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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 破 第十話
Name: まっこう◆048ec83a ID:a3fa2292 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/11/05 17:09
映画はいいねー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「何か怪人が出て暴れたようですが、赤い装甲服の男が倒しました」

 ズバットの闘いをモニターしていたTB5のアヤカは戦闘指揮車のマコトにその映像を送った。マコトはMAGIに映像を解析させた。直ぐに結果は戻って来た。

「科学者で登山家の飛鳥ゴロウが開発した宇宙探検用装甲服を私立探偵早川ケンが仕上げて悪者退治に使っている。まるで特撮だな」




EVAザクラ 新劇場版

破 第十話

救出




 黄色いTB4は芦ノ湖を潜っていく。と言っても水深二十メートルほどなので直ぐに湖底に着いた。TB5からのデーターに沿って、沈没地点に向かっていく。カリンカはソナーからのデーターを前面のガラス窓に重ねた。湖底の3Dマップが映し出された。

「視界が悪いけど、ソナーにはバッチリね」

 TB4の高精度ソナーは沈んでいるシェルターとその上に積み上がっている船の残骸をとらえていた。そして水中でも百六十ノット出るTB4は直ぐに現場に到着した。TB4の探照灯の明かりで丸く銀色に輝くシェルターと上に積み上がった船の残骸が見えた。

「どう、出来そう」

 後ろの貨物室兼救助者の治療室で待機しているサキから声がかかった。

「大丈夫そうよサキ姉さん、その前にマイク繋いでみる」

 カリンカが操作するとTB4の先から探査子が発射された。それは電線を引っ張ってシェルターの表面に吸着した。

「もしもし、聞こえますか、こちらWWRの潜水艦、TB4のパイロット、カリンカです。助けに来ました」
「こちら葛城ミサト、少し前に酸素交換機のエネルギーが切れた。そろそろ酸素が尽きる。赤木リツコは仮死剤で昏倒中」
「了解しました。至急救助します。出来るだけ安静にして、酸素消費を抑えてください」
「了解」

 カリンカは早速作業を始めた。残骸をTB4のマジックハンドでどけていく。どけにくい鉄骨などは、レーザーカッターで切断していく。いくつかのがれきをどけるとシェルターは自らの浮力で浮かび上がっていく。いそいで浮上させたいところだが、あまり急激に浮上させると中の二人が危ないので、TB4はシェルターについて浮上した。

「TB4、カリンカです。今シェルターが浮上します。内部は酸欠の模様。とにかくそちらに、運びます」
「了解。シェルターを開ける準備をしておく」
「あれ、そう簡単に開かない」

 マヤが話を聞いてるうち顔色が青くなった。

「何だって?」
「丈夫に作りすぎたから、あんなに薄くってもカッターで相当かかるって」
「何か手段はないか?二人の命がかかっているぞ」

 丁度その時現場にFAB-1が到着した。運転手がパーカーなのはいつもの通りだが、後部座席にはサクラが乗っている。珍しくWWRの制服を着ている。ヘルメットを被れば宇宙服にも潜水服にも成る物だ。

「こちらサクラです。何か手伝うことはありますか」
「こちらカリンカ、今のところ無いわ」
「魔法で水どけましょうか」
「急激な水圧変化は危険よ。浮上してから手伝って欲しい事があったら連絡する」
「了解」

 TB4とFAB-1の通信は戦闘指揮車にもオープンにしている為、マコト達にも聞こえた。

「そう言えば木之本サクラの魔法に何でも切れる魔法があったね」
「以前WWRとの情報交換会で彼女の能力を一部教えて貰ったって先輩が言ってたわ」

 マヤはMAGIからその時のデーターをとりだして、ディスプレイに出す。

「凄いな。ダイヤモンドの焼結体を一刀両断か」
「これなら行けますね」

 マコトとマヤは顔を見合わせ頷いた。

「こちらネルフ作戦部、日向マコト、割り込んですまない。木之本君、今魔法の調子はどうだい」
「え、まあまあです」
「現在の二人の状態は知っているかい」
「来る途中に聞きました」
「シェルターなんだがやたら頑丈なんだ。そのせいで直ぐに開けられない。中が酸欠状態なので直ぐに開けたい。君の魔法で切断してくれないか」
「判りました」
「TB4が岸辺に運んだら開発部伊吹君の指示で頼む」
「了解です」
「シェルター見えました」

 丁度その時、湖面にシェルターが浮かび上がった。シェルターを回転させないように、前面から吸着装置を出しシェルターを固定しTB4が湖畔に運んで来る。岸辺から五メートルほど押してきたところでシェルターを下ろした。上空で待機していたTBNも直ぐ側に着陸した。TB4の後部のハッチからカリンカとサキが酸素マスクを持って出てきた。戦闘指揮車からもマコトとマヤが走ってきた。TB2からクルミもやってくる。FAB-1からサクラも走ってきた。

「ミサトさん、聞こえますか」

 マコトが、大声でシェルターに叫ぶ。

「もう、げんかい、いきが」
「伏せていてください。上部を切断します」
「わか」

 内部で何か音がした。ミサトが倒れた音らしい。

「どいて」

 マヤがマコトを押しのけて何かの装置を球体に取り付けた。

「音響観測終了。二人とも倒れてる。サクラちゃん球体の真ん中を真横に両断して」

 マヤの声はほとんど叫び声になっていた。

「みんな、伏せて、魔力の調整が出来ないから」

 皆、一斉に伏せた。

「全ての物を切り裂けソード」

 魔法の杖は輝く剣となった。それを球体に向かって真一文字に横に振った。あまりに切れ味が良かったせいか、シェルターに一周筋が入ったが、シェルターの上部は乗ったままだった。

「えいです」

 そこで反応したのはクルミだった。素早くシェルターに飛びつくとシェルターの上部を殴り飛ばす。シェルターの上部は凄い勢いで吹っ飛びTB2のコンテナに当たり轟音と共に砕けてしまった。

「サキちゃん、カリンカちゃん、酸素マスクです」
「はい姉さん」
「はい」

 慌てて身を起こしたカリンカとサキの手に酸素マスクがあるのを見ると、クルミはシェルターの下部の縁に手をかけようとした。

「気をつけて、簡単に手が切れるわ。縁に触れないで」
「りょうかいですです」

 クルミは縁に触れないように指で摘まんで押し下げた。大人二人が入っているのに、紙を動かしているようだ。気絶しているミサトとリツコが滑り出てくる。サキとカリンカは二人を地面に下ろし酸素マスクを当てた。

「ヒカリちゃん、TBNでネルフ付属病院に二人を送ってくれないか。空路は確保しておく」
「了解です」

 マコトはそう言うと戦闘指揮車に駆け込んだ。MAGIを通してすべての承認作業を行った。

「自律飛行で送ります、カリンカさん、サキさん、二人を座席に乗せて」
「了解」

 サキが操縦席にリツコを乗せて、自動看護の装置をONにした。カリンカはミサトを後ろの席に乗せやはり自動看護の装置をONにした。ヒカリがTBNの自律飛行の設定をするとTBNはネルフ附属病院に向かって飛んでいった。

「二人のバイタル安定してます」

 ヒカリが腕時計型通信機のホログラフィー表示を見て叫ぶと辺りにほっとした空気が流れた。

「サクラちゃん凄い切れ味ね。たすかったわ」

 マヤが、ため息をつきつつ言う。緊張が途切れたのだろう。

「それにクルミちゃん、凄い怪力ね」
「不思議なんです~。クルミ最近凄い力が出るようになっちゃって。パワーローダーがいらないんです~」
「ともかく、助かったわ。後は回復をまつだけ」

 マヤはそう言うとへたり込んだ。




「おはよう」
「おはよう」

 リツコは三日後目を覚ました。仮死薬剤は急に復活させると脳障害が残る事があるため、それだけ時間がかかった。リツコが目を覚ますと、病院の寝間着姿のミサトと医師と看護師の顔が目にとびこんできた。医師団がチェックを済ましたあと、十分間だけ話が許された。

「私は酸素吸入で目を覚ましたわ。念のため入院してる。バイオモニター身体中に着けられちゃって、胸の下の絆創膏が汗でかぶれて大変だわ」
「流石ネルフの巨乳番長ね」

 どちらともなく二人は笑った。

「でも、ヒヤヒヤしたわ。このまま起きないんじゃないかって」
「私は貴方と違って運任せの勝負はしないわ。勝算あっての事よ」
「悪うございました。運任せで」

 ミサトは怒ったように横を向いたが、笑っている。

「で、あの爆発は何だったの?」
「私達を狙ったテロ。あれでWWRを誘き出してそれも狙おうとしたらしいわ。バックはデストロン。謎の赤い装甲服の人が奇麗にやっつけてくれた」

 ミサトは今の所判っている情報を話した。新星組と上位組織の加羅組は事件の翌日に謎の黒いテンガロンハットの男と黒マントの男に壊滅させられたらしい。その他、サクラの能力やクルミの怪力の話などをした。

「クルミって子、DT因子が覚醒したのね」
「サクラちゃんの前いた世界では人狼だったわね」
「姿形が似れば、中身も似ると言うところかしら」
「私もかも。あの低酸素状態では脳障害が残るはずだって。おかげで医師団が興味持っちゃってやたら検査だらけ」
「貴女の場合、単なる体力バカの様な気がするわ」
「ま、それだけ皮肉が出れば大丈夫ね。そうそう、マヤちゃんが見舞いに来たいって言ってたけど、リツコの代わりをやりなさいって止めといた。あの子リツコの事になると騒がしいから」
「心配してくれるのは有難いわ。私がそのまま話せるのはミサトに加地君、マヤだけだもの」
「うらなり君も加えてあげたら」
「それも良いわね」
「あれ、否定しないんだ」
「流石に死にかけたあとだもの。弱気にもなるわ」
「ま、しっかり休んで復帰して」
「そうするわ」

 ミサトはリツコの乱れた髪を整えた。

「じゃ、またくる」
「またね」




 ミサトは三日後、リツコは一週間後退院した。リツコは肋骨にひびも入っているためコルセットのような物を付け体中にバイオモニターを付けての退院で、ミサトも当分はバイオモニターを体に付けている。リツコはいろいろ忙しいのだが、さすがに仕事を余りさせて貰えない。そんなわけではないのだがその日は業務を早く切り上げレイのマンションに来た。レイに料理の味見をして欲しいと頼まれたからだ。今まではホウメイにしかみてもらっていないため他の人にも味見をして欲しいらしい。

「あら、随分包丁さばき上手いじゃない」

 今日は一人で全てしたいという事でホウメイには帰って貰っている。リツコもただ待っているのも暇なので台所でレイの料理を見ている。

「さっきの手の洗い方も完璧だし、手順もいいし」
「ありがとうございます」

 レイは手を動かしながら答えた。

「それにしてもどうして料理なんて作ろうと思ったの?」
「みんなで食べると美味しいと言うのがわかったから。司令にも美味しいご飯を食べさせてあげたいから」
「そう。頑張ってね」
「はい」

 しばらくするとまずサラダが出てきた。

「綺麗に切れているわね。最初包丁を研いでたけどそれもホウメイさんに習ったの?」
「はい。料理の前後で包丁を研ぐ、何かあったら手を洗うのをやりなさいと教わりました」
「いい先生についたわね。では、頂きます」

 リツコは手を合わせてから箸をとった。

「このドレッシングもレイが作ったの?」
「はい」
「なかなかやるわね。少しすっぱめなのが食欲をそそるわ」

 リツコはサラダをかたづけていく。その間にレイは大きな鍋からシチューを深皿によそった。リツコの前にトレイに乗せて出す。トレイにはスプーンとフォークが乗っている。

「随分大きなお肉が入っているわね。ナイフはないの?」
「まず、スプーンで食べてください」
「そう?ま、そうしてみましょうか」

 リツコはスプーンで肉の塊を切ってみた。肉はホロホロと崩れ食べやすくなる。その一片を口に入れて味わう。

「随分煮込んだわね。とろけるようだわ。合格よ。これなら司令もシンジ君も喜ぶわよ」
「良かった」
「でも、私日本人だわ。シチューにも白米が欲しいわね」
「今日は炊いてませんが、冷凍してある物があります。解凍しましょうか?」
「頼むわ。これは食欲が出るわね。骨折も早く治りそう」
「はい」

 リツコが褒めたせいか、レイも微笑んだ。

「それと、食事には笑顔が重要よ。無理に笑う必要は無いけど、今みたいに笑えるといいわね」
「はい」
「このメニューだと前日から煮込む必要があるわね。シンクロテストの日程は調節してあげるから、頑張りなさい」
「ありがとうございます」
「で、ご飯頼むわ」
「はい」

 レイは冷凍庫から冷凍したご飯を取り出し、電子レンジにセットした。




「あら、貴方たちラブラブになっているって聞いたけど本当なのね」

 その週の金曜日の夕方、喫茶エンドウの打ち合わせにはリツコが来ていた。申し合わせたようにWWRからはレインが来ている。クキコは来たいのだが、学校の定期テストがあり準備で忙しいので来ていない。子供達はシンジとアスカ、トウジとヒカリ、トモヨとケンスケが来ている。
 一通りいつもの報告が終わった後、リツコがちゃちゃを入れた。トウジとヒカリが隣に座っている。キツくないのかと思うぐらいぴったりとくっついている。

「いいじゃないですか」

 ヒカリが口をとがらして言う。

「いいんじゃない。好きな人がいるのはいい事よ」

 リツコは肩をすくめた。

「やーねーリツコ、カップルを見るとからかいたくなるのはおばさんになった証拠よ」
「あら、とりあえず身近にいたのとひっついた人に言われたくないわ」
「やーねー、身近にいないからってすねちゃって」
「いたわよ、今だって行けば結婚してくれる人はいるから」
「無理しない方がいいわよ、その手の嘘はばれると惨めよ」

 どうやら二人とも虫の居所が悪かったようで、子供達を置いて言い争いになってきた。

「「表にでなさいよ」」
「「望む所よ」」

 ほぼ同時に同じ事を言う辺りは実に気が合っている。二人は唖然としている子供達を置いて喫茶エンドウを飛び出していく。

「とめないと」
「とめられる?」

 シンジが言ったが、ヒカリに返されてしまった。確かに自信はない。いつもならアンズがいてくれるが、今日はレイと何かしている為いない。

「ともかく、リツコさんけが人だし」

 皆もとりあえず喫茶エンドウを出た。喫茶エンドウは裏に空き地がある。しかだ駄菓子店で買ったメンコなどを楽しむ為のスペースなのだが、今は二人の決闘の場だ。

「前からその偽金髪みっともないと思ってたのよ」
「あら、プロポーションは私の方がいいわよね。デブ」
「なによ尻デカ」

 二人とも同時に微笑んだ。凄く怖い。

「ほれ」

 その時、しかだ駄菓子店で油を売っていたカッシュがお土産用に売っていた木刀をレインとリツコに投げて渡した。

「そんな、火に油を」
「あの二人時々喧嘩するんだ。ま、危なくなったらとめるから、発散させてやれ」

 二人は投げてよこした木刀をカッシュを見ずに掴んだ。レインは木刀を青眼に構える。リツコは槍を持つように構える。

「あれでもレインは剣術や弓術は免許皆伝の腕前だ。リツコさんは子供の頃拳法と杖術をやっていて、恋人の敵をとったなんて武勇伝もあったらしい」
「リツコさんがですか?」
「ああ、自分の身を守れん奴はネルフに入れないんだろうな。レインはまあ凄いおてんばだった」

 珍しくカッシュが遠い目をした。

「ともかく、血が上った三十路前は発散させないとな」

 好き勝手言っているカッシュだがそれも聞こえないぐらいリツコとレインはにらみ合っていた。
 レインから仕掛けた。一歩踏み込むと木刀をまっすぐ振り下ろす。小細工はないがとても素早い。トウジが避けられるかと自問したぐらいの早さだ。リツコが滑るように横に動いたので、レインの木刀は宙を切った。だが、地面を叩くかと思われたレインの木刀は、ほぼ直角に軌道をかえリツコのヒビが入った肋骨の辺りを襲う。まったくもって容赦が無い。リツコは予想していたらしく、身体を反対側に傾けつつ、木刀を木刀で受けた。その時、木刀を斜めにしていたので、レインの木刀は上に滑り上がり、はじかれた形になる。その為レインの体勢が浮き上がるようになった。そこを逃さす、リツコがレインの胸の辺りに突きを入れる。レインは身体をねじって避けたが豊かな胸の先端が掠ってしまう。二人は後ろに飛び退いた。理系三十路前の一瞬の攻防に子供達は大口を開けて見ているだけだ。
 レインは胸の先端を片手で押さえ、リツコは脇腹を押さえて、荒い息をしている。

「あんたと違って私は美乳なの、跡が残ったらどうすんのよ」
「ふん、デカいだけでしょ。胸のデカい奴は禄なのはいないわ」
「無いよりましよ。尻デカ」
「でぶ」

 また二人は殺気まぎれに構えた。

「おいおい、それぐらいにしておけ」

 カッシュがあきれ顔で声をかけた。

「三十路同士の喧嘩はみっともないぞ」
「「私は二十九よ」」

 実に息ぴったりで、レインとリツコはカッシュに襲いかかった。レインがカッシュの頸動脈に青眼から振り下ろし、リツコは心臓にめがけて突きを入れる。二人とも相当な早さで常人なら確実に二回は死んでいる。ただ、相手はカッシュだ。レインの木刀を左手の親指と人差し指で掴んで止め、リツコの突きを右手ではらって避けた。前につんのめったリツコの首筋に軽く右手を置く。何かしたのかリツコは気を失った。倒れ込みそうになるリツコは、カッシュが動いた時に、正気に戻ったトウジが受け止めた。カッシュの右手は今度はレインの胸の急所に叩き込まれてこちらも気を失った。レインはカッシュが担ぎ上げた。

「駄菓子屋の畳部屋に運ぶぞ」
「はい、師匠」

 しかだ駄菓子店の試食スペースの事だ。二人は気絶した二人を、畳部屋に並んで寝かせた。二人が戻ってきた時も残りの子供達はぼけっと立っていた。

「ま、中に入ろうか」

 カッシュに声をかけられて、やっと一同は夢から覚めたような表情になった。カッシュとトウジに続いて喫茶エンドウに戻った。

「凄かったですね」
「私動体視力は自信有るけど、二人の動き良く判らなかった」

 席に着いた一同で、初めに話したのはシンジとアスカだった。いつもはカウンターでコーヒーを啜っているカッシュだが、皆の席の側に座っている。

「ネルフもWWRも自分の身は自分で守るが基本だからな。あの二人で驚いていたんじゃ、ミサトさんじゃショック死するぞ」
「そんな凄いんですか」
「戦場格闘術の名手だからな、ジャングルや町中で絶対喧嘩したくないな。戦闘状態になると一切のタブーがなくなるタイプだ。素手の相手にレーザー銃を使うのを躊躇しないよ」
「だから、作戦指揮官に選ばれたんだ」
「そんな所だろう」

 カッシュはシンジに言われて肩をすくめた。

「うちのお嬢様も同じタイプだから、喧嘩はよした方がいいぞ」
「はい」

 トモヨがにこにこしながら答えた。もっともそれは皆知っているので驚く者はいない。

「それに、お前達の担任はそんな性格の上に妖術使いだ。俺でも手を焼きそうだ。ま、俺は精神攻撃は結構食らう達でな」
「カッシュさんもですか」

 サクラが不思議そうに聞いた。

「人間得手不得手があるからな。俺としては能力の底が判らないサクラちゃんが一番怖いが、まあ外見が美少女なのでプラスマイナス零だ」
「えへへへ」

 サクラが照れて頭をかく。

「はい、は~い。私は?」

 アスカが手を上げた。

「一般的、総合的な能力ではアスカちゃんが一番かな。頭脳、体力、容姿、戦闘能力、どれをとっても一番か二番だ。相棒にするならアスカちゃんを選ぶね」
「当然ね」

 お転婆娘の扱いは妻で慣れているのだろう。カッシュの言葉にアスカは上機嫌だ。そんな雑談をしていると、ばつが悪そうにレインとリツコが喫茶エンドウに入って来た。

「おはよう、いい夢見たか」

 カッシュは笑った。




 喫茶エンドウで皆がそんな事をしているころ、レイのマンションにはアンズがいた。最後の仕上げと言うことで、アンズに味見をして貰うことになった。レイのシチューはアンズも食べることを予想してタマネギなどのユリ科の物は使っていない。

「レイちゃん、美味しい。おかわり」

 付け合わせのサラダとデカいシチュー皿をすぐに空にしたアンズは、お皿をレイの方にもどした。相当美味しいらしく、尻尾がパタパタ動いている。
「良かった」

 レイはシチュー皿を受け取りながら微笑んだ。

「シンちゃんの煮物といい勝負だにゃ」

 シンジ大好きなアンズにそう言われて、最高の褒め言葉だと知っている為レイの微笑みが濃くなった。

「これならシンちゃんのお父さんも気に入るにちがいないと、アンズは思うよ」
「そうだと、嬉しい」
「シンちゃんは、お父さんの事大好きなんだよ。小さい頃はお父さんお母さんっていつも泣いてたの」
「そうなの?」
「アンズはその頃は普通の猫だったから慰めてあげられなかったけど、今は人間の身体になったから、頭撫でて上げられるのが嬉しいの」
「そうなの」
「でも、これは秘密だからね」
「判った」

 レイとアンズはシンジの秘密の話でずっと盛り上がった。




「皆様ご心配をおかけしました」

 翌日の土曜日、しかだ駄菓子店は活気づいた。ホタルが復帰したからだ。スリムなお腹が少し膨らんで来ている。

「私、鹿田ホタル戻って来てまいりました」

 ゆっくりとではあるがポーズをとった。ホタルには当分メイド隊の調査係の服部がボディーガード兼世話係として付くそうだ。小柄で地味な女性でホタルの後ろにスーツ姿でひかえている。救急法と身の回りの世話は大道寺家の使用人の必須事項だし、腕っぷしも相当なものなためいざという時も問題ない。

「そこで鹿田ホタル復帰記念として駄菓子全品五割引きセールを本日開催いたします!」

 お昼頃にも関わらず店の前は子供でいっぱいだ。歓声が上がった。トウジが店の入り口からどくと小学生がなだれ込んだ。店番はヒカリとココノツがやっている。尾張も復帰してバックヤードで品物を卸している。ホタルは宣言したあと店番をしている夫にキスをしてから店の奥の部屋に服部と共に引っ込んだ。服部はホタルを椅子に座らすと店に戻っていく。

「今日は売り上げが凄いことになると思いますので、帳簿と在庫管理よろしくお願いします」

 ホタルがサムスアップした相手はヴァイオレットだ。

「はい。承りました」

 ヴァイオレットもちゃぶ台の前でサムスアップを返した。意外とこの二人仲が良い。一部では変人で美人同士気が合うと悪口を言う者もいる。

「どっこらしょ」

 畳の部屋に持ち込んだ椅子は大道寺家具の妊婦用の椅子だ。お腹がきつくなってくるだろうとソノミがプレゼントした。親代わりを自負してるソノミにとっては初孫が生まれるみたいな気分だそうだ。

「ところで、ヴァイオレットさん、今度はどうなの?」
「祖国の療養所は盲点でした。顔面大火傷で人相が判らず母国の言葉を話していたので収容されたとの情報です。祖国の言葉でヴァイオレットと良く呟くそうです。身体は元気らしいのですが身元不明だそうです」
「随分確度は高そうね」
「ですが私とあの方は祖国ではお尋ね者です。逢いに行けません。行って身分がバレればあの方も私も死刑です」
「大丈夫。そんな時の為の金持ちの政治力よ。ソノミさんなら大国の政府相手だって取り戻してくれるわ」
「はい」
「いざとなったら、トーゴーさんや早川さん土門さんに頼めば、国連安保理事国の刑務所からだって連れ出してくれるわ」
「はい」
「心配だろうけど、今はソノミさんに任せて、仕事仕事。気が紛れるわ。大丈夫、お姫様と王子様は艱難辛苦を乗り越えていつまでも仲良く暮らしました、と言うのがこの世の理よ」

 椅子に座ったまま変なポーズを取るホタルにヴァイオレットは静かに微笑んだ。




 デートをするとテロに遭うというEVAザクラの法則は、今のところ発動していないが、やはりそうなるのだろうか?となると誰が一番目なのだろうか?

次回「EVAザクラ新劇場版 破 第十一話」
さぁて、この次もサービス、サービス!

つづく


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