第48話 「ヘタレが望む永遠?(前)」【2001年5月14日 0:30PM 帝国軍 相馬原基地・PX】「あの、ここ御一緒してもいいですか利府陣中尉?」「丁度空いてるみたいだしね~、いいわよね中尉?」大咲大尉と共に食事を取っていた利府陣徹中尉こと鳴海孝之にそう言ったのは国連軍横浜基地から派遣されて来たA-01連隊の涼宮遥中尉と速瀬水月中尉であった。「ああ、どうぞ涼宮中尉、速瀬中尉」彼女たちが着任した当初は正体がバレないかと内心ビクビクしていた孝之であったが、取りあえずその様子もないのでもしかしたらこのままの状態が続いた方がいいかも…などと相変わらずのヘタレ思考に陥っていたりした。 「ふふふ…相変わらず横浜の美女たちにモテモテだな利府陣中尉は」そう言って孝之をからかったのは本土防衛軍第5師団から派遣されて来た大咲美帆大尉である。2月の相馬原基地防衛戦で孝之に命を救われて以来、なにかと悪目立ちしがちな孝之の相談相手として面倒を見て来た彼女だった(同時に孝之の周囲に女性の姿が絶えない事をからかいの種にするのも忘れはしなかったが)「あれ~? もしかして心配してますか大咲大尉~~、そこの彼氏を遥や御名瀬に取られるんじゃないかって~~?」「み!水月!何言ってるの!? 第一大咲大尉に失礼でしょ!」(まったくこいつは~~)水月の遠慮や思慮が無さ過ぎる発言に遥は慌てふためき孝之は無言のまま心の中で頭を抱えていたが、言われた当人である大咲大尉は平然として言い返すのであった。「ほほう…確か速瀬中尉だったな、聞けば横浜の女狐どのの配下にはウチの愚妹の他にももう一人BETA以上に凶暴な衛士がいると聞いていたが、もしかして貴様がそうか?」((はい、その通りです大尉))心の中で異口同音に言う孝之と遥、それに対して水月はと言えば口を開いて罵声を上げたいが相手が他の軍の大尉どのだという事を今更のように思い出して何も言えず開いた口をパクパクさせていた。 「ところで利府陣中尉、貴様の方の雇い主はこちらに顔を出さんのか? 確か一時的に帰国していると噂で聞いたが」「ええ、でもあの人とんでもなく忙しいらしくてこの基地に来る暇すらないかもしれないですよ?」「ほうそうか…少々話がしたかったのだがな」「話ですか? もし伝言でも良ければ聞いておきますが?」「いや、別にそこまでする必要もないだろう…大した用件でもないしな」切り出しかけた用件を途中で思い返したように引っ込めた大咲大尉であったが、そこにまた遠慮と慎みを忘れた声が割りこんだ。「あれ大尉? もしかしてそこの利府陣中尉との縁組とか仲人の依頼とか…」「水月!もう…すみません大咲大尉、この子悪気はないんですけど」「いや別に構わん、しかしその手の心配なら私よりもむしろ貴様らと同じ部隊にいるあのバカ妹の方にしてもらいたいところだがな…」(((すみません大尉、残念ながらそっちは今更手の施しようも…)))大咲大尉の言葉に今度は孝之、遥、水月の三人共が心のなかで声を揃えてそう言った。「くくく…まあいいさ、それより件の忙しい諸星大尉だが…また面白い事を始めたようだな?」「え?」「知らんのか? 今テレビでやっている連続ドラマと子供向け番組の事だよ」「ああ…そう言えば諸星さんテレビ局に番組を売り込む予定だとか言ってましたね」「え、それってもしかしてあの『月の境界』の事?」「あの、ひょっとしてその子供番組って『ポテモン』のことですか?」水月と遥が口にしたその二つの番組はモロボシが帝国放送協会に売り込んだドラマとアニメであった。製作は完全に諸星側で行う事が条件だったので、放送局やアニメの卸先となった帝国動画も人件費その他のコストがかからずに新番組が2本も確保出来ると大喜びであった(おまけにモロボシ側に支払うギャラも破格の安値だったのだ)そして放送開始と同時にこの斬新な二つの番組はそれぞれ大人と子供の心を掴み、一躍人気番組の筆頭に躍り出たのである。(ちなみに水月は『月の境界』の、そして遥は『ポテモン』の大ファンであった)「いいんだよね~あのドラマ…あのヘタレな主人公を一途に思う翡翠ってメイドの姿に心を打たれるわ~~」「あのアニメもいいよ~~、あの『ピカモグ』が可愛いんだよ~~」「へえ…諸星さんの作った番組ってそんなに人気があるのか」「ああ、特に朝と昼のドラマになってる『月の境界』は視聴率トップの人気番組だぞ」(あの人本当に色々とやってるんだな。 でもこんなにたくさんの仕事とか抱えて本当に全部こなせるのかな?)「あ…噂をすれば始まったよ『月の境界』が」「あ、ホントだ~今日はどんな展開かな~~」そんな水月の様子を苦笑しながら見ていた孝之であったが、ふと周囲を見れば大咲大尉やPXにいる多くの兵士たちも始まった番組に釘付けになっている事に気付いた。(おいおい…この入れ込みようだと放送中にBETAが来たら大変な事になるんじゃないか?)もし今この番組の最中にBETAが押し寄せて来たらまず間違いなく腹いせに異星起源種の群れへ突貫をかける衛士が出るだろうと思わせるほどののめり込みようであった(もちろん突貫の先頭に立つのは水月に違いないと孝之は思っていた) こうしてモロボシの提供した娯楽番組は帝国の国民や軍人たちの間にブームを巻き起こして行くのであった。余談ではあるがこの番組に対する某横浜基地副司令の感想は『自称吸血鬼や化け物が出てくる不条理なドラマや発光する齧歯類のどこがいいのかしら?』という物であったそうな… 【?????????】『そんで? 一体何時までイーニァをあのロクデナシ共の手元に置いとくつもりや?』「あのねスミヨシ君、私は一応公務員なんだよ? 何の大義名分もなしに年端もいかない少女を金で買い取ったり攫ったり出来る訳がないだろう?」 …こんにちは皆さんモロボシです。 今私は並行世界の友人兼協力者であるスミヨシ・ダイキチ君と通信中だったりします。今後の仕事に必要な技術や情報に関して彼にアドバイスをお願いしていたのですが、かねてからの懸案事項でもある『イーニァ(+クリスカ)救出作戦』(?)が一向に進展しない事に業を煮やした彼が私を詰問し始めたのですよ。 『あのロクデナシ共がやっとるП3計画があの二人にとってどんだけ危険な代物なんかまさか分かってないとか言わんわな?』「いや、もちろんそれは分かってるけどさ…」『このままやとあの二人は確実にあのサンダークによってエヴァンスクハイヴに放り込まれるんやで? それも凄乃皇もなしに…や』「………」『オンドレまさかそれを黙って見逃すつもりやないやろうな?』…どうしろと言うんだよこの私に?もちろん私だってあの二人をそんなバッドエンド確定路線に放り込みたくはない。だが現状の私にはそれをどうこうするだけの手段はないのが正直なところなのだ…まあ鎧衣課長にもお願いして色々と準備とかはしてるけど、そもそもあの二人に『君たちを自由にしてあげる』と言ったとしても余計な御世話だと言われるのがオチだろう(たとえそれが洗脳的な教育の結果だとしても彼女たちは自らの意志で祖国ソビエト連邦に忠誠を誓っているのだから…)もっともスミヨシ君はそれを承知の上でどうにかしろとこの私に言ってくれるのだが…無茶言うよなまったく。「プランはある。 ただし時間がかかるし、それになにより費用がかかるんだ…それをどうにかしない事にはどうしようもないね」『心配せんでもそっちはワシらがなんとかするさかい、さっさとそのプランとかを説明せいや』本気かよこの男? まあいいか、別に私の金じゃないんだから…「つまりだね、かくかくしかじかさのよいよい…とまあこんな予定を組んでるんだが?」『…ええやろ、けどそれやとカムチャツカへの遠征を回避する事は出来んやろ? あそこで起きる無駄な犠牲をどうにかするつもりやなかったんか?』「そっちは猪川少佐に仕込みをお願いしておいた。 どの道カムチャツカが落ちれば大事になるし、米国側の思惑に関しては大統領と話をしてからだろうね」『ソ連の方は仕掛けをせえへんのかい? セラウィクにおる偉いさん連中に取引でも持ちかけて腹ン中を探ってみたらええやんか』「そう体がいくつもある訳じゃないからね、それにセラウィクの連中の思惑に関しては…米国以上にややこしい事になってるだろうしね、交渉自体は専門家に任せるつもりなんだよ」『それをオノレは高みの見物かい?』「いや、どちらかと言えば火付けや火事場泥棒をする役かもね」『…まあイーニァたちさえ無事やったらあのクズ共がどうなろうと知った事やないけどな』「過激な事を言うねえ君も…さて、それじゃそろそろ私はあのヘタレ君の見舞いに行かなきゃならないんで今日はこの辺で失礼するよ」『わかっとると思うけど一応念を押しとくで? もしもイーニァたちを助けなんだらそっちに入る援助の額が大幅に減る事になるっちゅう事を忘れなや?』「……ああ良く分かってるよ、それじゃ」 …まったく、言うは易し行うは難しとは良く言ったものだ。スミヨシ君や支援者の皆さんに援助を切られないためにはあの二人を『助けなければならない』が、それを一体どうすれば達成出来るのか…彼らの要求はとても単純なものだ。 要するに桜花作戦後まであの二人を生き延びさせてついでにソ連軍の『道具』としての役割から解放し、普通の少女として幸せに生きていけるようにしろという訳だ。だが実際にそれをやる(やらされる)私の方はトンデモない苦労とリスクを負わなければならないし、仮に上手くいったとしてもそれが彼女たち自身を本当に幸せに……いやよそう、今はまだ考えても仕方がない事だ。そうでなくてもお仕事は次々と押し寄せてくるから時間を無駄にしてる暇はない。さて、それでは相馬原基地の進捗状況を見てきますか…ついでにヘタレ君の様子もね♪ 【5月14日 2:30PM 帝国軍 相馬原基地・戦術機ハンガー】「おう、諸星大尉じゃねえか! しばらくだったな!」「はい、お久しぶりです大田少佐」この相馬原基地で行われているXOSと次世代試作機の試験運用…その統括指揮を取っている帝国軍技術廠の大田和夫少佐は、突然の来客者を見て笑顔を浮かべた。「丁度良かった、今日はこっちに来てる人間が多くてな……おおいお前ら!諸星大尉がお見えだぞ!!」そう大田が大声で叫ぶとハンガーのあちこちから返事が返って来た。「お~諸星大尉、しばらくだったな」「いやどうもお久しぶりで、アラスカの方はどうですか?」「富永大尉、高木中尉、どうもお久しぶりです。 おかげ様でアラスカの方はなんとか順調に軌道に乗りました」「お初にお目に掛かります諸星大尉、自分は帝国軍技術廠所属の山中中尉であります」「オレ…あ、いや自分は佐々木元中尉であります!」「はじめまして、自分が諸星です……とまあ堅苦しい挨拶はこれくらいにしまして、皆さんにこれを持参したのですが…」そう言ってモロボシが見せたのはアラスカ産サーモンの塩漬けであった。「これを夜食の肴にでもして下さい、いつも無理な仕事をお願いしていますから」「ほお~~アラスカ産の塩鮭かい」「ははは…残念ながら国産の和鮭はアラスカでは手に入りませんから」「なあ~に、モノさえ良けりゃアメリカ産も国産もねえよ。 ありがとうよ諸星大尉、今夜にでもここの連中に振る舞ってやろう」「人の数も多いですからね、どうです? 米と葱もありますので鮭飯なんてのもいいんじゃないですか?」「酒にも合うし…たまらねえなあ~~~おい」「おいおいガッちゃん(佐々木中尉の愛称)よ、今から涎を垂らすんじゃねえぞ?」「わあってますよ少佐殿、今夜の仕事が終わってからのお楽しみって事で♪」「ま、連日連夜残業続きですからな、この程度は大目に見てもらってもバチはあたらんでしょう」「ところで…」今夜の酒盛りに思いを馳せ始めた面々を引き戻すかのような声がした。「うん、どうしたヤマ? オメエも今夜は付き合いたいか?」そう尋ねた大田の言葉に小さく首を振ってから山中中尉はモロボシと向き合った。「大尉が本日この基地に来られたのには何か特別な理由があるのでしょうか? 噂ではかなりお忙しいと聞いておりましたので…」「ええ、ここの進捗状況を一応自分の目で確かめたいのと後は利府陣君の様子を見ておこうと思いまして」「あの仮面小僧なら仕事と女に囲まれて毎日大忙しですぜ(笑) どうやら横浜の女狐はかなりあの坊やにご執心のようですが…大尉殿はどうなさるおつもりで?」顔はにやけていながらも鋭い視線でモロボシを見ながら佐々木はそう言った。無頼のような口調の佐々木だが、本来は情に厚く人一倍涙脆い男である。自分が仕事の上で何かと面倒を見ている利府陣(孝之)が横浜への供物となるかも知れないと知って心中穏やかではいられないのであった。「…詳しくは話せませんが利府陣君は横浜とは色々と縁のある男でしてね、いずれ向こうでやってもらわなくてはいけない仕事があるのでよ。 ですがここの仕事も重要ですから香月博士にはもう少し待って欲しいと言ってあるのですがねえ…」「…人手が欲しいのはどこも同じだがな、少しでも速くそれを手に入れるために配下の娘っ子たちを使って美人局まがいの真似とは流石は“女狐”と呼ばれるだけの事はあるな」大田がそう言うとモロボシも苦笑しながら頷いた。「甲21号攻略の期限が迫っていますからね、それまでに出来る事は可能な限りやっておきたいのでしょうあの人も…ですがそれはここも、そしてアラスカも同じ事ですからね」「おうよ! そうそうあっち(横浜)の都合ばっかり聞いてられるかってんだ!」「おいおいガッちゃんよ、そう喚くなって」「まったく…人手が足りんという事だけはどうにもならん問題ですな」「私もアラスカの仕事のために多くの人材を割いてもらっている立場ですからそのお言葉は少々胸に突き刺さりますなあ……ところで話は変わりますがここの新型試作機の試験運用の方はどんな具合でしょう?」そのモロボシの言葉を聞いた大田以下の全員が不敵な笑みを漏らした。「心配は無用だぜ諸星大尉、魁は無論のこと吹雪・改も順調に仕上がってるしそれについ昨日の事だが例の“撃流”をベースにした次世代型激震の量産型試作機が搬入されたばかりでな」「この新型の機体には例の弐型開発の条件として向こうから提供されたOBLとお前さん御自慢のX2が搭載されてるんだ。 ハッキリ言ってこいつはもう第1世代機の改修機なんてもんじゃない、激震の皮を被った立派な第3世代機だぜ」大田や佐々木の自慢げな言葉に嬉しそうに頷くモロボシであったが、そこに富永大尉が口を挟む。「しかし諸星大尉よ、お前さんがX1の開発を続行させた本当の理由がようやく分かってきたぜ」そう言って富永はニヤリと笑った。「と、言いますと?」にこにこ顔のままモロボシがそう訊ねると今度は高木が笑いながら答えた。「機体のフレームですよ、アレの寿命を考慮したんでしょ?」「…気付きましたか、さすがですねお二人とも」 富永の言うX1開発の真の理由…それは高木の言葉の通り機体のフレーム(本体)の耐久性にあった。XOSの搭載によって戦術機の運動能力は素晴しい進歩を遂げる事になったが、それは同時に機体の部品や機体自身に多くの負担をかけるものでもあった。関節に使われているカーボニック・アクチュエーター等であれば部品交換で済むが、これが本体のフレームとなると話と値段が違ってくる(もちろん炭素繊維系の部品もお高いモノではあるが)機体のフレームが限界を迎えれば、それはその機体自体が寿命を迎えるという事でもある。XOSの性能をフルに引き出した結果、機体の寿命が半分以下に減るであろう事に気付いた高木と富永はX1とそれを搭載した戦術機の機動性と耐久性のベストマッチを探るために日夜試行錯誤を繰り返して来たのであった。 「横浜の新技術を使ったX2は魁や吹雪・改や新型の激震のようにアンタが提供してくれた機体構造材を使ったフレームじゃなければ機体の寿命が短くなる。 だがX1はX2程には機体に負担をかける事はない…それでアンタは従来の機体に搭載されるOSはX1の方が適していると考えた訳だろう? どの道X1の方がコストも安上がりになるしな」富永のその言葉にモロボシは頷いた。「ええ、それによってアラスカのデータと合わせてXOSのより良い使用法と性能の向上が見込めますし、OSの輸出にもいい影響が見込めますしね」X1の輸出に関してはすでにアラスカでの試験運用に参加している各国の政府から一刻も早く売って欲しいとのオファーが帝国政府に寄せられていた。そしてこれまで表向きは無関心を装って来た米ソ二大国の内、合衆国海軍の重鎮でもあるベイツ将軍がXOS計画に好意的な評価を下した事が知られると、さらにその勢いは増したのである。無論帝国政府としても自国に多大な利益をもたらしてくれる商談でもあるのでそれらの要求に前向きに話を進め、帝国軍もX1の提供を(一部の声の大きい人間を除けば)自国の技術力の誇示と利益に繋がる話であると肯定的に受け止めていた。 「まあX1の普及に関しては皆さんのお力もあって成功への道は開けたと言っても過言ではないと思いますし、むしろこれからはX2とその搭載機の方が難問が待ち構えているでしょうね…いろんな意味で」モロボシの言葉を聞いた大田以下の全員が何とも言い難い苦笑を浮かべた。「まったくなあ、お偉いさんたちの意地の張り合いの結果とはいえまさかアラスカの弐型と魁を競い合わせるような事になるとはなあ…」「まあオレたちにしてみれば魁を仕上げる事が出来るのは有難い話ではありますがねえ…」「ですがこのまま弐型開発推進派と魁採用派の対立が続けば実際に両機を比べ合おうなどという事にまでなりかねませんが…大尉はどう思われるのですか?」「…別にかまいませんが?」「は?」「おい…」「なあ?」「ふうん?」「ほお? くくく…構わんのか?」モロボシのあまりにもあっさりとした返事にその場にいた全員が驚くが、続けて彼が言った言葉に度肝を抜かれた。 「どの道、弐型も魁もいずれあの世界最強の戦術機F-22“ラプター”と戦う運命にあるのですからね」 「!!!!!」モロボシが言った言葉は数ヵ月後に現実となる。だが今この場にいる人間たちにとってそれは青天の霹靂に他ならなかった。 第49話に続く 【おまけ】「ううっ…!」「? どうかしたか利府陣中尉?」「いや…どこからか見られてるような気がして」「…なんだ、今頃気付いたのか?」「は?」「横浜から来た涼宮中尉だろう、貴様の事を随分と気にかけていたようだぞ? それも何だか十年来追い求めた仇でも見るような目だったがな? 何か心当たりでもあるか?」「え゛? いやいやいや!!そんな覚えは全く全然ありません!!」「…その反応からしてすでに怪しいがな。 あまり女の眼力を見くびらない事だ、過去の貴様を知っている人間がいればそんな仮面は大した役には立たんと思うぞ?」「ははは…」(どうしよう…まさか、まさか遥の奴……)