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No.41758の一覧
[0] 炎を隣に抱くもの(烈火の炎×GS美神)[- 鴇時 -](2015/12/13 20:03)
[1] 紅麗の館編 不幸な少年[- 鴇時 -](2015/12/13 20:05)
[2] 裏武闘殺陣編 裏武闘殺陣!![- 鴇時 -](2015/12/13 23:38)
[3] 裏武闘殺陣編 横島VS鎖悪架子![- 鴇時 -](2015/12/13 23:37)
[4] 裏武闘殺陣編 誓いの血判[- 鴇時 -](2015/12/21 04:47)
[5] 裏武闘殺陣編 三日目が終わって……[- 鴇時 -](2015/12/21 04:49)
[6] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(前編)[- 鴇時 -](2015/12/28 19:07)
[7] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(後編)[- 鴇時 -](2015/12/28 19:08)
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[41758] 裏武闘殺陣編 横島VS磁生(後編)
Name: - 鴇時 -◆778081fd ID:60ccd5ed 前を表示する
Date: 2015/12/28 19:08

 横島に向かってS刀が飛んでいく。体勢が崩れたまま無理やりに身体を捻ったことで紙一重でその攻撃を避けることに成功する。
「終わりだ!」
 そして、慌てて身体を起こそうとした横島へ、今度こそ絶対に避けられない攻撃が迫る。飛んできたS刀を掴み、その勢いそのままに振り下ろされる刀は確実に仕留めるために横島の首を狙っていた。
 ドゴォン!!
 大きな音とともにリングが破壊され、土煙が舞い上がる。視界がひらける頃には切断された横島の首が転がっていることを、観客にいる誰もが予想した。リングの側で試合を見ている雷覇や音遠でさえ、死にはしていないとは思ったがこの試合は終わったと思っていた。
「へぇ」
 ただ一人、その攻撃をした磁生だけは攻撃の感触から全く違うことを考えた。
「紅麗様からいくつか魔導具を受け取ったと聞いたが、もしかしてそれか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。し、死ぬところだったー!!」
 土煙がはれた時観客たちが目にしたのは大きく破壊されたリングと、そのすぐ近くで胸のあたりを抑えて冷や汗を流している横島だった。彼の両手には籠手のようなものがはめられており、おそらくそれが命からがら生きていられた理由なのだろう。
「麗兵隊が持っているのを見たことがあるが、いまのを避けきれるだけの魔導具だったか?」
「こっちの手の内を簡単にあかすわけねーだろ!! この魔導具さえあれば、あとはお前なんて簡単に倒せるぜ!!」
 リングで磁生から最も離れた場所で胸を張って威張り散らす横島。その身体は直接攻撃を受けたわけではないにしろ、地面を転がったことでボロボロになっていた。また、一度攻撃を受ければ終わるという状況によって精神的にも肉体的にも大きく疲労している。
「確か、移動用の魔導具だったはず。あれで磁生を倒すことなんてできるのでしょうか?」
 雷覇の言葉通り、彼が両手にはめた魔導具は移動につかわれる攻撃にはつかわれないものだ。名前は【攫手】。森の中で木から木へ飛び移ることを目的とした、何かを掴んで移動するタイプの魔導具である。手首までを覆う籠手の形をしており、遠くのものをつかむために伸ばすことも可能。先ほどはリングを掴んで無理やり移動した。掴む力は強いが攻撃には向かないものであり、当然磁生には通用しない。
「で、その爪で俺を倒すつもりなのか? 接近戦は好きだぜ?」
「そりゃそうだろうな!!」
 こちらが何をするのかを期待してニヤニヤと笑う磁生の様子を窺いながら考える。ここがリングの上でなければ! このままでは死んでしまう! そんな考えばかりが頭をよぎる。
 そもそもこの大会に出場しなければ磁生と戦うことがなかったが、焦った横島にはそうれすらわからない。
(どうしてもっと強い魔導具くれんかったんや! 紅麗のアホー!!)
 とうとう魔導具を用意してくれた紅麗にまで文句を言い始めた。確かに手にある【攫手】は攻撃用のものではないし、借り受けたものに強力な能力をもつものは一つもない。紅麗が強い魔導具を貸さなかったのには二つ理由がある。一つ目は横島の地位が低いこと。麗の基本的なルールとして、地位の高い者に対してのみ魔導具を与えられる。一時的に麗に所属しているとはいえ魔導具を複数貸し与えられていることだけでもかなり破格の扱いだ。もう一つの理由は試合としてつまらなくなってしまうからだ。強い武器を持っているだけで勝てる試合ではないが、強い武器は勝つための一つの要因だ。オーディエンスを盛り上げるために麗のチームをいくつか参加させているというのに、強い武器を与えるのは矛盾する。紅麗は強い武器を用意しなかったのではなく用意できなかったのだ。
 感情的な想いから離れ冷静に考えた末、横島がたどりついたのは勝てない、という結論である。紅麗から借りた魔導具、いまの実力、作戦、何をやっても磁生に勝つことは無理だ。大きく開きすぎた力の差は、横島が勝利をあきらめるには十分だった。
「ふむ、このまま待っていても何もなさそうだな。これでも期待していたんだがな、残念だ。じゃあ、手早く終わらせてやる!!」
 磁生の目には横島への失望が浮かぶ。彼の知っている横島はもっと諦めが悪い。最後の最後まで手段を探す。だが今目の前にいる横島はもう諦めてしまっている。期待が大きかった分、失望も大きい。
 もう時間はない。磁生が迫る。対応策もない。それでもなんとか逃げようとリングの隅へ逃げる、追い詰められる。勝機もない、勝機を探す前に諦めてしまっているからだ。目の前に立った磁生が右手のN刀を振り上げるのが目に入る。降参の言葉を言うこともできず、あとはこの刀を受け入れ――走馬灯のように横島の頭にいままでの記憶が一瞬で流れていく。
「諦め……られるかぁー!!」
 まだ死にたくない、死んではいけないこと思い出し、固まっていた身体を動かす。【攫手】を伸ばし、四隅にある石柱の一つを掴む。
「うぉぉぉおおー!」
 その身体を動かすには時間が足りない。そのために横島はもう片方の【攫手】で磁生の視界を塞ぐ。磁生に攻撃としては通用しなくても掌を覆う籠手の形の【攫手】であれば十分だ。
「うがぁぁぁああ!!」
 視界を塞いだだけでなく、何かを仕込んでいたようで磁生は顔を抑えて怯む。その痛みが何なのかに分かる前に、今度は身体が重くなっていることに気が付く。それは横島が前日の試合でつかっていた物を重くする魔導具、【重石】だ。重いとはいえ磁生ほど鍛えていればあまり変わらない。横島の回避力を考えれば少しの制限ですら大きな隙になりかねない。まずは【重石】を取り出して――と考えたあたりでガツンと大きな衝撃が頭にはしり、磁生は意識を失った。
『じ、磁生ダウンです! 勝者、横島忠夫!』
 Bブロック代表決定戦。観客が期待した磁生VS雷覇の試合は叶わなかった。代わりに出てきたのは情けない様子の青年。誰もが磁生の圧倒的勝利を予想した試合は、誰もが予想しなかった磁生の負けという結果となった。
 激しい戦いの末の決着。その光景を目にした観客たちは、倒れたまま起き上がらない磁生と、激しく息をきらしてリングの上に立っている横島を見比べ、叫ぶ。
「「「ふざけんな! こんなバカなことがあるかー!!」」」
 結果に納得いかずに声を上げた。観客がどう思おうと結果は結果、勝利は覆らない。そして、横島の勝利により――
『麗(雷)の全勝によって、準決勝進出です!』
 ――麗(雷)は準決勝へコマを進めたのだった。

 試合が終わり、会場の外。観客たちに襲われないようにすぐに会場から離れた横島を待っていたのは紅麗だった。その顔には、いつもの仮面が身に着けられている。
「ご苦労だった。まさか勝てるとは思わなかった」
「俺は死ぬところだったんだぞ! そんな一言で片づけられてたまるか!!」
 そんな必死な様子の横島だが、実質的に今回の試合では磁生から一撃も攻撃を受けずに勝利したため身体に傷はない。もし一撃でも受けていたらその時点でこの世にはいなかっただろうが。
「それで、借りた魔導具は?」
「持っていて構わない。どうせいまは持ち主がいないからな。誰が持っていてもかまわない」
「じゃあ、俺は疲れているから控室で寝るわ。明日も試合あるし」
「ああ、それなら大丈夫だ。明日の試合は出なくてもいい」
「マジで!? ふっふっふ、これで俺も自由じゃあー!」
 喜びのあまり本当に小躍りする横島。先ほどは疲れてげっそりしていたというのに現金なものだ。
「それと今回磁生に勝ったことで褒美として特別に麗兵隊、雷覇の部下に配属する。雷覇の部下は志願するものが多いからな、光栄だと思え」
「もちろん断「決定事項だ」る! はへ?」
 先ほどの喜びはどこへいったのか、自由への喜びから血色のいい顔が今度はげっそりと土器色にまで変わっている。
 いままで紅麗が無理やりにでも横島を部下にしなかったのは本人が望まなかったから、などという人情的な理由からではない。何の実績ももたない横島をとりたてれば騒ぐ連中がいるとわかっていたからだ。だからといって麗の低い地位に配属した場合、横島はその地位に甘んじるだろう。それでは何も変わらない。今回の裏武闘殺陣は治癒の少女を手に入れることの他に横島を部下にすることを目的としていたのだ。雷覇や磁生、音遠までもが協力し、場を整えた。そして手段はどうあれ十神衆最強ともいわれる磁生に勝つという実績を得た。そのことに紅麗は喜びを隠しきれないでいた。
「なんか一気に疲れが来た。控室に帰って寝るわ」
「そうか」
 紅麗にここまで思われているという貴重さを横島は自覚していなかった。紅麗が信頼する三人に協力させ、横島にいらぬ横やりが入らないように配慮し、部下にした。紅麗のその想いは一体どこから来ているのだろうか。
「紅麗様」
「なんだ」
「Aブロックについてのご報告を」
 とぼとぼと歩く横島を見送った紅麗の側に森の部下があらわれる。
「話せ」
「Aブロック代表は火影に決定しました」
「そうか。下がれ」
 Aブロック会場の結果だけを聞いた紅麗は今度こそ身体からあふれ出る感情を抑えられなかった。細かい試合内容はどうでもいい。ただ結果として火影が勝ち上がった。それだけがわかればよかった。
「ふふ、ふはははは!」
 仮面の下から漏れ出る笑い声。その想いは喜びか期待か、あるいは別の感情かもしれない。その想いは、紅麗本人でさえわからないのかも、しれない。

「勝ちましたね」
「ああ、いい勝負はすると思っていたが……」
 横島と紅麗が話をしていた時と同じ頃、まだ会場の中にいた雷覇と音遠は呆然としていた。結果は結果として受け止められてはいる。しかしその手段をみてしまえばなんとも言えない微妙な気持ちになってしまう。
 横島と相対していた磁生にはわからなかっただろうが、リングの側で試合をみていた二人には横島がどうやって勝ったのかがよくみえた。
 磁生の攻撃が迫った時、横島は【攫手】で逃げようとした。片手は石柱に伸ばし、もう片方は磁生の視界を塞ぐために彼の顔へと伸ばした。だが、磁生の顔に伸ばした【攫手】は視界を一時的に塞ぐものではなかった。磁生の視界がひらけた時、その顔は大きく腫れあがり、目からは大量の涙があふれていた。おそらく【攫手】には刺激物を仕込んでいたのだろう。戦いが強く、痛みに強いとはいえそれは外的な傷や打撲といった痛み。目や肌の痛みにはあまり耐性がなかったのだろう。そうして攻撃を避けた横島は確実に磁生の動きを封じるためにその服のうちに【重石】を仕込む。本人にとっては理解不能の痛みと【重石】によって磁生の行動を制限した横島は【攫手】をつかって磁生の頭を超すほど大きく飛び上がり、いつの間にか手に持っていた弓で磁生をタコ殴りにした。これが、横島が磁生の意識を奪った手段である。正々堂々を好む気質の輩が多い観客は、逃げて視界を奪い、弓で殴るという行為を認められなったものが多くいたのだ。
「僕はその時紅麗様の指令に従っていたため忠夫君の試合はみられなかったのですが、あの弓、魔導具ですよね?」
「確か【明王】とかいう、矢が手元に戻って来る魔導具のはず。つかうのにはかなり強い力が必要になるとか。それだけ強い力で弦を引く必要がある魔導具なら当然硬いか」
「手元に取り出したのは【蔵王】でしょうね」
 【蔵王】とは、火影忍軍が魔導具をつかっていた時代、最も多くの者が所有した魔導具であることがわかっている。魔導具の構造や力の正体は謎に包まれているが、強力な魔導具ほどその数は少なく、大した力を持たない魔導具であれば多くの数存在していたことがわかっている。【蔵王】はかつて多くの者が所有していたと述べた通り、強力な力を持たない。その能力は収納能力。異次元にものを収納する力だ。便利な力のように思えるが、その収納できるものは魔導具に限られているため、魔導具を持たない者にとっては何の意味もない。横島は【明王】をこの【蔵王】に収納していたのだろう。
「紅麗様が待っていることですし、帰りましょうか」
「あ、ああ。そうだね」
ボーっとしていてもしょうがない。先日までと違ってもうこの会場で試合は行われないのだ。二人は横島の勝ち方に釈然としないものを抱えながら会場を後にするのだった。

 裏武闘殺陣も四日目を終えた。残るは準決勝戦と決勝戦のみ。勝つのはどのチームか。




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