1998年・7月10日四国日本海沿岸部周辺---『来たぞ、BETAだっ!!』『本州と結ぶ巨大橋群を爆破するのだっ!!』『了解!!』素早い通信を入れて、巨大橋群を中国地方の爆破班に通信を入れて、爆破する。 『…これで此方側のBETA共が本州に向かい、挟撃する危険性は低くなった…あとは、背水の陣となった我々がBETA共を始末するだけだっ!!』『『『了解!!』』』死を覚悟して、背水の陣となる戦場で、力の限り戦う四国防衛線の衛士達。中国地方から支援砲撃はあるものの、逃げ場は四国から少し離れた場所に待機してる戦艦のみ。 全ての衛士達を救える事は出来ないのを覚悟し、死地へ向かう。『BETA共に我等日本人の魂を見せつけてやれっ!!』隊長機の号令と共に総攻撃が始まる。死を恐れず、抜刀し突撃する者突撃した仲間達を支える為に強襲や援護射撃をする者そして、祖国を守り抜く為、特攻し、散って逝く者今---この四国で地獄のような防衛戦が始まっていた。 同時刻・下関沿岸部周辺--- 『済まない…九州は奪われた…』『奪われた物は奪い返せば良い。それより、よくあの激戦にこれだけの生存者が居たものだ…』『ああ…このXM3のおかげだ…』中国・下関沿岸部周辺では、九州での激戦の中、生き延びた部隊達が中国地方第1防衛線の部隊と合流する。 九州はBETAに制圧されたものの、市民達は既に東へと避難済み。しかし、九州を防衛していた多くの兵士及び衛士達が散っていった。 下関に生き延びた九州の部隊は、約半数近い部隊が生存する事が出来た。そして、散って逝った衛士達の殆どが旧OS搭載機の撃震や陽炎でありXM3搭載機の戦術機は一割強程度の被害だった。『我々は、このXM3を創った者に感謝せねばならないな…』『そうか…ならば生き延びろその為にも、貴殿達は補給所まで退却し、一時でも身体を休めるんだ。』『今はBETA共も進行を止めています。早く補給を完了しつつ、身体を止めて下さい。』『ありがとう…感謝する。みんな、聞いたな?我々は補給所まで退却し、補給や修復をしつつ、この恩を返す為にも、身体を休めるんだ。』『『『了解!!』』』補給所まで退却する九州防衛線の衛士達… 『…美冴…生き延びる事が出来たよ…』退却する部隊の中、ぶら下げていたロケットの中の女性を見て、生還した喜びと、九州を守り抜けれなかった悔しさが混じっていた。奇しくも、タケル達の知らない所で歴史は変わっていた。この男性こそが、『二度目の世界』のイスミヴァルキリーズの隊員の『宗像美冴中尉』の想い人である。『二度目の世界』では、九州防衛の際、怪我を負い内地送還した筈だが、今回はXM3搭載機に搭乗していた為、無事に退却する事が出来た。 『京都は---あの嵐山の光景は必ず守ってみせるから…見守ってくれ…!!』パチンとロケットの蓋を閉じ、握り締める。 そして補給所へと向かっていった…同日・仙台--- 「--という事で、お願いしますわ。」ガチャリと受話器を置く香月博士フゥ…と溜め息を漏らしながら、椅子に深々と座る。 「これでなんとか出来る限りの手を打った。あとは…白銀に託すしか無い…か…」天井を見上げながら、何も考えずに、ただじっと見つめる。そして視線を元に戻し、何かしようと立ち上がった時-- 『『博士ッ!!』』「何よ、騒がしいわね~…速瀬・『鳴海』、何の用かしら?」香月博士の下に、訓練兵の速瀬水月と『鳴海孝之』が入室して来た。 後から涼宮遙と『平慎二』もやって来て、二人退室させようと努力する。 「博士、何故私達は仙台に避難して来たんですか!?」「俺達だって、戦術機を操縦出来ます。今は白陵基地に戻って防衛するべきでは!?」「そんなの決まってるでしょう?今のアンタ達じゃ、『足手纏い』だからよ。」「「---ッ!!」」香月博士のキツい一言に愕然とする水月と孝之二人の後ろで羽交い締めしながら抑えてる遙と慎二も、その言葉に悔しく思う。「アンタ達だけが死ぬならまだ良いけども、そのせいで、巻き込まれて死んでいく衛士達の事も考えた事がある?彼等だって、守りたいモノや生き延びたい望みだって有るのよ?それをアンタ達のせいで死なせたら、それこそ『無駄死』になるわ。」「それは……」「クッ…!!」「アンタ達の故郷である柊町を守りたい気持ちはわかる。けど、今のアンタ達に出来る事は何も無いわ。」ギリリッ…と歯を食いしばり、悔しむ孝之悔しい思いと己の無力さに涙を滲ませる水月。 「コラァッ!!貴様等何をしてるかっ!!」其処に鬼軍曹・神宮司軍曹が強化装備を着たまま入室する。 「良いわよ、まりも。別に気にして無いから、今回の事はお咎め無しよ。まあ、一応罰として、白銀の全力変態機動を『3セット』して貰うわ。」「「「「………え゛っ?」」」」この時、水月達が硬直する。実は彼女達は、『戦術機適性検査』の時、タケルと面識していた。その際、水月と遙は『あっ、あの時の斯衛の人!?』と、以前タケルを見かけた時の事を思い出す。そして、香月博士の提案(イタズラ)で、タケルの全力変態機動を体験する羽目になる。 結果は…………語る事すら可哀想な結果となる。孝之・慎二達男性陣は悉く全滅。生ける屍と化したのは当然の事水月・遙達女性陣も、女のプライドすら打ち砕く全力変態機動に太刀打ち出来ず、ポリバケツの中の酸っぱい臭いお構い無しに吐く。 勿論女性陣全員がタケルにオンブされ、真っ赤に頬が染まった姿を見た男性陣は悔し涙をする事になる この時から---後に受け継がれる横浜基地新たな『伝統』が誕生した瞬間だった--!! 「………博士、速瀬達を殺す気…?」「冗談に決まってるじゃない?」全員がこの時、心をひとつにする『この人は本気で殺る気だ…』と… 「……随分落ち着いてますね、博士。」「そんな事無いわよ、さっきまで忙しかったんだから。」「…けど、こんな事態な割には冷静過ぎるわ……何を企んでるの…?」友人であり、香月博士を一番知るまりもが何やら疑う。 「単に今出来る事を尽くしただけよ。あとは…BETAの動きに警戒し続けるだけよ」冷静にまりもに返事を返す。すると、再び孝之が問いかける。 「九州は…防衛出来ますよね…?」「残念だけど、無理よ先程報告が有って、九州がBETAに制圧されたわ。」「「「!!!!」」」全員が絶句する。九州が墜ち、制圧された事に衝撃を受ける 「たった3日で…?」「むしろ上出来よ、3日間も防衛出来、尚且つ戦力の半数近くが生存出来たんだもの。そのおかげで、下関付近の防衛線が更に強化が出来たわそして、今四国でも戦闘始まってるわ巨大橋群を爆破して、下関付近の防衛線がBETA共から挟撃される危険性も低くなった…今は、現地で戦ってる者達を信じるしか無いわ…」ギィ…と再び深々と椅子に座る香月博士 「ねぇ…博士…白銀は…どうしてるのかしら…?」「あら、気になる?随分と白銀の事心配してるわね~?」「ゆっ、夕呼ッ!!」香月博士のイタズラに顔を真っ赤にするまりも。速瀬達もその姿を見て驚く 「安心なさい、今白銀は京都の帝都防衛線に参加してるから、まだ戦ってないわ…それにしても、まりもも白銀の虜になるとは…あれこれ仕込んだ甲斐があったわ~♪」「わっ、私はただ、白銀程の腕前ならば…と思って聞いただけよっ!!」アワアワと慌てて言い訳するまりも彼女もタケルの恋愛原子核に引き寄せられてしまった一人だった。 「まあ、からかうのは此処までにして…どちらにせよ、現地で戦ってる者達にしろ、白銀にしろ、今は彼等を信じるしか無いわ」「そうね…」友人の言葉に賛同するまりもそして、今はただじっと、タケルの無事を祈るしか出来なかった…