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No.18953の一覧
[0]  マブラヴ+SRW α アフター (チラシの裏から移転)[まくがいば~](2014/03/30 23:28)
[1]  マブラヴ+SRW α アフター  プロローグ[まくがいば~](2014/03/30 02:06)
[2]  マブラヴ+SRW α アフター  第一話[まくがいば~](2014/09/14 03:31)
[3]  マブラヴ+SRW α アフター  第二話[まくがいば~](2014/03/30 02:04)
[4]  マブラヴ+SRW α アフター   第三話[まくがいば~](2014/03/31 20:49)
[5]  マブラヴ+SRW α アフター   第四話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[6]  マブラヴ+SRW α アフター  第五話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[7]  マブラヴ+SRW α アフター  第六話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[8]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[9]  マブラヴ+SRW α アフター  第八話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[10]  マブラヴ+SRW α アフター  第九話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[11]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[12]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[13]  マブラヴ+SRW α アフター  第十二話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[14]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話[まくがいば~](2014/03/30 01:59)
[15]  マブラヴ+SRW α アフター  第十四話[まくがいば~](2014/04/12 00:53)
[16]  マブラヴ+SRW α アフター  第十五話[まくがいば~](2014/04/24 01:00)
[17]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話[まくがいば~](2014/06/16 21:14)
[18]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話[まくがいば~](2014/08/24 21:53)
[19]  マブラヴ+SRW α アフター  第十八話[まくがいば~](2014/08/24 21:56)
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[18953]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:9e508339 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/03/30 02:02
「島が、見えた」
「わぁ、ホント、でっかいのが居る!」
 最大望遠で、目標の島を捉えた。入り江には、異なるフォルムの巨人が二体、確認できた。
「エジプトが、こっち見てるぞ」
 目標の島が近付いている。自分たちが向こうを捉えられたのと同じで、向こうも自分たちの接近に気がつ
いている。
「しかし、緊張するなぁ……」
 エジプト風の巨人は、明らかに、この瑞鶴改をガン見している。頭部が人を模しているので、本当に巨人
に睨まれている気分だ。
「白旗持ってるから、大丈夫だって」
 前に座る相方の楽天的考えに、感心してしまう。
 話している間に、もう目標は目前だ。相変わらず、エジプト風巨人はこちらの動きに合わせて、顔を動か
している。
 網膜に砂浜に立ち、こちらを見上げる数名の人影が投影されている。ブレザーと白いツナギのような服を
着ている少年二人が、件の異世界人だろう。
 だが、操縦席の二人は、その少年より、後ろに並ぶ五人の少女のうちの一人を見て、絶叫を上げてしまう。
「「ゆ、悠陽さまぁ~~~!?」」
 そこには先程まで、帝都城にいたはずの二人の主君が、なぜかBDUなんぞ着て立っていた。
「いや、待て、ちょっと待て、落ち着け、純夏」
「タケルちゃんこそ落ち着きなって。で、何?」
「思い出せ、純夏。悠陽様が話してくれた、あの話だ」
「あの話って…… あぁ!」
 二人は再び、主君に瓜二つの少女に目をやる。彼女を見る思いは万感だ。
「あの方が、冥夜様、か……」
「悠陽様の、妹さん、だね」
 煌武院悠陽の特使として、この島に問答無用で急行させられた白銀 武と鑑 純夏。二人はここで思いが
けない出会いをすることになった。

 瑞鶴改から、純夏をぶら下げて、ワイヤーを使い降りる武。目標の二人は、少女五人と、知己である神宮
寺教官と並んで、こちらを待ってくれている。
 将軍の特使であるからには、それなりの格好をしたかったのだが、戦術機でこちらに急行を命じられては
仕方ない。零式強化装備に身を包み、なるべく毅然と歩くように心がける武と純夏。
 異世界から来たという二人の少年の姿が、形になってきた。白い強化装備並に身体にフィットした服を着
ている少年は、細身で整った顔立ちの優男風だが、挙措が凛としていて隙がない。かなり鍛えているなと武
は心の中で分析した。
 そして、問題のブレザーを着た少年だが……
「純夏……」
「なに、タケルちゃん?」
 ほとんど口を動かさずに純夏に話しかける武。
「あのブレザーの方、勝てる気がまったくしない…… 化け物だぞ、アレ……」
「!?」
 武こそ人類最強と信じている純夏は、驚きの声を必死に飲み込む。武は師事した斯衛軍武術師範、神野志
虞摩に、『人間の規格から外れた存在』とまで言わしめる位の、身体能力を持っているのだ。その武がそこ
まで言う存在のブレザーの少年をマジマジと見る純夏。精悍な顔つきではあるが、とてもそうは見えない。
「まぁ、喧嘩しにきたんじゃないから、平気だよ。ほら、武ちゃん、難しい顔しないで、スマイルスマイル」
「そうだな……」
 言われ、いつの間にか入っていた力を抜く武。純夏の方はというと、笑顔で気楽に相手方に手を振ってい
る。
 純夏には言っていないのだが、武は出発直前、香月夕呼から、相手がどんな人間かしっかり見定めてこい
という、極秘指令を受けていた。特に、二人の身体能力を武なりに分析しておけと言われたのだが、まさか、
規格外と言われた自分より、さらに規格外の人間が出てくるのは想像していなかった。
 知らず自分の力に慢心していたか…… 密かに自省を促し、武は歩く。異世界人との邂逅は、もうすぐだ。

「なんか、凄いね、こっちのパイロットスーツ」
 近づいてくる二人に男女、歳は前もってまりもに教えてもらった通りで、自分たちの同年代。シンジは初
めて見る強化装備があまりに体のラインを強調してくれているので、どうにも視線の行き先に困ってしまう。
 アスカさんやレイさんのプラグスーツで見慣れているでしょう、と大作は思うのだが、口に出さないで置
く。大作はシンジの数倍ウブな坊やなのだが、事、戦いがらみになると、坊やの部分はキチンと引っ込む。 
 武が大作のエキスパートとしての超人的能力を見抜いたのと同じく、大作も武が只者ではないことをひと
目で見抜いていた。
 素手なら自分が勝てるだろうけど、相手が武器を一つ持っただけで、どう転ぶかわからない、それほどの
身体能力を男性は持っている。知人に当てはめるなら、戦闘のプロことグレートマジンガーパイロット、剣 
鉄也タイプだろうか。
「大作くん、リラックスしていこう。あのシロガネって人、只者じゃないのは僕にもわかるけど、となりの
女の子の笑顔は、信用できると思うよ」
 大作がわずかに気負ったのを察したシンジが、柔らかい口調で言う。
 言われてみると、シンジ曰く、凄い桃色基調のパイロットスーツを着た少女が、人懐っこい笑顔で手を振
っていた。確かに、あの笑顔は人を和ませる輝きがある。
 力を抜いた途端、少女の体のラインが気になってしまい、視線が明後日を無意識に向いてしまう大作。ま
だ、修行不足のようだ。
 お互いの距離が、縮まってきた。彼らはこの日本に置いて政を司る政威大将軍という、どっかで聞いたよ
うな響きの人物の側近とも言える人物らしい。それに、この二人が先ほど話で出た横浜ハイヴの生き残りで
あると、まりもから聞かされた。
 さて、どういう意図で彼らはここに現れたのか。シンジと大作はわずかに顔を見合し、無言で気を引き締
める。

「突然の無礼、お許しください」
 シンジと大作、白銀 武と鑑 純夏の邂逅は、まず武が頭を下げたところから始まった。
 この邂逅のメインはその四人なので、まりもと訓練兵五名は、わずかに離れたところでそれを見守る形に
なっている。
 冥夜は、生まれてすぐに離された姉の下に仕える二人を見て、複雑な思いを抱いている。二人は、申し訳
程度に自分たちに向け頭を下げたが、あとは無関心を装ってくれている。悠陽の傍に仕えていて、自分に驚
かないのは、姉からある程度の事情は聞かされているのだろうか?
 冥夜はそんな事を思いながら、始まった邂逅を見守っている。
「自分は、煌武院悠陽殿下に仕える、白銀 武、こちらは、鑑 純夏、彼女も自分と同様、殿下に仕えてい
ます」
「鑑です」
 武の挨拶に合わせて、傍らに控える純夏も頭を下げる。
「僕は、碇シンジ。こちらは……」
「草間大作です」
 異世界少年側は、シンジが前に出る形らしい。
 余計な飾りのない挨拶に、冥夜は意外な思いがした。
「言伝等を頼まれているのですが、先にいいですか?」
 と武は右手を差し出す。
「佐渡島ハイヴを破壊してくださったそうで。帝国民を代表、ってわけではないですが、ありがとうござい
ます」
 そう言う武に、シンジも前に出て、その手を握る。
「僕たちに、そんな大層なことをしたって実感、ないんだけどね」
 困ったような笑顔のシンジに、武も笑顔を返す。その二人の姿を見て、冥夜は何故だか胸が熱くなるのを
感じた。
「草間さんも、ありがとうございます」
「あ、いや、その……」
 一方、純夏と握手している大作は、純夏の強化装備姿にどうにも照れてしまうらしく、目を泳がせて、顔
を赤くしている。そんな様子をみて、武とシンジは顔を見合わせ、また笑い合う。
「でも、お役に立てたなら、光栄です」
 シンジは変わらず柔らかい笑みを浮かべ、武に応じている。
「では、まず自分たちがこちらに遣わされた件から、お話させていただきます」
 武の方も、なるべく場が硬くならないように、柔和な感じで話している。目くばせで、純夏になにか伝え
ると、純夏がシンジを向き、太ももに巻きつけていたポシェットのようなモノから、一通の封筒を取り出し
た。
「殿下からの親書です。本当に急いで書かれたので、本来の様式のモノではないのですが、殿下は一分一秒
でも早く、お二人に感謝の意をお伝えしたかったので」
 そう言って、主君からの封書を、シンジに渡した純夏。シンジは、
「その為にわざわざ?」
 と、恐縮した体を見せながら、その封書を代表して受け取る。
「では、拝見させていただきます」
 封書を開ける時、軽く一礼したシンジ。大作と頷きあって、丁寧な動作で封を開ける。この世界では高級
品になりつつある和紙の便箋を使ったのは、悠陽の気遣いなのだろうか。
 書かれている内容は如何なモノなのか、傍観の冥夜にも気になるところだ。シンジは感慨深げに読み終え
た後、大作にそれを渡す。
「僕らのためにわざわざ、そこまでしてくださるのですか?」
 シンジが尋ねると、武は困ったような笑顔になって、
「本当は殿下が戦術機で直々に、ここに来られようとしまして。お諌めして宥めて妥協を引き出して、よう
やく話がそこに落ち着いたんです」
 そう説明する。武がちらっともらした、殿下直々、の言葉は、冥夜を含めた訓練兵皆に、衝撃を与えた。
冥夜など、この国の最高権力者といっても過言ではない姉が、軽率と言われても仕方ないことを実行しよう
としたことに、呆然とするばかりだ。
「……困りましたね」
 大作が便箋をシンジに返しながら言う。
「二人一緒、はムリだよね」
 と便箋を受け取り、それを封筒に戻しながら、シンジが応える。
「殿下のご好意をありがたいのですが、さすがにこの大きいのを置いて……」
「やはり、無理がありますよね」
 武はシンジの言葉を皆まで聞かずに、納得しているようだ。
「それに、僕らのために、軍艦一隻動かすというのも、大げさというか、何というか」
 軍艦を動かす? シンジの言葉に、冥夜は目を見開いて驚いた。他の訓練兵だけじゃなく教官のまりもも
驚きをあらわにしている。
「その辺りの交渉も、自分に一任されています。意見苦情等がございましたら、ご存分に」
「本当にご苦労様です。では、まず提案なのですが……」
 シンジがそこで、明らかに、今までとは違う笑顔を見せて、言った。
「他人行儀の口調、ヤメにしません? 白銀さんは、同じ年とのことですし。僕も大作くんも、堅苦しいの
は苦手だから」
 その申し出に、武は虚をつかれたように目を丸くしたが、
「それはありがたい。どうも、育ちが悪いせいか、自分も堅苦しいのは苦手なんだ」
 と、すぐにシンジの申し出を快諾した。横にいる純夏が、肘で軽く武を突っつきながら、
「悠陽様からは、くれぐれも失礼のないようにって……」
 と小声で言うが、武は、
「ここでヘンに格式張って、地金がでちゃったら、そっちの方が失礼だって。じゃあ、俺のことは武と呼ん
でくれ」
 と聞く耳もたない。純夏は、はぁ、肩を落とし、深い溜息をつく。
「だから、タケルちゃんじゃムリですって言ったのに、悠陽さまぁ」
 と小声で愚痴をこぼした純夏だが、気分を切り替えたのか、
「うん、わかった。こっちはシンジくんに大作くんって呼ぶね。よろしく!」
 とある意味、武より高い順応性を見せてきた。これには、シンジや大作からも笑い声が漏れた。
「じゃあ、僕はタケルくんにスミカさんで。呼び捨ては苦手で」
「僕も同じで」
 そして、今度はシンジと大作から右手を差し出す。
「あらためて、よろしく。タケルくんにスミカさん」
「よろしくお願いします」
 そうして差し出された手を武と純夏は、しっかりと握り返す。今度は、武と大作、純夏とシンジも握手を
交わす。
 四人の間に生まれた交流を見て、冥夜は漠然と羨ましさを感じた。四人とも、自分のような半人前ではな
く、自分の中に確固としたモノを持っている。それが、たまらなく羨ましかった。
「さて、じゃあ、当面の問題の話し合いをしようか。さっきまであそこで座って、みんなと話していたんだ。
あちらの方々は同席してもいいよね」
 シンジが、いきなり自分たちを話に混ぜようとしてきた。慌てるが、断るのも悪い気がする。どうすべき
かの判断を隣にいた千鶴を見ることで、彼女に委託してしまう冥夜。軍の規範から外れた状況下に、弱すぎ
る自分に情けなささえ覚えてしまう。
 委託された千鶴も、自身で判断できかねると、まりもに視線を送る。まりもはそれを受けて肩をすくめた。
「どうも、場に気を使うのが、碇シンジという御仁の美徳らしい。謹んで、同席させていただこう」
 まりもも短い時間で、シンジが周りに気を使うタイプのだとは察したらしい。
 姉の傍に仕える二人、二人に揺れる心情を悟られないか、冥夜は不安に思った。

「このコーヒー美味いや」
「これ、ホントの豆使ってる。缶コーヒーなのにぜいたく~」
  と、大作に挨拶がわりと供された缶コーヒーに感心する武と純夏。冥夜も飲んだのだが、異世界人を前
にしたせいか、味なぞ全然わからなかった。
「しかし、あのエジプトに、コーヒーなんて積んでたんだ」
 武は自分たちがきいてよかったのかわかりがたいことを、あっさり訊いてくれた。冥夜たちは、先ほどの
と違い、コの字型になって耐熱シートの上に直に座っている。冥夜たちは縦棒の部分だ。
「エジプトじゃなくて、ジャイアント=ロボです。ロボの左足の空きスペースに、避難用シェルターがある
んですよ。そこに色々生活用品も入っていて、缶コーヒーは、僕が好きなんで、箱で入れておいたんです」
 バイクとかベットとか、着替えもあるんですよと大作。
「実際使う日が来るとは思わなかったけど、何事も備えて置くべきですね」
 とロボを見つめる大作の目は感慨深げだ。冥夜の知らない何かに、思いを馳せているのだろう。
「さて、まず色々話を詰めちゃおう! やっぱり、二人一緒はキツイか?」
 武が本題をまず切り出した。先ほどから軍艦がどうとか言っていた件のようだ。内容が把握できていない
冥夜たちに向けてシンジが簡単に説明してくれる。
「将軍様が、僕たちを戦艦に招待したいと。そこで、正式に会談と会食をしたいって書いてありました」
「ここに来るのは以ての外。でも、帝都城に招待するのは、城内省の関係者が難色を示した。で、折衷案で、
佐渡へ急行する戦艦の中から一隻を出してもらって、そこでって流れ」
 シンジの説明を武が補足する形になった。
「僕らのために、わざわざ戦艦融通してもらうって、どうもねぇ」
 どの戦艦が来るかはわからないが、二人の人間を歓待するために、戦艦を動かすのは冥夜にも大仰に思え
る、
「でも、佐渡島ハイヴを壊してくれた大功労者なんだぜ。。帝国全軍を以てしても、可能かどうかわからな
かったことをやってくれたんだ、戦艦一隻動かすくらい、安いもんさ」
「だねぇ。悠陽様、そう言って海軍説得したんだもんね」
 続いた純夏の言葉。あの姉が損得勘定を持ち出して、海軍を説得する様が、冥夜にはどうしても浮かばな
い。自分は見えることの叶わぬ姉を、美化しすぎていたのかと思ってしまう。
「話戻して、ぜひ二人共との希望なんだが、そっちの懸念も分かるわ。確かに、こいつらは……」
 と武が、皆の背後に控える、二体の巨人に目を向ける。
「エヴァンゲリオンにジャイアント=ロボ、か…… 安易に考えてはいけないと思うけど、こんな凄いのが、
この世界にもあればなぁ」
 羨望の眼差しで、二機を目上げる武と純夏。つられて冥夜たちもまた、巨人に目を向ける。武たちに実戦
経験があるかは不明だが、戦う者として、あの二体は、羨望の対象になりうるのだろう。
「紀伊持ってきても運べないよなぁ。かと言って、置きっぱなしじゃ不安になるのもわかるし」
 武が話を戻す。つまり、悠陽に招待されたけど、この巨人を置いていけないし、戦艦でも、この二体を駐
機するのは不可能だろう。
「この国の人を信用してないわけじゃないんですが、やはり、今、エヴァやロボの傍を離れるわけにはいか
ないので」
「では、シンジさん、行ってきてください。僕が、番をしていますから」
 シンジの逡巡に、大作があっさりと解決策を出す。
 シンジの心配は、冥夜も最もだと思う。冥夜や武たちのことは信用してくれているかもしれないが、それ
でも、事情を詳しく知らない帝国軍が、いきなりこの二体を接収すると言い出さないとは言えないのだ。
 それに対応し、なお最低限の礼を失さないようにするには、どちらか一人が代表として悠陽に拝謁するの
がベストだろう。そして、その人選はシンジの方が適役だと冥夜も思う。
「それしかない、かな。じゃあタケルくん、スミカさん、その方向で調整、お願いできる?」
 シンジが少し考えて、大作の案を選択した。
「了解! ちょっと待っててください。城に連絡してくるから」
 大型の通信機を積み込んだという瑞鶴改に、純夏は走っていく。強化装備の通信機にリンクさせて、長距
離通信を行うのだろう。
「スミカさんって、タケルくんの恋人?」
 シンジがいきなり、個人的なことを訊いてきた。興味とからかいが半々と言った表情、この御仁はこんな
表情もするのかと、冥夜の目には新鮮に映った。
「あ、いや、二人でセット、って思われているから、よく言われるんだけど……」
 武はげんなりした顔を見せたが、その後、困ったように笑いながら、
「俺と純夏って、何かそんな色恋沙汰の関係じゃなくなってるんだよ。吊り橋効果、って知ってるか?」
 と二人の関係の説明をしてくる。
「危険と隣り合わせの環境では、男女の関係はより親密度を増す、みたいなことだっけ?」
「まぁ、それが二ヶ月以上も続いたせいか、色恋沙汰を突破しちゃったみたいでさ。あいつと俺は、一緒に
いるのが当たり前の、半身みたいなトコに来ちゃったんだよね」
 そういう武の笑顔が、少し寂しそうに、冥夜には見えた、二人が横浜ハイヴに捕らえられていのは知って
いる。きっと、その中で二人は死を間近に感じ続けていたのだろう。
「そっか…… 大変だったんだね」
 シンジの言葉には、慰めより共感の響きがあった。この人も、凄絶な体験をしているのだろうか? 冥夜
は、シンジの歳不相応の落ち着きは、その経験から来ているのかと察する。
「異世界に跳ばされたほどじゃない、って思うけど」
 武の返しに、大作を含めて笑いが起きる。
「しかし…… 静かだね、みんな?」
 場を気にするシンジが、首を横に向ける。自然、武や大作の顔も横に向く。
 ドキン! 冥夜は強化装備に身を包んだ武と目があった瞬間、何故だか胸の鼓動が跳ね上がるのを感じた。
思わず胸に手を当ててしまう。頬も紅潮してしまいそうだ。
「自分たちが口出ししていいレベルの問題じゃないと思って、黙っているのです、碇くん」
 答えたくても、それがいいかどうかわからず、結局口を開けない冥夜たち。その気持ちを代弁したまりも
がシンジにそう言う。
「訓練兵でも軍人だから……」
 慧が、ボソっと言う。
「少尉殿が臨席しているので、遠慮しているのもある」
 千鶴が慧に余計なことを言うなと、歯を向いて威嚇している。一番空気を読まない美琴ですら、沈黙して
いたのに、慧の度胸には、呆れを通して感嘆すらしてしまう冥夜。
「俺と純夏が少尉なのは、殿下の傍にいるのが民間人じゃ示しがつかないって理由なだけだから、そんな気
にしなくていいぞ」
 武はそんな慧に、フランクに接してくれている。
「うん、わかった。気にしないであげる……」
 慧の反応に、またも千鶴が噛み付きそうな顔になっている。
「純夏は…… まだ話し中か。まりも教官」
 まりも、と名前で呼ばれたまりもは、眉間に皺をよせ、
「神宮寺と呼んでくださいと、あれほど……」
 と苦悩に満ちた表情をみせるが、頑張って立て直し、無理な笑顔まで作って、
「なんでしょうか、白銀少尉」
 と応じてくる。
「できたら、彼女達を紹介してほしいなぁ、と」
 シンジ達との折衝は、純夏が戻ってくるまで進展はない。話を繋ぐのと、皆を退屈させないようにと、武
は配慮してくれているのだろうか。
「はぁ、構いませんが。右から榊、御剣、珠瀬、鎧衣、彩峰訓練兵になります」
 まりもの簡単な紹介に、武の眉がわずかに上がる。紹介された名字を、小声で反芻して、
「なるほどねぇ」
 と一人納得している。冥夜たちが一箇所に集まっている理由を、詮索もせず、流してくれて少しホッとす
る冥夜だ。出来うれば、一介の訓練兵として接して欲しい、そう思う冥夜だ。
「とりあえず、向こうとの連絡終わったよぉ~」
 純夏が砂浜を小走りで戻ってくる。
「シンジくん一人なのは残念だけどって。大作くんとは後日、改めてってことで納得してもらったよ。服と
かもあっちで用意するって。それと……」
 そこで純夏は、深い溜息をつく。
「香月博士も同席することに決定だって。博士も、この島に来る気満々だったみたいだけど、多忙すぎて時
間調整できないから、ついでに同席させてくれってねじ込んだみたい」
「はぁ、やっぱ出てきたか、博士……」
 武も、純夏のように深い溜息をつく。新潟の女傑、香月夕呼も臨席するとは、シンジと悠陽の会談はどの
ような展開になるのだろうか? 冥夜には想像すらできなかった。
「その博士が?」
 大作が、まりもを見ると、溜息が伝染った彼女は、はぁ、と息を吐いて、
「そうです、私が会わせたいと言っていた規格外の人です」
 と言う。
「あの人、規格外とか、そう言うレベルじゃないよね、色々と」
 純夏の追随に、武とまりもは心の底からの同意を示す、深い首肯を見せる。
「将軍様と、そんな凄い人と、僕一人で謁見しなきゃいけないのかぁ」
 荷が重いなぁと、困ったように頭をかくシンジ。冥夜などにしてみれば、執政と軍務の雲上人のセットと
会うのに、その程度の困惑しか見せないシンジの神経の太さに驚いてしまう。
「で、これは、博士にちゃんと説明しておけって言われたので……」
 純夏が、正座し、居住まいを正し、シンジと大作に向き直る。先ほどまでの人懐っこさは消え、凛とした
佇まいすら、その面からは漂っている。
 つられ、居並ぶ面々も、居住まいを正すことになる。
「光神様の御言葉を授かる者として、碇様、草間様に、お話ししたいことがございます」
 純夏の口調が一変したことで、先程までの和やかな雰囲気も、緊張したものに変わる。
「まずは、私たちが、横浜で光神、『リョウマ』様に命を救っていただいた経緯から……」

 !?

 最大級の驚愕に、冥夜の目は見開かれた。秘されていた横浜での顛末のことが語られる驚きもあったが、
それより、光神に名があったことに、衝撃を感じてしまう。
 この中で唯一驚いていないのは、目を伏せ、純夏が語るのに任せている武だけだ。シンジたちも、今まで崩さなかった柔和な表情に、驚きを貼り付けている。
「シンジさん……」
 大作が、そう言っただけで、シンジはすべてを察したように、頷いてみせる。
 口元に手をあて、半ば顔を隠すように、シンジは呟いた。
「竜馬さんが、来ている…… ということは、光神は……」
 その小さな声は、なぜか冥夜の耳にはっきりと届いた。
「真ゲッター……」





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