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No.43970の一覧
[0] 異説・グリム童話[Stein.D](2023/02/21 17:58)
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[43970] 異説・グリム童話
Name: Stein.D◆194a507f ID:410a2d26
Date: 2023/02/21 17:58
※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています※

「——それが、僕の初めての性的興奮の体験でした」

憧憬にほぅ、と酔った熱い吐息を投げるヘンゼルは、その酔いの回り具合とは反対にやけに優しくビールのジョッキを机に置いたのだった。

「妹が父のずんぐりむっくりした大腕にむんずと抱え上げられて、裏庭にある焼却炉に放り込まれた時のことは今でも鮮明に思い出せます。その後に聞こえる、グレーテルの鉄扉をバンバンと叩く鈍い音!それがパチパチといった火の音に混じって聞こえるのがたまらなくて。中からは悲鳴のようなものも聞こえたけれど、しかし分厚い金属によって遮断されたそれは夜の森に響くナイチンゲールのやけに必死な鳴き声にしか聞こえない。その儚さがまたたまらなかったんです。つい、前屈みになってしまいましたよ」

「わかるわ、私も未だにおおかみさんに丸呑みにされた時の興奮ったら、冷めやらないんだもの。それにしてもヘンゼル、あなたの気持ちはグレーテルに向いていたのかしら?彼女の可愛らしい悲鳴がたまらなかった?」

「いえ、そういうわけではないんです。正直に言えば——僕はあそこに放り込まれたのが亡き母だったとしても、友人のエーミールだったとしても、はたまたその辺で父がとっ捕まえてきた野うさぎであろうとも同じ気持ちを味わったでしょう。——僕は、狭い所と、火。それが好きなんです」

なるほどね、と赤い頭巾を被った少女は合点の行った表情を見せ、一つ頷いた後にミルクを一気に飲み干した。

「それにしても、まさか黒い森のこんな奥地にこんなにも素晴らしい酒場があるだなんて思っても見ませんでしたよ。しかも経営しているのは、言ってはなんですが、年端も行かないお嬢さんときてる。……いったいどうやって?」

「ああ、ここは元々、私のおばあさんの家だったのよ」

「でも、そのおばあさんというのは——」

少女はヘンゼルのジョッキが空になったと見て、カウンターの方に続きを注ぎに行った。

「殺したわ。私の大好きなおおかみさんをひどく罵るものだから——まったく、人間の男なんかより絶対おおかみさんの方が格好いいわ。古い女はそんなことも理解してくれないのよ」

「それは、災難だ。僕もあの後父の元を離れてから癖をひた隠しにしてきましたが、真っ向から拒絶されるというのはひどく辛いことでしょう」

「辛いわよ。泣きに泣いたわ。殺したあとでね」

「しかしそうなると、例えばここのバーカウンターのような改装は、全て貴女が一人で?」

「いいえ?狩人さんがやってくれたの。最初はあの人も私の好みを理解しちゃくれなかったし、何ならおおかみさんに銃口すら向けたけれど、でも話すうちにわかってくれたの。今じゃいい奴隷——じゃない、従業員だわ」

少女はくすくすと笑う。ヘンゼルも同様に。

黒い森の夜は、こうして更けていく。

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<登場人物>
ヘンゼル・ヴィルト:クラストロフィリア(閉所愛好)・パイロフィリア(火愛好)

赤い頭巾の少女:ズーセクシャリズム(動物性愛)・ボラレフィリア(丸呑性愛)


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