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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話
Name: まっこう◆564dcdfc ID:4098afbe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2021/01/31 20:05
原作準拠のケンスケ君。

-------------------
 パーカーの自室は広い。大道寺家の執事長と使用人代表も兼ねているため、特別に広い部屋を持っている。使用人の中で次に広い部屋を持っているのはメイド統括のコノエだ。パーカーとコノエは使用人の一番と二番だ。マリエルや犬神三姉妹等はソノミの養子の扱いなのでこれまた違う。それはともかく、使用人の一番と二番がパーカーの部屋の応接セットのソファーに向かい合って座っていた。

「黙っていては判りませんよ。ここは年の功、このパーカーに話してみてはいかがですか」

 パーカーの向かいに座っているコノエは俯いて黙っていた。

「私、許されない事をしてしまいました」
「どんなことですか?」
「トモヨ様の思い人を寝取ってしまいました」




EVAザクラ 新劇場版

破 第十三話

異変



「詳しく話してくれますか」
「はい」

 コノエはボソボソと話し始めた。
 
「私は二日おきにケンスケ君の家に行って稽古をつけています。先々日彼の家の庭で稽古をつけ終わった際、暑くって相当汗だらけだったので家のシャワーを借りたんです。暑かったので少しぼけていたのかもしれません。いつもはバックの中に仕舞っていた下着を脱衣所の籠に入れてました。シャワーを浴びているとき何か変な気配がしたので浴室から出ると、ケンスケ君が私の下着を左手に取り臭いを嗅ぎながら、右手でその」
「何ですか?」
「言いにくいのですがその、オナニーをしていました」
「そうですか。コノエさんほどの美人がシャワーを浴びていたら、出来心もあるかもしれませんね」
「私はさすがに動転していました。取り返そうとしてケンスケ君の頬を叩こうとしたのですが、慌ててケンスケ君ともつれたまま転んでしまいました」
「それで」
「ケンスケ君に処女をくれると言いましたよねって言われて、確かに以前言ったんです。なんか私そこで固まってしまって。教え子に対して嘘をついていいのかって。その後はその、きっと私もセックスに興味があったのだと思います。アヤカさんの話興味津々で聞いていましたし。だからなのか抵抗しなかったんです。そのまま最後まで行ってしまって」
「そうですか。セックスや愛は理屈通りには行かない物です。そういうこともあるでしょう。で、コノエさんはどうしたいのですか?」
「しばらくここから離れて考えたいと思います」
「そうですか。そうですね。貴方もまだ若い。ゆっくり考えるのが良いでしょう。屋敷のことは私に任せてどこかに行ってゆっくり考えなさい」
「はい。よろしくお願いします」

 コノエは俯いたまま深く頭を下げた。
 
 
 
 
「と言うことで、コノエさんには調査業務に行っていただきました。潜入捜査なので半年ほどかかる予定です」
「デストロンの関係団体ですか。確かにコノエさんで無いと危険ですわね」

 トモヨの部屋に来ているのはパーカーとヤシマだ。ヤシマは普段のソノミの秘書の格好からメイド服に着替えている。
 
「当分はトモヨ様のお付きのメイドはヤシマになります」
「トモヨ様コノエさんと違いふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」




 ちょっとしたトラブルがあった大道寺家だが、一方ネルフはちょっとしたところでは済まなかった。ネルフ作戦部の会議室は相当広い。だが今日は人で埋まっていた。

「Tプラス10」

 会議室の3Dディスプレイに映像が浮かび上がる。シゲルが映像を見ながら説明を続けた。

「グラウンドゼロのデータです」
「酷いわね」

 ミサトは映像に目を見据えたままつぶやいた。

「ATFの崩壊がデーターから確認できますが、詳細は不明です」

 マコトが手元の端末を操作しながら説明をする。

「やはり四号機が爆心か、ウチのEVA、大丈夫でしょうね?」

 ミサトがリツコの方を向く。リツコはテーブルの前で座って映像を睨んでいる。

「四号機は」
「EVA四号機は、稼動時間問題を解決する、新型内蔵式のテストベットだった……らしいわ」

 マヤの言葉を遮って説明したリツコだが、珍しく歯切れが悪い。

「北米ネルフの開発情報は、赤木先輩にも充分に開示されていないんです」

 マヤが怖々と補足した。

「知っているのは」

 ミサトは画像を睨みつつ呟いた。




 日本時間のその日の午後、米国では朝日が照らし出した頃、米国のネルフ第一支部は忙しかった。急遽日本支部にEVA三号機を輸送することになったからだ。EVA三号機は十字架型のキャリヤーにはりつけになったように固定されていた。そのキャリヤーを超大型VTOLが垂直に持ち上げた。高度が五百メートルほどになった時点でこんどは水平方向に加速を開始した。輸送機とEVA三号機は山並みの間を通って進んでいく。第一支部のある辺りは晴れていたが、輸送機の進む先には暗雲が立ちこめ、雲の中を稲光が走っていた。




「何で私の二号機が封印されちゃうのよ」

 その日の夕方、アスカは腰に手をあて仁王立ちしてリツコをずっと睨んでいた。二号機は拘束具で固定された上で高分子硬化剤で満たされた容器にクレーンで下ろされていく。

「バチカン条約。知ってるでしょ。三号機との引き換え条件なの」
「修理中の零号機にすればいいじゃない」

 アスカは顔をゆがめて言葉を吐き出した。

「二号機のパスは今でもユーロが保有しているの。私たちにはどうにもできないのよ」

 マヤが説明するとアスカは余計顔を赤くした。

「現在はパイロットも白紙。ユーロから再通知があるまでは、おとなしくしてなさい」

 リツコの冷静な声にアスカは顔をゆがめた。

「私以外誰にも乗れないのに」

 アスカは吐き捨てるように呟いた。

「エヴァは実戦兵器よ。全てにバックアップを用意しているわ。操縦者も含めてね」

 リツコの言葉を聞いて、アスカは顔に痙攣が走った。視線を二号機に向ける。

「そんな、私の世界で唯一の居場所なのに」




 リツコに所詮中間管理職よねとアスカらしくない捨て台詞を吐いた後、格納庫がある部屋を出た。エレベーターに向かう。エレベーターの前まで行くと仁王立ちで扉を睨み付けて待つ。やがて扉が開いたが、すぐには飛び込まなかった。今一番会いたくない者がいたからだ。だが、そこで立ち止まるのはしゃくだと、ずんずんと中に入り、腕を組んで奥の壁にもたれかかり前を睨み付けた。アスカが青い瞳で睨み付けている視線の先にはレイが立っていた。エレベーターはゆっくり動き出し加速していく。エレペーターの中は機械音が微かにするだけだ。あたりを沈黙が支配する。
 
「EVAは自分の心の鏡」

 レイが呟いた。

「なんですって」

 アスカはもたれかかるのをよして一歩前に出た。
 
「EVAに頼らなくていい。あなたには、EVAに乗らない幸せがある」

 アスカに向かって言っているのだろうが、レイはエレベーターのドアの方に向いたままだ。

「偉そうなこと言わないでエコヒイキのクセに。私が天才だったから、自分の力でパイロットに選ばれたのよ。コネで乗ってるあんた達とは違うの」

 アクションが元々大きいアスカだが、心中の怒りが強いせいか、胸に手をあて絞り出すような声でレイの背中に言う。
 
「私は繋がっているだけ。EVAでしか、人と繋がれないだけ」

 振り向かず淡々と話すレイにアスカはより一層激高した。声が叫び声に近くなる。

「うるさい。アンタ碇司令の言うことはなんでも聞く、おすまし人形だからひいきされてるだけでしょ」
「私は人形じゃない」
「人形よ。少しは自分を知りなさいよ」

 アスカは一歩踏み込むと右手でレイを叩いた。叩こうとしたが急に振り向いたレイの左手に止められる。レイの左手には刃物傷に付けたたくさんの絆創膏が貼られていた。
 
「ふん。人形のクセに生意気ね」

 絆創膏が何を意味するかは自分もそうなので判った。アスカは少し冷静になる。丁度アスカの降りる階に着いたので右手を戻すと大股でエレベーターを出ていこうとする。だが、ドアを出ようとした瞬間気が変わった。閉まりそうになっていたドアに寄りかかる。俯いたまま上目遣いでレイを睨み付け呟いた。

「ひとつだけ聞くわ。あのバカをどう思ってるの」
「バカ」
「バカと言えばバカシンジでしょ」
「碇君」
「どうなの」
「よく、わからない」

 アスカはレイの方に一歩踏み出す。ドアが閉まりそうだったので手で押さえながらだ。

「これだから日本人は、ハッキリしなさいよ」
「わからない。ただ、碇君と一緒にいると、ポカポカする。私も、碇君に、ポカポカして欲しい。碇司令と仲良くなって、ポカポカして欲しいと思う」
「分かった」

 アスカは振り向くと廊下へ歩き出す。後ろでドアの閉まる音がする。

「ほんと、つくづくウルトラバカね。それって、好きってことじゃん」

 何故かいらついていた。




「しんちゃん、レイちゃんの料理楽しみだね」
「そうだね。でも話してないで、勉強の時間だよ、姉さん」

 シンジは自室で宿題をしていた。ただ何か無いとシンジにくっついているアンズがまとわりついて仕方が無いので、勉強の時間にした。アンズは小学校二年生の漢字練習帳をやっている。ひらがなとカタカナはおぼえたアンズだが漢字は難しいらしく中々おぼえられないで苦労している。
 
「え~でも一時間もしたし休憩の時間」
「しかたないなあ。じゃ一休みしよう」
「じゃお茶とお菓子はアンズが用意するにゃ」

 アンズは尻尾をふりふり部屋を出て行く。シンジはのびをして畳に倒れ込んだ。畳がひんやりして気持ちいい。

「でも確かに楽しみだなぁ食事会。けど、綾波の料理って大丈夫かなぁ」

 シンジは横に寝返りをうった。ちゃぶ台の陰から、机の上に置いてあるレイの手紙が見えた。

「父さんも、来ればいいのに」
「しんちゃん、お待たせ」
「早いね姉さん」

 アンズはトレイに山盛りのお菓子とジュースの入ったコップを乗せて持ってきた。地元の商店会で何かと手伝っているせいか、期限切れ近いお菓子などを貰ってくる。それに最近はホタル自身が務めていたfireflyのCMに一緒に出ている。ホタルはCMでは若いお母さんキャラに変更したため、その代わりだそうだ。そのためギャラ以外にもfireflyからの大量のお菓子がアンズの部屋にあふれている。猫は甘い物はあまり判らないそうだが、人間の姿の時はやたら甘い物を食べたがる。
 
「姉さん、またそんなにお菓子を」
「お菓子は頭の栄養だにゃ」
「どこでそんなことを覚えたんだろ。それはともかく姉さん最近太ったよね」
「にゃ、にゃんの事かな」

 アンズは視線が泳いでしまう。身に覚えがあるようだ。
 
「姉さん見た目がスリムぐらいしか取り柄が無いんだから。デブに成るよ」
「が~ん。しんちゃん酷い」
「事実でしょ、あっミサトさんから電話だ。はい、じゃ今日は飲んでくるから夕食は無しですね。はい。はい、じゃ」
「ミサトさんどうしたの?」

 お菓子とお茶のトレイをちゃぶ台に置いたアンズはシンジの携帯をのぞき込む。
 
「今日はミサトさん飲んで来るから夕食いらないって。となると、夕食何がいいかな?アスカにはもらい物の良いお肉があるからいいとして」
「お魚!!」
「じゃ勉強が終わったら買い物に行こうか」




 その日の夜ネルフ御用達の飲み屋でミサトは酔っ払って絡んでいた。加持にである。いつものことだし、ミサトに絡まれるのはそんなに悪くないのか加持はにこやかに対応している。
 
「大体あの新型ダミーシステムってやつ、なんかいけ好かないんだけど」
「人以外にEVAを任せるのがかい?それともあの子達以外に任せるのがかい?」
「両方よ」

 ミサトは強いお酒をどんどんあおっていく。
 
「それより、ゼーレとかいううちの上層組織の情報、もらえないかしら」
「例の計画か」

 加持はミサトの方に顔を近づけて声をひそめた。

「情報くれるなら一晩ぐらい付き合うわよ」
「それは願ってもないが、探るのはやめておけ。危険だよ」
「そうもいかないわ。人類補完計画。ネルフは裏で何をしようとしてるの?」
「それは、俺も知りたいところさ」

 加持は少し真面目な顔になると、顔を引いた。自分のおちょこに酒を足す。ミサトもグラスに酒を足した。
 
「久方ぶりの食事だってのに、仕事の話ばっかりだ」
「学生時代とは違うわよ。色んなことも知ったし、背負ってしまったわ」
「お互い自分のことだけ考えてるわけにはいかないか」
「シンジ君たち、もっと大きなものを背負わされてるし」
「ああ、子供には重過ぎるよ。だが、俺たちはそこに頼るしかない」
「ええ」
「で今晩だが」
「や~よ」
「まっそうだよな。でも本気で惚れてるんだよ」
「はいはい」

 ミサトはグラスをまた干した。丁度そこに携帯の呼び出し音が響いた。ミサトは面倒くさそうに携帯を手に取る。

 
「はい。ええ、分かってるわ。日付変更までには結論出すわよ」

 ミサトは携帯を切るとバックに戻す。

「リっちゃんか?」
「そう。三号機テストパイロットの件で矢の催促」

 ミサトは肩をすくめた。

「人選は君の責任だからな」
「それはそうなんだけど、三号機到着の予定がずれちゃって、よりによってこの日なのよね」
「いつだい」
「これ」

 そう言ってミサトは携帯電話の画面を加持に見せた。
 
「いろいろとね」




 その日の夜、シンジの作った夕食を平らげた後、アスカはさっさと自室に戻っていた。下着姿でベッドで天井を見つめていた。やがて携帯を手に取るとスケジュールをチェックする。

「三号機軌道実験の予定日って、エコヒイキの約束の日じゃない」

 アスカはしばらく携帯のスケジュール帳を眺めていたが、やがて反動をつけてベッドから飛び起きた。

「よっと」

 下着がずれたので直した後、電話を掛けた。




 レイは定期的にメディカルチェックを受けている。チルドレンは皆受けているが、レイは頻度が多い。丁度レイがリツコにチェックを受けていたときリツコに電話がかかってきた。マヤからの内線だ。
 
「そう。アスカに決定ね。ええ。私は最後の便で松代に向かうわ。あとはお願いね。マヤ」
「はい、先輩」

 レイはリツコの言葉を聞いて何のことか悟ったらしい。聴診器を当てるため脱いでいたシャツのボタンを留める手をとめた。

「あの、赤木博士」

 いつもと違う調子のレイの声にリツコはレイの顔を見た。いつもとやはり違って見える。

「アスカに伝えたいことが。お願いします」




 EVA三号機は一旦新熱海のネルフ施設に運ばれた。そこで米国支部から引き継ぎを受けた後、受け取り時のチェックが行われた。その後から大型のトレーラートラックで陸送されることになった。ネルフの松代基地に搬送される三号機はネルフの警備部隊に周りを囲まれて進んでいく。その部隊の先頭の車両は警備の車とは違いおしゃれな2+2のスポーツカーだ。車道楽のミサトがローンで買った白い車は静かに進んでいる。ミサトとアスカはこの輸送に付き合う必要が無いが、アスカがEVA三号機の下見をしたいと言ったため新熱海で引き継ぎから付き合っている。運転席にはミサトが座り助手席にアスカが座っている。不機嫌そうな顔で外を眺めていたアスカはなんとはなしに携帯を見た。留守電が入っている。リツコからだ。再生してみた。

「一件の新しいメッセージがあります。一番目のメッセージです」

 音声ガイダンスが流れてくる。

「はい、レイ。話していいわよ」

 続いてリツコの声が聞こえた。レイが話し始めるのかと待っていたアスカだが中々声が聞こえてこない。アスカは次第にいらつき始めた。そしてもう電話を切ってやろうと思ったときレイの声が聞こえた。
 
「ありがとう」

 思いがけないレイの言葉にアスカは驚いた。だが表情が優しいものに変わった。そして携帯を閉じた。
 
「ふんっ。バッカじゃないの。私がEVAに乗りたいだけなのに。大体自分の携帯でかけなさいよ」

 アスカは携帯をポケットにしまうとまた口をひん曲げていかにも馬鹿にしたような声で呟いた。そしてまた外を眺めた。ミサトは口元だけに微笑みを浮かべて運転を続けた。
 
「三号機、私が気に入ったら赤く塗り替えてよね。松代に先に行って準備しましょうよ」
「いいわよ」

 ミサトはアクセルを踏み込んだ。




 その日の二年A組の教室はなんとはなしに静かだった。いるだけで騒がしいアスカやケンスケ、トウジがいないからだ。シンジもアスカが松代に行っているのは知っていたが、トウジとケンスケのスケジュールは知らなかった。

「おはよう洞木さん」
「おはよう碇君」

 丁度ヒカリが登校したので聞いてみることにした。

「ケンスケとトウジしらない?」
「ケンスケ君はWWRの仕事をコノエさんとしているので長期休校らしいわ。鈴原は妹さんを疎開させるって今日はお休み。サクラちゃん元気になったし、当分親戚に預けるんだって」
「そうなんだ」
「サクラちゃん碇君と離れるのが嫌だあって、だだこねて困ったらしいわよ」
「そうなんだ」
「それと鈴原がサクラちゃんは完治した。碇に感謝してる。でもサクラは誰にもやらんだって。もうやけるほどシスコン」
「えっとそうなんだ」
「でもほんと良かったわね、サクラちゃん」
「うん」

 シンジはヒカリの珍しいくだけた口調にほっとした。

「ところで碇君は今日綾波さんにお呼ばれなんでしょ」
「うん」
「女の子が料理を食べさせたいっていう意味をきちんと考えてね」
「えっと」
「トウジもそうだけど鈍すぎるとそれは罪よ」
「鈍いって、あっ木之本さん、大道寺さんおはよう」

 丁度サクラとトモヨも教室に入ってきた。

「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう、木之本さん、大道寺さん。ねえ聞いて、碇君綾波さんに招待されたのにノープランよ。男の子ってこれだから」
「碇君ってそゆとこ鈍いから。いろいろ苦労するよね」
「そうですわね」

 トウジとケンスケがいない分集中攻撃を受けるシンジだった。




「EVA三号機、有人起動試験総括責任者到着。現在、主管制室に移動中」

 ミサトとアスカは松代に一番乗りして機体の到着を待つことにしたが、リツコはたまっている仕事を片付けてからVTOLで急行した。リツコが松代の実験場のエアポートに降り立った時には着々と起動実験の準備が進んでいた。


「地上仮設ケージ、拘束システムのチェックの内容、問題なし」
「アンビリカルケーブル、接続作業開始」
「コネクターの接続を確認」
「主電源切替え終了。内部電圧は、規定値をクリア」
「エントリープラグ、挿入位置で固定完了」
「リフト1350までをチェック、問題なし」

 総合指揮車の中で複数のモニターを見ながら仁王立ちしているミサトはテキパキと指示を出していく。

「了解、カウントダウンを再開」
「カウントダウンを再開、地上作業員は総員退避」
「テストパイロットの医学検査終了。現在、移動隔離室にて待機中」
「あとはリツコに引き継いで問題なさそうね」

 自分の仕事も一段落付き、ミサトが軽いため息を付いたとき、ポケットの携帯の呼び出し音が鳴った。
 
「守秘回線。アスカからだわ」

 ミサトは携帯を耳に当てる。

「どうしたのアスカ。本番前に」

 ミサトは総合指揮車から出てその車体に寄りかかりながら話し始めた。

「何だかミサトと二人で話がしたくってさ」
「そう。今日のこと、改めてお礼を言うわ。ありがとう」

 アスカは新しいプラグスーツに着替えながら電話に話しかける。

「例はいいわ。愚民を助けるのがエリートの義務ってだけよ。元々みんなで食事ってのは苦手だし、他人と合わせて楽しい振りをするのも疲れるし、他人の幸せを見るのも嫌だったし、私はEVAに乗れれば良かったんだし、元々一人が好きなんだし、馴れ合いの友達は要らなかったし、私をちゃんと見てくれる人は初めからいないし、成績のトップスコアさえあればネルフで一人でも食べていけるしね」
「そう」

 ミサトはアスカの声を聞き少し表情が和らいだ。

「でも最近、他人と居ることもいいなって思ったこともあったんだ。私には似合わないけど」
「そんなことないわよ。アスカは優しいから」

 アスカはプラグスーツを着終わると、鏡に向かって自分の顔を見る。まつげが少し気になるのか目をこする。
 
「こんな話ミサトが初めて。何だか楽になったわ。誰かと話すって心地いいのね。知らなかった」
「この世界は、あなたの知らない面白いことで満ち満ちているわよ。楽しみなさい」

 ミサトは微笑むとアスカがいるであろう仮設ゲージの方を眺めた。

「うん。そうね。ありがと。ミサト。ところでさ、赤いのはいいんだけど、このテスト用プラグスーツって、見え過ぎじゃない?」
「いいじゃないの、他人に見せてみっともないような貧弱な体型じゃないって言うのが、アスカの自慢でしょ」
「まっね。ミサトみたいに垂れだしてないし」




「パーカーさん情報ありがとう、じゃまた」

 ケンスケは携帯を閉じた。今、松代にいた。たまたま移った先が松代だった。こちらの中学校に通っている。アパートで二人暮らしだ。保護者はコノエだ。姉弟ということにして暮らしている。
 
「式波またEVAに乗れたんだ」

 アパートはたまたま松代の起動試験場に近いため、アパートの窓から起動実験場をおおう大きな囲いが見える。
 
「綾波も碇も食事会上手くいくかな」

 ケンスケはそう呟くとめがねをとり拭った。




「エントリースタート」

 総統括責任者のリツコの声と共にテストが始まった。

「LCL電荷」
「圧力、正常」
「第一次接続開始」
「プラグセンサー、問題なし」
「検査数値は誤差範囲内」
「了解。作業をフェーズ2へ移行。第二次接続開始」

 リツコの指示が試験場に響く。アスカにも当然のように聞こえてくる。エントリープラグの中で目をつぶっているアスカの口元に微笑みが浮かんでいた。

「そっか……私、笑えるんだ」

 アスカはミサトとの先ほどの会話やレイとの話を思い出していた。

「あっ」

 アスカが漏らした驚きの声と同時にエントリープラグ内の光景が変化した。シンクロしているため実際の光景かアスカの脳内の光景か区別はつかない。ただ、あたりの色彩が七色に変化し、空間を笑い声が覆った。アスカはどこかに向かって落下する感覚を覚えて、顔が引きつった。
 アスカにとっては一瞬だが、総合指揮車からは一分ほどアスカが全く動かないように見えた。その後アスカの姿がモニターから消えた。
 
「プラグ深度、百をオーバー。精神汚染濃度も危険域に突入」

 女性オペレーターが叫んだ。

「なぜ急に」

 ミサトはエントリープラグ内のモニターを見るが七色の光の粒が点滅するのが見えるだけだ。さすがに焦っていた。

「パイロット、安全深度を超えます」
「引き止めて。このままでは搭乗員が人でなくなってしまう」

 リツコは自らも端末を叩いてアスカを引き戻そうとする。
 
「実験中止、回路切断」

 ミサトはもっと直接的に実験の中止を指示したが遅かった。

「ダメです。体内に高エネルギー反応」
「まさか」

 モニターの数値を見たリツコの声も震えている。

「使徒」

 ミサトが叫ぶとほぼ同時に仮設ケージ内のEVA三号機が雄叫びを上げ、すさまじいエネルギーを放出し大爆発を起こした。
 
 
 

「えっ、松代で爆発事故」

 シンジは食事会のためレイのマンションに向かっていた。丁度マンションが見えてきたときに連絡を受けた。ゲンドウを乗せた車も途中でUターンして本部へ向かった。本来ならシンジが鳴らしたはずのレイのマンションのチャイムはネルフの諜報部員が駆けつけ鳴らしていた。




 それにしても変態仮面の映画の第三弾は作られるのだろうか?シン・エバンゲリオンはいつ公開になるのだろうか?

次回「EVAザクラ新劇場版 破 第十四話」
さぁて、この次もサービス、サービス!

つづく


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