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椎名高志SS投稿掲示板


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No.41758の一覧
[0] 炎を隣に抱くもの(烈火の炎×GS美神)[- 鴇時 -](2015/12/13 20:03)
[1] 紅麗の館編 不幸な少年[- 鴇時 -](2015/12/13 20:05)
[2] 裏武闘殺陣編 裏武闘殺陣!![- 鴇時 -](2015/12/13 23:38)
[3] 裏武闘殺陣編 横島VS鎖悪架子![- 鴇時 -](2015/12/13 23:37)
[4] 裏武闘殺陣編 誓いの血判[- 鴇時 -](2015/12/21 04:47)
[5] 裏武闘殺陣編 三日目が終わって……[- 鴇時 -](2015/12/21 04:49)
[6] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(前編)[- 鴇時 -](2015/12/28 19:07)
[7] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(後編)[- 鴇時 -](2015/12/28 19:08)
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[41758] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(前編)
Name: - 鴇時 -◆778081fd ID:60ccd5ed 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/12/28 19:07

 裏武闘殺陣四日目、Bブロック会場では二人の男がリングの上でにらみ合っていた。
 磁双刀と呼ばれる対になっている刀を持っているのは麗(鉄)のリーダー磁生。麗の十神衆の中でも最強と呼ばれる男だ。対するは高校生くらいの少年だ。無手のまま磁生の動きに反応する麗(雷)の横島。真剣な二人とは逆に、観客たちの目は非常に冷めていた。
 Bブロック代表決定戦、先鋒は麗(鉄)からは僧のような外見の|雁鉄《ガンテツ》、麗(雷)からはリーダーの雷覇が出た。結果は瞬殺。いままで雷覇が相対した敵チームのように、雁鉄は何もすることができずにリングの上に倒れ伏したのであった。同じ麗であっても、磁生と同じ十神衆の雷覇と磁生の部下である麗兵隊の雁鉄では、その力の差は歴然だ。麗(鉄)の続く砂鉄もまた、結果は同じだった。
 Bブロック会場で麗(雷)と麗(鉄)の試合をみてきていた観客たちは期待した。磁生も雷覇も、いままでの試合で彼らはその力を全てみせていたわけではない。出た試合は全て、相手は何もすることができずに負けるのだ。そんな雷覇と磁生の試合はどんなに激しい戦いになるのかと期待をせずにはいられなかった。しかし――
「じゃあ、僕はここで棄権しますね」
『え、棄権ですか? 勝ち抜きですから次の方が負けた場合、チームの負けが決定してしまいますが……』
「はい、それで大丈夫です。僕は忠夫君を信じていますから!」
 しかし、期待の試合がみられないどころか雷覇の代わりに出てきたのはどうみても情けない少年である。三回戦での戦いで、その力の一端を示した彼に対する観客たちの視線は非常に冷たい。観客の暴動を敵チームである鎖悪架子に鎮めてもらい、卑怯な手段で勝ち上がった情けないやつ、それが現在の彼の評価だ。確かに夜子魯の矢を避け切ったその回避能力は認められている。しかし裏世界にも関わらず正々堂々の戦いを好む観客たちは逃げてばかりの横島の戦い方を嫌った。横島を信じるという雷覇の手前、前日のようにブーイングは起きないがそれでも彼らの態度にその気持ちはあらわれていた。
「はっはっは、嫌われているなー、お前も」
「うっせえ! 俺が何をしたんだってゆーんだ!!」
「ま、お前の今一番の敵は目の前にいる俺だからな。観客の目なんて今更気にしねーか!」
「何でそんなに楽しそうにしているんだよ……!」
 そんな観客たちの視線も気にしているようで、その実二人とも目の前の相手に集中している。観客たちの応援で鼓舞されるような人間ならともかく、磁生は自分が楽しく戦えればいい。横島は周りが敵であることに慣れているからか気にしている様子はなかった。彼らにとって重要なのはたった一つ、観客席で腹を抱えているひょっとこである。その正体がDブロックで戦っているはずの麗(紅)のリーダー紅麗であるなどと、誰が考えようか。横島が観客から嫌われている様子を、腹を抱えて笑うひょっとこという異様な存在であっても、無様な姿をみせられないというプレッシャーがあるのだ。
「くくく、ふふ、はーっはっは! アイツ、嫌われすぎ……あー、お腹痛い」
 そして、もう一人、雷覇の側でお腹を抱えている女性がここに。
「音遠、こっちへ来たんですか? Aブロックの試合は……」
「なんでわたしが負けたチームの試合を見なければならないのよ。紅麗様が気にしている火影はともかく、麗(魔)っていうのはわたしも聞いたことがないやつらだけど、あんたと磁生が出る試合の方が気になるに決まっているじゃない。それに、なんとなく紅麗様がここに来ているような気がするのよね。どこにいるか知らない?」
 きょろきょろと紅麗の姿を探す音遠は、目に入った横島たちの様子を見て笑いをかみ殺す。彼女がここにいるのは紅麗が好きすぎるためだ。この会場にいることをただの勘で察し、本当は気になっているだろうAブロックの試合を見ずにここまで来たのだ。目に入っているはずのひょっとこ紅麗を認識できないのは、その崇高的な想いからか。あるいは認めたくないだけなのかもしれない。
 審判の注意など気にせずに雷覇の隣で試合を観戦することにした音遠は、先ほどの笑いなどなかったかのように試合開始の言葉を待つ。磁生の実力はこの会場にいる全員と言ってもいいほどの人間が認めている。そして、かなり見下している横島を認めている数少ない人間、音遠と雷覇はどんな戦いになるのか期待してリングの上をただまっすぐ見つめる。
『それでは麗(鉄)磁生! 麗(雷)横島! 試合を始めてください!』
 試合開始の言葉から最初に動きをみせたのは横島だった。一見かなり無駄のある動きで、しかしどんな攻撃にも対応できるような動きで磁生との距離を詰める。そして、磁生の足もとに蹴りを放ち――その直前で再び距離をとった。先ほどまで横島がいた場所に向かって磁生が右手に持った刀を振り下ろしていた。もし蹴りを優先していたとしたら、一撃で倒れるということにはならなくても、致命傷と言ってもいいほどの傷を負っていただろう。
「相変わらず無駄が多い動きだな、おい。俺が教えたことを忘れたか?」
「のんきに何を言っているんだよ!! 避けなきゃ死んでいたぞ!?」
「避けたんだからいいじゃねーか。さっさと続き、やろうぜ?」
 たった一瞬のやりとり。裏の人間ならば、相手の攻撃を察知して避けることができない者はほとんどいないだろう。けれど、相手が磁生だった場合においては同じとは言えない。何の気なしに放たれた一撃が致命傷になりかねない。攻撃を防げば、防いだ剣や盾ごと斬られ、避けるにも磁生の気迫に身体を鈍らせて斬られてしまう者はいままでに多くいた。並みの実力者であれば磁生からの攻撃を察知することもできない。観客席にいる一部の実力を持つ者たちは横島への認識を改めることになった。ほとんどの者は大げさに避けたことを臆病だと捉えただけだったが。
「今度は、俺から行くか」
 磁生はその身体からは想像もつかないくらいの俊敏さで、横島との距離を一瞬で詰め、猛攻撃を始める。彼自身にとってはこの攻撃で傷を与えようとも、倒そうとする意志もないだろう。それでも一人を真っ二つにするには十分の威力があるその攻撃は一撃では終わらず、何度も横島に襲い掛かる。
 だがその攻撃は一度も横島には当たらない。まるでどこに攻撃が来るのかを知っているかのように大きく体を動かして攻撃を避ける。
「いつも不思議だったんだがよ、なんでそんなに無駄みたいな動きをしているのに当たらないんだろうな」
「一発でも当たったら死ぬからだよ! 俺の攻撃は当たっても威力がなさそうなのにこっちは当たったら死ぬとかなんて理不尽なんだ。しかも棄権もできないとか」
 観客席にいるひょっとこをチラリと流し見ながら磁生の攻撃を避け続ける横島。磁生の本気を受けたことがあるためにこんな小手調べ程度の攻撃なら目を瞑っていても避けられる。そんなことをしたら磁生は喜ぶだろうし、観客席も怖いしでやるつもりは全くないが。
「そろそろ身体も温まってきたか? この程度の攻撃じゃ当たらないことくらいわかっているからよ。そろそろ出すぜ?」
「な、何をでしょうか……?」
「え、本気」
 観客に動揺が走る。いままでの試合の中で、磁生は一度も本気を出していない。言い方は悪いが小手調べ程度で負けるくらいの実力のチームしかいなかったのだ。気迫だけで勝てないと悟り、負けを認める者さえいた。
 そんな磁生の本気が見られるのだ。ただ避けるしか能がない雷覇の腰きんちゃくとはいえ、期待は高まるしかない。
「こいつの能力、知っているだろ?」
「磁双刀……」
 いままでの攻撃は二本の磁双刀の右手に持ったN刀のみを用いての攻撃だった。左手に持ったS刀は一度もつかっていない。さきほどまではまさしく小手調べだったということだ。
「刀を使うだけが磁生の強さならばあんなに恐れられていないわ。それだけならわたしでもなんとか……。不協和音がないいまだとさすがに厳しいけど」
「磁双刀を完全につかった磁生とは、僕が戦っても勝てるかどうか……。忠夫君、骨は拾います!」
「くぉら!! 何を物騒な……ってうわぁ!」
 音遠と雷覇の会話に反応した横島に向かって磁生の刀が飛ぶ。勢いよく投げられたS刀は横島が避ける必要もないくらい離れた場所を通り過ぎた。
「磁生はノーコンなのか!?」
「本気を出すとか言って、刀投げただけじゃねーか!! そんな雑魚、さっさと片付けちまえよ!!」
「そうよ! 雷覇くんにくっつく虫なんか刀の錆にしちゃいなさいよー!」
 一部おかしな発言も混ざっているが、横島の後ろに落ちたS刀を拾う様子もない磁生に罵声が飛ぶ。
その声を無視して磁生は残ったN刀で攻撃をしかける。本気になると言った言葉は嘘ではないようで、先ほどよりもその攻撃は速く、力強い。横島に避けられたN刀は風を切り、その先にある観客席の一部を破壊した。足もとを攻撃したその攻撃はリング上を大きく揺らして破壊、避け続ける横島の体勢を崩した。 
「引き寄せよ、N刀!!」
 その瞬間、リングの外に落ちていたS刀がN刀に向かって飛ぶ。彼の持つ魔導具、双磁刀の能力はSとN、二本の刀が引き合う力を持つ、魔導具の武器の中ではシンプルといってもいい能力だ。能力だけを考えれば横島が戦った鎖悪架子の夜子魯のつかっていた明王の方がいいだろう。だが、シンプルがゆえに磁生の力量と合わさって応用がききやすい。
このままでは当然、N刀に引き寄せられたS刀はその間にいる横島を貫いて磁生の元へ戻る。体勢が崩れたいま、避けるのはかなり難しい。無理やり体を捻って避けたとしても、次に来るのは両手に刀を持った磁生の攻撃だ。拙い体勢のまま、破壊されてバランスを取るのが難しいリングの上でその攻撃を避け続けるのは厳しい。
「終わりだ!!」
「くそ!!」
 そして、無理やり身体を捻ってS刀を避けた横島へと今度は両手に刀を携えた磁生の攻撃が襲い掛かるのであった。





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