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椎名高志SS投稿掲示板


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No.41758の一覧
[0] 炎を隣に抱くもの(烈火の炎×GS美神)[- 鴇時 -](2015/12/13 20:03)
[1] 紅麗の館編 不幸な少年[- 鴇時 -](2015/12/13 20:05)
[2] 裏武闘殺陣編 裏武闘殺陣!![- 鴇時 -](2015/12/13 23:38)
[3] 裏武闘殺陣編 横島VS鎖悪架子![- 鴇時 -](2015/12/13 23:37)
[4] 裏武闘殺陣編 誓いの血判[- 鴇時 -](2015/12/21 04:47)
[5] 裏武闘殺陣編 三日目が終わって……[- 鴇時 -](2015/12/21 04:49)
[6] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(前編)[- 鴇時 -](2015/12/28 19:07)
[7] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(後編)[- 鴇時 -](2015/12/28 19:08)
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[41758] 裏武闘殺陣編 裏武闘殺陣!!
Name: - 鴇時 -◆778081fd ID:60ccd5ed 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/12/13 23:38
「で、どうなったの?」
「黙れ、殺されたいか?」
 酔った磁生に付き合った日から数日後、横島はある屋敷に来ていた。あのあとも様々な立場の人物から様々などうでもいい仕事を押し付けられて休む暇もなかった横島は紅麗に呼び出されて久々に身体を休めていた。
「呼び出しておいてそれかよ。で、そんなに小金井が離れたことが気になるか?」
 磁生の飲みに付き合ったあの日、小金井は紅麗の元から離れた。
紅麗は日頃、感情を表に出すことはない。全てに対し非情に接し、心の内には何も入れない。横島は紅麗がここまで非情な性格になる前から付き合いがあるためか、その表には出さない心の内を察することができた。
小金井は立場こそ麗の兵隊にもなれない麗予備軍であるが、それはまだ年齢が足りていないからであり、その実力はとても高い。その理由は小金井が紅麗と近しい関係にあるからである。小金井がいまよりさらに幼い頃、彼は紅麗と出会った。まだ麗ができる前のことだ。それから小金井は紅麗から戦い方や勉強など、様々なことを学んだ。横島からしてみれば二人の関係はまるで兄弟のようだったのだ。
「俺には関係ないことだ。それより裏武闘殺陣を執り行う。準備しろ」
「何のために?」
「治癒の少女を手に入れるために」
「そうか」
 まるで小金井の話をすることが嫌なように突然話を帰る。横島には、その姿が意地を張っているようにしかみえなかった。横島に対してでも、意地を張って自分の本当の気持ちを隠す紅麗の姿に、少し寂しく思う。
「それと今回、お前には麗として出てもらう」
「は? 俺麗じゃないんだけど……」
「父にはもう裏武闘殺陣を手配してもらった。今回念には念を入れる必要がある。拒否権はない。チームはこちらで決める」
 裏武闘殺陣。森がある目的のために開催している裏世界の武闘大会である。その莫大な金にものをいわせ、殺人すらも罪に問われない。この大会に参加するチームは負けたと時、ペナルティーとして主催者に貢物を捧げなければならない。紅麗はこのルールを利用しようと考えているようだ。
 横島としては痛いのは嫌だし、目立つのも嫌なため、是非とも拒否させていただきたいのだが、紅麗が横島に直接話をする場合は拒否することができないようになっていることがほとんどである。部下ではないが、立場上断ることが難しいということもある。
 小金井のことで、紅麗の心を考えた横島は、ため息をついて準備をすることにしたのだった。
「そういえばジョーカーは?」
「今回は十神衆も何人か出る。だがあいつが出るかどうかは本人次第だ。出る気になれば出るだろう」
「あ、そう」
 紅麗から本人の意思を任されているジョーカーの扱いと、強制的に出場が決定された自分との差に何か釈然としないよう気持ちを抱く。文句を言えば磁生と同じような返しをされることがわかっていたために黙っていた。磁生なら、酒を片手に軽く誘われる程度であるため、気楽に断れる。しかし紅麗は威圧感を込めて話すため、かなり断り辛い。また、紅麗の力なら無理やりにでも部下にすることができるため、文句を言うことはできなかった。
「いつまでもずっと同じ場所にいることはできない」
「へいへい、わかっていますよー」

 裏武闘殺陣の会場はC県の私有地とされる場所にある。当然森の買い取った土地である。
 紅麗に言われてから準備に雑用に追われているうちに大会開催日にまで時間が経った。
「で、俺は何でお前と一緒なんだ?」
「やっと麗に入ってくれることになったんですね! いつも磁生さんや音遠さんと話していたんですよ。紅麗様も言っていないだけで気持ちは同じはずです!」
 その会場、待機室に横島はいた。紅麗によって決められた横島のチームは数ある麗のチームの一つだ。隣に立つのはそのチームのリーダーである青年。人懐っこい笑顔を浮かべ、嬉しそうに横島に話しかけるその姿はあまりたよりになりそうではない。
「いや、その紅麗から無理やり編成されたんだよ。俺は麗じゃないのに……」
「ボクは嬉しいですけどね。このまま麗に入っちゃいましょうよ。忠夫君ならバッチグーです!」
「なにがだよ……」
 彼、雷覇は親指を突き立てて笑う。
 彼らのチーム名は麗(雷)。雷覇をチームリーダーとするチームであり、構成員は雷覇と横島のたった二人。この大会の最大チームは五人。全チームの中でも最も少ないチーム構成である。
「そういえば聞きました?」
「ああ、あのお嬢ちゃんたちのチームのこと? あんな派手なことをしたらね。でも麗予備軍にも劣る程度が二十人なら小金井でもできるぞ。紅麗一人でも勝てるだろ」
「それでも、強くないと面白くないじゃないですか」
「そういうものかねー」
 参加総チーム六十四。A~Dの四つのブロックに分かれ、優勝のためには六回勝たなければならない。大会を盛り上げるための参加とはいえ、横島にとっても厳しい戦いが始まる。
「じゃあ一緒に頑張りましょう!」
「ギブアップは」
「もちろんダメです!」
 にっこりとそう笑う姿に横島はげんなりとするしかなかった。

 麗(雷)はBブロックとなった。麗チームは何チームもいるからか同じブロックに他の麗のチームがある。幸い紅麗のチーム、麗(紅)はDブロックにいる。決勝までは戦うことがないと知り、横島だけでなく雷覇も安心した表情を浮かべた。横島は単純に嫌だから。雷覇は部下として紅麗に忠誠を誓っているために進んで戦いたいとは思わないからという理由がある。
『お前ら、盛り上がっているかー!! このBブロック会場、一日目の審判はこの魅鳥が担当するぜ!! それじゃあ始めるぞ!!』
 Bブロック会場の真ん中に現れたのは背中に翼の飾りを身に着けたガラの悪い少女。裏武闘殺陣では十二支を担当する少女がそれぞれの試合の審判をする。この魅鳥と名乗った少女はその中で酉を担当する少女、クールなナイスガールだ。
『そのBブロック第一回戦、第一試合を飾るのは、大会初出場! チームリーダー影を中心とした五人組! チーム闇入道!!』
 魅鳥の紹介とともにあらわれたのは黒尽くめの格好をした長髪の男を先頭とした五人組だった。チーム全員が黒っぽい服装をしており、どんな表情をしているのか、どんな人間なのか全くわからない。場所が場所だから会場は盛り上がっているが、普通にいたら通報されるくらい怪しい。
『対するチームは今大会最も少人数での登録だ! 頼りなさそうで守ってあげたい笑顔の雷覇。チーム麗(雷)!! 全大会優勝の麗(紅)と同じ、麗のチームだ! いきなりの優勝候補だ! 人数が異なるから第一試合は勝ちぬき戦だ! 一体どんな戦いをみせるのか、非常に楽しみだぜ!!』
「ヒヒヒ。たった二人で俺らに勝つつもりか? 面白い冗談だ。影、俺からやらせてくれよ。俺だけでパパッと二人とも片付けてやるよ」
「……任せる」
 闇入道のうち、何の模様もない、真黒な仮面を身に着けた長髪の男が前へ出る。
「どうします?」
「俺はいーや。雷覇、頼む」
「いいですけど、このままでないのはだめですよ?」
「はっはっは、そんなわけあるわけないじゃんか。雷覇は変なこと言うなぁ。はっはっは」
 冷や汗だらだらと笑う。実際雷覇一人でもそこらのチームには負けないといってもいいほどの実力があるため、出る必要はないかもしれない。図星を指されながらもあわよくばこのまま一度も出なければいいな、と思っている横島だった。
『闇入道、麗(雷)、リングの上へ! Bブロック第一試合、第一回戦! 暗闇VS雷覇、試合……開始!!』
 リングの上に二人が立つのを待ち、Bブロックの第一試合が始まった。

 裏武闘殺陣の二日目が終わった。雷覇と横島は第二回戦を勝ち抜け、第三回戦に備えて準備をしていた。
 第一回戦、黒尽くめの格好の集団、闇入道との戦いは一方的だった。余裕綽々な様子で出てきた先鋒の暗闇は、その態度とは反対に非常に弱かった。身体中に隠し持った暗器を繰り出すという先鋒だったが、武器の数はともかく、その腕は悪く、一度も攻撃をかすらせることができずに意識を失うことになった。
 暗闇を倒したことで警戒したのか次鋒として出てきた相手は腰が引けて負け、中堅、副将も同じく。最後の最後、もったいぶって出てきた闇入道のチームリーダー、影に至っては、雷覇が何かをする前に勝てないと判断し、降参した。
 一日目の試合はなんとも締まらない形で終わった。
 そして二回戦、麗(雷)はまたしても横島はでず、雷覇が試合に出た。結果は言うまでもなく、敵チーム全員を全滅させた。武器一つ使わず、素手で怪我一つさせずに相手の意識を奪った雷覇は、その雰囲気や表情からは計り知れないほどの実力があることがわかる。
 そんな彼らはいま、出場者全員に与えられる控室で深刻な雰囲気でうつむいていた。その理由はDブロック第二回戦、第二試合にあった。
「Aブロックのチームに、小金井君がいたらしいですね」
「紅麗があんなはっちゃけたのはそれが理由か」
 Dブロック第二回戦、麗(紅)と5Dの試合。麗(紅)から出てきたのはたった一人、紅麗だった。
彼が注目しているチームであり、治癒の少女がいるAブロックの火影が麗のチームの一つ、麗(幻)を打ち破った。そしてその火影というチームには小金井がチームメンバーとして参加していた。
 このことから紅麗はその試合ではっちゃけた。笑いながら敵の5D全員をその炎で炭も残らないほど無残に殺した。紅麗をあまりよく知らない者は、注目する火影が成長したことに対してテンションが上がったと解釈した。横島たちは試合中だったため直接見ることはできなかったが、試合中、その解釈の通りの発言をしていたらしい。しかしその話を聞いた二人の解釈は異なる。
「忠夫君、いま、紅麗様は?」
「部屋に行ったらいなかった。いまはたぶん月ノ宮に」
「そう、ですか……」
 雷覇は深刻そうな顔でうつむいた。その顔には心配そうな色が浮かんでいる。
 雷覇と、横島が紅麗のその話を聞いたとき、まず紅麗を心配した。紅麗が感情を露わにすることはほとんどない。裏武闘殺陣の第一回開催から出場しているが、観客をより盛り上げるためのパフォーマンスとして派手な試合をしたことはあるが、感情のままにその力を振る舞うことはなかった。
 だからこそいまの紅麗の精神状態は非常に危うい、そう思った。
 紅麗がいま訪れているという月ノ宮という場所には彼にとってこの世界で誰よりも大切に思う存在がいる。そして月ノ宮を訪れる時、紅麗は心が不安定になっていることが多い。
 雷覇はいますぐにでも紅麗の元へかけつけたかった。
「忠夫君、次の試合、お任せしてもよろしいでしょうか?」
「しょうがないだろ。わかった。試合は適当に負けて……」
「それはだめです。次勝てばそのあとはボクも戦いたいんですから」
「わかった。勝つから! 近いから! そんなことを言うのなら紅麗は任せたぞ!」
「はい、もちろんです!!」
 裏武闘殺陣の二日目が終わる。様々な思惑が絡み、Bブロックの試合も残り二試合。雷覇のいない三日目が始まる。



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