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No.4530の一覧
[0] 俺の道(現実→DQ3トリップ)[緑茶爺](2008/10/21 17:53)
[1] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第一話[緑茶爺](2008/10/21 11:49)
[2] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第二話[緑茶爺](2008/10/22 09:25)
[3] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第三話[緑茶爺](2008/10/22 09:28)
[4] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第四話[緑茶爺](2008/10/22 14:44)
[5] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第五話[緑茶爺](2008/10/22 19:06)
[6] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第六話[緑茶爺](2008/10/23 13:25)
[7] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第七話[緑茶爺](2008/10/24 18:39)
[8] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第八話[緑茶爺](2008/11/06 12:12)
[9] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話[緑茶爺](2008/11/29 15:58)
[10] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話 番外編[緑茶爺](2008/11/29 15:59)
[11] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十話[緑茶爺](2009/07/04 20:49)
[12] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第十一話[緑茶爺](2009/12/15 18:06)
[13] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第八話終了時ステータス[緑茶爺](2008/11/06 12:11)
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[4530] 俺の道(現実→DQ3トリップ)第九話
Name: 緑茶爺◆9b0f1c9a ID:8b4f46b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/11/29 15:58

レベルアップ1日目



「やぁーっ!」


ティファが、キャットフライを大上段から切り伏せると、断末魔の叫び声を残し魔石へと変わる。


「これで終わりですかね?」


周囲を伺いながら、ティファが俺に声を掛けてくる。


「そうだな、辺りに魔物の気配も無いようだ。んじゃ、魔石を回収しよう。」


アッサラームに来てから何度目かの戦闘を終え、魔石を回収してから一息つく。


「…おーい、二人ともー。大丈夫かー?」

「はぁ、はぁ…、はい…。疲れたぁ…。」

「…はい。大丈夫、です…。」


ニルとハイネは若干息が上がっているようだ。

やはりちと二人にはきつかったか?
だが、ニルとハイネは頑として、ここアッサラームでのレベルアップを譲らない。

確かに獲得できる経験値もGも、現状行ける地域の中では高い。
だがその分魔物も強いので、さしものこの二人でも簡単に通用するわけではない。

ピラミッドの時は、敵はほぼ俺かティファで倒していた。
ハイネはバックアップ、ニルも後方待機か呪文で援護程度だったしな。

だが、レベルを上げるという目的上、いつまでも庇っているわけにもいかない。
自分で攻撃しなくてはならない。

まぁ、本当に危なくなったら俺が助けに入るんだが、その俺だっていつミスるか解らないのだ。

なので基本二人はバックアップなのだが、ハイネには今は少し前衛気味で、ポジションを取ってもらっている。
打撃に回る機会を増やして、前衛二人との連携を強化してもらいつつ、ニルにもハイネの打撃が、どの程度敵に通用するかを見ておいてもらう。
ハイネには負担増なんだが、頑張ってもらおう。

そしてニルは流石に前衛というわけにはいかないので、後衛から今まで以上に積極的に魔法による攻撃・支援を行ってもらう。
色々と魔法を使いながら、使用する魔法の種類やタイミング等を研究してもらう。
使える魔法も増えてきたことで、敵に対する戦術もだいぶ幅が広がってきたしな。
あとイオを覚えれば、ひとまず一端の魔法使いと言うところか。
イオは消費量が少し多いのだが、広域の敵に対して有効な為、早いところ身につけて欲しいもんだ。





「大丈夫か? 二人とも。もう少し休憩した方がいいんじゃないか?」

やはり二人のレベルで、ここでの連戦は結構キツイんだろう。バテバテというワケではないが、表情に疲れの色が見てとれる。
戦闘終了時に回復呪文はかけているが、精神的な疲れは魔法とはいえ、どうしようもないようだ。


「いえ、大丈夫です。やれます。」

「そうですよっ、だいじょーぶ!」


ふむ、まぁ、最初から飛ばしすぎるのもどうかと思うが、いざとなったら雷神の剣もあるしな。
って、この雷神の剣なんだが極力使わないようにしたい。

むしろ、武器としても使わない方がいいんじゃないか、とすら思い始めている。
なにしろこの武器は強力すぎる。

確かに戦力としては申し分ないんだが、俺の技量が本当に上がっているのか疑問に思うときもある。
この剣による所が大きすぎるのではないか、と。

なので鋼の剣を予備に一本買おうと思っている。

と、そんな話をしていたら、ティファ曰わく、

「そんな必要ないですよ。だってその武器をキチンと扱えている時点で、その武器を使うに足る技量はあるわけですから。」

ということなのだが。

うーん、まぁ確かに、そう言われればそうなんだが…。

まぁ、他にもちと、やってみたいこともあるので、やっぱり予備に鋼の剣を買っておこう。





「よし。じゃぁ、移動するぞ。」


隊列を組み直し、再度出発する。

隊列は、先頭から順にティファ、ハイネ、ニル、俺だ。ピラミッドの時と同じ。
これなら、後ろからの襲撃されても、俺ならある程度耐えられるだろうし、その間に隊列を立て直す時間も稼げるだろう。先頭がティファなら安心して任せられるし、俺もすぐに前衛のフォローに回れる。

ちなみに馬車は街に置いてきている。
長期の移動には馬車は非常に便利なのだが、今のように森などを周回しながらレベルアップするときには、ちと移動に不便な為だ。
ま、いざとなればアッサラームにはルーラで戻れるわけだし。



しかし、イシスよりは気候的に楽とはいえ、アッサラームもやはり暑い。
森の中ってことで少しは涼しいんだが、暑いもんは暑い。

基本的に鎧なんてのはさして通気が良くない。
ましてや兜なんてのは暑くてしょうがないんだが、外すワケにもいかない。
汗が眼に入らないよう、兜内にタオルを巻いているのだが、そのタオルも直ぐ汗でじっとりとしてしまう。

ニルとハイネも鎧ではないのだが、やはり暑いようだ。
熱中症には気をつけないとな。水分補給もしっかりと取らねば。



そしてまた歩くこと暫し。

頭上で葉が動くような音がしたので見上げると、そこにはあばれザルが。
厄介なことに確認できただけで3匹も。だが、まだ他にいないとも限らない。

娘っコ達も気がついたようで、既に臨戦態勢だ。

暴れ猿の動きを注視しつつ、ニルとハイネを後ろに下げる。

と、何とキャットフライが背後から滑空しながら突っ込んできた。
ギリギリで気づいたハイネが、その攻撃を紙一重でかわす。


「ちぃっ、ティファはハイネとニルの援護! 俺は暴れ猿をやる!」

「はいっ!」


ティファは直ぐさまハイネの元へ駆けつけ、キャットフライトと正対する。
その間に態勢を立て直すハイネ。ニルは俺とティファ、ハイネのどこにも対応できるように位置を遷移する。

だが、敵はまだ隠れていたのだ。
じごくのはさみとかえんムカデが1匹ずつ更に現れた。


「何だってんだ。 どうしてこんなに一片に出てくる?」


今までこんなに沢山で出てくる事なんてなかったのに。
悪態をついても何の解決にもならないのは解っているんだが、言わずにはいられなかった。

って、バカ。 俺が焦ってどうする?

こういうときは、トチ狂って遮二無二動いたらダメだ。落ち着け、俺。


まずは敵情の把握。


大丈夫、敵の数はまだこちらの2倍にすらなっていない。
彼我の数の差はあれど、戦力比からいえば、俺が居る分まだこちらが優勢だろう。
だが、あばれザルに頭上をとられているのは面白くない。



厄介なあばれザルを最初に潰すかっ



その時、あばれザルに向かってニルがギラを放つ。
ナイスタイミングだっ

それを喰らって、あばれザルが3匹とももんどり打って落下してくる。


「おぅりゃっ」


そこへ全速で突っ込み、雷神の剣を横薙ぎに振るう。
この図体のデカイ、筋骨隆々としたあばれザルの身体も、雷神の剣の前では大した障害にはならない。
態勢を崩しているところに一太刀目でまず一匹目。そのまま返す刀で二匹目。

そして三匹目と思ったところで、視界の隅に何かが入った。


俺に向かって何かが飛来してきているようだった。


俺はあばれザルにトドメを指すことを止め、回避運動に入る。
後方へ転がりながらそれをかわし、何が襲ってきたのかを確認する。


「…おいおい、また新手かよ?」


そこにいたのは、先ほどのキャットフライとはまた別のヤツだった。しかも3匹。

ったく、ゾロゾロと。

って、そう言えばティファ達はっ?



ティファとハイネは二人で連携しつつ、ニルから離れ、敵を押し出す形で攻めていた。
既にキャットフライとかえんムカデは倒したようだ。その姿は確認できない。

今はじごくのハサミに対して、左右から挟撃する形で攻撃を加えている。もう少しで倒せそうな雰囲気だ。
ん? 動きの鈍いじごくのハサミは、体表に氷の塊が突き刺さっている。ニルのヒャドだな? いい連携だ。


よし、向こうは大丈夫そうだ。


俺は改めて魔物に向き直る。
こちらはキャットフライ3に手負いのあばれザル1。
俺だけでも何とかなるか。

身構え、キャットフライ3匹の中央にいるあばれザルを目標にする。アレを潰せばあとはどうとでもなるだろう。


「ぅりゃぁっ!」


一直線にあばれザルに斬りかかる。左右から、キャットフライが牽制紛いの攻撃を仕掛けてくるが無視。
かわし、盾でいなし、あばれザルに肉薄する。

あばれザルも、その巨大な拳を振るって抵抗するが、手負いのその動きは鈍く、容易に盾で捌く。


「だっ」


遠心力を利用しての大振りな一撃。
隙はあるが、今のこのあばれザルに、それを突くだけの余力はない。

横薙ぎに雷神の剣を一閃。

それであばれザルは魔石となった。

残りはキャットフライ3つっ
横薙ぎの遠心力のまま後方へ向き直り、再び加速。

一気にキャットフライに接近、そして勢いをそのまま打撃にも乗せる。

一つめを突き刺し、二つめを横薙ぎ。三つ目は大上段からの唐竹割りで切り伏せる。


よしっ、これで全部か?

娘っコ達に向き直ると、あちらも片付け終わった様子だ。
しかし、油断は出来ない。また新手がいつ襲ってくるとも限らない。
直ぐさま三人と合流する。


「終わったな? 大丈夫だったか、三人とも?」


剣はまだ抜き身のまま、三人に声を掛ける。


「ええ、こちらは何とか…。イルハさんも大丈夫でしたか? 敵の増援が見えましたが…。」


おお、よく見てたな。流石ハイネ、視界を広く取れているな。
若干息が上がっている気がするが、まぁそこはご愛敬。


「ああ、キャットフライだけだったしな。そっちも上手く処理できたみたいだな。」

「ええ、ハイネの援護とニルの的確な魔法もありましたし、厄介なあばれザルもイルハさんが相手してくれましたから。」


ティファがニルとハイネを労いながら返答する。
うん。やっぱりちゃんと連携は取れていたみたいだな。


よし、じゃぁ、魔石を回収してしまおう。剣を鞘に収め、魔石の回収を始める。


「そういえばニルって、まだイオは使えないんだよな?」

「うー、そうなんですよぅ。アタシも早く使ってみたい呪文なんですけど。」


回収作業をしながらニルに聞いてみたが、やはりまだのようだ。
アレを使えると随分と戦闘が楽になると思うんだけどな。


「って、イルハさんは使えるんですよね?」

「ああ、そうなんだが、あんまり呪文って好きじゃないんだよな…。」

「何です? それ。」


ニルは盛大に「?」マークを浮かべて聞いてきた。


うーん、何て言うか、攻撃するなら自分の手でっていうか。
呪文は勿論便利だし強力だってのは解ってるんだけど、しっかりとトドメは自分の手で刺したい。


「…何だか物騒な話ですね…。」

「…ねぇ…。」


引くなって、ハイネ、ティファ。

なんつーのかな、感覚の違いっていうのかな。
相手の命を奪うんだ。その感触を忘れてしまってはいけない気がするんだ。例え相手が魔物でもな。
自分が生き残るために相手の命を奪う。
この世界では、というか、生きていくためには当たり前のことだと思う。
でも、安易に相手の命を奪ってしまったら、その重みを感じられなくなってしまいそうでな。

呪文を否定するワケじゃない。
ニルは魔法使いなんだから、その呪文で相手を倒すのが当たり前。それでいいんだ。

俺の矜恃とでも言えばいいのか。俺の中での問題なんだ。




その後も俺たちは歩を進め、戦闘を繰り返す。

ニルとハイネも少しずつ戦闘に慣れてきたようで、効率の良い攻撃をするようになった。
無理はせず、行くところは行く、引くところは引く。相変わらず二人とも良い判断ができている。
ティファも俺たちとの連携にだいぶ慣れてきたようだ。
さすがは勇者、順応力は抜群だな。やっぱり素材が違う。
俺も、レベルは上がっていないが、自分の身体の使い方が前よりもだいぶ解ってきた。
それに伴って、自分で工夫をしながら攻撃をするようにもしている。
ゲームや漫画などで見知ったような事も出来ないかな、と試行錯誤を繰り返しながら。

折角高い能力があるんだ。有効活用して旅の役に立てないとな。
ただ漫然と戦闘を繰り返しているだけじゃ、勿体ないってもんだ。

そして森の中にも夕闇が迫ってきた頃、俺たちは今日のレベル上げを切り上げ、アッサラームへ戻ることにした。

戻る手段はルーラなんだが、今回は俺がルーラをすることにした。

一回試してみたかったんだ。
感覚としてはティファに教えてもらったので、それを実践してみる。



えーっと、ルーラで行きたい場所の景色を思い浮かべ、そこへ飛んでいくようにイメージをするんだったな。



…うむむ、では行くぞっ


「ルーラっ!」


おおっ!?この引っ張られていく感覚!成功だっ


そしてあっと言う間にアッサラームに到着。
あぁ、やっぱりこれは非常に楽しい。頻繁にルーラを使ってしまいそう…。


街へ入り、まずはジャンのもとへ。
留守番ご苦労様。一日待っているだけだったからな。退屈しただろう。
ひとしきりジャンを労い、そして馬番へも礼を言っておく。ホントお世話掛けます。助かります。

それから皆揃って宿へと向かった。
一日戦闘を繰り返すと、汗やら砂埃やらでかなり不快感が高い。
気温が高いため、それは余計に感じたんだが。

ってことで、食事の前にひとっ風呂浴びておくことにする。

この街にも宿は沢山あった。
というか、アリアハンよりかなり多いな。さすが行商地。
部屋は皆で仲良く相部屋、は流石にマズイってことで、俺はシングル、娘っコ達はトリプルルームにした。
ちっと宿代がかさむが、まぁ、安眠は大事だからな。お金には換えられない。
娘っコ三人は全員で相部屋でも構わないといっていたが、俺が遠慮した。
これでも健康な男子なんだ。気が休まらないよ、こんな可愛い娘っコ達と一緒に寝てたら。



ここアッサラームはバハラタやイシスへの中継地ということもあり、人種も多種多様だ。
ただ比率的に多いのは、現実世界でいうところの中東系の彫りの深い、渋い格好いいおっさん連中が多い。
これがこの辺りにすんでいる人たちの人種なんだろう。

そういえばイシスも同じような人たちだったな。

それと女性も魅力的な人たちが多い。
じっくり見ていると、娘っコ達の視線が痛いから、あまり見れないんだけどな…。

そして風呂に浸かりながら、ふとパフパフ屋のことを思い出す。
たしかアッサラームだったよな、あれ。

…後で街中散策がてら、リアルで体験してみるか。なんつって。



そして娘っコ達と合流し、夕食に出かけることにする。

今晩の食事処は、地物の食材を活かした昔ながらの食堂。クチコミで評判が広まった店だとか。
これは期待できそうだ。

基本的に、この世界の食事は現実世界と変わらない。
ビックリするような下手物も、今のところお目にかかってないしな。

ただ一つ残念なのがカ■リーメイトがないんだよな。いや、当たり前なんだけど。
現実世界の俺の主食が…。
禁断症状とまではいかないが、あの味、恋しいぜ…。



街中をつらつらと見ながら店に向かっていると、やたら煌びやかな通りに出た。

…あー、何となくだがここいらが色街なんだろうな。漂っている空気が明らかに違う。
歩いている人も堅気じゃなさそうなのも沢山いる。それに呼び込みも多数いるようだ。


「…イルハさん、何見てるんですか?」


俺がその通りを見ていると、どこか不機嫌そうなハイネの声が聞こえてきた。


「あー、いやなに、やたら派手派手しい通りだなと思ってさ。」

「…仕方のない事だとは思いますが、えっちなことは程々にしてくださいね?」


えーっと、ハイネさん? 俺がソレ系の店に行くことはもう前提なの?


「だって男の人って、“そういう”ことは我慢できないものなのでしょう?」


いやまぁ否定はできないけどな。
かといって、嬉々としてそういう店に行くような人間でもないんだけど。


「えー、ホントですかー?」


なんだよ、ニルまで。俺がそんな我慢弱い人間だと?
これでもちったぁ堪え性があると思ってるんだが。


「そうですね、イルハさんは誠実な方ですし。」


あー、ティファ。ソレとコレとは、また話が違う気がするんだが。
論点がちっとばかしズレてやしないかい?


なんて下世話な話をしながら歩を進める。
こんな若いコ達とする会話じゃないよな。これ。

まぁ、現実世界でも風俗に行った経験はないんだよな。実は。
何となく行きづらいというか何というか。そこまでして行くような所でもないというか。
まぁ、人並みに彼女もいたし、溜まったら自分でしてたしなぁ。



お、ニルとティファが店を見つけたようだ。二人とも小走りで店へ向かう。

とその時、俺の横を並んで歩いていたハイネが、若干頬を染めながら何やら小声で呟く。


「…まぁ、どうしてもっていうなら、私が何とかしますよ?」


はい? 何の話ですか? ハイネさん?


「何って…。アレですよ。我慢できなくなったら…。」


え? いやいや、はい?


「…イルハさんなら、私、いいですよ?」


…あー、えーと、その、なんだ。落ち着け俺。
そうだ素数だ、素数を数えろ。って、あ、いや、そんなことをするんじゃなくて。


「………。」


…そんなに朱い顔で見つめないでくれハイネ。


「んー、あー、ハイネ。その申し出は非常に嬉しいんだが、あ、いやいや、そうじゃなくて、そういったことはだな、
 軽々しく口にすべきではないと俺は思うんだが、如何でしょうか。」

「………勿論、私だって軽々しく口にしたワケじゃないんですよ………?」


おーう、これはなんだ? 俺はいつの間にかフラグを立ててたのか?
あまりにも唐突すぎて頭がついていかないんだが。

俺が言葉を発せずにいるとハイネがため息を一つついて、


「…イルハさんは鈍感ですよね。」


…えぇ、よく言われてました。ハイ。


「……その鈍感さんに、私の気持ちは伝わりましたか?」

「…ああ、流石にな…。」


伝え方はだいぶ強引なストレートだったが。


「…私も強引過ぎたかなとは思いますけど、そういう風に言わないと、イルハさんには伝わらないと思って…。」


うーん、仰る通りです。


「私まどろっこしいのはキライなんです。自分に正直にいたいんです。」


あぁ、そうだな。ハイネはそういうコだよな。


「…私こんなこと言うの初めてなんですよ? 今、物凄く恥ずかしいんですから…。」


あぁ、解ってるよ。顔真っ赤だもんな。


「うあ…、そういうこと言わないでください。」


了解しました。


「…じゃぁ、また返事聞かせてくださいね?」


ん、今すぐじゃなくていいのか?


「はい、私の気持ちは伝わったみたいですし、イルハさんにもイルハさんの事情がおありでしょうから。」


こんな時でも慎ましやかなんだな、ハイネは。


「ええ、そうですよ?」


…そこでそう言ってのけるのは、ちっと違う気もするんだが。



「ハイネー、イルハさーん。席空いてるみたいですよー。はーやーくー!」



ニルが店先から俺たちを急かす。

おお、そうだった。食事をしに来たんだよな。あまりの出来事にすっかり忘れてたよ。
と、俺がハイネを促して店に向かおうとすると、ハイネはまるで何事もなかったかのように、ニルの呼びかけに応え店に向かい歩いていく。

が、急に立ち止まると、こちらにふり返った。


「………私、ハイネはイルハさんのことが好きです。大好きです。これは嘘偽り無い、私の本当の気持ちです。」


と、顔を真っ赤にしながら、声は小さかったがはっきりした口調で、しっかと目を見据えながら。

ハイネはそれだけ言うと、再び店に向き直り店へと小走りに向かっていった。


「……………。」


俺はその言葉を受け固まってしまった。

今まで女の子とつき合ったことはあったんだが、全て俺の方から告白していた。

これまで、女の子の方から告白された経験がなかったため、思考が停止してしまった。


「……………。」


あー、どうしたってんだ、俺。身体が動かない。鼓動が早い。口の中が乾いている。


「…年甲斐もなく…ってか。」


ふぅ、と大きく一息。

…ん。少し落ち着いたかな。



あー、告白されるってこういう気持ちなのか。今まで告白されたこと無かったからなぁ。

うー、柄じゃねぇなぁ。

よもやこんなにも動揺するなんて思わなかったな。
あまりにも不意打ちだったわ。改めて面と向かって言われると効くな…。


「…まぁ、悪い気はしないわな。」


それは本心だ。ハイネみたいな可愛いコから好かれているなんてな。

ただ、これからどうするか。
ハイネの気持ちに応えるとすると、何となくパーティーの空気が変わりそうだなぁ。

ってこれは俺の考えすぎ? うん、自意識過剰だな。
でも女の子達って男には解らないことだらけだしなぁ…。彼岸の存在だよ。


「…ま、ひとまず飯喰ってから考えるか…。」


俺の気持ちとは関係無しに、腹は飯を食わせろと急かしてくる。

だが、ハイネの顔を何となく見づらいな。変に意識してしまいそうだ。

気をつけよう。伊達に四半世紀の上、生きてきてないんだからな。
それくらい顔に出さないようにしないと。うん。ちと心許ないが…。うぅ。


「イルハさーん、なにしてるんですかー? 先に入っちゃいますよー?」


再びニルが店先から顔を出し急かしてくる。

それに手を軽く挙げ応えると、改めて店へと向かう。


「さて、平常心、平常心、と。」


そんなことを声に出している時点でダメな気もするが、そこはそれ、都合良く忘れよう。

さて、飯だ、飯。





飯は普通に美味しかったと思います。

店内も清潔感があり地域色も豊かで、楽しげな店内だったと思います。

なんで思います、なのかと言うと、正直よく覚えていません…。

食事に集中できなかったというか、平静を保とうとするのに精一杯だったというか。

多分、俺は不自然なくらい自然を装おうとしていたんだと思います。

何度もニルとティファに「どうかしたんですか?」と聞かれましたから。

…えぇ、動揺していましたとも。しょうがないじゃんかっ



とりあえず食事を済ませ、宿に戻りがてら街中をウインドウショッピング。
娘っコ達は、やいのやいの言いながら色々な店先を見て歩いていく。

でも店内には中々入らないんだよね。
今日のレベル上げのお陰で結構G溜まったと思うから、それ程気にせずに買い物できると思うんだけどな。


「あれこれ見るのが楽しいんですよー。」


そんなもんかねぇ。ニルさんや。

だが、うんうんと、ハイネとティファも頷いている。

うーん、お兄さんには、よくわからんです。



そのあと三人は少々の雑貨と服を購入。
俺はと言えば、付いて歩いていただけで、特に何も買わず。
買ったところで荷物になるだけだから、って頭だからなぁ、俺は。

そして宿へ到着。

娘っコ達と明日のスケジュールを確認し、自分の部屋へと向かおうとすると背後に気配が。


「イルハさん。」

「おう、どした? ハイネ。」


そこには、何やら表情の浮かないハイネが。


「…あの、さっきは急にあんなこと言ってしまって、すいませんでした。」

「いやいや、別に謝る事じゃないだろう? …まぁ、驚いたは驚いたけどな。」


苦笑しつつ、頬を掻く。


「すいません、イルハさんの負担になってしまったんじゃ、と思って…。」

「あー、大丈夫大丈夫。そんな柔な性根じゃないからな。女の子の気持ちを受け止める位の器量はあるつもりだ。うん。」


さっきはだいぶ焦ってしまったけどな。それは内緒だっ。


「そうですか、良かった…。」


そういうと、表情が幾分晴れる。


「ああ、ただ返事はちっと待ってくれな。なるべく早くしたいとは思っているんだが。」

「ええ、それは。勿論です。…でも、あんまり待たせないでくださいね?」


若干朱い顔をちょこんと傾げてそういうハイネ。

おーぅ、その表情は反則だぞ。


「…あ、あぁ。わかってるよ。」


思わずしどろもどろになってしまう。しっかりしろよ、俺。



それからオヤスミ、とハイネを見送り、今度こそ自分の部屋へと向かう。

部屋に入り腰から剣を外し、壁に立てかけておく。
そしてそのままベッドに倒れ込むようして寝転がった。



…あー、日中のレベルアップより、さっきの一件の方が疲れた気がする。



また懸案事項が増えてしまったな。
でもコレは男としては嬉しい悩みでもあるか。


あー、よもやこんなことになるなんてなぁ。

一人の男としてはハイネの気持ちには応えてやりたい。が、今俺たちの置かれている状況は結構シビアだ。

魔王討伐の任務。これが何事においても優先されるだろう。

事を済ませてから返事なんてのは無理だろう。いつになるか解ったもんじゃない。
バラモスの後にも、更に大きな問題が控えているのは確実だろうからな。
そもそも無事でいられるのかすら怪しいしなぁ。

ハイネの気持ちに応えたとして、ニルとティファにも何て言えばいいのか。

あぁ、これは結構大問題だ。こんなことを相談できるような相手もいないしなぁ。



うーん、ちと困ったな。





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