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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 破 第五話
Name: まっこう◆564dcdfc ID:4098afbe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/08/12 15:01
暑いしコロナだし。EVAの世界はもっと暑いのかしら?


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「で、なんであんたがここにいるの」
「電気止まったから。夜はネルフに泊まるけど、昼はここにいなさいって言われた」

 使徒を倒した翌日の昼、レイは葛城亭のテーブルに陣取りTVを見ていた。TVは懐かしのアニメ番組が流れている。レイが住んでいるマンションは送電が止まっている。復旧には三日間ほどかかるらしい。昨日はネルフ本部内の宿泊施設に泊まったが、昼間は葛城亭に世話になる事になっている。手に包帯を巻いているのは、零号機が使徒のコアを掴んだため、それが影響して軽い火傷状態だからだ。

「じゃ、あんた夜の料理当番ね」
「私、料理出来ない」
「別に豪華な料理を出せって言うんじゃないわよ。パスタでも茹でればいいわよ」
「パスタ?」

 珍しくレイが困り顔だ。アスカが眉をひそめた。

「あんた、バカシンジに続いて、ダメレイね」




EVAザクラ 新劇場版

破 第四話

パーティー




 市街地に流れ込んだ使徒の体液は直ぐに腐り出した。使徒の遺伝子構造は人間のそれに近い。構成している物質は水分やタンパク質や脂肪などで、ATFが無い今、地球の細菌類も分解出来る。そのせいでやたら臭い。それに微妙に違うアミノ酸配列のタンパク質があるのか、分解すると変わった臭いがする。普通の街なら清掃作業は戦自が担当だが、第三新東京市の場合はネルフの施設部が担当する。今度の使徒はやたらデカかったため残骸の運搬にはWWRも協力した。そのため大型輸送機であるTB2は動きっぱなしだ。本来はソノミが指揮するところだが、大道寺コーポレーションの長としての仕事もあるので、隊長代理としてマリエルが指示を出している。
 災害慣れはあまりしたくはないものだが、第三新東京市の市民は災害慣れしている。第三新東京市自体は軍事都市だが、周辺にはいくつか民間の非軍事企業がある。一つは大道寺コーポレーション、もう一つはfireflyだ。本社兼研究所が第三新東京市を挟んで対称の位置の小さな山の斜面にある。使徒の残骸の直撃は受けなかったため、二社とも本社機能が助かった。今回の様に被災時はこの二社が中心になって一般市街地部の復旧が行われる。
 ジオフロントのシェルターにいた避難民は、使徒の被害がなかった公共施設のうち主に学校に一時移動することになった。第三新東京市では元々その様な事も配慮した学校作りとなっている。体育館が学校の規模に比べて大きいのはここが物資の配給所などに使われるためだ。第壱中の体育館にも役所や企業の窓口が設けられた。まず市役所の被災関係の手続き窓口がある。その窓口で振り分けられて、衣料、住居、医療関係は大道寺コーポレーションが、食料関係はfireflyが面倒を見る。両者とも自前のロジスティクス部門があるためこういう際は動きが速い。他にもマスコミ・官公庁などとの対応や折衝はソノミが引き受ける。

「こういうときこその、駄菓子です」

 いつもの派手なフリル付きの衣装でCEO自らお菓子を配っているのはホタルだ。宿泊所になっている学校の教室を廻っては、子供達に駄菓子を配っている。ホタルは自分の会社のキャンペーンガールもやっていてちびっ子にはTVでおなじみだ。派手で綺麗で面白いお姉さんが駄菓子を配るだけで、小さな子供は安心する。

「ブタメン、えーじゃんげりおんチョコ、いかんぼう、いくらでも持っていってくださいな」
「アンズがいっぱい担いでいるからいくらでもいいにゃ」

 アンズは帽子も被っていないし、短いスカートだ。猫耳と尻尾は見えている。最近アンズは街の住人に、いつでもコスプレをしている運動神経のよいお姉さんと思われるようになった。そのため、普段はそういう人だとアンズ自身も思い込むように、BIG-RATでカバーストーリーを覚え込まされている。黙っていればそれなりに美人だし、お菓子を配る力仕事にはうってつけと言うことで、手伝っている。
 一方体調を崩した住民や子供達には大道寺家の医療スタッフが対応している。屋敷の医務室と連携して、具合が悪い者は大道寺家の屋敷の臨時の宿泊所や大学病院などに搬送している。スタッフの確保もソノミの政治力や顔の広さでなんとかなっている。




 民間も大変だがネルフや役所も大変だ。トーゴーなどは本職の市役所土木課の仕事が忙しく、代打の仕事が出来なくて金欠で困っているらしい。もちろんネルフ職員も休む暇はない。

「おつかれさま。これお土産」

 しかだ駄菓子店と喫茶えんどうも被害を免れた。使徒が落ちた現場に近く、他にネルフの指定店も無い事もあり、客はネルフの関係者だらけで、ほとんどネルフの一時休憩所と化している。使徒の残骸の後始末も作戦指揮は作戦部が行う。ミサトはおかげでてんてこ舞いだ。喫茶えんどうに端末を持ち込んで仕事をしていた。

「ありがとう」

 端末から顔を上げると、加持のにやけ顔があった。ついでにしかだ駄菓子店の大人向けのお菓子であるウィスキーボンボンの袋がコーヒーカップの横に置かれた。

「丁度お茶菓子が切れたところだったわ」
「葛城は働き過ぎだよ、あっサヤちゃん俺もコーヒー」

 顔見知りになっているらしい。今日はバイトの大学生はいない。大学は使途の残骸の直撃は食らわなかったが、体液の洪水の通路だったため、やはり当分休校だ。

「現場監督は大変なの。仕事漬けよ。あんたみたいな暇人と違うわ」
「そりゃどうも。そう言えば普段昼飯はシンジ君の手作りだって。ま、キミは手料理ってガラじゃないしな」
「わるうございました」

 加持が隣の席に座って顔を近づけてきたので、ミサトはそっぽを向く。

「もうちょっと余裕持てよ」
「余裕なんて持てないわよ」
「まあ、キリッとしたところと普段の落差が葛城の魅力でそこに惚れたんだが」
「浮気男が何言っているんだか」

 ミサトの口調はそれほどきつくない。いつものやりとりらしい。

「おっとそこに置いて」

 サヤがコーヒーを持ってきたが、ミサトたちのやりとりが終わるまで待っていた。加持の目の前にホットコーヒーを置いた。

「あの、ミサトさん。あれいつ頃片付きそうですか?バイトに予定を伝えたいので。結構ネルフの人が来るので一人だと大変なんです。兄もfireflyの仕事が忙しくってこっちにこれなくて」
「一週間はかかるわね。ここ便利なんで職員がいっぱい利用するのでよろしく」

 サヤのおかげで、話に区切りがついて少しほっとしたミサトだった。




「綾波来てたんだ」
「レイちゃん」

 マンションの周りを散歩していたシンジが戻ってきた。アンズもホタルの手伝いからの帰りでシンジと待ち合わせて戻ってきたところだ。アンズはレイに抱きついて頬ズリをしている。シンジもレイと同じく手のひらが包帯でぐるぐる巻きになっている。

「なんか、レイは昼の間はここにいるんだって。まっ妥当な判断ね。私眠いから寝るわ。昼ご飯作っといたわよ」
「ありがとう、アスカ」

 アスカは頭をかきかき自室に戻っていった。テーブルには三人分のサンドイッチがある。卵サンドだ。アスカはゆで卵にはこだわりがあるらしく、固めのゆで卵とマヨネーズと辛子のサンドイッチが好きと言うことだ。

「ねえねえレイちゃん。お願いがあるの」
「なあに」
「この本は漢字がいっぱいで読めないから、預けとくから、行ったら読んで」

 アンズはレイに文庫本を渡した。題名は「姉弟にっき」だ。

「本屋さんも学校に避難していて、子供にお菓子配ったら、代わりにくれたの。前から気になっていたんだけど、読めないから買わなかったの」

 魚洞のある商店街の皆はジオフロントのシェルターに避難していた者が多い。本屋の親父もそうだ。商店街は使徒の体液の直撃は免れたが、それでも粉塵などで当分店は開けられない。暇つぶしにしてもらおうと、最近のヒット作を持ってきて皆に売っていたが、アンズにはプレゼントしてくれたらしい。アンズはWWRの隊員と思われていて、そのお礼でもあるらしい。

「わかった」

 レイはネルフから支給された高級ブランドのシリコーンバックに入れた。この前の養殖センターでのテロの後、持ち物は基本防水防刃が出来る物になっている。

「後で防水加工をしてもらう」
「頼んだにゃ」

 レイとアンズが話している間にシンジはポットのお湯で紅茶を入れた。アンズには麦茶を用意する。

「じゃ昼ご飯にしよう」
「いただきます」
「「いただきます」」




「今回は呼吸も心臓も止まったんだぞ。いいか、お前に言うのは釈迦に説法だが、死んだら終わりだ。いまは無敵のマジカルクイーンじゃないんだ」

 いつもならたばこを片手に言っているが、さすがに病人の前では吸えない。そのせいかクキコは結構いらついている。

「今の木之本の魔力なら、私でも封じ込める。でもそれは嫌だろ」
「はい」

 ここは大道寺の屋敷の医務室だ。部屋にはサクラとクキコと看護師資格を持つメイドが一人いる。ベッドで身を起こしているサクラにクキコが説教をしている。TBNで運搬途中に後部座席の自動医療装置で蘇生したサクラは、屋敷ではなく大道寺島の医療室の方へ運ばれた。そこで治療を受け、ある程度回復したところで屋敷の医務室に移された。戻ってきたそうそうクキコにより魔力的なチェックも行われた。最近ではクキコはWWR専属の対魔スタッフとしてお金も貰っていたりする。そうでなくても可愛い教え子であるには違いなく、クキコのほうからやってきた。

「なあ、そろそろあの碇は木之本の碇と違うと認識した方がいい。難しいかもしれないがな」
「うん。サクラも判ってる。でも、同じ顔かたちなの、同じ声なの」
「そうか。ともかくだ」

 クキコは立ち上がった。左手でサクラの頭を撫でる。

「生きていればこそだ。今度無理する時は私に連絡しろ。少しは役に立つ」

 クキコは微笑んだ。つられてサクラも微笑んだ。




 三日後、サクラは医務室から自室に移された。看護師のメイドもナースコールをすればとんで来るが、今は一人だ。サクラはあまり部屋が大きいのは好きでは無いため、大道寺家の部屋としては狭い十畳程の部屋を使っている。家具はベッドに机、簡単な応接セットだ。ただ収納スペースはたっぷりあり、小さなバルコニーも有るため手狭な感じは無い。その日の夜、サクラは寝入りばなバルコニーのガラスをノックする音を聞いた。ベッドを降りるとバルコニーに向かう。思った通りの人がいた。気配で判った。

「夜にごめんね」
「いえ、来てくれて嬉しいです」

 バルコニーの窓を戸を開けるとジャンボジェットの模型を持って訪問者は入ってきた。靴はバルコニーに脱いである。サクラはスリッパを渡した。サクラの部屋は24時間監視があるはずだが、サクラが何かしたのか訪問者が何かしたのか誰も来ない。

「こんばんわサクラちゃん」
「こんばんわマリーさん」

 サクラは部屋の端のソファーを勧めた。マリーはジャンボジェットの模型をバルコニーに置くと部屋に戻りソファーに座った。サクラは隣に座る。

「大変だったわね、もう大丈夫?」
「はい。少ししたら学校もいけます」
「それはよかったわ」
「昼間くればお茶とかお菓子とか出せたのだけど」
「日本に来て百年経つけど、交通機関が苦手なの。混みすぎ」
「そうですね。ところでなんでジャンボジェットの模型に乗っているんですか?」
「昔は箒に乗っていたんだけど、箒って魔女と結びつけられる事が多いでしょ、私魔女じゃないし」

 魔女だと思ったがサクラはそこは黙っていた。

「で、何かいい物がないかいろいろ試したんだけど、あの形なら両手で掴めて安定するし、飛行機なら空飛んでいるし、ネットの通販で買ったのよ」
「私は杖ですね」
「あの杖可愛いわね。TVで見ると日本の魔法少女ってカラフルで派手な衣装を着ているわね。目立ちそう。怖くない?」
「えーと、日本もばれると怖いけど、魔女狩りはなかったし」

 同じ様な能力を持っていて出自が違うマリーと話すのは楽しい。二人は話し込んだ。

「あら、もうこんな時間ね」

 マリーは立ち上がった。もう丑三つ時だ。

「よかったら今度お店に来てね」
「はい。みんなで伺います」
「じゃ帰るわね」

 マリーが手を伸ばしたのでサクラは握った。

「あのサクラちゃん、また未来が見えたんだけど」
「どんなですか?」
「近々出会いがあるわ。あなたにとって良いか悪いか判らないけど」
「そうですか。でも、ありがとう。助かります」
「どういたしまして」

 マリーはぶんぶんとふって握手をするとバルコニーに出る。ジャンボジェットの模型にまたがった。

「それじゃまたね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」

 マリーは手を振りつつ空を帰って行った。サクラは見えなくなるまで手を振っていた。




 五日間が過ぎた。一週間で使徒の残骸の後始末は終わった。学校を避難所にしていた人たちも皆、行き先が確保できたので、学校が再開となった。めでたい話なのだが怒っている人もいる。その日の昼休みだった。

「えぇー。お弁当持ってきてないの」

 アスカはシンジに顔を近づけわめいていた。教室は食堂や売店にいっている者が多く人はまばらだ。

「昨日は初号機のテストがあったから、寝て無くて、作る時間なかったんだよ」

 初号機が優先して修理されているため、シンジだけ急に呼び出されることが多い。昨日も夕方呼び出されて初号機の調整につき合わされた。

「だからって、このあたしにお昼なしで過ごせってーの。あんたは」
「だから明日はちゃんと作るよ」

 そんなやり取りをする二人を見てトウジがにやついた。

「なんや?また夫婦喧嘩かいな」
「違うわよ」「違うよ」

 アスカとシンジは息もぴったりに否定する。

「大体それならジャージはどうなのよ、ほら奥さんよ」

 丁度ヒカリが教室に戻ってきた。サクラやトモヨ、ケンスケも一緒だ。

「ねぇーヒカリ」
「え、何?」

 アスカがにたつきながらヒカリに近づいていく。今度はトウジが慌てた。

「なっなっなんや」
「変な鈴原」




 翌日は肉中心のお弁当がアスカに用意された。アスカがおかずを摘まみながら窓の方を見るとシンジがレイにお弁当を渡していた。最近は食べる喜びを知ってきたレイだが昼食はいつも食べなかった。なんとなく心配に思ったシンジがレイの分も作ったらしい。

「いつも食べないけど、よかったら」
「あっ、ありがとう」

 そんな会話が聞こえてきた。視線を戻すと目の前にヒカリが立っていた。

「アスカ、ご飯一緒に食べない」
「いいわよ」

 ヒカリはアスカの前に座った。最近はずいぶんアスカとヒカリは仲良くなった。元々ヒカリは誰とでも仲良くが主義だ。その上ヒカリはWWRの隊員になってから、いろいろな機密事項に触れたり、救助活動で命の選択に近い事を繰り返すうちに、自分の正義をヒステリックに言う傾向が収まってきた。その為、アスカも秘密をある程度知っていてその上であまり踏み込んでこなくなったヒカリを気に入っている。

「碇君が気になるの?」
「別に。レイは学校で昼ご飯食べるの見ないなって思って」
「そうね。綾波さん食べる時は食べるのに」
「まあ、いいわ。ところでヒカリ、旦那の分はあるの」
「旦那って」

 少しヒカリの声が引きつる。アスカは目つきが少し怪しくなる。この辺りは上司であるミサトに似ている。

「ジャージよジャージ」
「す、鈴原は」

 今日も概ね平和だ。




「アンズちゃんありがとう。助かるわ」
「どういたしまして」

 アンズはその頃街でボランティアだ。使徒の体液の直撃を受けた所はネルフが大方綺麗にしてくれたが、それでも臭い。手が空いている住民は総出で清掃作業だ。今日アンズは商店街の街灯やアーケードを掃除している。身が軽いアンズは皆が手が届かないところも綺麗に出来るので感謝されている。今は魚洞で一休みだ。魚洞は明日営業再開なためコダマも忙しく、アンズの手助けは大助かりだ。

「はい、マスのおにぎり」
「ありがとう」

 魚洞の店兼自宅のダイニングキッチンに通されたアンズは、昼ご飯となった。よく働く分よく食べる。アンズは遠慮が無いので、コダマの用意したおにぎりがどんどん消えていく。

「アンズちゃんは、今は人間の格好しているでしょ。学校は行かないの?」
「えっと、トモヨちゃんと話したけど、人間の常識がもう少し身についたらナデシコ学園の入れて貰うことになっているの」
「あら、良かったじゃない」
「でも今はシンちゃんがお仕事大変だし、だから家のお仕事をするんだにゃ」
「そう。アンズちゃんがいてシンジ君心強いわね」
「アンズはお姉ちゃんですから」




 その日の夜レイはEVAの訓練は無かったがリツコ達とミーティングがあり、遅く帰宅した。通いのコックは帰った後だ。部屋は綺麗に片づいていた。冷蔵庫の中にシチューがあった。

「パスタ」

 アスカに言われたことを思いだした。とりあえず茹でてみることにした。茹でてシチューの中に入れれば食べられるだろう。冷蔵庫に7分でゆであがるスパゲッティーがあったのでそれを取り出す。取り出したはいいが茹で方が判らない。幸いなことにスパゲッティーの袋に書いてあったのでその通りやってみることにした。お湯を鍋にはって、沸騰させる。袋から出したスパゲッティーを100gはかり、鍋に突っ込んだ。はみ出して入りきらないので、折って突っ込む。その際に少しお湯が手にはねたので、水で冷やした。
 7分測ったスパゲッティーをシチューが入っていた皿に入れてみた。

「固い」

 アスカがこの前茹でて見せたパスタより相当固い。それにシチューが水っぽくなっている。残すのはもったいないので全部食べた。研究の余地がある。レイは使った食器を洗い始めた。食器洗浄機もあるのだがなんとなく手で洗うことにした。鍋を洗い、皿を洗った。手を拭くと、学生鞄からお弁当箱を取り出す。シンジから貰ったお弁当の容器を取り出すとそれも洗う。洗って水を切ったところで手を止める。

「ありがとう、感謝の言葉、初めての言葉。あの人にも、言ったことなかったのに」

 呟くと弁当箱をじっと見る。

「お弁当」




 翌日レイは学校を休んだ。シンジは担当に理由を聞かれたが知らなかった。レイが学校を休むのはよくある事だが、最近はあらかじめアンズを通してシンジに連絡が来ることが多い。チャットで一言「今日はお休みです」と来る。そうしないとレイが休んだことを聞いたアンズがうるさいからだ。今日は連絡が来ていない。

「休んでいる時何をしているんだろう」

 窓際のレイの席を振り返る。やはりいない。




 その日レイは水槽に浮かんでいた。LCLの水槽はレイにとって故郷のような物だ。もし母がいたらこんな感じなのかもしれないと思ったことがある。アンズと話していて、お母さんの話になることがある。アンズもお母さんを知らない。どんな物なんだろうと二人で話したことがある。アンズは暖かい物だと主張していた。

「レイ、食事にしよう」

 レイがそんな事を考えていると、水槽の前にゲンドウが現れ、声をかけた。

「はい」

 レイが水槽から出て着替えて司令室に来ると、食事の準備は整っていた。長いテーブルの端と端に向かい合って座る。

「いただきます」
「ああ」

 昔のレイならば申し訳程度に手を付けて終わりだったが、今は違う。メインの魚料理をおかずにおひつのご飯を何度もおかわりをしている。

「レイ、美味しいか?」
「はい。碇司令は美味しいですか?」
「ああ」
「碇司令」
「何だ?」

 レイは箸を止めるとゲンドウをじっと見た。

「碇司令にとって食事って、楽しいですか?」
「ああ」
「誰かと一緒に食べるって、嬉しいですか?」
「ああ」
「ではなぜ司令はいつも一人で食べるのですか?」
「忙しいからだ」
「そう」

 レイは少し口を開きかけ、閉じた。また箸を動かした。
 
「料理って作ると、喜ぶ、ですか?」
「ああ」

 また急に聞いた。

「碇司令、今度、碇君やみんなと一緒に食事、どうですか?」
「その時間は…………わかった。行こう」

 ゲンドウは断りかけたが、レイの表情にユイの面影を見て言い直した。ゲンドウの言葉にレイは微笑んだ。




 使徒が来ないとチルドレンはわりと暇だ。日課のシンクロテストが終われば、ネルフからは帰宅となる。ただ学生としての三人は忙しい。頭の出来はいいアスカだが、流石に古文や国語は苦手だ。語学は独学は効率が悪いと、その日はヒカリと洞木家で勉強だ。シンジはと言うと家事が溜まりに溜まっているため家に戻っている。

「食事会。パーティーね」
「食事をする会、パーティーじゃない」

 レイは家に戻るとアンズを直ぐ呼び出した。夕食を作るコックはまだ来ないのでその前に話したい。アンズは丁度向かっていたらしくものの五分で到着した。アンズはワンピースに帽子だ。最近はこの格好が多い。
 リビングの隅に置いてある畳に座った。レイはストックしてある麦茶のペットボトルといかんぼうを出した。食事会について説明した。

「私やシンジ君が、料理をして、碇指令にごちそうするの」
「ふーん。レイちゃん料理出来るの?」
「出来ない。だから練習するの」
「じゃコックさんに習ったら?これから来るでしょ」
「そうする」
「シンちゃんのお父さんは何が好きなの?」
「卵料理だと思う」
「じゃゆで卵とオムライスね。アンズもすきだにゃ」

 結局二人で話し込んでいるうちに大道寺家から夕食を作るいつものコック・ホウメイがやってきた。先日まで大道寺家の食堂を預かっていた大柄な初老の女性で、そろそろ何十人前の料理を作るのが体力的に辛くなっていたため引退したが、働かないでボッとしているのは性に合わないと言うことで、大道寺家から紹介されてレイの部屋の管理人兼料理人として来ている。レイが相談したところ、料理の仕方を一から教えて貰えることになった。




 子供達は徐々に日常に戻りつつあるが、ミサトたち大人はそうはいかない。EVAは三機とも大破だ。使徒の残骸の後片付けが終わった後は、ミサトはEVAの修理費のぶんどり合戦を予算部門と日夜繰り広げている。ミサトだけではなく、リツコ達の開発部門はその予算をどう使うか、どう予算を節約するかで、夜も眠れない。ネルフだけではなく、使徒の残骸を片付け終わった後、周囲の山が削られたため、崖崩れなどが頻発しWWRも大忙しだ。WWRの隊員でも在学中の者は一応緊急時以外は学問優先だが、TBNは適性がある者がナギサ、ホノカ、ヒカリしかいないため誰か一人はいつも学校にいない状態だ。そんなこんなでみんな忙しい。

「僕が言うのもなんですけど、こうも損傷が激しいと、作戦運用に支障が出てます。バチカン条約、破棄していいんじゃないですか?」

 ミサトとマコト、リツコとマヤはジオフロント内を運行している移動用の列車を使い会議室から戻ってきたところだった。丁度EVAの修理の現場の上をチューブトレインは通り過ぎた。

「そうよねぇ。一国のエヴァ保有数を三体までに制限されると稼動機体の余裕ないもの」

 ミサトの言葉を聞いてマヤは携帯端末を見た。表示される修理状況を見てため息をつく。

「今だって初号機優先での修復作業です。予備パーツも全て使ってやりくりしてますから、零号機の修復は目処も立たない状況です」
「条約には、各国のエゴが絡んでいるもの。改正すらまず無理ね。おまけに五号機を失ったロシアとEUが、アジアを巻き込んであれこれ主張してるみたいだし、政治が絡むと何かと面倒ね」

 リツコも珍しく声に張りがない。

「人類を守る前にすることが多すぎですよ」
「まあ愚痴ってもしょうがない」
「そ、予算は超優秀なマコト君がなんとかしてくれるわ」

 ミサトはお気楽を装いウィンクをした。

「はいはい。やっかい事は僕ですね」




「えっと、こんなパーティー開いて頂きありがとうございます」

 いろいろ忙しいがいいこともある。以前初号機の暴走に巻き込まれて負傷入院していたトウジの妹、鈴原サクラが退院となった。WWRの隊員の家族なら私の家族とばかりにソノミがパーティーを開いてくれることになった。父子家庭で、父親も忙しいトウジとしてはとてもありがたい。ただあまり大規模にやるとサクラが遠慮してしまうということで、大道寺家の食堂で鈴原サクラの友人とトウジの友人だけを呼んで開くことにした。

「個人的にはこの服がとても嬉しいです」

 サクラはフリルがいっぱいついたブラウスを着ている。これもソノミの退院祝いだ。大道寺コーポレーションが展開するブランドの高級子供服の中から好きな物を選んで良いとのことでこれになった。上から下まで、ピンクなのは名前通りだ。

「あの碇さん、お兄ちゃんの戯れ言は気にしないでください。お兄ちゃんは私の事になるとしょーもないことするから。お仕事頑張ってください」
「えっ、あっ、はい。頑張ります」

 トウジと違うと言っては失礼だが、なかなかの美少女だ。同じサクラでもふんわかした木之本サクラとは違いキリッとした感じだ。主賓の挨拶が終わると早速パーティー開始だ。鈴原サクラの友人達も豪奢な衣装を借りて身につけているため、いささか動きがぎこちないが、それなりにパーティーを楽しんでいる。

「ねえねえお姉ちゃん」
「なあにノゾミ」

 ヒカリの隣の席の少女は鈴原サクラと違い、姉妹で似ている。ヒカリの妹のノゾミだ。

「私の直観だけど、サクラちゃん、碇さんの事好きなんじゃない」
「そうかしら」
「うん。あの視線がなんとなく。となるとサクラ対決になるわね」
「でも、綾波さんもなんとなく碇君の事きにしているし、三つ巴?」
「下手すると私とサクラちゃん、親戚になるね」
「何で?」
「だって」

 ニヤつきながらノゾミは姉を見た。次の瞬間ヒカリは顔を真っ赤にした。

「す鈴原なんて」
「ほほう、妹を騙せると。お姉ちゃんが夜な夜なラブレター書いては捨てているのを知らないとでも。渡してきてあげようか?」

 一方鈴原サクラの方は積極的だ。食事も終わったところで、歓談の時間となったら早速シンジの側に行って話し始めた。

「へえ、第壱小の五年生なんだ」
「はい。二年後には第壱中に行きます。碇さんは卒業しちゃいますね。高校はどこですか?将来何を目指してますか?私今度の入院でお医者さんにお世話になったから、外科医になりたいんです」
「凄いなぁ、僕はまだ考えてないな」
「碇さん頭良さそうだし、何でも成れますよ」

 極度のシスコンで、サクラが男の子と、たとえそれがシンジであっても話しているだけで目つきが悪くなってくるトウジを除いては、眼を輝かせて話しているサクラを周りは暖かい眼で見守っている。ただそうは行かない者もいる。

「サクラさん」

 食堂にある外を眺められるバルコニーでぽつんと立ってサクラが庭を眺めていた。木之本サクラだ。

「どうされました」
「なんか、判った。あのサクラちゃんはこの世界の私」
「どういう意味ですか?」

 限りない優しさがこもった声でトモヨが聞く。

「この世界にとっては私は異物。きっとこの世界で私の命運そういう物を持っている人がいるんじゃないかって、ずっと思っていた」

 サクラの声が微かに震えている。

「あのサクラちゃんはたまたま名前が同じなんじゃない。私の命運みたいな物はこの世界だとあの子の物、そんな気がする。そうじゃなくても碇君は綾波さんと命運が結びついている気がする」

 そんな事を言われたレイもパーティーに出て黙々と食べている。ホウメイに美味しい物を作るには美味しい物を食べないと出来ませんよと言われたからだ。最近付き合いがよくなったアスカがそれなりに世話を焼いていたりする。

「だから、こちらの世界の私はセカンドインパクト後の災害で死んだんだと思う」
「そうですか」

 トモヨは隣に並んでそっと右手をサクラの左手に重ねた。

「でも、私にとってのサクラさんはサクラさんだけですわ。たとえ宇宙の命運が全て敵になったとしても、大道寺トモヨだけは、味方ですわ」
「ありがとう」

 二人はずっと庭を眺めていた。




 取りあえず鈴原サクラは登場したが、偽関西弁に成るのはどうしようもないのか。言葉の壁は厚いと言うのは単に書き手が無能なだけなのだろうか?
次回「EVAザクラ新劇場版 破 第六話」
さぁて、この次もサービス、サービス!

つづく




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