら、逆にお前には居てもらった方がありがたい」
「また敵来るんですか? 今から行くとこって何かの本部で安全な所って桜咲さんが言ってましたけど?」
「絶対に安全な場所なんてのは無いんだ。相手が普通の人間で無いなら、それは尚更だ」
オレの発言を聞き、朝倉の表情に不安の色が強くなった。
当たり前だ。朝倉だけはシネマ村でのあれを、本当の事として体験したのだ。刀も、屋上から刹那と木乃香が落ちたのも、全部こいつにとっては本当の事なのだ。
だからこいつには言っておかなきゃならない。こっちの都合で付き合わせておいて、中学生女子を不安なままにさせておくなぞ、人間としても、男としてもあっちゃいけない。
「こんな事言っておいてなんだが、そんなに不安そうな顔をするな。来たとしてもお前達を危険に晒させはしない。だからお前はクラスの連中と楽しく遊んでろ。今夜はこっちに泊まる事になるだろうしな」
カモを掌に乗せながら立ち上がる。ネギ君達の方を見ると、何を言われたのかは分からないが3人して赤面しながら、ジェスチャーを使い必死になって何かを否定していた。
「朝倉、そろそろ行くぞ」
「…………」
返事が無い。
どうしかしたのかと、視線を向けると
「……強烈なストレートだわ~」
そっぽを向きながらブツブツと何かを呟いていた。
「朝倉?」
「は、はいっ、何ですか?!」
「そろそろ移動しようと思ったんだが、大丈夫か? 顔が赤い――」
「だ、大丈夫ですから! 早く行きましょう!」
それ以上言わせんぞ、とばかりにオレの言う事を遮り皆の方に走っていった。
いきなりの行動で驚いたけど、あれだけ走れるなら何も無いみたいだな。
「親書、確かに受け取りました」
色々と障害があったけど、漸くこの修学旅行の目的の1つが終わった。今、この瞬間ぐらいならネギ君達も少し緊張を解いてもいいだろう。と言うか、ここらで一旦息抜きさせないと精神的と肉体的な疲労で倒れる可能性がある。
何をしているのか分からない連中は、とりあえず何か良い事があったんだろうと言う事と、泊まりと言う事でテンションを上げていた。が、その中で1人テンションのおかしい奴がいた。
朝倉だ。皆がワイワイと騒いでる中、1人だけ正座しっぱなしだった。どうしたのかは気になるが、具合が悪いわけでもなさそうだから、先にネギ君達を休憩させてしまおう。
「お疲れ、ネギ君。疲れとかは大丈夫か?」
「はいって言いたいんですけど、腰が抜けちゃってまして」
「仕方ないだろ、漸く一息つけたんだから。昨日から緊張しっぱなしだったろ?」
ネギ君を負ぶって立ち上がる。
「近衛さん。お風呂お借りしてもいいですか?」
「どうぞ、構いませんよ」
場所を教えてもらい、廊下に出る。ちょうどそこに刹那と明日菜もいたため、2人にも休憩する様に言った。
「刹那すまなかった、こっちのミスでお前達に大怪我させる所だった」
「そんな、私が追い込まれなければ良かっただけです。……あの、声が聞こえなかったと言うのは?」
刹那が遠慮がちに聞いてくる。明日菜は何の事、と首を傾げていた。
「まあ少し、予想外な事が起きてな」
「大丈夫なんですか?」
背負っているネギ君が身を乗り出して尋ねてきた。
大丈夫かと言われれば、どちらとも言えなかった。これのせいで悪い事が起こると言う訳ではない。ただ、放っておける事でも無いのだ。しかしどうにかしたくても、オレの体内の変化とかを観測できる機械も無いし、ARMSがどういう状況になっているのかを推測出来る奴もいない。どうしようもないのだ。
風呂場に着く。扉の手前でネギ君を下ろす。
「そうだ、宮崎の件は大丈夫だったか?」
「魔法の事自体は教えてしまいました。でもこれ以上関わらないで下さいって念を押しておいたので」
「それに関してもすまなかった。こっちが早めに気付いていれば、教えられたんだが」
「結果的には何もなかったから大丈夫ですよ」
「そう言ってもらえると助かるよ。じゃあしっかり体を休めておくように」
「涼さんは入らないんですか?」
「近衛さんに少し聞いておきたい事があるから、それが終わったら入るよ」
来た道を戻り、部屋に戻る。
幸いな事に部屋にいるのは近衛さん1人だけだった。
「どうしました? あ、そう言えばまだお名前をお伺いしておりませんでしたね」
「高槻涼と言います」
「では涼君と。私の事は詠春で構いません。で、どうされました?」
「敵の事について伺っておきたい事がありまして」
「なんなりと」
「不謹慎なことを言いますが、もし敵が木乃香を手中に入れた際、何をすると思いますか?」
「主犯の天ヶ崎千草は魔法使いに恨みを持っていると聞いております。ならば協会を潰そうとするはず」
「でもあの人数では不可能です。追っ手を撃破できるかさえ微妙な人数です。だとしたら木乃香の持つ魔力を利用する手段ないし道具があるはずなんです」
それは強大な破壊兵器かもしれないし、木乃香の魔力を根刮ぎ奪い取るものかもしれない。更にそれはこの近辺にある可能性が高い。
ならば、この地の長である詠春さんならそれが何なのかを知っているかもしれない。
「……盲点でした。木乃香を目的としていると言う事に目が行っていた様です。君の言ったそれに該当するものに1つ心当たりがあります。この地に封印されている、リョウメンスクナと言う巨大な古代の鬼神です」
リョウメンスクナ。
少しだけ聞いた事がある。2つの顔に4本の腕を持っているとか。
しかし厄介なものが封印されてるな。想定していた状況の中じゃ最悪の部類に入る。その鬼神の大きさがどれ位なのかは分からないが、もし10mを超えているとなれば、こちらには撃破する手段がなくなる。
「そんな顔をなさらないで下さい。ここの結界はそうそう破れやしませんよ」
「……破る必要がないとしたら?」
「え?」
「どんなに堅い守りをしていても、直接内側に入り込まれたらあっと言う間に制圧されます」
信頼は必要な事だ。
自身が持つ武器や、仲間の力、拠点の守り。これらを信頼できないのであれば、そいつには何事も成し遂げられないだろう。だが100%の信頼だけではダメなのだ。それを信頼しきると言うのは、いわば思考の停止に近い。何があっても大丈夫、何が来ても大丈夫。これが果たして正常な思考と言えるか?
オレはARMSを信頼している。だけどそれはデメリットを入れてのものだ。
機械に動作不良があるように、人に失敗があるように、何事も大きかれ小さかれ弱点があるのだ。だがそれを理由に信頼しないと言うのも違う。信頼ってのはそれらを理解してのものだ。
「あなた程の人なら分かっているはずです。信頼という名の慢心が一番危険だと言う事を」
「……とんだ無様な所をお見せしてしまった様だ。実戦から離れて久しいとは言え、よもやこんな初歩的な事を失念していたとは。申し訳ないです」
「こちらこそ生意気な事を言って申し訳ないです」
「いえ、君に指摘してもらわなかったら、油断したまま夜を迎えるところでした。……それにしても若いのに大したものですね。お義父さんが君を選んだのが分かりました。さてと、君もしっかり休んでおいて下さい。私は桜咲君と話してきますので」
「そうだ、後1つ聞いて良いですか?」
「構いませんよ」
「オレが来ても平気な服ってありますか?」
「ありますが、私達と同じ様な服になりますよ」
「それで大丈夫です」
「では後で届けさせますので」
一応念のために。今までだったら服が無くても多少は羞恥にも耐えられるたんだが、年下の女子が多いとなると、流石に恥ずかしいし、向こうも同じかそれ以上に恥ずかしいだろう。もしそうなったら明日以降顔を合わせづらくなりそうだ。
夜。詠春さんがクラスの連中のために宴を開いてくれた。食べた事のない料理などもあり、オレもかなり楽しめた。
ただ……一部の連中がどうみても酔っていた。未成年なのを知っているから酒が出てくるはずがない。なのに酔っている。どういう事なんだ……。
出された料理もほとんど食べ終わり、明日の朝イチで帰らなきゃならないと言う事もあり、9時過ぎにはお開きとなった。
風呂に事前に入っていた連中は寝室へ行き、木乃香、刹那、アスナの3人は風呂に入りに行くとの事。
オレとネギ君は寝室組が寝静まった頃から見回りを開始する事にした。あのはしゃぎ具合から見て、30分もあれば全員寝るだろう。
ネギ君は風呂の近辺、オレは寝室近辺を担当する事になった。時間を確認し、もう寝ただろうと、見回りを開始する事にした。
「まだ起きてるのか」
「うわっ……て、高槻さんか。びっくりさせないで下さいよ。高槻さんこそ何してるんです?」
縁側に面した廊下を歩いていると、涼んでいるのか、朝倉が窓を開け足を投げ出しながらぼーっとしていた。声を掛けられたのに相当驚いているのを見ると、かなり呆けてたみたいだな。
「見回りだ。お前も明日早いんだから、早く寝ておけ」
そのまま朝倉の横を通り過ぎ、突き当たりを曲が……ったところで、朝倉が着いてきてるのに気付いた。
「……何で着いてきてるんだ?」
「何となく」
「不安か?」
「そりゃあ……。……高槻さんは不安じゃなんですか? 自分が負けたら近衛が攫われるんですよ?」
その表情は初めて見るものだった。昼間はテンションの高い連中に囲まれて誤魔化せてたものが夜の静けさでぶり返した、ってところか。
なら取り除いてやらきゃならんな。
「……そうだな。感じてるかどうかって聞かれたら、少しは感じてるさ。個人的な心配事もあるし。でも、不安を感じていたとしてもやるべき事は変わらない。大事なのはやろうとする意思なんだ。つまりオレは負けるつもりなんかこれっぽっちも無いし、勝つ気しかない」
オレ達の戦いはいつもそうだった。勝てる可能性の方が低い戦いばかりだった。でも全員が分かってた。勝たなきゃならない、って事を。勝たなきゃ前には進めない。だったら勝つしかないんだ。
「だから安心しろ」
俯く朝倉の頭に手を置きあやす様に軽く叩く。
「その言葉信じますからね」
俯いていた顔を上げた朝倉はオレの手を取り両手で握り、笑いながらそう言った。その笑みはいつもの朝倉らしい笑みではなく、柔らかいものだった。朝倉らしからぬ表情に一瞬驚くが、すぐにその手を握り返した。
「ああ」
「部屋に送るから、お前はもう寝ろ。明日だって早いんだからな」
「りょうかい」
朝倉を後ろにしながら、部屋に向かって歩き――
――悪寒が走る
これは……既に入り込まれてる!
「朝倉、そこにいろ」
返事を待たずに走り出す。
気配を隠す気が無いのか? いや、あいつはこちらを誘ってる。
障子を開ける。そこはクラスの連中が使っている寝室だった。
だが、そこにはいてはいけない者がいた。
「やあ、君なら気付いてくれると思ったよ、高槻涼。こうして会話をするのは初めてだね。僕はフェイト・アーウェルンクス」
ARMSを起動と同時に全身に回す。
寝ている子達を飛び越え、ARMSを叩き込む。そいつは障壁を張ってガードするが、そんなんで押さえきれると思うな!
障壁ごと押し込み、襖を倒しながら隣の部屋へと殴り飛ばす。
よし、ともかく離す事は出来た。
「障壁ごととはね。その力は何なんだい? 初めて見るよ」
悪いがおしゃべりに付き合う気はない!
素早く距離を詰め、左手のストレートを放つ。
フェイトは変化していない左手だと油断したのか、受け止めようと掌を突き出してきた。
狙い通りだ。
A RMSの力を味わった事で、目の前で見たはずの身体能力の強化を忘れている。
突き出してきた手を弾き、顔面に拳がめり込む。
「な、に」
今更気が付いても遅い。
体勢を崩したフェイトに右手で下突きを叩き込む。が、手加減したのがマズかったのか、障壁により阻まれた。
でもこれで終わりだと思うな。
爪を突き立てる。食い込む。奴の驚愕する表情が見えた。一気に引き裂く。障壁もろともフェイトの体を切りつける。致命傷ではない。
だが、その傷口から出てきたのは血ではなく、水だった。
こいつ……人間じゃないのか?
「まさかこんなにもあっさりやられるなんてね。それの力を見誤ってたよ。でも君は僕の期待通り(・・・・)に来てくれた。おかげで楽に仕事が出来たよ」
その妙な言い回しと崩れていく体を見て、瞬時に悟った。
こいつは本体じゃない。恐らく本体はすでに木乃香達の所へ向かっている、いやすでに連れ去られてる可能性の方が高い。
やられた……。まさかこんな事が出来たなんて……くそっ。
「涼さん!」
風呂場の方へ向かおうとしたところに、ちびせつなが不意に現れた。
焦り具合を見ると、やはり木乃香は連れ去られたみたいだ。
「案内してくれ!」
「分かりました!」
廊下に出ると、進行方向とは逆側から何か引きずる様な音が聞こえた。
振り向く。ガラスからの月の光に照らされて見えたのは、下半身が石化している詠春さんだった。その光景に一瞬絶句してしまった。
「君の……忠告を聞いてながら、このザマです。かつての英雄と轡を並べた者が……情けない!」
「詠春さん。木乃香は必ず取り戻します」
「頼みました……」
そう言い、詠春さんは完全に石化した。
「長……」
「行くぞ」
悲痛な顔をしていたちびせつなが、自分の顔を叩き活を入れ、移動を開始した。
オレとて何も思わないわけじゃない。だが、託されたのだ。ならば、こんな所で悔しさに浸っている場合じゃない。まだ終わってはいないのだ。木乃香は敵の手に渡っただけなのだ。だったら取り返せば良いだけの事。
「っと、少し待ってくれ。取ってくる物がある」
夕食のすぐ後に女中さんが届けてくれた、服の入った紙袋をひったくる様に手に掛け、急ぎ戻る。使うかどうかは分からないが、使わずに済む事を願いたいな。
「すまない、待たせた」
庭に飛び出し、塀を飛び越える。ちびせつなを先導にしたまま走る事数分。前を走るネギ君達が見えた。
「待たせた。敵との距離は?」
「そこまで離れてません。直に追いつけます」
刹那の言った通り、少し開けた場所で追いつく事が出来た。
走るのを止めた千草とフェイトはこちらに振り向いた。
「お嬢様を離せ!」
「断るに決まっとるやろ。ウチらはこれからスクナの封印を解きに行く。止められるなら止めてみせろ」
「止めるさ。仮に封印が解かれたとしても、それもろともお前の野望を砕く」
「期待しとるで」
皮肉と本音の混ざった言葉だった。
千草が何かを呟く。それと同時に木乃香の体が発光し、苦しげな声を洩らしていた。
光は木乃香の体だけでなく、オレ達の周りを囲う様に膨大な数が地面から出ていた。そして穴の様になったそこから、光と同じ数の妖怪が出現した。
こちらの身動きが取れなくなった隙に千草達は奥へと走っていった。
「こんな数、どうすれば?!」
「……オレが道を開く。そこから全員であいつを追え」
「そんな……無茶ですよ! せめて私だけでも」
「この数は初めてじゃないからな。むしろあの時の方がキツかった。さあ、しゃべってる間にも離れていくぞ。全員目を瞑れ」
納得する気が無いのなら、強引に持ってくしかない。
ARMSを砲撃形態にし、地面を向け撃ち込む。陥没した地面から大量の土埃が立ちのぼる。そのせいでこちらが見えなくなっている妖怪達へ再度砲弾を撃ち込む。
「道は開けたぞ! 行け!」
「くっ、御武運を!」
直線に開けた空間を突っ切っていく3人。
……行ってくれたか。さて頼んだぞ。
開けた穴を埋めながら、オレの周りを囲う妖怪達。
こっちもぼちぼち始めるとするか。敵は数えるのが億劫になる程の数だ。流石に威圧感が凄いな。
「いきなり撃つか? 普通。しかも1人ってのは些か舐め過ぎとちゃう?」
「不満はないはずだ。何せお前達の相手は魔獣なんだからな!」
「言うたな、ガキが!」