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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 破 第七話
Name: まっこう◆564dcdfc ID:4098afbe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/10/06 17:44
退院したら劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン見に行こうっと。

----------------------------------------

 ホタルはfireflyのCEOだ。自分の会社のCMで変な歌と踊りを披露しているので、歌って踊れるCEOなどと一部では言われている。同じ町のCEO同士のソノミとは仲がいい。ホタルがfireflyを立ち上げる時にソノミにはお世話になっている。妊娠が判ったところで、ホタルはまずソノミに報告、相談をした。ホタルの両親は他界しており女性の親戚もいない。肉親は兄だけだ。その兄は両親の会社を引き継いでいる。兄との仲が悪いわけではないが、だれか先輩の女性に相談したかったそうだ。早速、今後どうしたらよいかなど助言を貰った。ともかく用意はいろいろしておこうとなった。そこで大量の書類や指示書が必要となった為、ヴァイオレットが派遣された。ヴァイオレットは大道寺コーポレーションの人材派遣部門、「自動式人形サービス」の所属だ。この部門は代書や秘書の派遣等を行っている。ホタルにも秘書はいるが、そちらはfirefly本社で書類作りに追われている。
 ホタルとヴァイオレットはしかだ駄菓子店の奥の部屋にいた。ちゃぶ台の前に向かい合っている。店番は尾張がやっている。ホタルが一番リラックス出来るところで今後の業務をした方が良いと社員一同から言われてそうなった。ホタルの楽しい駄菓子を作りたいという想いの元に集まった社員達はホタルとの仲も良好だ。ホタルはなんとなく怠いので畳の上で横になっている。ヴァイオレットは日本も長いせいか正座が様になっている。

「では、種々の届等は時期を見計らって私が処理します」
「お願いします」
「ソノミ様よりホタル様の届け出、その他の事務処理を全て優先して処理するようにと指示を受けています。どんな事でも文書に関わる事でしたら、ご用命ください」
「お願いします」

 ホタルはそう言うと自分のお腹を撫でた。ヴァイオレットはその手の動きを眼で追った。

「愛する方とのお子さんがお腹にいるというのはどういうものなのでしょうか?」

 ヴァイオレットの今までの事務的なやりとりと違い、声に色が付いた。ホタルは顔だけ向ける。ヴァイオレットの表情はいつもと変わっていない。

「まだ、実感が無い」




EVAザクラ 新劇場版

破 第七話

殲滅




「立ち入った事聞いてもいい?」
「はい。どうぞ」
「今でも愛しているの?上司だった人」
「はい。もしかなうならば」
「かなうならば?」
「あの人の愛しているという言葉と私の愛しているという言葉が同じか確かめたいです」
「きっと同じよ。同じだという事にうまい棒千本かけるわ」

 ホタルの真剣な声に、ヴァイオレットは静かに微笑んだ。

 いきなり店の入り口のガラスが割れる音がした。物が壊れる音と男の怒声が聞こえる。

「なにすんの」

 店の方から狼狽した尾張の声がする。

「ここにいて」

 ヴァイオレットは素早く立ち上がると、店に出た。チンピラでございというレッテルを貼ったような男が五人、店の中で暴れていた。ヴァイオレットは店のレジの横のベーゴマをいくつかつかみ取った。

「金髪の美人のねーちゃんじゃないか」

 ヴァイオレットの美貌に一人の男がにやつきながら言った。

「ソノミ様より、ホタル様の身の安全も確保せよと依頼を受けています。出て行ってください。被害は後ほど請求します」
「なんだと、おら、ぐあ」

 ヴァイオレットの発言に襟元を掴もうとした男達が皆のけぞった。ヴァイオレットの両手が素早く動くと、男達の目にベーゴマが叩き込まれた。重い鉄の塊が眼球に当たったらたまらない。ヴァイオレットは追い打ちをかけた。金属の義手の先端で男達のこめかみや人中などの急所を叩いていく。意識がとんだ五人全員を体術で店の外に吹き飛ばす。全部で五秒もかからない早業だ。

「尾張さん大丈夫ですか?」

 尾張は店の奥の部屋の前で座り込んでいた。

「でも、お店が」
「え、あ~」

 悲痛な声でヴァイオレットとハジメはそちらを見るとホタルが倒れ込んで来た。慌てて見に来て駄菓子達のあまりの惨状に気を失った。ヴァイオレットは素早く抱きとめた。




 ホタルは大道寺家の医務室に運ばれた。精神的なショックが大きいので、安定するまでそこで様態をみる事となった。下手な病院より設備は整っているし、今後の事も有る。ここなら安全だ。出版社で打ち合わせをしていた夫も急いで駆けつけて、傍についている。ホタルの兄も駆けつけている。大道寺家の専属医療スタッフが付ききりで様子を見ているので悪化する事は多分無いだろう。先程警察署から数人刑事が来て事情聴取を行った。ヴァイオレットがホタルの代わりに受け答えした。ヴァイオレットは過剰防衛気味だが、厳重注意で済むらしい。しかだ駄菓子店はネルフの調査部が現場保全をしている。チルドレンへのテロに関係するかもしれないからだ。
 その間にも大道寺家の食堂には幾人か集まっていた。

「お嬢様、これが報告書です」

 食堂兼集会場のディスプレイにパーカーの調査結果が映された。暴力団威張組の構成員達の仕業だ。最近ますます発展している第三新東京市のいろいろな場所でトラブル起こしているらしい。食堂にはトモヨにパーカー、コノエ、カッシュ、レインにソノミがいる。いつもいるWWRのメンバーはいない。WWRとは別行動を意味するメンバーだ。

「私の調べた所、しかだ駄菓子店と喫茶エンドウは普段女性だけだということで狙いを付けたようです。今の所背後関係は不明ですが、WWR及びネルフ関係者を狙ったという確証は出ていません。私の勘ですが金目当てでしょう」
「酷いわね」
「そうだな、レイン」

 最近土門夫妻はしかだ駄菓子店に行く事が多い。トモヨ達のお供もあるが、子供の頃買った駄菓子が楽しいらしい。夫婦そろって甘い物が好きで、よくえーじゃんげりおんチョコ等を買っている。

「お母様、この組織、潰してよろしいでしょうか?」

 トモヨがスクリーンから向き直りソノミに言う。

「いいわよ、トモヨ。子供達の安住の地を穢した以上、全員に地獄を見てもらいましょう。ネルフとの調整、ホタルちゃんとしかだ駄菓子店の方は私が面倒見るから」
「はい。わかりましたわ」

 トモヨはにっこりと微笑んだ。何か寒気がするような怖い笑顔だ。代々続いた名家のお嬢様だから出来る表情かもしれない。ソノミも同じ笑いを浮かべていたので間違いないだろう。

「ではパーカー、やっておしまい」
「はい、お嬢様」

 パーカーは深々とお辞儀をすると、カッシュと作戦について調整し始めた。




 翌日第三新東京市に向かう市道にトラックが二台走っていた。切り通しの山道で人はいない。二台とも人相が悪い男が運転している。カーブを曲がったところで先頭のトラックは急ブレーキをかけた。道の横の木陰から男が飛び出してきたからだ。男は黒いマントを羽織った精悍な男だった。

「てめえ轢き殺されたいか」
「やって見ろ、出来るんだったらな」
「何い」

 男の小馬鹿にしたような口調に運転手は激怒した。アクセルを思い切り踏み込む。トラックとはいえそれなりの速度で加速する。

「石破天驚拳」

 男が放った拳は破壊エネルギーの塊と成ってトラックのエンジン部を襲った。トラックは衝撃で吹っ飛び、後ろのトラックに激突して止まった。トラックの荷台からはそろいもそろって人相の悪い男達が出てきた。先ほどの衝撃で血まみれになっている者もいる。皆殺気立って手には武器を持っている。メンツを潰された威張組が関係組織に要請した助っ人達だ。

「てめえ、何もんだ」

 男達は今にも手の銃器を使いそうだ。

「東方不敗流は素人には手をあげん。だが例外がある」

 どう見ても暴力の専門家達を素人扱いしたマントの男は手の指をボキボキとならす。

「女や子供達の夢を壊す奴らは叩きのめすのが流儀だ」 

 次の瞬間マントの男が動いた。早過ぎる動きで男達は目がついていかなかった。一番前にいた男の脇腹にマントの男の拳がめり込むと男は吹っ飛んだ。普通どんな打撃でも人が空中に持ち上がる事はないが、本当に五メートルほど飛んで地面に転がった。男は泡を吹いて気絶した。
 その様子を見て残りの男達はためらわず銃を発砲した。十五人の一斉射撃だ。いくら下手でも何発かはマントの男に当たる。当たるはずだった。だがいくら撃っても男が倒れない。その異様さに男達は慌てて射撃をやめる。

「使うんなら、高速弾がいいぞ」

 マントの男は両手の指を目の前にあげた。弾丸は全て指に挟み止められていた。掴めなかった分は指の間の弾丸で弾いて周囲に転がっている。次の瞬間また一人今度は上に跳ね上がった。マントの男の足が股間にめり込んでいた。男はまたしても泡を吹いて道に転がった。

「安心しろ。死なないように蹴った。潰れたのも片方だけだ」

 マントの男は微笑んだ。男達は理解した。この男は銃器でどうのこうの出来る存在じゃない。人の姿をした化け物だ。

「なあに大丈夫だ。二度と悪事が出来ないように、半年位寝込んでもらうだけだ」

 マントの男の微笑みが恐い物に変わった。次の瞬間、男達が一人ずつふっ飛んで行く。

「お礼参りがしたいのなら、仲間を連れていつでも来い。東方不敗流土門カッシュだ。って聞いている奴はいないか。一人ぐらい残しておくんだったな。ま、逃げた奴が伝えるだろう」




「おっと失礼」
「なんだてめえ」

 威張組に直ぐに助っ人達の全滅の知らせが入った。斥候で三人の男が事務所からとびだしたところで、先頭の男が足を引っ掛けられて、派手に転んだ。足を引っ掛けたのは、赤いシャツに黒いジャケット、黒いテンガロンハット、白い手袋、白いスカーフをつけた伊達男だ。手には白いギターを持っている。伊達男はギターを背中に回す。

「おまえらみたいな蛆虫を掃除するのが好きな私立探偵だ」
「なんだと、やっちまえ」

 三人は刃物を手に取ると伊達男に襲いかかる。だが無駄だった。伊達男は軽やかに身をかわすと、一人は顎に掌底打ち、一人は金的を蹴り上げ、瞬く間に二人を倒した。
 残る一人はへっぴり腰で刃物を振り回しながら叫んだ。

「先生殴り込みだ」

 すると一人の男が事務所から出てきた。今どき着流し姿で大きな刃物傷が顔にある。手には杖のような物を持っている。続いて組員達もゾロゾロと出てくる。

「お主少々できるな」
「それはどうも」

 伊達男は優雅に挨拶をした。

「見たところ威張組の用心棒、コウリュウノスケ、日本じゃ二番目の居合抜きの達人だ」

 伊達男は顔の前で二本の指を立てた。

「何、じゃ日本一は誰だ」

 返って来たのは伊達男の短い口笛だった。伊達男は二本の指でテンガロンハットの端を押し上げた。

「チッチッチ」

 二本の指を左右に振ると、右手の親指で自分を指さした。ウインクまでしてみせる。

「ほういいだろう」

 用心棒は腰を落とした。次の瞬間用心棒の手が霞んだ。抜く手も見せぬ居合抜き。

「何」

 抜く手も見せぬ居合抜きの切っ先は伊達男の腹の横で止まっていた。こちらもいつ動いたかわからぬ速さの真剣白刃取り。驚愕し固まったコウリュウノスケの仕込み杖の刃を手で挟んだ伊達男は捻りながら引っ張る。コウリュウノスケが前のめりになったところで、伊達男の蹴りがコウリュウノスケの顎に炸裂した。コウリュウノスケは昏倒した。

「中々良い刀だ。腕の方はまあまあだな」

 伊達男は仕込み杖を手に取る。事務所からは続々と構成員が出てきた。伊達男を取り囲む。

「団体さんのご到着で」

 取り囲む構成員達も気にしない風で伊達男が歩いて行く。構成員の一人がつっかけ、峰打ちをくらい昏倒した。

「無理しなさんな」

 伊達男はウインクをする。馬鹿にされたせいで恐怖心を怒りが上回り、皆一斉に伊達男襲いかかった。




「早川さんはいい仕事をしますね」

 呟きながら事務所に忍び込んだのはパーカーだ。構成員が早川ケンに引きつけられているあいだに、組事務所の奥の金庫の前まで行く。

「ほう、中々良い金庫ですな」

 金庫に耳を当ててダイアルロックを解き始める。その時、構成員が一人戻って来た。だがロック解除に集中しているパーカーは気が付かない。カチャっとロックが外れる音と同時に構成員は鈍器を振り上げた。

「ごぼ」

 変な声を出して構成員は気絶した。パーカーは慌てて振り向く。構成員の後ろには眼鏡の男が忍び寄っていた。構成員の首筋にスタンガンを突き立て痙攣したところを殴り倒した。パーカーは慌てて身構えたがすぐに緊張をといた。

「トーゴーさん、助かりました。私も歳ですね。きがつきませんでした」
「お宅のお嬢さんに、パーカーさんを手伝えって依頼されてね。トモヨちゃんはいいですね、金払いが良くって」
「はい。お嬢様は必要なお金は惜しまないので。さて金庫の中身は」

 金庫には有価証券、権利書、帳簿などが詰まっていた。パーカーはそれらをバックに移して行く。

「蛆虫退治は蛆虫達と資金源を共に絶たなくては」
「少し貰ってもいいかな」
「トーゴーさんは腕はいいのですが、がめついのが玉に瑕です」




 威張組の助っ人達はもう一組いた。こちらもトラックで事務所に向かっていた。通り道の途中に第壱中がある。校門の前百メートル位にトラックが近づいた時、くわえタバコの女性が校門より一人道に出てきた。運転手は激しくクラクションを鳴らす。くわえタバコの女性はどこ吹く風でニタリと笑った。顔の前で指を鳴らした。まだ距離が有るのに運転手にはっきりとその音が聞こえた。運転手は慌ててブレーキを踏んだ。目の前の地面が裂けて奈落が現れたからだ。それはどこまでも深く底が見えない。下の方から妙な音も聞こえる。何かの鳴き声に聞こえるが、想像が付かない。
 急ブレーキで荷台の男達から怒声が上がった。次々と荷台から降りて来ては、奈落を見て唖然としている。

「全部で十五人とは豪勢だね」

 奈落の向こう岸に立つくわえタバコ女の声がした。皆慌ててそちらを見る。少し吊り目の美人と言えなくもないが、そこいらにいる美人だ。何かだらしないように見える。だが瞳が違った。何か怪しく光っている。

「あんたら、私の可愛い生徒たちの憩いの場所を奪ったんだ。覚悟おし」

 次の瞬間女の姿が巨大な虎と変わり奈落を飛び越し男達に襲いかかった。慌てて銃で応戦するが十メートルも有る虎はびくともしない。男達は手足を一本ずつ食い千切られて絶叫をあげて倒れて行く。虎は男達を嬲っているらしく致命傷を負わせないように、傷つけ続けた。




「先生、これどうなっているんですか」

 校門の前に突っ立っているクキコの目の前にはトラックが止まっていた。中からは絶叫が上がっている。

「夢を見ている。催眠術みたなものさ」
「夢?」

 授業中急に一休みと教室を出たクキコが中々返ってこないので、学級委員のヒカリが探しに来た。

「ちょっと恐い夢だ。パーカーさんから警戒していてねって連絡が来たから」
「でも凄い絶叫が」
「大丈夫だって。夢なんだから」

 クキコはくわえタバコを捨てようとした。

「先生ポイ捨ては駄目です」
「洞木はかたいな」

 一応ポケット灰皿は持っているようだ。取り出すとそこに入れた。

「ここは駐車禁止でもないし、後でこいつら警察に取りに来てもらおう。凶器をしこたま持っているしな」

 クキコは校門から入って行く。慌ててヒカリも後を追う。

「でも、あの絶叫近所迷惑ですね」
「ただの悪夢さ。その内静かになる。ま、覚めないから悪夢なんだけどな」

 九段クキコはニタリと笑った。




 大道寺島には個人の所有のスーパーコンピューターとしては世界一の「お天気君一号」がある。そのサブシステムの「お天気君二号」は大道寺家の屋敷にある。これは世界で二番目の性能だ。そのスーパーコンピューターの制御コンソールの前にはレインが座っていた。作業が終わって、一息ついたところだ。携帯でどこかにかけ始めた。

「パーカーさん、作業終わったわよ。組長保有の暗号通貨は、全部慈善事業に寄付。株式なんかも匿名で交通遺児の基金に移しておいたわ。これで無一文よ」
「はい、レイン様ご苦労様です」
「バックの政治家何かの資産もやっちゃう?」
「それは、奥様が話をつけるとの事です」




 男は逃げていた。威張組の組長だ。車で第三新東京市から伸びる山道を飛ばして行く。組が一気に壊滅した。部下達を見捨てて手持ち現金とピストルだけ持って一目散に逃げている。第三新東京市が他の組に狙われない理由がわかった。あんな化け物達の相手をしていては命が幾つあっても足りない。男の車はあたりを鬱蒼とした木々に取り囲まれた山中まで来た。ここまで来れば大丈夫と車を止める。ハンドルにもたれかかり荒い息をつく。

とん

 車の天井で軽い音がした。慌てて当たりを見回す。開けていた後部座席の窓から辺りの音が聞こえるが、小鳥の鳴き声だけだ。念のため後部座席に置いてある拳銃に手を伸ばす。

「ん?」

 何か柔らかい物が手に触れた。恐る恐る後ろを向く。

「それは私のおいなりさんだ」
「ひ」

 パンティーで顔を被った男がそこにいた。組長は慌てて車から転げ落ちる。噂はよく聞いている。組長は全力で山道を逃げて行く。

「逃がさん。変態奥義フライング亀甲縛り」

 変態仮面EVA3の手から荒縄が飛び出ると、組長の身体に絡み付く。見る間に亀甲縛りで身動きが出来なくなった組長は道の真ん中で置物のようになった。変態仮面EVA3の手首の動きで無理やり向き直される。

「お前には特別なお仕置きが必要だな」

 変態仮面EVA3の手が閃くと荒縄の反対側が傍にある立木の上に絡みついた。組長は立木につながれ、荒縄の傾斜が出来た。

「とう」

 変態仮面EVA3はジャンプするとその荒縄に跨がった。

「変態秘奥義、地獄のタイトロープ」

 そのまま、組長の顔面に向かって滑り落ちていく。

「うわうわうわ~」

 組長の絶叫は激突した変態仮面EVA3の局部に止められ、おぞましさと恐怖と打撲で組長は気絶した。

「成敗!」

 翌朝、亀甲縛りで素っ裸の組長が第三新東京市の警察署の前に放置されていた。胸元にはメッセージカードが置いてあり、「この男、極悪地上げ屋」とあった。




「派手にやったわね。まっ治安は良くなったからいいけど。助っ人に来た奴らの半分は後遺症が残らない最大限度の大怪我、半分は精神障害、組員は全員半年は自分の足で立てない。組長に至ってはほとんど精神崩壊。誰がやったのかは不明、ということになっているわ」
「その様ですわね」
「そういえばあの組のバックにいた保守党の大物、贈収賄疑惑が急上昇してピンチだって」
「悪いことをすると報いが来るものですわ」
「それにしても一気に勝負をつけたわね」

 翌々日の夕方、喫茶エンドウの奥の席にミサトとトモヨが向かい合って座っていた。カウンターにはカッシュも来ている。当分用心のため常駐するそうだ。こちらはコーヒーを静かに啜っている。

「敵は最大戦力で一気にたたく。戦いは戦力をどれだけ事前に準備できるかで決まる。戦術はあくまで最後の仕上げに過ぎない。母の教えですわ」

 トモヨはニコニコしながらオレンジジュースをストローから吸う。

「大した帝王学だこと。これだから深窓の令嬢は怖いわ」
「おほほほ、私は深窓の令嬢ではありませんわ。ただ」
「ただ何?」
「サクラさんの話を聞いて思いますの。私はみんなの守護者、スポンサーの星回りに生まれついたのだと」

 トモヨは小首をかしげて微笑んだ。

「これからもみんなを苛める輩は、私が地獄にたたき落として差し上げますわ」
「恐いわね、私も気を付けないと」
「はい、たとえネルフ相手だとしても、全力でやらしていただきます」
「そうならないように願うわ」
「はい。それにしても」

 いきなりトモヨがてれはじめた。頬を手で挟み恥ずかしそうに身をよじらす。

「組長は逃げられたと思いましたが、さすが変態仮面EVA3様ですわ。変態なのに変態なのに、ステキ」
「そうね、ハハハハ」

 まだトモヨだけ正体を知らされていないらしい。ミサトは愛想笑いでごまかした。




 五日後、しかだ駄菓子店は再建された。世界最速最強のネルフ工務部の仕事だ。チルドレンもよく行くし、防犯設備等を入れる関係でミサトが手を回した。チルドレンの精神的な状況も考えて早く直した方が良いとの判断だ。

「本当に助かります」
「いいですよ。うちの子供たちがお世話になっているし」

 できあがり具合を見に来たミサトを迎えたのは少し年下の青年だ。よく見ると手にタコのような物がある。ホタルの夫の漫画家ココノツだ。店の奥の部屋でミサトと向かい合って座っている。店からはトウジとヒカリが店を見て回っている声がする。二人はアルバイト兼見張りとして放課後二週間ほど手伝いに来ることになった。店長の尾張は目の前で起きた暴力が軽いトラウマになったため、当分休むそうだ。

「ホタルさんも順調に回復してよかったですね。でもついていてあげていなくて良いんですか?」
「あなたは店番をしててって病室を追い出されまして。私は駄菓子そのもの、駄菓子を愛することは私を愛することって言われまして」
「惚気をごちそうさま。大道寺家のおつきの医師がついていれば大丈夫だわね」
「はい。ところで、二階の改装ありがとうございます。ずっと物置にしていたんですが、あそこで仕事をする事にします。妻と出会った時あそこで漫画書いていたんです」
「そうですか。ところで代表作の「スーパー女の子」のヒロイン、紅場アカネってモデルは奥さんですか」
「それは秘密です」

 ココノツは照れくさそうに頭をかいた。

「尾張さんも一ヶ月程で復帰するって連絡もありましたし。また店に戻ってもらえそうで嬉しいです」





 悪いことがあれば良いこともある。ココノツのヒット作「スーパー女の子」はアニメ化が決まった。ヒロインのアカネのモデルと噂されるホタルに会いにしかだ駄菓子店にファンがチラホラ現れるようになった。未だホタルは大道寺家の医務室住まいなので、皆残念がっていた。ただしかだ駄菓子店もアカネのたむろするおもちゃ屋のモデルと言われているため、記念写真を取ったり記念に駄菓子を買って行ったりする。試しにホタルのブロマイド兼メンコを売り出したところ、結構売り上げが順調だ。ホタル曰く駄菓子屋にブロマイドはつきものでOKだそうだ。
 喫茶エンドウも作品中の「喫茶めんどう」のモデルと言われていて、作中にサヤに似た店長も出てくるため、一目見ようと結構にぎわっている。忙しくなったので、大学生の先輩後輩のコンビもアルバイトが多く入っている。混んできた喫茶エンドウだが金曜日の夕方は相変わらず貸切となっている。

「ヴァイオレットさん、上司の人に会えたのかな」

 今日はレイとトモヨとサクラしかいない。話す事もそれほどなく雑談になっている。今日はミサトの代わりにマコトが来ている。クキコも忙しい為来ていない。マコトはパーカーと二人で四方山話をしている。

「お母様の話ではその方の情報らしき物が入ると、旅に出て直接探しに行くそうです。もう何回も。今度は本当の情報だといいのですけど」

 先日北米のWWRのエージェントより情報が入り、しばらくヴァイオレットは旅に出る事になった。TB1で行けば直ぐだが、そこは公私混同はしないと辞退したそうだ。

「なんとなく」

 レイがぽつりと言った。

「他人とは思えない」
「そう言えば綾波さん、なんとなくヴァイオレットさんに似ているね」
「私も、戦う為にいるから」
「えっと、そうじゃなくて、容姿が」
「そう、かな」
「綾波さん、嬉しそう」
「綺麗な人だから」

 レイも美しい存在は判る。しばらく皆黙った。

「再会があるように祈りましょう」
「そ、だね」
「ええ」

 皆目を瞑り祈った。最初に目を開いたサクラはレイを見つめた。祈るレイは美しかった。やがてレイも目を開く。サクラは聞いてみたくなった。

「ねえ綾波さん、綾波さんにはヴァイオレットさんの上司さんのような人はいるの」
「碇司令、だと思う」
「碇さんは?」
「碇君は、良く判らない。仕事で守れって言われた」
「そう、食事会、上手く行くといいね」

 レイは微笑みを返してきた。




 土門カッシュに早川ケンで充分オーバーキルのような気がするが、つい追加してしまうのは悪い癖だろうか。
次回「EVAザクラ新劇場版 破 第八話」
さぁて、この次もサービス、サービス!

つづく


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