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No.43351の一覧
[0] EVAザクラ 新劇場版[まっこう](2019/08/30 22:14)
[1] EVAザクラ新劇場版 序の次 第一話[まっこう](2019/08/30 22:12)
[2] EVAザクラ新劇場版 序の次 第二話[まっこう](2019/08/30 23:59)
[3] EVAザクラ新劇場版 序の次 第三話[まっこう](2019/08/31 12:37)
[4] EVAザクラ新劇場版 序の次 第四話[まっこう](2019/08/31 19:23)
[5] EVAザクラ新劇場版 序の次 第五話[まっこう](2019/08/31 22:22)
[6] EVAザクラ新劇場版 破 第一話[まっこう](2020/06/01 21:04)
[7] EVAザクラ新劇場版 破 第二話[まっこう](2020/06/26 21:46)
[8] EVAザクラ新劇場版 破 第三話[まっこう](2020/07/05 16:22)
[9] EVAザクラ新劇場版 破 第四話[まっこう](2020/07/22 00:29)
[10] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧[まっこう](2020/07/24 19:53)
[11] EVAザクラ新劇場版 破 第五話[まっこう](2020/08/12 15:01)
[12] EVAザクラ新劇場版 破 第六話[まっこう](2020/09/30 19:42)
[13] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/09/30 21:52)
[14] EVAザクラ新劇場版 破 第七話[まっこう](2020/10/06 17:44)
[15] EVAザクラ新劇場版 破 第八話[まっこう](2020/10/10 17:16)
[16] EVAザクラ新劇場版 破 第九話[まっこう](2020/10/15 14:10)
[17] EVAザクラ 新劇場版 搭乗人物一覧 update[まっこう](2020/10/15 14:22)
[18] EVAザクラ新劇場版 破 第十話[まっこう](2020/11/05 17:09)
[19] EVAザクラ新劇場版 破 第十一話[まっこう](2020/11/26 17:26)
[20] EVAザクラ新劇場版 破 第十二話[まっこう](2020/12/26 18:14)
[21] EVAザクラ新劇場版 破 第十三話[まっこう](2021/01/31 20:05)
[22] EVAザクラ新劇場版 破 第十四話[まっこう](2021/04/02 22:25)
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[43351] EVAザクラ新劇場版 破 第三話
Name: まっこう◆564dcdfc ID:4098afbe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2020/07/05 16:22
サンダーバード are go!シーズン3 第一話 先行放送の日です。

-------------------------

「アンズさん、あと20秒です」

 今アンズに話しかけているのはトモヨではない。TB5のAIのイオスだ。この作戦はタイミングが重要なため、イオスが指示を出している。TB5の遠隔観測とFAB-1からの情報からイオスが最適解を計算して指示している。

「サクラさんはカウント0でタイムの魔法を発動。サクラさんの主観時間で5秒間魔力はもつはずです。アンズさんはカウント0でサクラさんを担いでください。その後に腕時計にあらかじめ入れておいた指示通りサクラさんを運んでください」
「わかったにゃ」

 サクラは限界に近い。話す余裕もない。微かに頷く。

「10、9、8、7」

 アンズの腕時計型通信機からカウントダウンの音がする。

「6、5、4、3、2、1、0」
「タイム」

 サクラとアンズ以外の時間が凍り付いた。




EVAザクラ 新劇場版

破 第三話

お菓子




 アンズはサクラを素早く抱えると非常階段に突進する。今、サクラとアンズ以外の時間は止まっているが、アンズが身につけている腕時計型通信機の時間は二人と一緒に動いている。あらかじめイオスが知りうる限りの情報で計算した最適ルートが、大きな音で通信機から響いてくる。実際は耳から聞こえてくるのではなく、骨伝導で体内を音が伝わってくる。アンズは死に物狂いでサクラを担いで突進した。この5秒のアドバンスを生かさなければ二人とも死んでしまう。アンズは猫又と言っても超常能力というほどの物はない。普通の人間より3倍ぐらい力持ちで、3倍ぐらい反射神経がよいだけだ。あと暗闇でもよく眼が見える。猫の姿に戻れるが今は関係ない。ともかく普通より力持ちで素早いだけだ。だがこの極限状況ではそれが全てに優先した。薄暗い物が散らかっている床を滑るように移動していく。階段まですぐにたどり着いた。そして、アンズが階段までたどり着いたところでサクラは魔力がつき気絶した。魔法が解け一気に海水が圧力で溶けた。高圧の海水が二人に襲いかかった。




「0」

 イオスのカウントダウンをFAB-1で聞いていたトモヨとパーカーは0の瞬間サクラとアンズの姿が消えたように見えた。次の瞬間、氷が溶け、一気に水槽のガラスが崩壊し、FAB-1はサクラたちがさっきまでいた空間に吸い出された。凄い勢いではあったが、戦車より頑丈なFAB-1に乗っていた二人は平気だ。

「イオス、二人は」
「階段を上がっています」




 そのころ加持達は階段を上りきり地上まで来たいた。階段の下から轟音がきこえてくる。

「お姉ちゃん」

 耐えられなくなってシンジが階段を降りようとする。加持が止めた。

「悪い、シンジ君」

 加持がシンジの口元にポケットから出した薬品を嗅がすと、シンジは脱力した。麻酔薬ではないが動きを止める薬品だ。加持はシンジを担ぎ上げる。

「ここから退避だ」

 加持の指示に従い皆出口から離れて行った。




「にゃ」

 おしゃべりなアンズもさすがに話す余裕が無い。暗い階段を一気に駆け上がる。腕時計からイオスがリアルタイムで計算した最適ルートの指示が聞こえてくる。ともかくその通りに駆けていく。後ろから轟音が聞こえるが、振り返る事など出来ない。イオスの指示はほぼ正確だが、どうしてもセンサーで感知できない部分などの指示は不正確だ。思わぬ障害物があったりする。アンズはネコ科の動物にのみ許される反射神経と柔軟さで、障害物を避けていく。加持達が5分かかった階段を30秒で駆け上がった。

「出口だ」

 外の明かりが見えたところで思わず気が緩んだ。足がもつれて階段に転がった。あと20mで地上だが、体を打って痛くて動けない。サクラも気絶して転がっている。下から轟音が近づいてきた。

「だめにゃ」

 無敵の脳天気アンズも思わず目をつぶる。恐怖からか猫に戻ってしまった。だがその瞬間出口から二人の男が飛び込んできた。大柄な黒マントの男は人間であるにもかかわらずアンズより素早く移動して迫り来る海水に立ち塞がった。

「石破天驚拳」

 カッシュが放った石破天驚拳は拳圧で海水を押し下げた。同時に飛び込んでいたトウジがアンズを抱き上げ残りの20mを駆け上がった。カッシュもサクラを担いで出口から出た。一旦TBNで屋敷に戻ったトウジとヒカリだが、高層ビルの事故はすでに解決していたので屋敷で待機していたところ、TB5経由でここの状況の連絡を受けた。屋敷にいたカッシュと共にTBNで急行した。加持達が出口から少し離れた頃、現場に到着した。FAB-1からの報告も入っていたので出口の上空から二人は飛び降りTBNはホバリングで待機となった。そして出口から二人が飛び込んだ。
 二人が出口から飛び出たその直ぐ後に、出口から海水が吹き出た。あのままだったらサクラとアンズは水死していただろう。

「いいんちょ、着陸や」
「了解」

 海水に濡れたトウジが通信機に怒鳴ったが、言われるまでもなくTBNは着陸態勢に入っていた。出口の側は破壊されていて平らな場所はないが、そこはWWRの小型機だけあって着陸用の足を伸ばして斜めのまま着陸した。斜めなのでそのままキャノピーが開いた。カッシュとトウジがサクラを後部座席に乗せた。猫の姿のアンズはヒカリの膝の上だ。

「医務室に急行します」

 キャノピーが閉まるとTBNは全速力で上昇し、屋敷に向かい飛び立ち、姿は見えなくなった。




「ふひゃ」

 サクラは変な声を出してしまった。天井が見える。以前風邪をこじらせた時、サクラが見た天井だ。屋敷の医務室のベットで寝ていた。医務室と言っても総合病院の一番良い部屋より設備が整っている。医療データはネルフとの取り決めで、ネルフの医療部門に専用回線で共有している。
 サクラは気がついたが、体は殆ど動かない。

「気がついたようだね」

 二人の顔が視界に入ってきた。大道寺家の医療担当である花右京タロウとウイッチドクターの役を買って出たクキコの顔だ。

「ひゅあ」

 変な声しか出ない。

「まだ休みな。魔力が枯渇して生命力も使い果たす寸前だったぞ。無理すんな」

 そんな事を言うクキコも目の下にクマが出来ている。普通の医療で足りない魔力の充填等を着きっきりでしていたせいだ。

「みんな無事ですよ。アンズちゃんも隣のベッドで寝ていますよ」

 タロウの声を聞いて安心したのか、サクラはまた眠りに落ちた。




 サクラが次に眼を覚ましたのは三日後だった。結局十日間眠り込んでいた。アンズもサクラとほぼ同時に眼を覚ました。サクラが眼を覚ました時、目の前にシンジの顔があってびっくりした。トモヨがサクラが目が覚めたら一番最初に会いたい人であろうシンジを呼んでいた。シンジはネルフ代表で、サクラにお礼を言いに来たと言う事もある。それに姉が心配でネルフの用がない時はずっと付き添っていた。アンズに付き添っているという事はサクラに付き添っている事でもある。時々レイやアスカも顔を出した。レイは姉貴分のアンズが心配だし、アスカは借りは早く返したい方だからだ。
 シンジは目を覚ましたサクラに心からのお礼をした。その際必ず手を握ってお礼をするようにとトモヨに怖い顔で厳命されたのでその通りにした。おかげでサクラの脈拍数と血圧が急上昇してテレモニターしていたタロウが何事かと慌ててとんできたぐらいだ。アンズの方は天然物のマスを具にしたおにぎりを山のようにシンジが作ってきたせいで上機嫌だ。マスはコダマが命を救ってくれたお礼に苦心して入手してきた。アンズは余りじっとしていられない方なので、起きた後は屋敷中を探検したりしている。
 その後はレイやアスカ、トウジやヒカリなどもみな見舞いに訪れた。その際、TB5の観測データと腕時計型通信機の内蔵センサに記憶されていたデータから作った二人の動きの再現映像なども見せられた。カッシュはアンズの動きを褒めていたし、クキコもサクラの魔法を褒めていた。ともかくあのテロで死者を出さなかったその場の皆の判断は正しかったという事だ。ネルフを代表してシンジがお礼を言ったがそれとは別に加持も訪れた。チルドレンの命を優先した事について、ネルフの立場の理解を求めた。アンズは怒っていたが、サクラは納得していた。ただ、トモヨには上手く言ってくださいとだけ付け加えた。
 サクラとアンズがみんなに見舞いなどを受けていたころ、トモヨが何をしていたかというと、今後のテロ対策をネルフの関係者とずっと協議をしていた。トモヨ自体はサクラを苦しめたテロリストなど文字通り壊滅させて、地獄にたたき込みたいところだが、WWRの理念に反してしまう。あくまでも世界的救助隊であって、犯罪撲滅は目的ではない。テロ組織の対処、壊滅はネルフに強く要望した。それだけではなく色々な国の友好機関のいくつか、ナイト財団やキングスマン、そんな所とも交渉をして、デストロンの壊滅を依頼した。WWRの隊員としてはそこまでだが、トモヨ個人で何かをやるのは問題が無い。ポケットマネーで探偵を雇う事にした。
 サクラが目覚めてから二日後、パーカーの運転するFAB-1でケンスケをお供に町外れの小さな雑居ビルを訪れた。パーカーをFAB-1に待たせて、ケンスケと共に二階に上がる。そこには探偵事務所の看板が出ていた。

「ごめん下さいな」
「はい、ただいま」

 中から女性の声がした。戸が開く。

「お電話差し上げました、大道寺トモヨと申します」
「お待ちしていました。中へどうぞ」

 20代後半の女性が中に案内してくれた。応接セットがありその奥にもう一つ部屋がある。

「今、所長を呼びますのでしばらくお待ちください」

 応接セットのソファにトモヨとケンスケが並んで座った。トモヨは奥深く座ったが、ケンスケはいつでも動けるように浅くだ。コノエがいない時は、ケンスケがボディーガードだ。今回は屋敷やWWRとは関係ないという事にしたいのでコノエは連れてきていない。

「お待たせしました」

 となりの部屋とのドアが開き責任者らしき男性と若い男が入ってきた。責任者らしい男は会釈をするとトモヨ達の反対側に座った。若い男は横に立ちメモを出して準備している。

「私が所長の早川ケンです」
「私が大道寺トモヨです。こちらは相田ケンスケさん」

 名刺の交換などをしたりする。

「早速ですけど、早川さんはとてもお強いと伺いましたけど」
「そうですね。腕っ節で依頼人に失望させた事はありませんね」

 早川ケンはそう言いつつ微笑んだ。中々ハンサムで魅力的な笑顔だ。

「相手がどんな組織でもですか」

 トモヨも微笑み返す。年相応に可愛い。

「ええ。悪者を怖がっていてはこの家業は務まりません」
「それはよかったですわ。ではデストロンを叩き潰してくださいな」
「改造人間がいる組織と風の便りに聞きましたが」
「はい。無理でしょうか?」
「いいえ。一日10万円に必要経費でいかがでしょうか?」
「はい。では先に三ヶ月分で」

 トモヨはポシェットから小切手帳を取り出すと一千万円の小切手をその場で切った。

「私のポケットマネーですわ。税金は掛からないように手配します。殺人と誘拐以外なら警察も黙らせますので、よろしくお願いしますわ」

 トモヨはゾクッとするぐらい可愛い笑顔で微笑んだ。




 一週間ほどでサクラはほぼ普段の体調に回復した。学校にも復学した。サクラ達がWWRの隊員であるのは公然の秘密なので、救助活動で怪我をしたという噂が流れていた。サクラが魔法を使うのは伏せられているので、WWRのメカを使い皆を助けた事になっていた。アンズも美人のお姉さんとして人気があり、同じくWWRの隊員と思われている。
 そんなこんなで放課後、アスカとレイが珍しく、一緒にネルフに向かっていた。シンジは今日は訓練等は無く、溜まっている家事をしに戻っている。二人はモノレールでジオフロントに下りていく。

「レイ」
「なに」
「あんたアンズの好物知ってる?」
「魚とお菓子。何故聞くの?」
「アンズに借りを返したいの。サクラはシンジとほっとくのが一番のお礼でしょ。で、あんたこの街のお菓子屋知ってる?」
「私は知らない」
「そう。明日付き合いなさいよ。アンズをお菓子屋に連れていっておごる。取りあえず食べ物で返すわ」
「なら専門家に頼む」




「ま、知り合いでお菓子の専門家となればトモヨになるわね」

 翌日の土曜日、アスカはアンズと共にマンションの前で待っていると、レイがトモヨを連れてやってきた。トモヨは珍しくお供の者がいない。

「私も専門家と言うわけではありませんわ。ただ専門家なら知り合いにいますので」

 トモヨの話だと、専門家が開いているお店があり、そこに案内するということだ。道々話を聞いたところ、駄菓子の会社のCEOが開いているアンテナショップが付近に有るそうだ。10分ほど歩いて着いた店はアスカの想像とは違っていた。アンテナショップというからにはお洒落なお店を想像していたが、時間が50年巻き戻ったような駄菓子屋だった。店名は「しかだ駄菓子店」だ。

「ここ?」
「はい。アスカさんの手持ちで最大限にアンズさんに楽しんで頂くならここですわ」
「トモヨちゃんここ何のお店なの」

 アンズがトモヨに聞いたその時だった。

「モチのロン、駄菓子屋ですわ。しかだ駄菓子へようこそ」

 駄菓子屋の隣にある小さなコーヒーハウスの屋根から声がした。皆が見上げると、そこには派手で綺麗な女性がポーズを取っていた。年の頃は20代半ば、銀髪に青い瞳だが、顔立ちは日本人だ。ハーフだろうか。可愛い顔立ちではあるが、ポーズを取っているせいで、細身に不釣り合いな豊かな胸が強調されている。

「ホタルさんお久しぶりですわ、今日は駄菓子を腹いっぱい食べたい人をお連れしましたので、お願いしますわ」
「それは何より。とー」

 ホタルは飛び降りるようなポーズだけをしてから、梯子で下りてきた。

「改めまして、鹿田ホタルです」

 年相応に礼儀正しくお辞儀をする。

「アンズです」
「アスカです」
「レイです」

 ホタルのテンションの上下に二人は唖然としている。レイでさえもマジマジと見ている。

「では店内へどうぞ」

 店の入り口の引き戸をホタルが開けた。店内は所狭しと駄菓子が並んでいる。

「今日はココノツさんが編集者と打ち合わせでいないし尾張さんも仕入れでいないので、私が店番ですの」

 ホタルが皆を店内に引き入れた。

「ホタルさんは駄菓子メーカーのfireflyのCEOですの。ここはfireflyの直営ですけど、駄菓子博物館みたいな物も兼ねていて、firefly以外の駄菓子もいっぱい扱っていますわ。この近辺でお菓子を食べたいならまずここですわ」
「モチのロン、駄菓子ならお任せですわね。平日はCEOの業務がありますけど、土日は駄菓子フィーリングを満喫しますの」

 ホタルは意味も無く決めポーズをとる。ホタルとトモヨだけみているとセレブの美少女は変人しかいないように思えてしまう。

「ともかく安くて、大量それが駄菓子のもっとう。お任せ下さいな」

 ポーズをまたとった。少し視線も変だ。

「それはともかく、どの様な駄菓子をほしいのだろうか?」
「えっと、魚介類」

 ホタルの変なテンションにつられてアンズも慌てて答えた。

「それならいかんぼう」
「いかんぼう?」
「イカの小片に味を付けて串に刺した物。ただそれだけと言えば言える。だがそこにこそ無限の可能性が」

 またホタルはポーズをつけて視線があっちに向いていた。




 皆がアスカとレイのおごりで大量に駄菓子を買ったところで、店長の尾張ハジメが帰ってきた。ホタルより少し年上のめがねの女性だ。店を尾張に任せるとホタルは隣の「喫茶えんどう」にみんなを案内した。

「サヤ師、お客さんです」
「いらっしゃい」

 サヤ師と呼ばれた女性はホタルより少し年下に見えた。ほっそりとした整った顔立ちをしている。

「ここは、しかだ駄菓子店と提携していますの。しかだ駄菓子店で買ったお菓子なら飲み物以外は持ち込み可ですわ。モチのロン、ここのコーヒーの味は保証しますわ。ほかの飲み物もGOOD」

 ホタルはサムズアップをした。

「あの普通の喫茶店ですので」

 店長である遠藤サヤは苦笑いをしている。

「飲み物と軽食をお出ししています。どうぞこちらへ」

 皆をテーブル席に案内した。

「メニューはこれです」

 しばらくすると皆が注文したコーヒーや紅茶やジュースが出てきた。早速アンズはいかんぼうを何本も食べている。アンズだけ飲み物がジュースなのはカフェインがダメだからだ。ネルフで食べてはいけない物を調べて貰ったところ、人間の姿の時はほぼ人間の食べ物が食べられることがわかった。イカの刺身など猫の時は食べられなかったものも問題無いらしい。ただカフェインをとるとハイになりすぎることがわかったので、コーヒーやチョコレートは食べないようにすることになった。しばらくするとヒカリも駄菓子を手に店に入ってきた。ヒカリはお菓子に合わせて日本茶を注文している。ちょっとした女子会になった。駄菓子が無くなれば隣でいくらでも調達できる。お菓子と飲み物があればいくらでも話は続く。アスカもEVAが関わらなければ仲良くする気があるらしくにこやかに話している。レイもチョコレート菓子を中心に食べている。今日は暇らしくホタルが呼んだためサヤまで話に加わっている。

「それにしてもアンズさんの猫のコスプレ、パーフェクツですわ。まさにうまい棒のイラストのキャラのごとく」

 ホタルは全てに駄菓子のうんちくが絡んでくる。その上微妙にずれている。

「ところで、ホタルさんの旦那さんって漫画家の鹿坦々さんって本当ですか。スーパー女の子の作者の」
「モチのロン」
「そうなのよ、ホタルさんの旦那、私の幼なじみなんだけど、私が狙っていたのに、ホタルさんがすっと来て、するっと入り込んで、するっともってっちゃったの」
「サヤ師、その件に関しましては平にご容赦」

 お互い笑いながら言っているだけあって仲もよいようだ。

「ロマンスですね。その話聞きたいなぁ」

 ヒカリが興味津々で顔を乗り出してくる。

「いいでしょう。この際ですからお話しします」

 またポーズを付けてホタルが話し始めた。




「いかんぼうとたいたい煎餅が美味しいかったにゃ」
「へぇー良かったじゃない」
「姉さんは猫なんだから、塩分は控えめにね。病み上がりだし」
「まあまあ、シンちゃん」

 結局アンズ達は日が暮れるまで、喫茶えんどうで女子会となった。アンズとアスカが帰ってきた時にはシンジも見舞いから戻っていた。ミサトもビールで良い気分だ。

「ところで喫茶店の方はどうだった?コーヒーは?アルコールは出すの?」
「ミサトはアル中ね。コーヒーは美味しかったわよ。夜はアルコールも出すみたい」
「あっそ、場所も手頃だし、指定しようかしら」
「何のこと?」
「それはまた後で」




「コーヒーいけるじゃない」
「嬉しいです」

 サヤは少し緊張気味だ。翌日の昼頃、喫茶えんどうにネルフの制服の女性が二人訪れ、軽食とコーヒーを頼んだ。一人はアルコールも頼んだが、アルコールは午後五時以降としているので断った。その日はアルバイトが来る日らしく長身の男子学生が給仕をしている。付近の大学の三年生だそうだ。

「で、ここのお店ネルフの指定店にしてもいい?」
「指定店って?」
「まあ、そんなに深刻な話じゃないの。ネルフは知っているわよね」
「はい」
「私そこのまあ作戦担当だったりするの。こっちは技術担当」
「よろしく赤木リツコよ」

 制服に白衣の女性はコーヒーをすすって自己紹介をした。

「私は葛城ミサト。で、ネルフってどんな所だか知ってる」
「怪獣をやっつける秘密組織ですよね」
「そう、なので組織員はできるだけ使用するお店を限定したいので、指定店を設けてるの」
「はあ」
「指定店って言っても、別に秘密を守れとかそんな事じゃなくって、変な物を出さないか、食中毒などを起こさないか、連絡が取りやすいかなどで決めてるの。ここは衛生的にもしっかりしてそうだし、私のマンションから近いし、子供達も気に入ったようだし。あの子達ネルフの職員なの」
「そんな事を話してましたね」
「そんなわけで指定店にしても良いかしら。特にそちらでしてもらう事はないし。ただお客さんは増えるので、アルバイトとか雇わないと廻らないかも。だから、一応確認しに来たの」
「そうですか。丁度アルバイトもう一人雇おうかなって思っていたところなんでいいですよ。ただ、隣のしかだ駄菓子店と提携していますけどいいですか」
「あっちも指定店舗にする予定よ」

 今度はリツコが話し始めた。

「アンズやレイから預かった駄菓子を分析したけど、由緒正しい駄菓子だわ。糖分や油分は多いけど、変な保存料や着色料はないし、品質も安定しているようだし、衛生的にもしっかりしてる。何よりこのホタル印のポン菓子、コーヒーに凄く合うわ」
「はい。それでは指定をお受けします」
「もし、お客が増えすぎて、アルバイトを雇ったり、改装したりするのにお金が必要な場合は言ってくれれば、無利子で融資もするわよ」
「それは助かります。その時はどうすれば」
「名刺渡すので私に直接言って。話は通すから」

 その後二人はしかだ駄菓子店に行った。ホタルの返事はモチのロンだった。夫のココノツは苦笑いをしていた。




「駄菓子と言えば、ココアシガレットだわ」
「わいはブタメン」
「僕はねるねるねるね」
「サクラは都こんぶ」
「アンズはいかんぼうだにゃ」

 アンズがしかだ駄菓子店を気に入ったため、水曜日の放課後にまた行く事となった。アスカとレイは訓練があるため今日は来ない。アンズを一人で行かすと色々と面倒なのでシンジもついていく事になった。しかだ駄菓子店に行くとサクラとトウジとヒカリが来ていた。実は偶然ではない。トモヨがアンズを天然魚で買収済みだ。シンジの行動を報告してくれる。そこで、トモヨはサクラにしかだ駄菓子店に行くのを勧めて、トウジとヒカリに護衛を頼んだというわけだ。皆は駄菓子を選んだ後、喫茶えんどうで早速試食となった。皆一通り食べた後、シンジが箱を取り出した。

「これ微妙だよね」
「そやな」
「そうね名前も形も。味はいいんだけど」
「そだね」
「アンズはチョコレートだから食べられないにゃ」

 シンジが微妙と言っているのは、fireflyの新商品だ。えーじゃんげりおんチョコという商品名で、初号機と弐号機と零号機を足して平方根をとったような微妙なイラストがパッケージに描かれている。他にもシンジのようなアスカのようなレイのような少年少女が、レオタードのようなパイロットスーツを着ているイラストも描かれている。中に入っているのはチョコレート菓子ではなくれっきとしたチョコレートだ。そこはホタルのこだわりだそうだ。チョコレート自体の形もロボットのような人間のような変な形をしている。当然のごとくネルフに許可は取っていなかったのだが、指定店になったと言うことで、ミサトに事後承諾はとったそうだ。店長の尾張ハジメによると、結構小学生に売れるそうだ。ただみんなロボチョコと言って買っていくらしい。モデルへの無料配布と言うことで、シンジに一箱、1ダースもくれた。後でアスカトレイにもお裾分けが行くだろう。

「はい、アイスコーヒー二つ、昆布茶、アイスティー、オレンジジュースです」

 丸顔童顔の背が低いアルバイトの女性が注文した飲み物を運んできた。元々いたバイトの大学生の後輩で二十歳になったばかりだ。手際よく飲み物を配ってお辞儀をしてカウンターの前に戻っていく。

「トウジのすけべえ」
「なっなんやいいんちょ」

 アルバイトの女性は背が低いがやたらプロポーションが良い。ウエストも締まっているが、バストがスイカを半分に切ったように豊かだ。思わずトウジが凝視していた。

「だめよ、彼女を見てなくっちゃ」

 アルバイトの女性はニコニコしながらウィンクをした。ただ上手く出来なくて両目をつぶってしまう。

「えあ、その」
「彼女じゃなくって」
「まあ、その」

 トウジとヒカリがそろって狼狽えた。サクラとアンズはぼけっと見ているし、シンジは駄菓子を満喫している。いたって平和だ。

「いたたたたた。先輩頭が痛いっす」
「すみません。後輩がご迷惑をかけて」

 元からいた長身のアルバイトの学生が後輩の横に来ると頭を掴んで無理矢理下げさせ、自分も下げた。

「その、大丈夫です」
「そやな」
「先輩、大丈夫っていたたたたた、掴んでいるところが痛いっす」
「すみませんね、良く言い聞かせますから」

 先輩が手を離し頭を上げると、後輩は頭を押さえてカウンターの椅子に座り込んだ。

「そうか、先輩さんと後輩さんは恋人なんだにゃ」

 その様子を見ていたアンズが納得したように言った。

「「それはない」」

 ハモって言った。

「この根暗な先輩がぼっちになるのが心配でかまってあげているっす」
「お前がつきまとっているだけだろうが」

 二人とアンズを除いて、皆がこういうのを痴話げんかというのだなと思った。




「マウナケア観測所から情報入りました」

 その頃作戦部は忙しくなり始めた。




今度は買った本に影響されてしまったが、となると次回は彼女が出るのだろうか?
アンズがパワーアップしてしまっているのは、EVAザクラなのでしょうがないのだろうか?
次回「EVAザクラ新劇場版 破 第四話」
さぁて、この次もサービス、サービス!

つづく




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