実のところ、ノアは力がない。パワーレスだ。元より運動能力が高くないため
前衛で来るタイプとの戦い方は考えなければならない。
「体力の差は歴然だな。早く、個性を使ったらどうだ?お前の個性は
役に立つと思うんだが?」
「なんで敵にそんなことを?不利になるかもしれないのに」
ノアがそう言うと一瞬キョトンとした顔をしてすぐ笑った。
「次世代のヒーローに倒されるってのも良いような気がしてな。死を
選ぶか、それとも指摘を受け入れ俺と戦うか…好きにしろ」
地面に足を着くとイザナは構えなおし軽くステップを踏む。ノアは頭を
フル回転させる。そうだ…打破できることがあるかもしれない。ノアは
覚悟を決めた。爆豪や轟のように炎を両手から噴射させ速度を上げる。
隙だらけのイザナに突進、タックルし腰に両腕を回す。
「オイ!まさか…馬鹿野郎!!」
大きな火柱が立ち上がる。炎は暗い地下を赤に染める。だが違和感があった。
「オイ…オイ、何故俺に止めを刺さなかったんだ?」
火柱の中は空洞だった。クロノの体にイザナの右手が触れ自由に身動きが
取れるようになった。
「最初から違和感があった。確信になったのはついさっき…そうだろ?ノア」
クロノが問うとノアは頷いた。
「なんとなく悪い感じはしなかったから。それに私、しっかり調べました。
マグナガイアの事務所にいるヒーローの事、貴方のイザナってのは潜り込む
ための偽名、本当はクルアーンでしょう?」
イザナもといクルアーンはまた笑みを浮かべた。そして二人を見て
話し出す。
「久々に楽しめたよ。カーディナル、ソレイユ。さぁ、早く地上に
上がるぞ。ラスボスのお待ちかねだ!」