「「「「「火のぉ用~心」」」」」
日本人って民族がよく解からなくなるのは、こういう時ね。
「…火の用心」
夜回りとかいうこの風習については、まあいいわ。
火事や盗難が多いって云う年末に、防犯や防災のために見回るのは悪いことじゃない。
「「「「「マッチ1本、火事の元」」」」」
問題は、それを常夏になってまで、MAGIの監視まで有る第3新東京市でもやろうとすること。
「…マッチ1本、火事の元」
ちょんちょん、とヒョーシギってヤツを打ち合わせる音。
いや、このヒョーシギっての、ちょっと面白いけどサ。なんて思ってたら、シンジが口の中でこっそり笑った。
『……笑うことないじゃない』って文句言おうとしたんだけど……
「サンマ焼いても、家焼くな」なんて、バカトウジが言うもんだから、シンジがヒョーシギ打ち損じちゃった。
「……」
「ちょっと!大丈夫!? 碇君」
左の親指を硬い樫材で打ち付けちゃったのを、ヒカリは見てたんだろう。うずくまったシンジに即座に声を掛けてくれる。
「なんだよトウジ、そりゃ」
「あ~いや、関西じゃ必ずそない言うんヤけど、まずかったかいな?」
バカトウジの声が、徐々に遠ざかっていく。
この体勢からでは見えないけれど、なにがバカトウジを追い詰めていっているのかは、明白だわね。
「堪忍してくれ~」
あれ? 逃げ出した足音を追いかける足音が一人分だけ? と思ったら、もう一人分は別方向へ。
挟み撃ちにするつもりだろう。バカトウジの命運も尽きたわね。
終劇
2009.01.01 DISTRIBUTED