またひとつどうでもいいことを発見した。どうやら俺の涙腺は潰れちまっているらしいんだ。
うーん、まぁ、よし子ちゃんに俺が泣いてるのがばれなかったのは幸いなんだけどな。
三十路にもなったオッサンが女子高生の胸で泣くとかこれなんて罰ゲーム?
そうです。俺実はちょっと泣いちゃってました。
だって、俺がモロにジルとかよし子ちゃんが無事に逃げる邪魔をしちゃったんだぜ?
俺が助けるとか考えといて何やってんだかな……情けない。せめて、暴走を止める手段があればいいんだがな……何かないだろか。
「気にしたら負けですよ、ムラカミさん!」
うむ、気にしたら負けだ……ってアレ、もしかして泣いてたのばれてる? ……まぁいいや。
とりあえずよし子ちゃんが無事でよかった。っていうか、よく無事だったよねこの子。俺と違って幸運の星の下に産まれてるんだろうね。
いや、幸運だったらそもそもこんな世界に来ないか……?
でもきっと、俺よりは幸運なはず。だって人間だもの。俺はネメシス。……つまり俺が徹底的に不幸だって訳ですねわかります。
「ムラカミさん、これからどうしましょうか?」
今、俺たちは時計塔の最上階にいます。よし子ちゃんにはアイテムボックス禁止令を出しました。また落ちられてもこっちが困るんで。
ここにいればタイプライターが使えるから、よし子ちゃんと気軽に意思の疎通が出来るとです。
ここでセーブしといたら死んでもリセットして復活できるとか……ないよなぁ。
人生にやり直しが出来るっていいよね。でも、やり直したところで俺はきっとネメシスなんだろうな……絶望した! とことん絶望した!!
「ムラカミさん?」
はいはいこれからのことですよね。うーんと……ええとええと、ここからどうなるんだったっけ?
お迎えのヘリを俺が撃墜して、ジルたんが絶望しちゃって……あ、そうだ。俺がジルたんにtウイルス感染させるんだったと思う。
……ってやばいじゃんか! まだしてないよな? 触手使ってないし大丈夫だよな?
……えっと、ということはだ。この子とジルたんを合流させて、ついでにカルロスも合流させて、俺がどっかにひきこもっときゃ楽に脱出できるんじゃなかろーか。
そう言った。殴られた。よし子ちゃんはこの世界にきてからどんどん暴力的になっていくとです……おっさんは悲しいよ。
まさかtウイルスに感染してるんじゃねーだろなこの子。
「でもとりあえず、ムラカミさんはジルさんと鉢合わせしないように引きこもった方がいいかもしれませんね。ジルさんと一緒に脱出するのは無理でしょうし」
うん、無理。またヘリ撃墜したりマグナムで撃たれたりしちゃうよきっと。マグナム結構痛いから、出来ればもう撃たれたくナイデス。
……あの、ショットガンも至近距離で撃たれたら割と痛いからね? もう撃たないでね?
「暴走しなければ撃ったりしませんよ?」
ウソダ! 俺さっき暴走してないのにがっつり撃たれたよ!
……ゴメンナサイ銃口向けないでください。
とりあえず色々と方法を考えてみることにした。
1.ジルとよし子ちゃんを合流させて俺ひきこもる。
よし子ちゃんに否定されました。
2.ジルたちはほっといて、俺とよし子ちゃんの二人で別の脱出方法を探す。
悪くはないんだけど、問題はそんなに脱出方法があるかってことなんだよなぁ。
3.二人で引きこもる。
ダメ、ゼッタイ! それだと核爆弾あぼんルートに一直線!!
4.……
だめだ、思いつかん。やっぱ俺使えない。泣きたくなってきた。涙は出ないけど。
「あの、ムラカミさん。ムラカミさんはカルロスさんを助けてあげたんですよね?」
ん? 一応ね。あの時はまだジルたんと一緒にはいなかったし、カルロスだけなら暴走することもないし……。
そうだ! ジルたんはひとまず置いといて、カルロスと合流すればいいのか!
それなら少なくとも俺ら二人だけで脱出方法探すよりは可能性があるかもしれん!
んで最終的にはカルロスにお願いしてよし子ちゃんだけ脱出させてもらえばいいんだ! この子もさすがに人間に向かって銃はぶっ放さないだろうしな!
「じゃあ、ひとまずカルロスさんを探します! もしジルさんと一緒にいるようだったら、カルロスさんだけを連れてくればいいですよね?」
連れてくる? お嬢さん一体何をおっしゃってるとですか?
「ムラカミさんは引きこもっててください! 私がカルロスさんを探してきます!」
……おいおいおい。一緒に行動しててジルと接触したりしたらヤバイってのはわかるけど、この子一人で放逐して大丈夫なのか?
そろそろ路上にも強力な敵キャラ出てくるぞ、ハンターとか。あいつらすばしっこいよな、俺苦手。
一番苦手なのは巨大なミミズとか芋虫だけどな! 素手で触りたくないゾ。
「大丈夫です! 私、少しは強くなったんですよ?」
……うん、ネメシス相手に立ち向かえるくらいだから強いっちゃ強いかもしれないけどね。おっさんは心配なんですよ。万が一ってこともあるしね。
ほんとはもうちょっと強い武器渡してあげたいんだけど、この辺ガンショップないし、まさかジルたんのを奪い取るわけにも行かないし……ってそうだ!
こんな時の為のアイテムボーックス!
俺は訝しがるよし子たんを放置して、アイテムボックスを漁り始めました。こらよし子ちゃんはこっちきちゃいけません! あんた落ちちゃうでしょ!
てきとーに手を突っ込んでゴソゴソやってたら、出てくるわ出てくるわ。ちょっと、俺でも取り出せるってどうなのよ?
ジルたん開けてびっくりアイテムが一つも入ってなかったー、みたいな? まぁいいや、ジルならやってくれると信じているよ。
で、適当に手に触ったものを片っ端から取り出してみました。えーと、弾からっぽのマグナム……は、さすがに無理だな。
よし子ちゃんの体じゃ弾があっても使えないだろ。
おお、無限アサルトライフル発見! これはいる、と。
使えないものは箱の中にぽんぽん放り込んでゆく。おっ無限インクリボン、これは俺がポッケの中にもらっておこう。
ブルーハーブ……は、別にいらないか? あ、レッドハーブとグリーンハーブもある! よし調合してよし子ちゃんに持たせよう。
それから……マグナムの弾? イラネ。四角クランク……イラネ。
ライター……うーん、とりあえずイラネ。しかしゲームプレイしてるときから不思議に思ってたんだけど、何でライターとロケットランチャーで同じだけ手持ちスペースが必要なんだろう。
どう考えてもライターはポッケに入るよね? ランチャーもポッケに入るとですか?
ねえねえよし子ちゃん、銃の弾は後どのくらい残ってる? ……ショットガンの弾はまだまだあるね。ナンブの方は……うーん、心許ないな、追加追加。
ところでよし子ちゃんは、どのくらいアイテム持てるんだろう。ちょっとここに立って、うん。んでジーンズの左腰にナンブで、手にショットガンかアサルトライフル。使わない方は背中に背負っといてね。あれ? そんなリュック持ってたっけ?
「最初に居たロッカールームにあったので拝借しました」
よしよしそれなら弾は問題なく持てるね。入るだけ弾詰め込んで……調合したハーブもこっちに入れとくよ。
果物ナイフは横のポケットに入れとくから忘れないでね?
……なんか遠足に行くわが子の準備をしてるオカンみたいだな。まぁいい、他に使えそうなものはないかな……さっきのライターもナイフと一緒に入れておこう。
どこで何が役立つかわからないからな。あれ、これなんだ? ……ファンクラブ限定カルロスブロマイド? 誰だこんなもん入れた奴ぁ。イランイラン。ぽい。
結局、銃三つとナイフ一本。調合したハーブに救急スプレー一本。それに充分な量の弾とライター。
こんなもんでしょう。っていうかもう入らん。
ジルならこれで大丈夫だろうけどよし子ちゃんだとイマイチ不安だな……。
「ムラカミさん、これは何ですか?」
ああ、それはね、グレネードランチャーって言ってね、……説明すんのめんどくさいから銃の一種だよと言ってすませた。
強力なんだけど、弾の装填に時間かかるし、何より弾がかさばるんだよなぁ。現実問題、よし子ちゃんがこれ以上武器持つのはムリだしね。
ナンブと交換してもいいんだけど、小回りの利く銃も一つは持ってた方がいいと思うのよ。
あ、よし子ちゃん、アサルトの使い方教えておくから、雑魚ゾンビとかワン公には遠慮なくコレ使ってね?
強い敵には効果薄いから、その時はショットガンをぶっ放しなさい、君ならやれる。
……それでは、俺は引きこもります探さないでください。
「ここから動いちゃダメですよ?」
はい、了解しました。……ああ、不安だ。果てしなく不安だ。
だが俺がウロウロするわけにはいかない。……何で俺ネメシスなんだろう。
~中の人は絶望した!~
杉内で勝てなかったら誰で勝つというんだorz
CSの話です。