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椎名高志SS投稿掲示板


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No.2440の一覧
[0] ああっ女神さんっ その1[かいず](2007/12/24 16:51)
[1] ああっ女神さんっ その2[かいず](2007/12/24 16:54)
[2] ああっ女神さんっ その3[かいず](2007/12/24 16:55)
[3] ああっ女神さんっ その4[かいず](2007/12/24 16:57)
[4] ああっ女神さんっ 「女神のブートキャンプ」その1[かいず](2007/12/26 01:58)
[5] ああっ女神さんっ 「女神のブートキャンプ」その2[かいず](2007/12/26 02:00)
[6] ああっ女神さんっ 「女神のブートキャンプ」その3[かいず](2007/12/29 10:32)
[7] ああっ女神さんっ その8[かいず](2008/01/12 02:54)
[8] ああっ女神さんっ その9[かいず](2008/01/24 02:12)
[9] ああっ女神さんっ その10[かいず](2008/02/05 02:02)
[10] ああっ女神さんっ その11[かいず](2008/01/24 02:24)
[11] ああっ女神さんっ その12[かいず](2008/02/05 02:21)
[12] ああっ女神さんっ その13[かいず](2008/02/15 01:15)
[13] ああっ女神さんっ その13 修正・追加版[かいず](2008/03/17 02:37)
[14] ああっ女神さんっ その14[かいず](2008/03/25 02:00)
[15] ああっ女神さんっ その15[かいず](2008/03/27 01:52)
[16] ああっ女神さんっ その16[かいず](2008/03/31 02:49)
[17] ああっ女神さんっ その17[かいず](2008/04/06 02:58)
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[2440] ああっ女神さんっ その13
Name: かいず◆19b471f3 ID:79663dda 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/02/15 01:15
「次の期末テストではここの所出るからな、しっかり復習をしておくように」
先生が黒板を指差して締めの言葉を言った時に、ちょうど終業のチャイムが鳴った。



「ふぁーぁ・・・」


俺は眠い目をこすって大あくびをする。
授業が終わり教室内はかぜんにぎやかになる。
俺は今日も居眠りをしているうちに授業を終えてしまったことを反省する。
いつの間にか放課後だよ、おい。
クラスのみんなは、これから部活に行ったり進学塾へ行ったり、遊びに行く奴もいるだろうな。
俺はこれから美神さんとこに直行せにゃならん。
学生がバイトっちゅーのは今のご時勢では珍しくも無いかもしれんが、俺のバイト先はまた特殊やからなぁ。


何を隠そう霊的現象を解決して高額の報酬を得る仕事、ゴーストスイーパーなのよ(見習いだけどな)。
それは命がいくつあっても足りん、まさにハイリスク・ハイリターンな仕事!
それなのに俺はいつも命が危険で泣けるほどの薄給なのだ・・・。
でもでもっ、俺の上司の美神さんは、それはそれはステキなお姉さまなのだ!!


とまぁ、そんな感じで以前までの俺は煩悩全開で美神さんの事務所の見習いとしてバイトに勤しんでいたのだが・・・。


最近の俺は気合が入らないというか、なんというか。
これはなんて言うんやろか?
心にポッカリと穴が開いたというか。
何もやる気が起きなくなった。


でも、「働かざるもの食うべからず」とはよく言ったものだ。
スズメの涙といわれる俺のバイト代とはいえ、収入が無くなるのは死活問題なのだ。
それに、今の俺にはバイト以外に特に予定が無いし、気力も無いし、金も無い。
全てにおいて、無い無いづくしの俺。
本当に世の中は辛いことばっかりだなぁ。


それにあれだ。
俺はさ、俺は・・・。
少し前に大切な人を失ってしまったんだよ。
ルシオラ。
魔族でアシュタロスの娘だったあいつ。
こんな馬鹿でスケベで、どうしようもない俺を愛してくれたあいつ。
こんな俺を救うために、自分を犠牲にしたあいつ。
俺は彼女に何もしてあげられなかった。
何も。
それが一番辛かった。




こんな気分で家に帰って一人で部屋に居たら、なんか色々と考えて落ち込んだりするからな。
仕方がない。
バイトに行くしかないな、こりゃ。
勝手にバイトを休むと美神さんにメチャクチャ怒られるし、おキヌちゃんも心配するやろうしなぁ・・・。
やれやれと俺は鞄に教科書を適当に詰め込む。
教科書なんか机の中に置きっぱなしにして帰りたいのだが、こういうズボラをすると愛子のやつがうるさいからな。
あいつ、机の妖怪のくせにこういうところは本当にマジメやなぁ。
あ、机の妖怪だから、教科書を机の中に入れっぱなしという行為自体が我慢ならないのかな?
愛子の奴は、いつの間にかうちのクラスの委員長もやっているし、生徒会では副会長の職にも就いている。
これって、ええんやろか?
まぁ、ええか。


そうそう、今晩は久しぶりに仕事が入ったんや。
美神さん気合入ってるんやろうな~。
ようやく鞄に教科書を詰め込み、ふと窓の外の景色を見た。
校庭の側に生える木々は、もうすっかり葉の色が変わっている。
季節はもう秋、今の俺は高校2年生。
なんだかずっと高校2年生をやっているような気もするが・・・。
まぁとにかくだ、俺もそろそろ進路を決めて受験勉強をしたり就職先を考えたりせにゃならんのだろうが・・・。
ええい、どうにも気合が入らんなー。
お袋からは「高校は卒業せえ!」ときつく命令されているからなー。
まぁ、卒業はなんとかしよう。
そんでしばらくは、美神さんの事務所でアルバイトのままでおるんかなぁ。
時給が今のまんまだと凄く辛いんやが・・・、どうにもならんやろなあ~。


そんなことをぼけーっと考え事をしていたら、ピートとタイガーに声をかけられた。


「どうしたんですか、横島さん?まだ調子が悪いのですか?」

「横島サン、まだ疲れが取れとらんのじゃノー」


二人を見ると、すっかり帰り支度を済ましていたらしい。
俺の席の近くにやってきた。
俺は帰宅部で、放課後も休日も大抵は美神さんの所でバイトなので、クラス内では人付き合いが悪い方だ。
だから話が合う奴がいないんだよな。
気づいてみると、俺って寂しい奴だよー。
つい最近までは、全人類の敵とか悪の手先とか言われて迫害されていたからな。
うう、隊長のおばはんがいらん作戦立てるもんやから、あかんのや。



そんなクラスでお豆にされている俺は、自然とピートやタイガーとつるむことが多くなった。
まぁ同業者同士、仲良くやろうやってなもんだ。


「何をぶつぶつ言っているんです?横島さん」

「あ、いや。ちょっと独り言をな」

「じゃっとん横島サン。あまり無理はいかんですけーノー。今日は久しぶりにカラオケなんてどうですかノー?」


実はタイガーは歌がうまい。
こいつ意外と歌ってみると美声なんだよなー。
高音も低音もいける。
普段はこんなドラ声のくせによ。
ちなみにピートは音痴だ。
でも奴は実に気持ち良さそうに歌うから、「下手くそのくせにー」とかツッコミができないんだよな。
こんな野郎ばっかりでカラオケも寂しい感じだが、気兼ねなく騒げるのは魅力的だ。
でも、残念。
今日は行けないな。


「いやぁ、今日はこれからバイトなんだ。悪いな」

「あ、そうなんですか。それなら仕方がないですね。でも、明日の夜にある『お疲れ様パーティ』には横島さん達も参加できるんでしょう?」


おー、そうだった。
明日の土曜日の夜は、魔鈴さんの店にみんなが集まるんだった。
「アシュタロスとの戦いはみんな頑張ったし、パーッとやりましょうよ」という美神さんの発案だ。
参加者の会費は美神さんが負担してくれるらしい。
うーん、何か変なことが起こらなければいいが・・・。
あの美神さんがなぁ~。
まあそれはともかく、タダで飲み食いできるとあってカオスなんかタッパーを持参で参加すること間違いないのだが、俺も普段の粗食から解放されるべく参加するのであった。
もちろん、俺もタッパーは持っていくぞ。


「明日はエミさんも行くって言うとりましたけぇ、楽しみジャー」

「そうですかー。神父も参加されると言っていましたし。久しぶりにみなさんが揃うから楽しみですよね」

「そうだなー」


俺はピートの言葉に相槌をうったが正直な話、最初はあまりノリ気ではなかった。
でもまぁ、せっかく美神さんが企画してくれたパーティだ。
気分転換にはいいだろうなと思って参加することを決めたのだ。


「えーっ、横島君達、集まって食事会するの?いいなぁー」


自分の本体である机を担いで、学級委員の愛子が俺達の集まりに加わってきた。
愛子はこれから生徒会の仕事があるのだろう。
なにやらたくさんの資料をかかえて・・・、あ、本体の机の中にしまい込んだ。
あの中は異空間やからなぁ。
四次元ポケットよろしく、なんでも入るみたい。


「ねぇねぇ、それって凄く楽しそう・・・。私も参加してみたいなぁ・・・。机妖怪の私がこんなこと考えるのって図々しいかなあ・・・」


愛子はしょんぼりとした表情をしながら上目遣いで俺を見る。
ちょっと可愛い。


「あー、別にいいんじゃないか?他のみんなと知らない仲でもないしさ。なぁピート、タイガー?」

「そうですよ。一緒に参加しましょうよ!」

「ですジャー!」


俺達の言葉を聞いて、愛子は心底嬉しそうな笑みを浮かべる。


「そう言ってもらえると、嬉しいなあ~。明日はピッカピカに机を磨いておめかししなくっちゃ!校外でみんなと食事をしながら語り合うひと時・・・。ああ、青春だわっ!」


身体をくねくねとしながら喜ぶ愛子。
こいつ学校に住んでいるから、特に土日の夜とかは寂しい思いをしているのかもしれないな。
これから愛子はすぐに生徒会の仕事があるらしい。
「じゃあ、明日はヨロシクね」と言い残して、テンション上がり気味で立ち去った。


「さて、俺もバイトに行くかな。んじゃ、ピート、タイガー。また明日の夜にな!」









ここは都内の新築高級マンションの一室。
広々とした億ションの室内にはセンスが良い家具が配置されていて、家主のこだわりがうかがえる。
壁一面の大きさの窓からは都内のビル群が一望でき、夜景を見るのには最高だろう。

この部屋の主人である美神美智恵は、つい数日前までは娘である美神令子との接触を避け続けてきた。
しかしアシュタロスの脅威が去った今、都内に腰を下ろして出産と育児に備えるためにマンションを購入したのだ。
今は新品で綺麗な佇まいの室内だが「赤ん坊が動き回るようになればもうグチャグチャになっちゃうでしょぅねー」とクスクス笑う彼女。
そんな幸せそうな母親を見て、様子を見に来た美神令子は「やれやれ、昔死んだと思っていたママに会えたと思ったら私の歳で弟か妹ができるなんて、なんだかなー」と考えて込んでいたのが馬鹿らしくなってきた。


「ママ、順調そうで何よりね。」

「ええ、予定日まであと少しあるけれど大丈夫よ。二人目だしね」

「そっか。まぁ何かあれば連絡してよ。私も今更弟か妹ができるなんて、なんだか少し照れくさいけれど・・・、嬉しいわ」

「ありがとう、令子。そう言ってくれるとママも嬉しいわ」


久しぶりの親子での会話を交わすことができて、令子は嬉しかった。
美智恵も今まで長い間、実の娘に黙って身を隠し続けていた罪悪感があったのだが、暇さえあれば自分に会いに来てくれる令子のことを嬉しく思っていた。


「そうだ、今日はこれから西条さんの所に助っ人に行ってくるんだけれど、一体何があったのかしらね。オカルトGメンの西条さんが私に頼るなんて珍しいわね・・・。ママ、何か聞いていない?」

「ええと、確か東都大学の研究室から依頼された件じゃなかったかしら?詳しい話は聞いていないけれどね。彼、出産前の私に気を使って話さないのかもね・・・。まぁ、話すほどのことでもないのかもしれないし」

「そうねぇ。まぁ、私としては仕事があるのはありがたいわ。それが久しぶりに稼げる仕事ならいいんだけれど、西条さんの依頼じゃ無理だろうなーと思っていたのよねー。でも、ふふっ、真の依頼主は東都大学か・・・。これはふっかけ甲斐がありそうだわ・・・」


先程までとは違う種類の笑みを浮かべて、ニタニタする令子。
美智恵はその娘の顔を見て考える。


「うーん。やっぱり多感な時期に、私が令子の前から居なくなってしまったのは間違いだったのかしら・・・」。





でも、こうやってまた令子と会うことができる日常に戻れたのは良かったのよね。
そう考えを切り替えた美智恵。
決して現実逃避した訳ではない。
そうだ、彼はどうなったのかしら?


「令子。横島君のことなんだけれど、あれから具合はどう?」


令子は電卓を叩いてこれから得るであろう収益の計算をするのを止めて、寂しそうな顔をした。


「ううん、まだ駄目ね。まぁ、少しずつ元気にはなっているみたいなんだけれど・・・。どうにも世話をかける男よね、横島君は。全く、しゃきっとしなさいってーの」

「そう。でもよかったわ。少し元気になってくれたみたいで。でも、文殊が作れなくなったというのは相当彼女の死が大きかったのかしら・・・」


実は、今の横島は文殊を作ることができなくなっていた。
美神達の隊長として戦っていた美智恵が、戦いが終わって過去に帰る時に横島に出してもらった文殊は、実は前に横島が作り置きしてあったものだった。


「うーん、そうかもしれないわ・・・。それに、煩悩パワーも落ちているような気もするわ。横島君、前みたいに私がシャワーを浴びていても覗きに来たりしないし・・・」


令子がここまで言って、ハッと気づく。
ニヤニヤして娘を見つめる母、美智恵。


「あーら残念ね、令子。横島君が覗きに来なくなっちゃって。相手にされないとされないで、寂しいものでしょ?」

「だ、だ、だ、誰があんな奴をっ!いいのよ、覗かれなくったって!こっちは凄く迷惑してたんだから!」


顔を真っ赤にして、ハフーハフーと息を切らし怒鳴る令子。
あらまぁ、仕方のない娘だこと。
美智恵は思う。
令子と横島君の縁は、とても強くて深いわ。
その縁が、まさか世界を揺るがすキッカケの一つにもなったなんてね。
まぁ、どんな男を選ぶのかは令子の自由だけれど、後悔だけはしないようにね。
彼、意外と競争率高いかもよ。

その点、私なんて即断即決で、即実行。
公彦さんと出会えて、本当に良かったと思うわ。
私の最高のパートナーよ。
彼、出産予定日には日本に帰って来れるかしら。
そうね、帰ってきたらおねだりして、しばらくは日本に滞在してもらおう。
令子も誘って、家族水入らずで出かけるのも良いわね。
あ、久しぶりに公彦さんと二人っきりでいるのも良いかも・・・。
でも、もし三人目が出来ちゃったりしたら大変だわ・・・。




「ママ?どうしたの?急に黙っちゃって・・・。具合でも悪いの?」

「へ、へえっ?!いや、なんでもないのよ令子。そうそう、明日の夜はみんなで慰労パーティをするのよね。こんな企画を考えるなんて、令子もやるじゃない」

「まーね。久しぶりに大人数でパーッとやりたかったし、丁度いいじゃない?それに、横島君も一人で落ち込んでいるよりも、みんなと馬鹿騒ぎでもしていたら少しは気分も晴れるでしょうし・・・」


ここまで言って、令子はワタワタと焦りだす。


「え、え、えーと・・・。別に横島君の為にやるって訳じゃあないんだからねっ!私がパーッと騒いで飲み食いしたいだけなの!ママ、分かった?!」


美智恵はいまだ興奮冷めやまぬ令子を見て「まったく、まだまだ子供ね~この娘は」と思った。
でも、凄く久しぶりに再開できたのに大人になってしまっているのも寂しいから、これはこれで良いのかもしれないわと思い返す。
そうね。
これからはお腹の中の子だけじゃなくて、令子にもちゃんと甘えさせてあげなきゃね。




「何よ、ママ!クスクス笑ったりして。んもぅ!からかったりしないでよね!」

「ごめんなさい。別に令子のことを笑ったわけではないのよ。まぁ、冗談はさておき。今、横島君が本調子でないのは心配だわ。彼、今回の事件で有名人になっちゃったものね・・・」

「え、有名人?ああ、人類の敵とか言われてテレビに出ていたアレね。魔族に操られていた頭の弱い可愛そうな高校生ということで落ち着いたんじゃないの?」

「また、えらい言われようね・・・。まぁ一般的にはそうなったけれど、横島君の能力に興味を持ち始めた連中が少なからずいるのよ」

「横島君の能力?」

「彼はGSとしての能力もなかなかのものだけれど、やっぱり特質すべきは文殊ね。あれは霊能力の範囲を超えてるわ。もう超能力の類ね」

「あー、確かに文殊って、何でもアリの便利アイテムだもんねぇ・・・。そんなものをポイポイ作り出す横島君に目をつけたって訳か・・・。まったく、やっかいな話ね」

「そうね・・・。確実な情報ではないけれどその話に関連して、今の政府の省庁統廃合でも色々と駆け引きがあるみたいなの。新たに省庁内でチームを立ち上げて、国内の超能力者を集めた特殊部隊を作るなんて計画を立てている連中もいるみたいだし・・・。今回のことでGSの能力者を霊的現象に対する排除や抑止に利用するだけでなく、広く国内外の治安や防衛にも役立てたいみたいなのよね。まぁ、どこまで本気なのかは分からないけれど・・・」


真剣に美智恵の話を聞いていた令子は一瞬だけ不思議そうな顔をして、そしてゲラゲラと笑い出した。
そして座っているソファーから転げ落ちそうになった。
ママったら、突然何を言い出すのかしら。
令子はなんとか笑いを堪えて、美智恵に話しかける。


「何を言っているのよ、ママ~。超能力者だなんてさぁー。あれでしょ?サイコキノとかテレポーターだとか、サイコメトラーだとか・・・ふふっ。そんな連中を集めてエスパー戦隊を作るだなんて、漫画みたいで笑っちゃうわ。そんな能力がある奴なんているわけが・・・」


そこまで言いかけて令子はハッと気づいた。
そして、真剣な顔つきになった。


「そう・・・、いないわけではないわ。まだ、私達が出会っていないだけかもしれない。私達GSの能力は自らの霊能力を使って、もしくは様々な力を借りて発動する。そしてその力で霊的現象に対抗するわ。それは現代の社会ではGSとして、霊能力として認知されている力で超能力とは言えないかもしれないけれど、異能の力であることは間違いないわ・・・。しかも、横島君の文殊はその中でも特に異能の能力よ。さっき令子も言ったでしょ?文殊は何でもアリの便利アイテムだって。どこの機関でも横島君を欲しがるのよ。横島君の文殊を使えば、誰だって念動力も瞬間移動も、そして相手の心を読むことだって可能だわ・・・」


話を聞いている令子の顔が段々と厳しくなる。
美智恵は話を続けた。


「今まではね、そういう能力者はGS協会とICPOがどんどん採用してその上部組織が管理と統制をしてきたわ。それは他の組織からすると『一部の不可思議な能力を持ったやっかい者達を子守りするだけの、実入りの少ない権益だ』としか思われていなかったのよ。でも、今回のアシュタロスの件で大きく情勢が変わったわ。どの機関でも能力者を欲しがるようになったの。自分の勢力で多くの有能な能力者を抱えることが、政治的にも軍事的にも経済的にも力に成り得る、それに気が付いたの。
今のGS試験は狭き門で、年間で数十人しかGS資格を得ることができないわ。でも脱落した大多数の受験者は、大なり小なり異能の能力者よ。世の中にはね、私達が思っているよりもそんな連中が沢山いるのよ。国内でエスパー部隊を作りたがっている連中は、全ての能力者をその力のレベルで分類する基準を作るらしいわ。そして能力者達を管理して、その力を利用していく方針なの。GS協会でも免許にS級やA級とかの区分はあるけれど、あれはただの名誉ですものね。

しかも能力者を管理運営していこうとする流れは、国内だけの話じゃないの、世界各国でもそうなりつつある。各国、各機関が能力者を積極的に集めて管理する流れになってきたの。もしかしたら、GSがGSとて独立した存在でいることが難しくなる時代が来るかもしれないわ・・・。
それにね、令子。あなたも注目の的なのよ。まぁ、あなたは昔からGSとして有名だったから仕方ないかもしれないわ。アシュタロスとの戦いでは功績を挙げたのはICPOで、美神令子はそれに協力したという形にはなっているけれど、ごく一部だけれど知っている人は知っている・・・。私やあなたの時間航行能力、そして横島君がどれだけ活躍したのかも・・・。だから令子、これからあなた達を取り巻く環境が変わるかもしれないの。私は、私の出来うる力の全てを使って、害を与える連中からあなたたちを守るわ」



美智恵の話を聞き入っていた令子は「ふぅ」と息を一つはいた。
そして、いつもの不敵な笑みを浮かべる。


「そう・・・、まぁ今より有名人になるのは悪い気分じゃないわ。でも私、管理されるのも世のため人のために働くというのも大嫌いなのよねー。私はガンガン稼いで、自分だけがリッチになるのが好きなんですもの!もし、ワケのわからない連中が私やママ、ついでに横島君にもちょっかいを出してくるようなら・・・、容赦はしないわ!」


令子の目元はグイと釣り上がり、その大きな瞳が爛々と輝く。
彼女の全身からは、触れてしまえば相手を焼き尽くすオーラが舞っている。
美神令子を本気で怒らせるつもりの奴がいたら、用心したほうがいい。
彼女はとても危険である。


「そうね。令子ならそう言うと思ったわ。だからね令子、横島君のこと気をつけてあげて頂戴。彼は心身ともに疲れきっているわ・・・。今度はあなたが彼を支えてあげてね」


その言葉を聞いた令子は、全身のオーラがへにゃりとしぼんでしまった。
もうママったら、そんなことを言うとせっかく盛り上がった雰囲気が台無しじゃないの。


「何よ、ママ・・・。私と横島君は、そんなんじゃ・・・。もう、分かったわ」


すねている娘を見ながら美智恵はクスリと笑う。
全く、素直じゃないわね。
誰に似たのかしら。


「明日の夜は楽しいパーティになると良いわね。私はこんな身体だから行けないけれど、みんなにヨロシクね」

「了解、ママ。それじゃあ明日のパーティを楽しむ前に、今夜の仕事をサクッと片付けちゃおうかしらね!」


令子はムンと気合を入れて美智恵にまたねと挨拶をして帰って行った。
娘を見送った美智恵は、こんな平穏な日々がずっと続いていけばいいのにと願った。













読んで頂いてありがとうございます。
話の進行が遅くてごめんなさい。
では、また次回で。


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