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No.4530の一覧
[0] 俺の道(現実→DQ3トリップ)[緑茶爺](2008/10/21 17:53)
[1] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第一話[緑茶爺](2008/10/21 11:49)
[2] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第二話[緑茶爺](2008/10/22 09:25)
[3] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第三話[緑茶爺](2008/10/22 09:28)
[4] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第四話[緑茶爺](2008/10/22 14:44)
[5] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第五話[緑茶爺](2008/10/22 19:06)
[6] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第六話[緑茶爺](2008/10/23 13:25)
[7] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第七話[緑茶爺](2008/10/24 18:39)
[8] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第八話[緑茶爺](2008/11/06 12:12)
[9] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話[緑茶爺](2008/11/29 15:58)
[10] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話 番外編[緑茶爺](2008/11/29 15:59)
[11] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十話[緑茶爺](2009/07/04 20:49)
[12] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十一話[緑茶爺](2009/12/15 18:06)
[13] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第八話終了時ステータス[緑茶爺](2008/11/06 12:11)
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[4530] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第七話
Name: 緑茶爺◆9b0f1c9a ID:8b4f46b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/24 18:39

翌朝。



俺たちは馬車屋の前に集合している。

昨日、あれから4人で今後の行動方針を決めたんだが、やはりこれから旅を続けていく上で、馬車があった方が便利だろうと。
管理の手間が増えるが、それを差し引いてもメリットが大きい。

それでどのような馬車を買うか、なのだが、ここは妥協せずに実用的なものを、多少値段には目を瞑るということで探すことにする。



いやはや、しかし凄いな。これだけ馬車が並んでいると、壮観ですらある。
こんなにいろんな種類があるんだな。材質、形状、用途etc。実に様々だ。

まずは、この中からベースとなる馬車をチョイス。そこにオプションとして色々付けていくことにする。



ベース車は大した異論もなく全員一致で決定。
冒険者用御用達の高機能車だ。外装は目立たないようカーキ色。
そして屋根まですっぽりと覆った装甲材。この材質だが、スカラの魔力を封じ込めた魔石を溶かし込み、耐久性、防音性を確保してあるという。スゲェ。
数カ所に窓が開けられるようになっているが、その窓も有事の際は装甲で覆うことが可能だ。
魔法に対する抵抗力もあるんだとか。こりゃホントに軍用だな。
材質も魔石のお陰で軽量化できており、見た目ほどの重量もない。
車輪も同様の素材+高硬質ゴム+専用サスペンションを採用することにより、乗り心地、耐久性、静音性をアップ。
スペアの車輪も幾つか付属している。車輪の交換も思ったより手間ではなく、車のタイヤ交換のように楽に行えた。
気密性も高いが、換気はしっかり循環していると。高温多湿地帯、寒冷地帯とオールマイティーに対応する正に万能車だ。
その外観は正に機能美と言ったところ。
俺は気に入っているんだが、娘っコたちには若干不評だ。可愛くないだとか。
アホかい、冒険者用の馬車に可愛さを求めてどうする。

その反動なのか、内観は娘っ子たち主導で決められてしまった。
まぁ、俺は機能さえ満足できれば、中身はどうでもいいんだがな。
とはいえ、あまり恥ずかしくないのが好ましいんだが…。

内観は主に二つの部屋に分かれている。待機室と荷物室だ。
待機室には壁面収納式の簡易ベッドが4つ。左右の壁に2つずつ備え付けられている。
この待機室は結構広く、左右のベッドを出しても、真ん中で打ち合わせが出来るくらい広い。流石にテーブルは出せないんだが。
そして特筆すべきは、水道があることだろう。これは便利だ。
荷物室の天井裏にタンクが内蔵されているのだ。これは荷物室、待機室に一つずつ、それと屋外にも二箇所水をひけるようになっている。
これがあるだけで、旅がだいぶ楽になると思う。やりようによっちゃ、シャワーや風呂にも入れるのだ。
それ用に、馬車横に簡易シャワールームや、簡易浴槽なんかも取り付けられる。
そして荷物室には冷蔵庫なんてのまである。これは昔の冷蔵庫のようなもので、中に氷を入れることによって中を冷やすシステムだ。
氷はヒャドでいくらでも調達可能なので気兼ねなく使える。
荷物室には簡単な調理場もあり、ここでの調理まで可能だ。

そして内観の装飾なんだが…。
まぁ、ちっと少女趣味とも言えなくもない感じだが、まぁ許容範囲だろう。
明るく、清潔な雰囲気でいいんじゃなかろうか。
別段、居づらい感じもないしな。この環境で娘っコ達の精神が安定するなら大歓迎だ。
時間が無かったので、ざっとしか揃えられなかったが、まぁその辺りはおいおい揃えていけばいいだろう。

しかし、つくづく魔法ってホントに便利だな。いくらでも応用が効く。
他の材質と組み合わせられるなんてな。
他にも、何かもっと上手いやり方もあるだろう。



そしてこの馬車を引くための馬なんだが、何だか大層立派な白馬を用意してくれた。

ここまでフルオプションで買ってくれるんだからって、相当良い馬をつけてくれたらしいんだが。
確かに毛づややら肉付きやらを見ると、素人目の俺からしても、その迫力が解る。

これから長旅になるだろうけど、よろしくな。

撫でてやると嬉しそうに一声嘶いた。

娘っコ達もこの馬が気に入ったようだ。
名前を付けたいといってるんだが、こんな立派な馬だ。もうちゃんとした名があるだろう。
主人に聞いてみると、名前はジャンだそうだ。

なんだか活発そうな名前だが、娘っコたちもその名前で納得したようだ。

よろしくな、ジャン。



さてお支払いなんだが、結構凄い金額だった。
預けていた金額の1/3以上は持って行かれた。まぁ、こんだけの買い物だ。納得もできる。
支払ってもなお、まだ結構な額が残ってるからよしとする。

三人とも金額を聞いて倒れそうになっていたが、それを実際即金で支払った俺には、更に驚いていた。

ニルとハイネはまだ、納得できたようだが、ティファといえば絶句していた。


「イルハさんって…何者?」


あー、また旅の道中で詳しく説明するよ。なるべく早めに。



そして、旅の支度をするためにそれぞれ別行動に。

ニルとハイネは二人揃ってお買い物だが。

ティファも一旦家に戻ってから二人に合流すると。やっぱ女の子同士、仲良くなるのが早いな。

さて、じゃ俺はまず道具屋にでも、と思ったら二人に拉致られた。


「一緒に回った方が楽しいですよ?」


確かにそうなんだが、お兄さんはちと遠r



「「 行 き ま す よ ね ? 」」



「はい、行きますとも。行かせていただきます。」

「はい、よろしいです。」


ハイネさん怖いっす。



そしてまずは雑貨やらを見て回ることに。

必需品、消耗品は余分に購入しておく。道中どうなるか分からないしな。
色々物色していると、ティファが合流してきた。

おお、普段着だとやっぱ全然イメージ違うな。
って変わりすぎだろう。白のワンピースにオレンジのリボン付きミュールって。
誰も勇者だなんて思わんよ。


「…変ですか?」


上目遣いで不安そうな表情で聞いてくるティファ。そういう表情は止めてくれ。反則だ。


「いやいや、可愛いよ。ちとその変わりように驚いただけで。」


そう言ったらティファは、少し頬を朱くして二人の所へ小走りに向かった。
しかし、女の子ってなんであんなもん履いて小走りできるんだ? 俺なら足首がグネるぞ?


…おー、やっぱり二人もティファの変わりように驚いてるな。



雑貨類を買いそろえた後は、食料品、衣類品とテキパキと購入していく。

そして装備品なのだが、ティファの提案によりイシスに向かうこととなったので、ニルとハイネの装備を新調することとなった。

これはティファの、ピラミッドで倒れた仲間たちの弔いをしてやりたい、という願いを叶えるためである。



これは昨日の食事会中の出来事で、自分の気持ちに整理を付けるためにも、仲間たちの弔いをしてやりたいと。


「何も知らなかった私に、色々教えてくれた恩人でもある友人たちを、このままピラミッドに置いておくなんて、とてもじゃないけどできません…。」


しっかり前を見据えながら懇願してきたのだ。

ただ、これには二人のレベルが低いという懸念もあったんだが…。

二人は何としても手伝うと、頑として折れなかった。
そしてピラミッドに向かう条件として、まず装備を調えることと、イシス周辺で腕試しをして通用すると証明できること。

この二つをクリアして初めて、帯同を許可するというものだった。

厳しそうだと判断したら、俺とティファで向かうことにする。
黄金の爪にさえ手を出さなければ、おそらく大丈夫だろう。





そして旅支度が整い、皆で街の入口に集まる。

三人とも、先ほどまでの買い物気分が嘘のように、真剣な表情をしている。


「よし、では予定通り、まずはノアニールへ向かうが、準備はいいな?」


三人ともこくりと頷く。


「うし、ではティファ、頼む。」



「はい、では行きます。ルーラっ」



うおっ、これはスゲェ! 
この浮遊感といいスピード感といい、病みつきになりそうだ!
海を越え、山を越え、遠くに深い森が見えたかと思った次の瞬間、俺たちは既に森の中に立っていた。
ちゃんと馬車もついてきている。不思議なもんだ。ゲームの中では特に違和感なんぞなかったが、こうして目の当たりにすると、よくこんな物体が宙を舞ってついてくるもんだと、つくづく思う。



「はい、到着しました。ここがノアニールです。」


見た目は普通の小さい村のように見えるんだが…。まぁ、ゲーム中でもそれほど大きい村でもなかったか。

さて、では早速ニルとハイネの装備を調えに行くか。
早くピラミッドに行かねばならないので、急いで目的の物を揃えに向かう。

まずは「身かわしの服」2着と、「魔導師の杖」1本。締めて7300G。

それを見ていたティファは、また唖然としていた。


「そんな簡単に買えちゃうんですね…。」


でも旅を続ければ、自然とGは貯まっていくし今は消費しても大丈夫だろう。



さて、次はアッサラームだな。ちゃっちゃと行くぞー。



そしてアッサラームでは、鱗の盾と毛皮のフードを1つずつ。
ここではこんなもんかな?



おし、次はイシスへGO!



そしてイシスでは鉄兜、ホーリーランスを1つずつ。
鉄の斧は取りあえずスルー。ティファも斧は気乗りしないみたいだし。


ってことで、

ニル
E.魔導師の杖
E.身かわしの服
E.おなべのふた
E.毛皮のローブ

ハイネ
E.ホーリーランス
E.身かわしの服
E.鱗の盾
E.鉄兜

ティファ
E.鋼の剣
E.鉄の鎧
E.鉄の盾
E.鉄兜

となった。現時点ではこんなもんかな。ここまで揃えば何とかなる、だろう。





よし、ではいっちょ腕試しと参りますか。

パーティーバランスとしては、前衛2、中堅1、後衛1だからバランスは取れているな。

まずは俺とティファで突っ込み、それをニルが後方から魔法で援護、ハイネがどちらに対してもフォロー出来るようにしておく。
基本はこのスタイルだろう。場合によっては先制はニルかハイネ。まぁ、臨機応変ってやつだな。


で、砂漠を馬車で移動中なのだが、ジャンスゲェ、ホントにスゲェ。マジで馬なの?
馬っぽく見えて、実は何か別の生物だった、って言われても納得いくわ。
こいつが居れば何処でも行けそうだ。感動。

そして馬車も至って快適。この熱砂の砂漠でさえ快適と感じるのだから大したもんだ。
まぁ、御者は熱いんだけどな。こればっかりはしょうがない。
ちなみに御者は俺。熱いぜ。熱いぜ。熱くて死ぬぜ。

なんてなことを考えていると、少し向こうの砂が盛り上がり魔物が現れた。



「来たな。おい、お嬢さん方! 敵さんのお出ましだ!」


馬車の中に声をかけると、直ぐさま三人が飛び出してきた。

「うわ!熱!」

当たり前だろう、ニルよ。

「…これは、日焼け対策が肝要ですね…。」

問題はそこなの?ハイネ…。

「そうなんだよー。」

同意しちゃうんだね、ティファも。


さて、相手はじごくのはさみ×2、かえんむかで×3。
ニルとハイネには結構荷が重いだろう。俺とティファで切り込んで…

「ヒャドっ」

「マヌーサ」

おぉ!?

先制したのはニルとハイネだった。
かえんむかでにヒャドを、じごくのはさみにマヌーサを放つ。良い選択だ。

じごくのはさみに、マヌーサはちゃんと効いたようだ。

かえんむかでも右端の一匹がヒャドを受け、もんどり打っている。

しかしこの二人は物怖じしないっつーか、何つーか。逞しいね、どうにも。

そしてティファはというと、鋭い切り込みでヒャドを受けたかえんむかでにトドメを差している。

流石熟練者。抜かりがないね。

おっと、俺も負けてられねーな。


「そうりゃ!」


視界を遮られ、明後日の方向に攻撃を繰り出しているじごくのはさみを、大上段から振り下ろし真っ二つにする。
その隣にいたもう一匹も、下から切り上げた一撃で魔石となる。

次はっ

と思ったが、残っていたかえんむかでも、最後の一匹。

ニルがヒャドでダメージを与え、ティファが胴体をなぎ払いトドメとする。



ふぅ、ひとまず損傷はなし、かな?


「いえ、ハイネさんが…。」


なにっ!?


「大丈夫ですよ。左肩あたりのちょっとした打ち身程度でしたから。もうホイミもしましたし。」


ほら、といってハイネが肩をぐるぐる回す。まぁ、だいじょうぶならいいんだが…。


「イルハさんは心配性すぎます。私たち結構丈夫ですよ?」


ねー、といってニルとティファをみるハイネ。二人もうんうんと頷く。

どうも怪我をするってのがね。回復呪文で結構直るってのは、頭では理解しているんだが…。


「なんでイルハさんは、そんなに負傷を問題視するんですか?よっぽどじゃなければ、回復呪文ですぐ直るのに…。」


ティファが魔石を回収しながら聞いてきた。

ちょうどいい機会なので、ティファにも俺が何者なのか、打ち明ける。
ここなら周りに聞かれる心配もないだろうし。





「ってことなので、俺らの世界では損傷はそんな直ぐ治るもんじゃない。回復魔法なんてなかったんだから。
 程度によっちゃ、完治まで数ヶ月、数年なんてのもあるんだし。そりゃ損傷を恐れるよ。」

「…そう、なんですか…。イルハさんが…。」


ティファもやはり信じられないようだ。

そりゃそうだろう。異世界からの来訪者だなんて荒唐無稽もいいとこだ。普通は信じられない。



「…でも、私はイルハさんを信じます。ルイーダの酒場の一件もそうですが、アナタは信頼できる。
 そんな気がします。ニルやハイネを見ていてもイルハさんを使用しているのがよく解りますし。」



おいおい、そんな簡単に人を信y

「私もそう思います。付き合いは短いですが、イルハさんは信用できる、信頼できる方だと。」

ハイネ…。

「そうですよ! イルハさんはいい人ですっ!」

ニルも…。

…ホントに良いコ達だ。この子らの期待に応えるように、俺も気張らないとな。





「分かりました。ではイルハさん、これからもよろしくお願いします。」


そう言ってティファは深々とお辞儀をする。


「ああ、こちらこそよろしく頼むよ。俺は君らの手助けをする。君らは俺の手助けをする。それで問題なしだ。」


しかし、この俺の問題は、いずれルイーダにも言った方がいいのかな…。
あの経験豊富な魔女なら何か知っているか? 今度行ったら打ち明けるか、な。





その後も数度の戦闘を経た結果、二人も連れて行って問題ないだろう、ということが分かった。
この二人は本当にセンスがある。逸材だ。
レベルも上がり戦闘にも慣れてきて、自分の仕事というのがしっかり分かってきたようだ。
もう、いちいち指示をせずとも、こちらの意図を汲んでくれる。大したもんだ。
自分の力量をちゃんと弁えているからか。無理に突っ込んだりしない。


「イルハさんとティファがいますからね。私たちはバックアップに専念できるので、視野も広く取れますから。」


いやまぁ、それはそうなんだが、今の時点でそれを出来るってのが凄いことなんだよ。お二人さん。


ティファも、流石歴戦の勇者という戦い振りだった。
素人の俺から見ても場慣れしてるってのが分かる。行動に無駄がない。


「…それをイルハさんに言われたくないですよね…。」


なんでだ? ティファ。


「その装備を使いこなす能力といい、実戦経験が少ないなんて微塵も感じませんよ。」


そうか、自分では気がつかないんだが…。


「イルハさんは異世界でも剣士だったんですか?」


ハイネが首をちょこんと傾げながら聞いてくる。


「いや、ちっとはかじったことがあったが、本格的な訓練なんてこれっぽっちも受けたこと無いぞ?」


剣道にしたって、短期間習ったぐらいしか経験ないからなぁ。やっぱりこれはトリップ時の補正なのだろう。


「「「嘘っぽい…。」」」


みんな、声を揃えて言わないでくれ…。





そして、一路ピラミッドに向かう。
時間的にみて、これからアタックしてもさして遅い時間までにはなるまい。
ティファも居ることだし、道に迷わず目的地にたどり着けるだろうし。

そしてここで一つ問題が。


「…馬車をどうするか…。」


一旦イシスまで戻って馬車だけ預けてくるか、このままここで待機させるか。
ってこのままじゃ、いくらなんでも危ないだろう。
こんな事なら最初から置いてくれば良かったか。
しゃーない、時間のロスにはなってしまうが、一旦イシスに戻って…


「聖水で結界を張っておきましょう。」





「そうだね、それで大丈夫かな?」


あの? それはどういうこと?


「…あ、そうか、イルハさんは知らないですよね?」


ハイネ、説明してくれる?


「はい、聖水を使って簡易的な固定結界を張り、魔物から陣営や物資を守ったりできるんです。」


そうなの?


「ええ、ジャンと馬車程度の規模であれば使う量も少ないですし、手持ちの聖水で事足りるかと。」


えっと、それは条件とかは?


「えと、聖水と魔法力があれば特にこれといった条件は…。」


…なんだよ。じゃ、俺が野営で寝ずの番しなくてもよかったんじゃ?


「…そうなりますね…。」


…なんで言ってくれなかったの?


「あの時は手持ちの聖水もありませんでしたし、イルハさんの事情も知らない時でしたので訓練の為かと…。」


…オーライ、これから聖水は常に持ち歩くように気をつけよう。



そしてティファが聖水を使って、 ピラミッドの日陰部分に結界を敷いてくれた。
こういった略式の結界は結構一般的なのだという。
魔法力を持っているなら、聖水の効果を増幅、固定できるんだと。
移動しながらっていうのは流石に難しいらしいんだが。
ん? じゃぁトヘロスは? アレと聖水の結界を組み合わせれば、移動可能で結構強力な結界が出来る?
これはいずれ試してみたいな。
街や城などの大規模な結界は、やはり神官や専門の結界師の仕事なのだとか。
掛かる手間も費用も段違いらしい。そりゃ、そうだわな。

そこにジャンと馬車を待たせ、ピラミッドに侵入する。
こんな時でもちゃんと待っているジャンは、ホントに良くできた馬だ。

ちょっと待っててくれな。直ぐ帰ってくるから。





ピラミッドの中は真っ暗なのかと思いきや、薄ぼんやりと明るい。通路もそれほど狭くもない。
各所に開いている通気口や明かり取りから陽が入り込んでいるようだ。
これなら戦闘も、さほどし辛くはないだろう。

ティファが先行してハイネ、ニル、俺の順番で進んでいく。
これはティファが路を知っているということと、攻撃力・防御力共に優れているという点だ。経験も豊富だしな。
そして万が一の後ろからの襲撃に俺が備える、と。勿論戦闘が始まれば直ぐに前衛へと移動、迎撃を行う。まぁ、今まで戦闘してきて、後ろから襲撃されたことってないんだけどな。律儀な魔物たちだ。

で、実際に戦闘をしてみた実感だが、ここの敵は打撃だけで押していける敵が大半だ。
通路が広くないので、敵からの打撃力は前衛に集中する。俺かティファだ。
装備が整っている俺とティファならまぁ、まず問題はない。ハイネのバックアップもあるしな。
打撃力的に見ても俺とティファは問題なし、ハイネは幾分威力が落ちるが、まぁ何とか押していける。
それとティファは魔法を使うのを極力抑えてもらう。緊急時のリレミトの為だ。
まぁ、地下は魔法が使えないから関係ないといえばないんだが。
そしてニルだが、極力後衛で待機していてもらう。魔法が使えない場所がある+ニルの使う魔法はメラ、ギラなど火を扱うものが多い。
こんな閉鎖空間で火系の呪文を使ったときに、酸素が吸われて…なんてことになったら堪らない。まぁ大丈夫だとは思うが。同じ理由で雷神の剣の使用も控える。アレは酸素を喰いすぎる。ここじゃ怖ろしくて使いたくない。
ヒャドは有効なんだが、これは後方からの遠距離支援として使用してもらう。

さて日が暮れればこの中も真っ暗になりそうなので、早めに進めよう。
まぁ松明等は常備しているから、長時間でなければ大丈夫だろう。
もともとの予定も長時間ではないしな。



順調に歩を進め、小一時間もしないうちにで地下への階段の入口に立つ。

この下がどのような惨状か想像に難くない。

ティファにはここからが最も辛いところだろう。


「…行きます。」





「……………。」


思わず息を呑んだ。

至る所に散らばっている魔石。どれだけ激しい戦闘があったのかが窺い知れる。

その中でまず発見できたのが魔法使いであったろう遺体。衣服から推測出来るんだが、大凡人体であったとは思えないサイズになっていた。
食い千切られたのか、引きちぎられたのか。四肢が無くなった胴体だと思われるそれは、とても人であったとは思えない。

無言でティファがその遺体に布を掛け、祈りを捧げる。
ハイネとニルもそれに倣う。

俺は周囲を伺いながら、他に何かあるか目を凝らす。すると少し離れた所に武闘着らしきものが見えた。

まだ3人が祈りを捧げているのを確認し、俺はその武闘家であっただろうものに近寄る。



以前の職業柄、人の死体にちっとは慣れていたが、これは流石にキツイな…。

こちらの遺体もまた、大凡人とは思えない。先ほどの魔法使いのものよりも酷いな。
これが身体のどの部分なのかすら分からない。衣類が無ければ、何なのかすら分からなかっただろう。


「イルハさん…。」


俺の隣にはティファが辛そうな表情で立っていた。

そっか、最後に見たのが、この武闘家だったんだよな。

ティファは魔法使いと同じように、その遺体の一部にも布を掛け、祈りを捧げる。



その後、僧侶の遺体も探したんだが、こちらは何も見つからなかった。無惨なもんだ。
せめて一部でも見つかればよかったんだが…。





俺たちは二人の遺体をピラミッドの外へ運び出し、馬車へと載せるとルーラでアリアハンへと戻る。
それからはルイーダの酒場へと向かい、彼らの遺体を確認してもらった。
ルイーダが正式に彼らが戦死したことを認定し、ギルドからの登録抹消を決定した。


「…しょうがない、こういうことも有るんだよ…。」


メンバー一覧に記載されている彼らの名前に、抹消の判を押すルイーダは酷く哀しげな表情に見えた。
彼らの出身はアリアハンでは無かったらしく、これから故郷に通知を送るとのことだ。
そんな通知を受け取るとは、彼らの親族も思ってはいなかっただろうに…。


そして遺体は、親族に送るために衣服の一部を切り取った後、街外れにある冒険者の共同墓地に丁重に葬った。
結局遺体は見つからなかったが、僧侶の墓碑も勿論建てた。
無理言って業者に手伝ってもらいながらの作業中も、ティファは気丈にも涙一つ見せなかった。
無言で、ひたすら彼らの墓を作っていた。見ているこちらのほうが辛くなってくる。



そして出来上がった三人分の墓標。辺りはすっかり夜の帳が下り、月が輝いていた。



気が滅入る。いつでも何処でも死に別れってのは辛いもんだな…。

ティファがその墓標の前に座り、水を掛けてやる。



「…ありがとね、みんな…。…本当に…ありがとう…。それと…ごめん…。」



涙声のティファ。そして聞こえてくる嗚咽。

よく今の今まで涙を堪えていたもんだ。

そんなティファを見かねたハイネとニルが、駆け寄り優しく肩や背中をさすってやる。

それに気づいたティファが二人に向き直り抱きつく。
と、さらに激しい嗚咽が聞こえてきた。もはや悲鳴のようですらある。

ニルとハイネにも辛かったんだろう。見せるべきでは無かったかもしれないが、いずれは通る道だろう。
遅いか早いか、だけだ。酷だとは思うが、今の内に乗り越えてもらいたい。



三人ともただひたすら泣いていた。嗚咽が夜の空に吸い込まれていく。

俺は無言で3人に近寄り、その肩を抱き寄せる。
それに気づいた3人が顔を上げる。それぞれが泣きはらした顔で。


「…いいか、3人とも。絶対に、勝手に死ぬんじゃないぞ? 俺が許さないからな?」


一瞬3人ともポカンとした表情を浮かべたが、すぐにその表情が笑顔に変わる。涙はそのままで。



「「「はい。」」」



うし、良い返事だ。



そうして3人は泣きやみ、一路帰るための準備を始める。
といっても、道具類を隣接する業者の納屋に持って行くだけだが。
その様子を見ていると、ティファも幾分落ち着いたようだ。
まぁ、そんな簡単に踏ん切りがつくとは到底思えないが、これで少しは彼女なりに気持ちの整理がつくだろう。



だが、俺は今回のことで惑いが生まれた。

いずれはこの三人を残して元の世界へ帰る、という選択肢が更に選ぶことが難しくなった。
出来るかどうかも解らないが、もし戻れるとしても俺はその選択肢を選ぶのだろうか。選べるのだろうか。
帰りたい気持ちも勿論ある。だが、それと同じ位、この三人とこの世界で一緒に居たいとも思う。
俺のこの気持ちもキッチリケジメをつけないとな。
いずれ選ぶときに、迷わないように。間違わないように。





片付けを終え、業者に手厚い謝礼をする。
そして三人がルイーダの酒場に向かったことを確認してから、俺は再び三つの墓標の前まで行き、その前にしゃがみ込んだ。





ティファにはこれ以上、哀しい思いはさせないようにするから、安心して休んでくれ。

俺たちでアンタ達の出来なかった、やりたくても出来なかったことを、やり遂げてみせるよ。





それが俺たちに出来る、せめてもの手向けだから。








後書き

初後書きとなります。
皆さま、沢山のコメント本当に、本当にありがとうございます。嬉しい悲鳴というヤツです。
後ほど、コメントの返信を差し上げたいと思いますので、もう少々お待ちくださいです…。

少し間が開きましたが、ひとまず投稿することができました。
で、これでひとまず第一部完!としたいかな、と。
パーティーも揃った事で物語を動かし始める事ができそうなので。
数日後にはまた投稿できるかと思いますので、申し訳ありませんがお待ちいただけると幸いです。




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