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No.43703の一覧
[0] 誰も死なない物語[六味雑木林](2021/01/29 23:25)
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[43703] 誰も死なない物語
Name: 六味雑木林◆c4d84bfc ID:84954ba9
Date: 2021/01/29 23:25
誰も死なない物話



「おじいちゃん、きらーい」

「え……?」

「ちょっと、タケシ!?」

「きらーい」


 わしの名は杉田シゲノブ。 

 孫に嫌われた哀れなジジイだ。

  

「た、タケちゃん、お菓子が欲しいのかな!? なぁ!?」

「きらーい」

「ちょっと、タケシ、やめなさい……」

「ちょっとわし、一人になってくるさかい……」
 
「あら、シゲノブさん!?」




「くそ、なにがあかんかってん!!」


 この世には「老害」という言葉がある。

 わしは、いや、私は、孫にとっての「老害」にならんように、努力してきたつもりでした。

 まず、なるべくやさしい、うちの奥さんが使うような言葉遣いを練習しました。

 そして、物事はなるべく、かんたんに、短く伝えるよう努力しました。

 今もしてます。


 ガラッ。

「おじいちゃーん!」

「お前コラ、誰が入ってこい言うた!!?」

「えぅっ」

「あ……」

「えええええええええええん!!!」

「……」




「のう、ヨシコよ」

「なんですか?」

「わしには無理かもしれんわ。孫にやさしく接するのは」

「はぁーーーっ……」

「いや、はぁっ、やあらへん」

「……」

「なあ? どうしたらお前みたいに、孫に好かれるんや?」

「シゲノブさんには無理ですよ」

「なんでや?」

「だってタケちゃんこないだ、お父さんからあなたの過去を聞いてしまったそうですから」

「は……?」

「……」

「あのバカ息子が……信じられへん」

「ほら、そうやってすぐ怒るのも直した方がいいですね」

「んな言うてお前、わしにうんざりせずくっついとるやないかい」

「……」

「はん、タケちゃんにもお前の血が入っとるんやから、わしになつくに決まっとるわ」

「ほら、そういうのも今の子は好きませんよ」

「……そういうお前は、どこでそういうのを仕入れとるんや?」
 
「そんなもん、仕入れなくても考えたらわかるでしょ?」

「……」

「人間性よ、人間性」

「けっ」




「タケちゃん、何見てるの?」

「ん、スマホ!!」

「スマホかぁーおじいちゃん、わかんないなー」

「わかるよ、おじいちゃん賢いもん!」

「賢い?」

「うんー、おとうさんから聞いた!」

「あのアホ……褒めたらなあかんな」

「ほら、見てー、ニュース!!」

「ん、どれどれ……」

「ニュース! ニュース!」

「ああ、いっぱい字が書いてて……読めん」

「……」

「……へえ、ここらで殺人事件あったんか」

「……」

「……このへんも物騒になったな」

「返して!!」

「え、ああ、すまんすまん……」

「うわああああああああああああ!!!!!!!!」

「え、あ、もうっ、泣くな、バカタレがっ……」






「きゃあああああああ!!!!!」

 ドサッ。

「ふっふっふ……また「芸術」(アート)がでぎる゛っっっ!!!!!」

 ビリリッ。

「ぎゃあ!!!!!!!!」

「ふははははははははははは!!!!!!!!!!!!」

 スルスルスル……。

「わ、私の腸が……引っこ抜かれてる!!!?????????」

「ははははははははは!!!!!!」

「や、やばいんちゃうの、これ……」

「ははははははははは!!!!!!!!!」


 ピーポーピーポー。

「うわやべ逃げよ」

「そこの人、大丈夫ですか?」

「ええ、元々脱腸してたので」





「「危険!? 「芸術家」名乗る殺人鬼出没せり」」

「「怪奇!? 不死身の被害者」」


「ふーん、世の中物騒になったのう……」

「おじいさん、何を見ていらっしゃるのですか?」

「ああ、スマホや。年金で買った」

「いいですね、私にも触らせてくださいよ」

「じゃかあしい、お前も買えばええやろ」

「ケチ」

 ガララッ。

「とうさん、大変だ!!!!」

「……なんや、ヨウイチか」

「タケシが、タケシがやばい!!!」

「……なんやと?」





「タ、タケシ……!?」

「お、おじーちゃん……」

「お前、腸が……」

「おじーちゃん、いたいよ……」

「……俺が目を離したときには、こうなってた……」

「……このバカタレが!!」

「ぐっ……!!!」

「ガキの世話もできんのか!! このクソが!! お前なんか勘当じゃ」

「……」

「おじーちゃん……」

「タケシ、今お医者さんが診てくれるさかい、辛抱せえ!!」

「おじっ……」

 ガクッ……。

「タケシぃ……!! タケシ!!」

「……」

「おいバカ、警察は呼んどんか?」

「あ、ああ」

「じゃあ、言うといてくれへんか? 「お前らを許さん」と」

「……ど、どこへ行く気だよ!?」

「タケシをこうしたバカを殺す」

「……わかった、行ってきなよ」

「おう」

「……すまん、タケシ……タケシ……!!」





「ふんふふーん」

「お前か」

「えっ?」

 ボゴッッッ!!

「うわっ……!!」

「……」

「え、ちょ、ま」

 ドスッ。

「……うわ、うわあああああ!!!」

「わめくな!!!」

「ひ、ひいいいい、な、なんですか!!?」

「お前やろ、「芸術家」」

「……」

「お前やな、わかった」

「ちょ、ちょちょちょ、まってください、まってくださいよ!!」

「うるさい、顔見たらわかるねん」

「そんなっ……うぐっっ!!」

 ぶしっ。

「おーぅ血が出よるでよ!!」

「うぁ……あ、あんた、気が狂ってんじゃないの……?」

「いや、お前が犯人やなかったらもっと必死こいて逃げりゃええだけちゃうんか?」

「……ふ、ふふ」

 ボゴッッッ。

「なにがおかしいんじゃコラ」

「う、うが……」

「お前の、手から、生臭いにおいがするんじゃい!!!!」

 ボゴッッッ。ボゴッッッ。

「……ご、ごめんなさい……」

「ああ?」

「命だけは……」

「おお、助けたるわ」

「ほんとですか……?」

「だからな」

「……ひっ!!」

「……これ、お前のナイフやろ」

「……」

「これを握れ」

「……」

「握らんかい!!」

「え、あ、あ……!!」

「ようし、握ったな」

「……」

「突いてこい」

「……え?」

「どないした、突かんかい」

「……」

「お? えらい慣れとるな」

「……」

「そら自分のナイフやからな、当然か」

「ふ、ふ……」

「……」

「そうだよ、僕が……ゲホッ!! 僕が……!!」

 ボゴッッッ

「みなまで言わんでええ」

「う……ぐ………っ」

「今からお前の腸を引きずり出すからな」

「……え?」

「わしは昔な、鹿を殺して食うとったんや」

「……」

「美味いで。上手いこと腸を抜いたったらな」

「……あ、あんた……おかしいのか!?」  

「あ? わしのどこがおかしいねん」

「……」

「わしはな、お前のような気違いが出たときのために空手をしとんねん」

「黒帯やぞ?」

「わしだけじゃない、お前のようなアホロク以外はみんな生きるために頑張って何か力の付くことをしとんねん」 

「スマホが言うとったがな、お前ら若い世代は「人を殺してはいけませんよ」と耳が腐るほど遠回しに教えられているはずだが、わしの見間違いか?」

「教育は進歩して、お前のようなどうしようもないバカが出ないようになったんじゃないのか? えぇ?」

「それともわしがうるさく言ってやらんとわからんのか?」

 ずぷっ。

「ひ、ひっ……!!!」

「抜くで」

 ずるずるずるっ。

「ぎゃあ、ああああああああああ!!!」

「のう、ビデオテープみたいやの?」

 ずるずるっ。

「うぎゃあああああああ!!!」

「臭いだけじゃ、こんなものは」

 びしゃっ。

「ああ、あああ……!!!」

「わしも昔はな、親父を殺そうとしたチンピラを一人、死ぬまでどついてやったが……」

「あ、あ……!!!」

「なんだ、お前は。わしをそのナイフで突こうともせん」
  
「喚いとるだけか?」

「う……」

「まあええわ、お前みたいなのがいてくれた方が、わしも思う存分発散できるからな」

「……」

「死にそうか? もう死にそうか?」

「……」

「ええ? なんでわしが許したらなあかんねん」

「……」

「なんで、わしが……孫に嫌われなあかんねん!!」

「……え……?」

「そうや、なんで負けたか教えたろか?」

「刃物はな、そうやって握ったら突いたのがバレるねん」

「やから、こうやって握るんや」

「わかるか?」

「……」

「なに寝とんどコラ!!!」

 ボゴッッッ。

「うぐっ!!!!」

「……そうか、わかったぞ!!」




 後日……。

「たけちゃん、ちょっとこっちおいでー」

「おじいちゃんなーに?」

「あんなー、今日はたけちゃんに鹿のバラし方を教えたるわ」

「えー」

「えーじゃない、こういうのはな、小さいうちにやっとかんと身につかんねんて」

「ふーん」
  
「見とけよ、刃物はな、こうやって握るんや」

 ぎゅ。

「んでな、刺すときは、こうや!! わかるか? 鼠径部をイメージするんや」

「そけいぶ?」

「そうすれば、あとは勝手に脳味噌が刺してくれるからのお」

「そけいぶってなーに?」

「おお、わからんか? そうやな、お前のちん……いや、おちょんちょんのあたりや」

「おちょんちょん?」

「わしはコレでヨシコをモノにしたでのお」

「ちょっと、おじいさん!! 変なことばっか教えんどき!!」

「なんや、ええとこやろがい!!」

「おじいちゃん!! 鹿、たのしい!!」

 ザスッ、ザスッ。

「おお、ええ感じやで!!」

「……もう、知らんで」

「わーいわーい!!」

「さすがわしの孫やな!!」

おわり


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