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No.21913の一覧
[0] 頭が痛い(ネギまSS)[スコル・ハティ](2016/05/23 19:53)
[1] 第二話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:17)
[2] 第三話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:17)
[4] 第四話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:18)
[5] 第五話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:18)
[6] 第六話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:18)
[7] 第七話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:18)
[8] 第八話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:18)
[9] 第九話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:19)
[10] 第十話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:19)
[11] 第十一話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:19)
[13] 第十二話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:20)
[15] 第十三話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:21)
[16] 第十四話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:22)
[17] 第十五話[スコル•ハティ](2015/12/19 11:22)
[18] 第十六話[スコル・ハティ](2015/12/19 11:22)
[35] 第17話[スコル・ハティ](2016/06/03 22:36)
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[21913] 頭が痛い(ネギまSS)
Name: スコル・ハティ◆7a2ce0e8 ID:ce82632b 次を表示する
Date: 2016/05/23 19:53
「御宅、死んでるよ」

 目を覚ますと不気味な空気を漂わせるオッサンにこんな事を言われた。

「何、驚かないの?」

 オッサンの発言を理解して、これがギャグなのかそれとも真剣に言っているのか判断に迷っているとこう続けられた。
オッサンは見たところ40過ぎ位で、身長は俺の身長よりも随分と高そうなので少なくとも185センチ以上は有るだろう。奇妙な存在感というか空気を醸し出していて、そのせいで体重その他については全く推し量ることが出来ないが痩せ過ぎてもいないし、太り過ぎてもいないようだ。

「あ……いやもう一度言ってもらっていいですか?」

 余りに唐突な展開に着いて行けず思考停止してしまった俺は、如何にか状況を理解しようとオッサンにもう一度繰り返し教えてもらうことにした。

「いや、だから。御宅死んでるから」

 オッサンの発言は完膚なきまでに絶望的な内容であった。

「マジですか? ……ああ駄目だ。なんか本当にそんな感じしてきた。やべー凄いだるい」

 オッサンは真っ白な床に立って俺を見下ろす格好で、俺はオッサンの前に座り込んでいたのだが聞かされた事実が衝撃的過ぎて受け止めたは良いがテンションがどんどんと急落していく。昨今の円高が輸出業に与えるダメージと同じくらいのダメージを負った気がする。

「あ? 何もしかして御宅、今言ったこと信じちゃった?」

 どうやらオッサンの機嫌は俺の機嫌の動向とは全く逆の奇跡を描いたようで、俺が他人を虐めているときと同じような調子で訊いてくる。

「もしかして今のやつ、冗談とかだったりするんですか?」

「いや全然。かなり真剣。間違いなく御宅は死んでるよ。唯落ち込むのちょっと早くないかなって」

 傍迷惑なオッサンである。いきなり見ず知らずのオッサンの言う事を信じている俺もどうかしているが、あんな風に落ち込んでいる見ず知らずの人間を悪戯に期待させるような真似をした挙句もう一度落ち込ませるこのオッサンもどうかしている。

「此処一体何処ですか?」

目覚めの恍惚から解放されて、辺りを見渡してみると視界一面真っ白だ。
かろうじて水平線が確認できるくらいで、それが無ければ地面と空の区別もつかないほど何処も彼処も真っ白である。はっきり言って精神衛生上よろしくない感じである。

「あー、そうだなー。……特別何処って言うわけでも無いけど強いて言うならあの世の入り口みたいな?」

 ビジュアルを加味すると恐ろしくグロテスクな言葉遣いと表情をしたオッサンがメルヘンチックな事を言う。
平時ならこのオッサンの正気を疑うところだがこんな場所の事は見たことも訊いたこともないし、これが誘拐等だと考えてもそもそも誘拐される理由が無い。俺は何処にでもいる凡人だし、我が家は稀に見るロクデナシどもの集まりだ。
となると消去法でこのオッサンの言ってることは本当という事になるんだが。

「私が言うことでは無いけど、君ってもしかして天然とかユルイとか馬鹿とかフールとか言われてたりするの? こんなに簡単に現状を受け入れる人って中々いない気がするけど」

 オッサンが挙げた物が全て俺を侮辱する物で有った事に大変遺憾の意を覚えると共に、しかし自分でもそれを否定することが出来ない。
とはいえ現状を他の事由に因って説明できない以上例え受け入れがたい現状でも受け入れるしか無い訳で。

「まあその辺の事についてはもう如何でも良いです。で、これから俺は如何すれば良いんですか?」

 一旦今俺に起こっている全ての事象の理解を後回しにして、今俺にとって最も価値が有るであろう質問をする。このオッサンが何者であれ、何も分からない俺には従うほかに選択肢がない。

「良いね。面倒くさいのは嫌いだし、ちゃっちゃと先に進もうか。御宅にはこれから御宅がこれからどの世界で生活していくのか選んでもらうことになってる。御宅の頭の中は大体トレースしてあるし、こっちが知らないことであっても調べるから問題なし。さあ、一体何の世界に行きたい?」

 どう考えても意味が分からない。あらゆる意味で。
オッサンは、さあさっさと決めんかい、とばかりに俺の反応を待っているが、幾らなんでもこれは不親切に過ぎるというものだろう。
話に聞く取扱説明書に取り扱い方が全く乗っていないホラーゲーム並みの不親切だ。
 このまま訳も分からずオッサンの言うことに従うのは、自分から詐欺に引っかかりに行くような物だとしか思えない。
仕方無しにオッサンに質問をすることにした。

「すみません。やっぱり此処までの経緯を説明してもらえますか? 急にこれから行く世界を選べと言われても……」

 言った途端にオッサンの表情が沈んでいくので、謂れのない罪悪感から言葉が尻すぼみになっていく。こんな時だというのに発揮される自分の小心者っぷりが悔しくて仕方がない。

「本当に? すごーく長くて面倒くさいけど本当に経緯を説明するの?」

「はい、出来ればお願いします」

 オッサンの口調が更に気持ち悪さを増していく。どうやらこのオッサン機嫌が悪くなると気持ち悪さが増すらしい。
オッサンの作るしなが直視に耐えず、俺は思わず目を逸らしてしまった。

「はいはい。わかりました。御宅に関係の有る範囲で説明させてもらいますよ」

 オッサンは、はあと溜息を一つ吐いて本当に長々とした話をしてくれた。
俺の目の前に居るオッサンが所謂神であること。俺が死んだのはオッサンの仕業であること。オッサンが俺を異世界に飛ばすのは、オッサンが俺に死んでもらっては困るからであるとか。

「何で御宅を殺したかっていうと御宅が解脱しそうだったからっていうのが一番簡単で大雑把な説明かな。一応神である身だからこの世の一切の管理を担ってるわけだけど。何て言うのかね、こう輪廻とかそういう物から外れるって言うのは私の管理下から外れるって事で、そういうのって私からすると物凄くムカつくんだよね。だから殺しちゃったの。こういう解脱とかそういうのをしそうな人ってのは大抵私が殺す前に行っちゃうんだけど、御宅の場合どうも自力だったから手間取ってたみたいで天罰が間に合っちゃったんだよね」

 事も無げに俺を殺したのはムカつくからだと言ってみせるオッサン。未だに現実感が湧かないので腹も立たないが、俺もオッサンの事を殺したいぐらいに憎むだろう。
でもまあ、神なんて手合いに勝てる筈もないので腹を立ててもその先はないだろうけど。
というか

「解脱って言われても俺仏教徒とかじゃないですよ。俺んちは仏門に入ってるみたいだけど俺は興味ないし」

 そうなのである。そもそも俺は、俺が殺された原因である解脱などという物とはえんもゆかりもない生活を送っていたはずである。

「ああそれ。いや御宅独覚のなりかけみたいでね。独覚ってのは仏の教えとか師の教え無しで悟りを開いた人間の事を言うんだけど、御宅自力で悟り開きそうになってたんだよ。まあ自覚も無さそうだったけどね。いや、私も吃驚したわよ。何もしてないのに悟りを開きそうになってるんだもん。だからー、焦って殺しちゃった」

 まるで悪びれた様子も無く『ハンバーグ焦がしちゃった』みたいなノリで俺の殺害理由を明かすオッサン。冗談でも何でもなくそんな理由で俺を殺したことに対する憎悪と恐怖で、胸の辺りがモヤモヤとするような感覚を覚える。
オッサンの感覚は、何一つ詰まることなく一般人であると自称できる俺にはとても理解も共感も、認めることさえ出来そうにない。

「俺をもう一度現世というか前世に生き返らせる事は出来ないんですか?」

 一度逸らしてしまっていた視線をもう一度オッサンに向けると、先ほどまでオッサンから感じていた空気が酷く重く苦しい感情の発露であることが分かる。俺の全身を嘗め回し、殴りつけ、叩きつけ、蹴り飛ばし、摩り下ろす。殺意と呼ぶには超然としていて、にも拘らず圧倒的に低俗な感情。
漸くオッサンから感じる不気味な空気が俺に対する嫌悪等の不の感情であることが理解できた俺は、それでも膝が笑い出すような恐怖を押して聞いてみた。
思ったことを最後まで口にして、口の中の乾きに気付く。まるで何時間も水分を取らずに運動を続けて脱水症状一歩手前の様な舌が口腔に張り付く感覚とえぐみ。
もうこの男を前にしていては這って歩くことも侭ならないだろうとそう考えさせられた。

「それはね……出来ない訳じゃないんだけど、やってやらないというか。このまま生かしとくと面白くないと思ったから殺したわけで、そんな人間を再生させるような真似する理由が無いし。残念ながら御宅みたいな段階まで行くと魂を洗浄してもう一度新しい生をって訳にもいかないから。もうそこまで行くと悟りを開きかけた影響が魂にまで及んでて、どんな事で悟りを開くか私にも分からないんだから。だから御宅は私以外の人間が作ったどうでもいい世界に放り込んでやってオサラバしちゃうの。万が一にも悟りを開いて逃げられないように絶対に死なない肉体を与えて永遠に苦しませてあげる」

「あ…あ……ああ…」

 愉快そうに唇を歪ませて哂うオッサンに、俺は声すら挙げられなくなった。
オッサンの言っていることを十分の一も理解できない。オッサンと視線がぶつかり其処から恐怖に蝕まれる。
心臓は萎縮して本来の役割を放棄する。
脳は足りない酸素と、恐怖に溺れて喘ぎ、唇は空気を拒絶する。
腕の筋肉は弛緩して体を支えることも出来ず、足は地面を捕まえられずに滑り続ける。
座り込んでいた体は仰向けになって床に横たわる。

「そんなに怖がらなくたって良いのに。大抵の人間が喉から手が出るほど欲しがってるものが、何の努力もしないで手に入れられるのよ。もっと喜ぶとか感謝するとか色々あると思うんだけどねえ」

 既に呼吸は止まっていて、残っている僅かな酸素が体中を駆け巡り生き延びようと細胞がもがいている。

「もうそろそろ良いかしら。まだ行きたい所が決まってないみたいだし、私が選んであげる。大丈夫、最高の人生を保証してあげる。優れた肉体と優れた才能優れた運と優れた人脈。残念ながら精神だけはそのままだけど、他のありとあらゆる物は面白い位に最高だから思う存分楽しめると思うわよ」

 そういってオッサンは俺の体に跨ると俺の頭を鷲掴みにした。
俺の頭を掴むその手はぞっとする程冷たくてホッとするような温かさ。赤ん坊の手のように柔らかくて職人の使い込まれた手のように硬かった。味方の様に優しくて敵みたいに怖い。
そしてなにより無機質だ。
脳が酸欠で酷く痛む。視界が徐々に眩んでいって、手足は溶けたみたいに曖昧だ。

「まあ人並みに楽しめるようになったら奇跡だね。そんな人間だったら殺されることも無かったんだから」

 神罰に篭る慈悲という物があるならきっと、こんな感じに違いない。


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