「♪…… 祈りは、さながら 同刻への デカローグ ……♪」
篩にかけて粒を揃えるのは、炒った黒ゴマ。
子供たちのおやつに、黒ゴマのチーズケーキを作り始めたところ。
「♪…… ひかり遠き、夜の底に、沈み 朽ちる……願い ……♪」
味音痴なのに、料理もお菓子作りも、得意。
お裁縫はちょーっち苦手だけれど、掃除や洗濯だってパー璧。
「♪…… たなごころが、求めて いる。受け継ぐ べき……罪の重み ……♪」
それは、この体を使って、世界を救ってくれた少年が居たから。
世界を救うためには、まず幼い心を救う必要があると考えた、一人の少年が居たから。
「♪…… 約束の 渚、波を蹴立 て、思い 出を 掻き消し て いる なら ……♪」
その少年の努力を、労なくして手に入れたアタシは…… そう。云わば、カンニングしたのね。
ほんと、アタシらしいじゃない。
「♪…… 何度 も巡 り、私 は、諭 す ……♪」
サードインパクトの危険が失われた今、元作戦課長に出来ることなんかない。
けれど、あの少年が遺してくれた諸々が、今でもこうして子供たちのために役に立っている。
こんなアタシに存在意義を与えてくれてる。
そのことがどれだけ嬉しく、心の支えになっているか。
心を閉ざす前のアタシでは、想像もつかなかったことでしょうね。
「♪…… ヒトの心、弱く はないよと ……♪」
「ミサトってば、また泣きながらあの歌唄ってる。
せっかくの手作りおやつが、またしょっぱくなるじゃない。
……ねえ、加持さん。あの歌にいったいナニが有るっていうの?」
「ん? ……いや、確かに俺たちの世代にとっては懐かしくて忘れがたい曲なんだが……
葛城がああも思い入れを見せる理由までは、ちょっとな」
「……とても嬉しそうで、それ以上に哀しそう。
誰よりもつらそうで……なのに、誰かを励まそうとしてる?」
「クワワぁ~」
「♪…… 囚わ れ し子 よ、頚木を破 って ……♪」
「なんだか、不思議な感じがするんだ。
ミサトさんは呟くように歌ってるのに、まるで耳元で囁かれてるみたいにはっきりと聴こえてくる。
頑張れって頭を撫でられているような気持ちになって、なのに無理するなと叱り付けられてるような空気を感じるんだ」
「あらあら、流石はフィールドマスター様。空気は読めないのに、ヒトの顔色を窺うのは得意ってワケね。
自分だけが特別だなんて、奢ってんなら殴るわよ」
「痛いよアスカ。殴ってから言わないでよ」
「……ケンカ、ダメ。ミサトさんが悲しむ」
「ク~ワっ!!」
「あ、うん。
……その、きっとみんなもそう感じてると、そう思ったんだ」
「そう? ……そうかもね。
つい殴っちゃったりしてエントシュ……、ゴメンね」
「クワクワワ」
何もしてあげられないアタシだけど、せめて貴方の代わりに、貴方が為したかった事を。……精一杯。
そして、このロザリオに懸けて、
「♪…… あなたに 捧げる、同刻での デカローグ ……♪」
貴方のために、祈りを。
幸、在れかし
終劇
他のアニメのFFとかオリジナルなんかも手掛けたりしてますが、このシリーズを完全に放置するつもりもないので、ネタさえあれば更新したいと考えてます(連載中に入れ損ねていた解釈なんかも結構あって、こっそり追加しておくつもり)
今は、とある方から戴いたお題で短編でも書けないかと、構想中(苦笑
さて「慟哭の(JASRAC対策)モノローグ」という曲はまさしくミサトの歌で、このシリーズとしては、いつかは何らかの形で作中に取り入れたいと考えてました。
とは云え、歌詞をそのまま使うのは危険ですし、伏字と云うのも味気ないのでオリジナルで作詞してみました。
話は変わるのですが、先日友人に「シンジ*3が、お隣で翻訳されてるわ」と言われ目が点に。
エイプリルフールを4ヶ月以上間違うとは、腐れ縁の悪友もとうとう焼きが回ったかと嘆きながらググって、驚愕するハメに。本当にハングルになってました。
もちろん読めないので機械翻訳に任せるしかないのですが、確かお隣さんは漢字を使わなくなっているので同音異義語がかなり多いはず。とうぜん機械翻訳ごときの手に負えるはずも無く、「思考」が「事故」に、「儀仗兵」が「胃腸病」に、「い・い・わ・ね」が「含有量が少ない・チャン・ケッ・よ」。人名に到っては「綾波」が「アヤナ米」、「リツコさん」が「リッチ鼻種」と、かなり愉快なコトに。
一応は許諾を得ようとしたらしいので、どこぞの無断転載サイトの時みたいに精神的ダメージを受けることもありませんでした(あの無断転載事件さえ発覚しなければ、このシリーズの復刻が1年近く早くなっていたのに)
それどころか、注釈とか割と付いてて、結構いい待遇(?)っぽくて嬉しい限り。
奥付にも「2011.11.10 TRANSLATED」とか付け加えてあって、楽しい。こういうユーモアは、作品を好きになってくれたからこそだと思えるので、喜ばしい。
惜しむらくは、連絡取ろうとしたのなら2~3日じゃなくて、せめて1週間くらいは待っていて欲しかったことくらい。
事前に連絡がついていれば、あちらの読者さんのためにエピソードのひとつも書き起こしたことでしょう。
と云うか(まだ翻訳も全完了してないようですし)、
「今からでも遅くないので、連絡ください」
手薬煉引いて ゲフンゲフン…… 訳者さんのためにアスカメインの構想を練りながらお待ちしてますので。
念のため
dragonfly_Lynceus@yahoo.co.jp
ちなみに、作中で名付けた綾波のTACネームですが、連載開始直前までLynceus(千里眼の勇者の名前)でした。なので上のメアド、仕込みだったんです(苦笑