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No.43833の一覧
[0] お化けだってドン引きする時がある(見える子ちゃん)[シウス](2022/02/25 20:41)
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[43833] お化けだってドン引きする時がある(見える子ちゃん)
Name: シウス◆60293ed9 ID:e66ae649
Date: 2022/02/25 20:41
 お化けだってドン引きする時がある(見える子ちゃん)
 
 
『見ろよ。こうやって特殊な憑依をした状態のまま、憑依した相手が人間が飯を食うと、そいつは味も感じないし、物理的に腹に何も溜らないまま、俺らバケモンは美味しい思いもできるし腹も膨れるんだ。―――まぁ、やり過ぎると憑依した相手が餓死しちまうから、程々にな? ほら、この憑依方法って、1度憑いたら離れるまでに丸1日掛かるから、さ……』
 
 と言ったのは、今まで私が出会った事の無いお化けだった。―――そう、お化け・・・である。
 私が初めて見る「ハキハキ喋るお化け」の発言に対し、周囲にいたバイオハザードのゾンビのような呻き声をあげるお化け達は口々に驚きの声を上げる。
 
『オイ、マジカヨ……』
『コンナノデ空腹カラ逃レラレタノカ』
『先輩スゲェ! 一生付イテ行キマスゼ!!』
『ソーダ、ソーダ!』
 
 何も幼い頃から霊が見えるといった人生を歩んでいた訳ではなく、ほんの数ヶ月前のある日を境に、なぜか見えるようになってしまったのだ。もちろん、そうなった原因に心当たりなど一切無い。
 あの日から今に至るまで、お化けは見えない振りをしてきたけど、悲しいことにお化けの方から『見える? 見えてる?』と言いながら寄ってくるのだ。
 ……もしも私が「見えてるよ」と返していれば、どうなってしまうのか、未だに分からないし、試したくもない。だって怖くて怖くて仕方がないのだ。
 
 
 
 ―――だが、今日・・だけは別だ。
 
 
 
 下校時、今の会話を聞いていた私は、自らの意思でお化け達の方へと歩みより、そして誰とも通話状態になってないスマホを取り出し、お化け達に良く聞こえるよう、大きな声で言った。
 
「やったー! じゃあこの後、あんたの家でお菓子作りパーティだね! 高校生なのにスイーツ界の巨匠の弟子をやってるあんたのドーナツ、ほんと大好きだよー!」
 
 ……我ながら気違いじみた行動だとは思う。でも今回・・ばかりは、この怪物達の力を借りなければ大変な目に遭ってしまうどころか、ガチで私の命が危ない・・・・・のだ。
 案の定、お化け達は一斉に私の方を向き、仲間内で囁き合う。
 
『おいおい聞いたかよ今の? これからどこの一流レストランに行こうか考えてたってのに、向こうから来ちまったぜ!』
『甘イノ、甘イノオオォォッ』
『グスッ、俺、生キテテ良カッタ……』
 
 ……いや待て最後のヤツ。お前ら生きてないだろ?
 突っ込みを入れたい衝動を抑え込み、私は電話越しに言った。
 
「じゃ、今から行く・・・・・から待っててねぇ~」
 
 
 
 
 
 
 
 
 10分後。
 住宅街を百鬼夜行のようにお化けを引き連れた私は、とある大きな家を訪れた。
 これから会うのは中学生の頃からの親友で、学校こそ別ではあるが、あたしとハナとそいつの3人でよく遊んでいた。
 インターホンを鳴らすと、その本人が出迎えてくれた。
 
「みこちゃん、お久しぶり!」
「や、瑞希。久しぶり」
「みこ~、遅いよぉ~」
 
 瑞希こと姫路瑞希ひめじみずきとの対面である。ついでにハナも先に来ていた。
 2人ともホラー系は苦手なのに、私の後ろにいるお化け達が見えないようだ。何の抵抗もなく私を家に上げてくれた。
 これから世にも怖ろしい体験をするとは夢にも思ってないだろう。―――瑞希やハナではなく、背後のお化け達が、だ。
 
「それじゃあ、さっそく作っちゃいましょ~」
「お~!」
『『『『ウオオオオオオォォォォッ!!!!!』』』』
 
 瑞希の掛け声に、ハナが拳を掲げて呼応し、更には背後のお化け達も歓喜の声を上げる。
 
 
 
 途中までは滞りなく作られていくドーナツ。……でも私は知ってる。この親友―――否、この悪友の恐ろしさはここからだという事を……。
 瑞希は満面の笑みを浮かべたまま、白い粉末の入った茶瓶を取り出す。
 慌てて私は口を出した。
 
「ね、ねぇ瑞希? それ……また学校の理科室からくすねてきたんじゃないよね?」
 
 
『『『『……………は?』』』』
 
 
 女子会のノリで行われるお菓子作りの場に一切関係ないはずの単語が飛び交ったことに、初めてお化け達の笑みが固まる。
 一方で瑞希の方は、
 
「もうっ、みこちゃん! あれは小学校の頃に出来心でやっちゃっただけで、もうそんな子供の万引きみたいな事なんてしませんよぉ~」
 
『『『『ほっ…………』』』』
 
「今回はちゃんと、専門の化学薬品業者に特別にブレンドしてもらったのを発注して買ったものですから安心してくださいね」
 
 『『『『…………ッ!?』』』』
 
 今度こそお化け達の表情が凍り付くと同時に、瑞希が油で揚げる前のドーナツ生地に白い粉を入れたとたん、ステンレスボウルそのものからキュウウという音が響き始めた。
 
『ナンカすてんれすノぼうるガ変ナ音立テルンデスケド!?』
『すてんれすッテ化学反応ニ強インジャナカッタノカ!?』
『メッサジュウジュウ言ッテッゾ!? ホントニすてんれすカ、コレ!?』
『本物ダ! SUS310サス・サンイチマルッテ書カレテル! 調理器具ノ中デモ1番酸ヤあるかりニ強イ高級すてんれすジャナイカ!?』
『嘘ダト言ッテヨままァッ!!』
 
 ……何気にお化け達がステンレスの性質に詳しいのには驚いたけど、彼らの気持ちは、過去に瑞希の料理を食わされる直前の私と全く同じだ。
 瑞希は朗らかな笑みを浮かべて―――その瞳の奥に奈落のような闇をたたえたまま―――言った。
 
「やっぱり隠し味って大事ですよね~。ハナちゃんも、隠し味を使ってる時の方が「美味しい美味しい」って言ってくれますもん」
 
 ……うん、あの・・瑞希の料理を本気で「美味しい」って言えるのハナだけだもんね。ほんと尊敬するわ。
 やがて生地を高温の油へと投入する。
 本来ならジュウジュウという音と共に生地から気泡が昇るだけであるが―――何という事でしょう! 油の液面から緑色の煙・・・・まで湧き上がるではありませんか!?
 
 
 
『ヒ、ヒイィィッ!? コ、コウナッタラ俺ガアノ鍋ヲヒックリカ返シテヤ―――ッテ、ナンダ!? 鍋ニ触レタトタン、右手ガ離レナイドコロカ、身体ガ鍋ニ吸イコマレ―――ギャアアアアァァァァァッ!!?』
 
 
 
 お化けの1匹が、現世の物体に触われるはずもないのに悪あがきをしようと、油の満たされた鍋の側面に触れたとたん、触れた位置を起点に全身が掃除機に吸い込まれるかのように鍋の中へと吸い込まれて・・・・・・・・・・・いった。
 
 
 ……私とお化け達が、今しがた見た光景を受け入れられずに放心していると、急に鍋の中の油がうごめき、まるでドラクエのヌーバーのような形となって液面が盛り上がり、断末魔の叫びをあげる。
 
 
 
 
 
『ア゛ア゛アアアアァァァァァァア゛アァァアアァァァッ!!!? バラガン様ァッ!! 藍染様アアアァァァァッ!!』
 
 
 
 
 
 幸か不幸か、瑞希とハナには、そのおぞましい光景と声が見聞きできないようだった。……ってか、「ばらがん」とか「あいぜん」って誰?
 すぐさまお化け達が騒ぎ出す。
 
『モウ嫌ダアアアアァァァァァッッッ!!』
『ハ…早ク逃ゲナイト……!?』
『だ、駄目だ! 俺がみんなに伝授した特殊な憑依のせいで、あの女の半径5m以内から離れられねぇッ!?』
『畜生ッ! 元ハト言エバ、オ前ガ変ナ憑依法ヲサセタカラダロウガッ!!』
『何だよ! 「一生ついてくる」って言ってたじゃねぇか!!』
『マモナク、ソノ一生ガ終ワリソウナンデスケド!?』
『タッ…助ケッ……!? 助ケテェッ!?』
 
 今まで私に対して『見える? 見えてる?』などと言って怖がらせてきた怪物達が、面白いように命乞いをするのを、ほくそ笑みながら眺めていると、瑞希の口から死刑宣告が発せられた。
 
「よし! できたぁっ!!」
 
 その無邪気な声にお化け達の肩がビクッとなり、一斉に瑞希が作ったドーナツへと視線が殺到する。
 
 
 
 するとそこには―――見た目だけは美しく仕上がったドーナツが、燦然と輝いていた。
 
 
 
『『『…………え?』』』
 
 
 
 お化け達は困惑する。ついさっきまで見ていたのは夢か幻だったのだろうかと、過去の私のように自問しているのだろう。至って正常な反応だ。かつての私のように、先ほどまで見ていた悪夢が我が身に降りかかるなど、完全に忘れてしまっている顔だと思う。……あんな恐ろしい料理を作るのに、なんで出来上がりはプロ顔負けの美しさなんだあいつ……。
 
「わぁ~! おいしそぉ~!!」
 
 とハナ。……こいつ、見た目さえ美味しそうなら、鉄骨さえ嚙み砕いて食べてしまいそうだから怖いのよね……。
 ……ってか、下手に消化不良を起こす鉄骨よりも危険な瑞希の劇薬料理を「美味しい」って言いながら食える、こいつの身体の構造が本当に気になる。これはハナだけでなく瑞希にも共通することだけど、これ・・を食えるから胸が大きくなるのだろうか? ……だったら、お化けの憑依によって味も感じないし、お腹に何も溜らない今だけが、この豊胸料理(※超神水ばりの毒劇物)を食べる最初で最後のチャンスでもある。
 
『ナ…ナァ、ドウ見テモ普通ダヨナ、アレ?』
『ソ、ソウダナ……。タブン疲レテルンダロ、俺……』
 
 
 ……けど私は知っている。この『劇物』を口に入れたとたん、大抵の人間は生死の境をさまよう事になる。……もちろん使用されてる薬品の毒性で死にかけるというのもあるけど、それより更に恐ろしいのは、そのものにある。食ったら最、この味のトラウマを植え付けられる。
 
「さ、召し上がれ♪」
 
 瑞希はにっこりと笑って、出来上がったドーナツをトングを使って皿に乗せ、私へと差し出した。
 背後でお化け達が『旨ソウダ!』などと騒ぐ声にかき消されて聞こえにくいが、でも確かに私の耳は聞き取っていた。ドーナツを掴んだトングと、それが乗っている皿から『キュウウゥゥゥ……』という、化学反応を思わせる音がしている事に。
 ……もしも今日、こうしてお化け達を連れてない状態だったなら、何らかの理由を付けてこの場に来ないようにしていただろう。例え私に自殺願望があったとしても、瑞希と一緒にお菓子作りなんていう、正気を疑うような気違いじみた方法だけは選ばないはずだ。
 
 一瞬躊躇い、私は意を決してドーナツを一口かじった。
 
 瞬間―――何という事でしょう! 一切の味がしないではありませんか!! だからお化けをスルーする際に鍛えたアドリブにより、満面の笑みを浮かべて咀嚼する。
 
 そして同時―――ギャラリーと化したお化け達の1匹が、急に大絶叫を上げた。
 
 
 
 
 
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッッッ!!!?? イダイイダイイダイイダイイダイッ!!?』
 
 
 
 
 
 そう叫びながら右へ左へと転げまわり、両手で胸元を搔きむしり―――いや自分の胸元の肉を引き裂いた!? それでもなお絶叫は止まらず転げまわり―――唐突に電池の切れた人形のようにピタリと止まった。
 
『オ…オイ、イクラナンデモ冗談ダッテバレバレダゾ? 歌ニモアルダロ、おばけハ死ナナイシ、病気モ何ニモナ―――』
 
 
 
 瞬間、倒れていたお化けの全身が弾け、無数の青い光の欠片となって空中へと溶けていった。
 
 
 
『し……死んだ……死にやがった……変なもん食っただけで死にやがったぞオイ!? こいつら死神でもねぇのに、なんで俺らを殺せるんだ!? ってか今のドーナツ、ホントなら「みこ」って呼ばれてた女が食っちまうはずだったよな!? え、何? こいつ苛めを通り越して暗殺でもされそうだったの!? ―――ってか、そもそも味がしないはずなのに、なんで旨そうに食ってる・・・・・・・・んだよ!? おかしいだろッ!!』
 
 まともに話せる唯一のお化けが激しく混乱している。……ってか死神って何? ゲームに出てくる、あの鎌を持った骸骨ローブ姿が、こいつらにとっての天敵なの? それとも電車の中で会った、あの『斧の人』みたいな外見なの?
 ふと思いついた私は、お化け達に目を向け、『どうせこの後、瑞希のドーナツを食ってコイツ等全員は死ぬんだ』という思いとともに、小さく呟いた。
 
 
「……ざまぁ」
 
 
『あ、こいつ今「ざまぁ」って言ったぞオイ!? 見えるの? 見えてんの、ねぇ? こっち見ろよおおおぉぉぉぉッ!!!??』
 
「にやり」
 
『やっぱこいつ見えてたよコンチクショオオオォォォォッ!!!』
『アンタ、俺ラニ恨ミデモアンノカヨ!?』
『チョット更衣室覗イタダケジャネェカ!』
『オ風呂モ覗イタヨナ』
『アレハ良イ尻ダッタ』
『デモ胸ハ残念ダッタナ……ッテカ、ガッカリダッタ』
 
 
 
 
 
 ―――死刑執行デス・ペナルティ……。
 
 
 
 
 
「瑞希、ドーナツお代わり追加、じゃんじゃんお願いね」
「うふふ。はいはい、ちゃんとお代わりどころか、お土産までありますよ~」
 
 
『『『『ノオオオオオォォォォォォッ!!!!!!???』』』』
 
 
「あむ…」
『ギャアアアアァァァッ!?』
「もぐもぐ……おいしー」
『グハッ!? 悪ルカッタ……!俺ラガ悪ルカッタ!! ダカラ許シテクレェッ!?』
「みこちゃん、こっちはチョコ味ですよー?」
『チョ…ヤメッ……、下手ニオカワリ持ッテ来ンナァッ!!』
「ありがとう瑞希。今日は残機が沢山あるから良かった」
「ざん……え、なに?」
「ううん、何でもない」
 
 
慚愧ざんきニ耐エナイ!? グフッ……ウボアアアアァァァァッ!!?』
 
 
 日頃ストレスを与えてくるお化け達の断末魔を子守歌のように聞きながら、和やか(爆笑)に過ぎていくティータイム。
 しかし、どんな楽しい時間(ww)にも終わりというものはやってくる。
 
「あ……もうこんな時間だね」
「あらあら、残念ですね。ではこっちのお土産をどうぞ! ハナちゃんにはこっちですね!」
 と、紙袋に分けて渡してくれた。……瘦せの大食いであるハナのは、私のお土産の5倍くらいあったけど全然妬ましいという感情が湧いてこないのは、きっと瑞樹の料理の恐ろしさを知っているからだろう。
 ふと視線をお化けに向けると、都合の良いことにハキハキと話せるお化けだけが生き残っていた。他は全滅しており、生き残った本人も体育座りしたまま耳を塞ぎ、まるで壊れた人形のように『やめて、やめて、もうやめて……』と繰り返すだけである。
 
 
 
 
 玄関をくぐり、ハナと別れてから、私はそのお化けに歩み寄って話しかけた。
 
「ねぇ……ウチに住んでるお化けを退治するの手伝ってくれたら、見逃してあげても良いけど、どうする?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ―――この日、人生初の『舎弟』が出来た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ――あとがき――
 
 
 ども、シウスです。
 前回までクソ重い話ばっか投稿してたので、今回は真逆のクソ頭の軽い、それでいて短い小説を投稿してみました。……まぁ、それでどの程度のPV数が叩き出されるのか、実験も兼ねてますけどね。
 
 
 ではまたっ。





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