「色々と準備してきたんだがなー」
楯嶋の真横に、横島と天竜童子が並んで座っている。
「?よくわからんが、おぬしデジャブーランドに連れて行ってくれるのだろう?」
天竜童子が確認するように聞いてくる。
ちなみに意外に空いていたために外の景色を眺めつつ、楯嶋の思考が回りつづける。
「ああ、本当はコインロッカーにでもその剣預けて行くのが早いんだろうがちょっと遠回りでも俺の仕事場に寄っていく方が安全に管理出来るからな」
楯嶋が二人を見つけたときに不良にからまれた横島を天竜童子が助けているところだったので、とりあえず不良に影から取り出した符で幻を見せつつこども銀行券を渡して引き下がって貰うと、二人に事情を聞いて今に至る。
「所で、抜け出してきたらしいけどその小竜姫って人の立場を考えた上での行動なんだよなもちろん」
楯嶋の問いに天竜童子がうつむく。
「まあ、小竜姫様の事は置いとくとしてだ天竜。お前何に乗るのか考えといたほうがいいぞ?待ち時間とか考えても正直いくつ乗れるかわからんし」
横島の言葉に楯嶋が意外そうな顔をする。
「まあ、俺はナンパするつもりだから別に混んでいようがいまいが代わりがないけどな」
楯嶋が意外そうな顔を崩し、不機嫌そうな顔になる。
「俺にこいつを押し付けるつもりか?」
楯嶋が目に見えて不機嫌になる。
「いや、何が悲しゅうて男三人連れ立ってアトラクションにいかにゃならん」
横島の言葉に自分も同じ立場なら言うだろうな、と思いつつも何というか二人だと、多分親子連れに見られたりして微妙だし、とか考えていたりする。
「次の駅だろ、とりあえず事務所に行ってから考りゃいいだろうに」
横島に促された二人が下りて事務所に向かった。
「なあ、人工幽霊一号」
『なんでしょうか、オーナー』
念のためにメドーサとの戦闘があっても、生き延びられるくらいの道具を影の中に押し込みながら楯嶋が言う。
「俺に万一の事があったら、俺の道具類売却して次のオーナー探して良いからな」
イームとヤームは搦め手無しでも制圧できるだけの戦闘技術はあると自負しているのだが、相手がメドーサなら最善で死体寸前と言ったところだろうが。まあ関わらないというのが一番だろうが事務所を奪った手前今回の件で美神除霊事務所が吹き飛ばされるのは回避したい所だ。
「まあ保険は掛けておくけど」
色々と準備しておいたうちの一つに現状に適している案があった為に既に横島に言って事務所内に設置した対攻撃製結界用の札を無駄にしたと考えつつ準備を済ませて手に皮製の鞄を持つと既に応接間で待っていた二人を連れて外に出ると、楯嶋は暇に任せて研究していたカタストロフAの複製改良品を取り出す。
「じゃ、行って来る」
『お気をつけて』
薬を飲み込んだ楯嶋と二人(一人と一柱?)の姿が掻き消えると、静寂に満たされた。
「ここがデジャブーランドか!」
比喩抜きに目を輝かせかねない天竜童子と横島を連れると楯嶋は一日フリーパス券を二人分購入して自分は普通の入場券を買う。
「一時間で戻るから、入り口近くに一度来てくれ。それから先はナンパしようがアトラクション楽しもうが構わんから」
そう言った楯嶋が、再び薬を服用しテレポートで姿を消した。
「こっそりと《抽》《出》した天竜の体臭を込めて、と」
式神ケント紙に似た紙にそれを込めつつその紙を放り投げると紙が天竜童子の姿に変わる。
「んで《偽》《物》《増》《殖》してと」
普通に《増》《殖》だけすると、全く同一の物が出来上がるのだが二個の文珠しか使わないせいか同じだけの数を生んだ場合一時間程度しか持たないために四つ使う必要があったりする、ぶっちゃけ《無》《限》《増》《殖》でも問題は無いのだが亀と地形を使った方をなんとなく思い浮かべるためにこっちの方が念を込め易かったりする。
「んじゃあ、この辺りからある程度以上に離れて人に迷惑をかけないようにな」
中世に行く前の時に悪霊が住み着いて、それを払う依頼があった廃工場から数百体の天竜童子(偽)が一斉に飛び出して行った。
「待ったんだが」
「昼飯俺もまだだし、奢ってやる」
結界を張ったりして天竜童子の偽者を作るのに時間を予想以上に取られた楯嶋が二人にそう言うとそれ以上何も言わずについて来る。
「まあ、遅れたのはすまんかったけど手を抜くわけにもいかんかったからな」
文珠の効果が切れる前に再び《消》《臭》をかけると三人連れ立ってガイドブックに載っていたレストランに入って行った。